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2017.04.03

IT企業4社が実現する「働きやすさ」と「制度」の関係とは?人事制度座談会!

こんにちは。linoticeの中の人です。

仕事選びは「仕事の内容」と同じくらい「働き方」が重要ですよね。 そう考える方が増えていると、人事の現場で仕事をしながら日々実感している今日この頃。働き方に対する考え方が企業価値にも結びついているんじゃないか、私たち企業側から働く人にどんな価値を提供できるのか、なんてことを毎日考えています。

そこで今回は、ヤフーを含めたIT業界4社の人事制度担当者に集まってもらい、自社の働き方や制度についてめいっぱい語っていただくという座談会を開催しました。

突然のお声掛けにもかかわらず、ふたつ返事で弊社にお越しいただいたのは、最近さまざまな制度でメディアをにぎわす下記3社の方々。

  • 株式会社IDCフロンティア コーポレート管理本部人事部 石橋絢子さん
  • 株式会社サイバーエージェント 人事統括本部人材開発部長 膽畑匡志さん
  • サイボウズ株式会社 事業支援本部 人事部新卒採用チーム リーダー 中江麻未さん

ヤフー株式会社からは、コーポレート統括本部PD戦略本部PD企画部運用企画 リーダー 天野辰郎が参加しました。

それぞれ特徴のある制度を持つ企業ですが、それはどんな考え方から生まれて、どのように運用されているのか?制度の話題性だけで終わらず、きちんとその制度がはたらく社員に活用されているのか? とても気になるところです。ではまず、各社の制度の特徴からご紹介しましょう。

働き方は選ぶもの、サイボウズの選択肢

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サイボウズ株式会社 事業支援本部 人事部新卒採用チーム リーダー 中江麻未さん

「サイボウズの大きな特徴は、『3段階の時間×3段階の場所』という9分類の選択肢から、社員一人ひとりが上司やチームメンバーと相談し、働き方のスタイルを選ぶことができる『選択型人事制度』にあります。

育児や介護といったライフステージの変化、また通学や副業など、人それぞれが持つ事情に合わせて働く時間と場所を選択する。サイボウズは、そもそも社員が一斉に出社するという前提の考え方をしていないんです。最近ではより細分化した働き方のスタイルも登場しているんですよ。

さらに、一時的にその選択から時間や場所の制限をなくすことができる『ウルトラワーク』という制度も導入しました。 例えば体調が悪い日に一定の時間だけ自宅勤務をしたり、宅配便を受け取ってから出社したりするなど、基本的に上長の確認が取れれば柔軟な勤務時間の使い方ができます。弊社が提供するグループウェアの思想を自ら体現したような環境になっているんです」

無謀じゃない挑戦、サイバーエージェントのバランス感

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株式会社サイバーエージェント 人事統括本部人材開発部長 膽畑匡志さん

「サイバーエージェントは、『挑戦と安心はセット』という考え方をベースに、制度全体で『挑戦のための施策』と『安心のための施策』のバランスを取りながら制度を設計しているのが特徴です。

挑戦』の方向では、役員と選抜社員が1泊2日で新規事業や中長期での課題解決案等を未来につなげる決議をしていく『あした会議』、取締役8人のうち2人が2年に1度交代する『CA8』、次世代リーダーを育成する『CA38』などがあり、社員がチャンスを得ることに門戸が開かれた制度となっています。

一方、『安心』の方向では、女性が中長期で働きやすい環境をパッケージにした『macalon(マカロン)』や、エンジニアが開発に集中できる環境をサポートする『ENERGY(エナジー)』、専門チームが全社員に毎月コンディションを尋ねる『GEPPO(ゲッポー)』などがあります。仕組み化しながらも、一人ひとりの事情や要望に耳を傾けることのできる制度になっています」

内には丁寧、外には思い切りのIDCフロンティア

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株式会社IDCフロンティア コーポレート管理本部人事部 石橋絢子さん

「IDCフロンティアでは、子育て・介護中の社員を対象に、給与面の変更なく週休3日・在宅・フレックスなどから自分に合った勤務形態を選べる『フルサポート勤務制度』を導入しています。また、上司と直接面談をする「1on1」では、働き方に対するリクエストを出したり、キャリア相談をしたり、少しでも働きやすい環境を自分で選んでいける仕組みが用意されています。

特筆すべきは、入社してすぐに1カ月の有給休暇、さらに3カ月の試用期間終了後100万円を支給するという『フルチャージ入社制度』です。直接応募の転職者を対象に、前職から有給を消化する間もなく仕事を始める人が多い中、しっかり休んで十分チャージしてから働いてほしいという考えのもとに設けられたもので、メディアから注目を集めました」

週休3日制へ向け、より柔軟さを目指すヤフー

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ヤフー株式会社 コーポレート統括本部PD戦略本部PD企画部運用企画 リーダー 天野辰郎

「ヤフーでは昨年、週休3日制の導入検討という発表を行い非常に注目されましたが、現在はそのステップとしての働き方改革に鋭意取り組んでいるところです。昨年10月に移転した新オフィスでは、全館フリーアドレスが導入されました。また、自宅やコワーキングスペースなど、好きな場所で仕事ができる『どこでもオフィス』制度では、月に2日から試験的に5日へと利用可能回数を拡大し、個人個人が最もパフォーマンスを出せる場所で働ける環境作りを進めています。

それと、エンジニアだけではないのですが、特定の分野に突出した知識とスキルを持つ人の社内外での活動を支援する『黒帯制度』があります。インフラ黒帯やサイエンス黒帯など、現在は22人が認定されていて、特別な名刺を持てたり、必要な資料やイベント開催のための黒帯活動費を補助してもらえたりするといった処遇を受けることができます。常に満足せず磨き続けてほしいということと、新しい人へのチャンスを作る意味で、1年任期制であることも特徴です」

エンジニアを支える、IT企業の人事制度とは?

――各社とも、思っていたとおりびっくりするほどユニークな制度を用意していますね!ここで、IT企業を支えるエンジニアの働き方にフォーカスしてお話を聞いていきたいと思います。では早速、エンジニアを対象とした制度の事例があればどんどん教えてください。

膽畑:「弊社は正社員の約4割がエンジニアとクリエイターです。エンジニアとクリエイターに対しての制度というと、ひとつは『ENERGY』が挙げられます。

もともとエンジニアとクリエイターから、より開発に集中したい、もっと技術向上したいという声が多く、その環境を用意するために作られたのがこの制度です。弊社ではさまざまな事業部で技術者が活躍しているため、自己成長のため2年ごとに他部署への異動希望を出せる『FA権』や、開発以外の業務を代行する『エンジニアコンシェルジュ』など、エンジニアの環境をサポートする8つの制度をパッケージにしたものとなっています。

ひとことで技術者と言っても一人ひとりの要望はかなり異なるので、制度設計する人事で一方的に制度をつくるのではなく、エンジニアとクリエイターが自分自身の環境を高めるために何が必要なのか、声を聞きながら要望に応えらえる体制をつくりたいと考えています」

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株式会社サイバーエージェント エンジニア・クリエイター採用サイト

――おお~サイバーエージェントさまではエンジニアに特化した人事制度がずいぶんあるんですね。IDCフロンティアさまはどうですか?

石橋:「弊社は全体の約6割がエンジニアなので、エンジニア特化というより全社に向けて実施している形になりますが、数年前から『健康経営』を掲げており、今は朝型勤務も選択できます。 通常朝9時からの勤務開始時間を7時まで繰り上げることができ、さらに8時半までに出勤すれば毎日500円の朝食費を会社が補助する『アーリーバードプログラム』を導入しました。

また、東京から北九州のデータセンターまでの距離(1,000km強相当)を一定期間中に歩くことを目標にした『拠点間踏破ウォーキングプログラム』を毎年開催していて、賞品を用意したり、チーム制にしたり、途中からも参加可能にするなど、参加者が増えるよう工夫しながら続けています」

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株式会社IDCフロンティア 採用情報サイト

――サイボウズさまも約半数がエンジニアということですが、いかがですか?

中江:「特にエンジニアに限った制度というわけではないのですが、『ウルトラワーク』については在宅でもパソコンがあれば仕事ができるということで、エンジニアの方が利用しやすいと感じています。 多い人では週に2~3回は使っています。また、エンジニアの勉強会開催や海外カンファレンスへの参加をサポートする、個人での開発や書籍の執筆等の副業も解禁するなど、エンジニアにとっては"やりたいことを制限されない"という意味での働きやすさもあるようです」

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株式会社サイボウズ 採用サイト

天野:「ヤフーでは、スキルアップや社外のネットワーク構築なども期待されることから、社員の副業を許可しています。

また、エンジニアに特化した制度ではありませんが、個人のパフォーマンスという面で特徴的なのは『人財開発会議』です。一人の社員に対してその上司や関係者が集まり、その人がより才能と情熱を解き放つにはどうしたらいいかをみんなで話し合い、本人にフィードバックするというものです」

膽畑:「それは、全社員分が行っているんですか? マネージャーなど、レイヤーが上になればなるほど関わる人数も増えるので、運用が大変そうなイメージがあります」

天野:「全社員分やっているので、大変ではあります(笑)。年に1度行うため相当なエネルギーが必要ですが、自分の新たな一面を知るきっかけにもなると社員からは好評なので。僕らからすれば、人財育成に対する思いの強さを象徴する制度でもあります」

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ヤフー株式会社 採用サイト

――各社のこういった制度は、実際にどれくらい社員の中に根付いて、活用されているのかが気になります。

膽畑:「半年に一度、自分が希望する部署・職種への異動を申請する『キャリチャレ(キャリアチャレンジ)』制度では、全社で毎回50人くらいが申請していますね。ただ、エンジニアとクリエイターはなかなか手を挙げない人もいるので、『FA権』という形で、社内の適材適所をサポートするキャリアエージェントチームが2年ごとで個別に希望を聞いていく形にしています」

――クリエイターには消極的な方が多いということですか?

膽畑:「ひとつにはそれもありますが、やってみて分かったのが、弊社はゲーム・広告・メディアなど事業の幅が広く、社内でも自分の事業ドメイン以外のことをあまり知らないケースが少なくないということです。 キャリアエージェントチームにキャリア相談をすることで、自分のキャリアの選択肢が社内にもたくさんあると分かって良かったと、異動しない場合でも満足度が上がることもあります。 また、エンジニアやクリエイターの場合は運用側の柔軟な対応よりも、ルールとして明確に提示したほうが使いやすい傾向があるようです」

天野:「弊社でも『ジョブチェン』という、自分で手を上げて社内異動する制度があります。エンジニアが自分の携わりたいサービスを希望するのはもちろんですが、それ以外にも例えば人事など、他職種へのキャリアチェンジも可能な制度になっています」

――女性は長く仕事を続けられるのか不安に思う方がいらっしゃいますが、実際どうですか?

中江:「新卒採用ではその点を気にしている方が多いと感じています。育児休暇が最長6年とか、育休復帰率が100%といったことを伝えると、安心してくれるようです」

膽畑:「6年という期間はすごいですね!」

中江:「実際に育児休暇を取得する人は長くて4年くらいですが、制度を活用している人は多いですね」

――それでも、4年を経てちゃんと復帰できるというのは安心ですね。

石橋:「弊社も直近5年間での育休復帰率は100%で、2年取れるようにしています。男性も取得するくらい浸透していますね。 新卒採用ではやはり長く働き続けられるかを気にする人が多かったので、それでフルサポート勤務を設けたという経緯もあります。 もともと有給休暇の使い方が終日、午前・午後、1/3日と分かれていたのですが、それでもカバーできなかった部分に対応できるようになり、利用している社員からは本当に助かっています、という声が上がっています」

天野:「ヤフーでは『パパママ座談会』として育休中の社員が交流する機会を設けたり、年に1度家族を招待する『ファミリーデー』を開催したりするなど、リアルに会社と接点を持つ機会を作り、復職時の不安を取り除くような取り組みもしています」

――サイバーエージェントさんは女性の働き方をサポートする『macalon』という制度をお持ちですよね。

膽畑:「はい。ママ社員だけでなく、妊活に興味があったり妊活中の社員のための『妊活休暇』や『妊活コンシェル』、すべての女性社員が生理休暇を取得しやすくする『F休』、育児中のパパママ社員のための『キッズデイ休暇』『キッズ在宅』などをパッケージにした制度です。 『妊活コンシェル』は毎月の予約枠がほぼ埋まるなど、かなり活用されていますね。

また、先ほど申し上げたように社内の事業ドメインが幅広いので、他部署に異動して働き方を変えることで仕事を続けるという意味で、『FA権』もうまく機能しているのではないかと思います」

社員の声から作りあげる人事制度

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――ここまでいろいろな制度についてお話しいただきましたが、こうした制度がどういう背景、流れでつくられているのかも聞きたいです。

天野:「従来は人事部門の中で考えて作っていたのですが、人事制度もプロダクトと同じでユーザーの声を聞きながらトライ&エラーでどんどん変えていこう、という流れに変わってきています。
社内ではクリエイティブ系やエンジニア系といった各部門のBoard(委員会)があり、考えている制度があればそこへ持って行って"壁打ち"することもあります。最近はなるべくそういった声を拾いながらやろうとしています」

中江:「私たちもそれに似た感じです。社内では『説明責任・質問責任』という言葉が浸透していまして、疑問に感じたことは質問する義務がある、質問されたら真摯に説明する責任がある、という考え方が共有されています。
例えば、新卒の社員が役員に社内のグループウェア上で質問をし、それに対して役員も真摯に答える、ということが当たり前のようにおこなわれているんです。 ですので、こういう制度が欲しいと考えたらまず発言する。
それを制度にするにはどうしたらいいのか、いろんな人を巻き込んでワークショップを繰り返し、試用期間を設け、問題があれば柔軟に変えていくという流れで制度が作られます」

天野:「説明責任は一般的ですが、質問責任という言葉はすごく良いですね!」

中江:「ありがとうございます。質問責任という考え方は、弊社の文化の礎となっている言葉のひとつでもあるんです」

――制度からこぼれ落ちている需要を社員の声から拾い上げ制度にしていく、という循環がきっと働きやすさにつながっているんでしょうね!

膽畑:「私たちは、制度を作って終わりではなく、"制度2割、運用8割"だと考えています。 例えば『macalon』なら、女性にとっては環境が良くなるけれど男性社員はどう思うだろう? など、良かれと思って立ち上げた制度でも、制度の恩恵を享受できない誰かがシラけてしまう可能性がありますよね。 だから、新しい制度を打ち出すと誰がシラけるのか、という"シラけのイメトレ"を事前に行うことでで、ネガティブな要素は徹底的に洗い出します」

石橋:「弊社の『フルサポート勤務』も育児・介護者が対象なので、それ以外の人にはなぜ使えないのかという意見や不満もあがりやすいという側面があります。そのあたり、『macalon』ではどのように進めていきましたか?」

膽畑:「結論からいうと、イメトレしたうえで出た声は受け止めようと(一同笑)。 『macalon』はこれを出した時にどんな声が出るのかを徹底的にイメトレをした上で、それでもまだ何か意見があればいったんはそのシラけを受け止めようと考えて始めました。 でも、実際に始めてみると『macalon』に含まれる『キッズデイ休暇』(誕生日や運動会などの子供のイベントに休みを取れる休暇)は利用者のうち男性が7割を占めるなど、結果的に男性にも活用される制度になりました」

こんな人と働きたい! 各社が考える「ウチっぽい人」とは?

――入社を希望する新卒や転職者とのコミュニケーションの中では、どんなところをポイントにしているのか気になります。

中江:「サイボウズの製品開発では『ユーザーファースト』という考え方が非常に大切にされています。 そのため、ビジネスのために機能を考えたり、好き嫌いで技術を選んだりするのではなく、ユーザーに最大の価値を届けることを1番に考えられる視点を持っている人が合っているのではと思います。 また、エンジニアに限った事ではないのですが、『チームワークあふれる社会を創る』という企業理念に共感いただけるかどうかもとても大事なポイントです」

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膽畑:「言語化しにくいですが、こういう技術を使いたいというよりも、こういうことをやりたいから必要ならこれも勉強します、というような……手段にあまりこだわらず、目的、やりたいことが強くある人の方が合うのではないかと思います。

また、チーム・サイバーエージェントという言葉に代表されるように、チームワークを重視しているので、スキルは高いが頼みにくい感じの人より、一人ではできない大きなことをみんなでやるぞ、という意識の人の方が"サイバーエージェントらしい"と思います」

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石橋:「新卒採用では、会社の行動指針である『IDCFクレド』、"つくりだす やりぬく ひとつになる"という三つを達成するような人を採用したい、ということを掲げています。 新入社員は入社から3カ月かけて社内の全部署をまわる研修を重ね、自分で配属先を選んでもらうことになっています。 こうしたところで、自分でキャリアを積み重ねることを最初から意識して働いてもらいたいと考えています」

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天野:「ヤフーの場合は新しいことにチャレンジしたい、新しい学びを得たい、という人の方のほうがフィットすると思います。経験学習をベースに人財育成を考えているので、何か一つの軸を持ちながら、いろんな経験を積んでいくことで継続的に成長していく、ということを大事にしています。 新しい経験を定期的に重ねて、それを喜んで吸収できる人、学ぶこともできる人、というのがポイントになると思います」

今回は4社の人事担当者による対談をお届けしましたが、いかがでしたか? 聞いていた私も目からウロコの制度がたくさん飛び出し、各社、「働き方」について真摯に向き合い、日々試行錯誤を繰り返しながら取り組んでいることがわかりました。 読者の皆さんにも、4社の人事に対する考え方が少しでもお伝えできたのではないでしょうか。

最後に、ご参加いただいた皆さま、今回は本当にありがとうございました!


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