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2022.08.04

ヤフーのVPoEが語る、年間数千件のリリース数を誇る「Yahoo!ショッピング」の開発環境と組織風土とは

Yahoo!ショッピングはヤフー事業における柱のひとつであり、日本を代表するECサービスのひとつでもあります。ヤフーではこのサービスを日々安定運用しながら、ユーザーのショッピング体験をより向上させるための開発を絶えず進めています。今回はショッピング事業のVPoEである石塚真二に、ヤフーならではのECサービスの作り方やその開発を担うエンジニアについても語ってもらいました。

プロフィール

石塚のプロフィール画像
石塚 真二
ショッピング統括本部 本部長/VPoE
2003年に「Yahoo!オークション」(現、ヤフオク!)のエンジニアとして入社し、B to C取引サービスの立ち上げに参画。その後、コマース系のインフラ運用を経験したのち「Yahoo!ショッピング」に異動。2013年以降の「eコマース革命」プロジェクトに立ち上げから関わる。フロントエンドエンジニアや、アプリの技術責任者の経験を経て、現職。

ストアのモチベーションを促して、ショッピングモールの活性化へ

Yahoo!ショッピングでは、日々あらゆるUI/UXの改善を行っています。特に重視しているのは、ユーザーの購入体験の向上です。ユーザーが商品を探して購入して家に届くまで、すべてのプロセスにおいて満足度の高いサービスを提供するためには何をすればいいのかを常に考えています。

Yahoo!ショッピングは、ヤフーが提供するプラットフォームに多くのストアが出店する事業モデルですが、単なる場所貸しではありません。品ぞろえが豊富で、良いものが安価に手に入るサービスの充実した場所となるように整備し、多くのユーザーの目に触れるための施策や、ユーザーが求める商品を紹介するレコメンド機能の開発に取り組んでいます。

例えば「超PayPay祭」など、トラフィックが集中する期間限定のキャンペーンでは、その期間に集中する高いトラフィックをさばくシステムの増強やサービスを維持する対応が必要です。これまでの障害や不具合に対応してきた知見を生かしながら、徹底的なシステム改善を図っていく。特にバックエンドの部分において、私たちの技術のベースになっていると思います。

Yahoo!ショッピングは改善に努めながら、同時に「PayPayモール」や「LOHACO」などへの技術提供も行っています。日用品を最短15分で配送する新サービス「Yahoo!マート」では、Yahoo!ショッピングと共通のプラットフォームを使っていますから、これまで培った技術が多大な貢献を果たしています。さらに今後は、Zホールディングスでともにする「ZOZO」や「LINE」とのシステム連携により、さらなるサービスの充実に取り組んでいくつもりです。

石塚さんのトーク中画像
▲ショッピング統括本部 本部長/VPoE 石塚 真二

システム開発案件は年間数千件。モダンな環境で開発案件がさらに殺到

ショッピング事業部内にも、検索、フロントエンド、CRM、データ分析など17のチームがあり、それぞれが分業しつつ連携して仕事を進めています。新機能開発・改修などのシステム開発案件は年間数千件にもおよび、おそらくヤフーの全事業のなかでも最大クラスだと思います。

ほかの事業部との連携も活発です。例えば、商品検索は広告と関連性が高いため、アルゴリズムの開発では広告事業のエンジニアとの協業が欠かせません。マーケティング本部との連携も行っています。

大規模なシステムの刷新にあたっては、ショッピングを含むほかの事業部と協働作業をすることもあります。サービスのリリースはエンジニアだけでできるものではありません。企画職やデザイナーとの協業が不可欠。この三位一体の体制のなかで、何をどう改善していくのかを毎日議論しています。

Yahoo!ショッピングの事業は歴史が長いため、レガシーシステムも少なくありません。以前はシステムの再設計に取り組みたくても、目の前のタスクに追われてなかなか手をつけられませんでした。しかし専任チームを作ったことにより、システムの増強やプログラム言語のリニューアルなどができ、この5~6年でモダン化が一気に進みました。

現在はそのモダン化が完了し、新規開発がよりスムーズに進むようになりました。となると、新たな機能を開発してほしいというニーズがビジネス側から舞い込んでくる。現在は喉から手がでるほどに、一緒に働く仲間を増やしていきたいと思っています。

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重層的かつ幅広い技術力を持つエンジニアが必要

常にダイナミックに変化し続けるシステムなので、エンジニアに課せられる任務はそう簡単なものではありません。例えば、eコマースではコンテンツ表示や検索の機能以外に、商品をカートに入れて決済し、配送のシステムにつなげていくなど、重層的かつ幅が広いサービス開発が必要になります。

eコマースならではの難しさもあります。決済手段ひとつとっても、PayPayで支払ったり、クレジットカードを使ったりとさまざまです。エンジニアにはそうした決済システムの知識も必要になります。

さらに、個人情報保護という観点ではより厳しい制約がありますから、セキュリティ技術の知識も必要になる。しかし、仕事は厳しくとも、さまざまな知識を吸収できるのがショッピング事業の面白さであり、チャレンジしがいのあるところだと思います。

エンジニアが成長するためには、やはり幅広いスキルを身につける必要があると思います。例えば、データベースのスキル、ウェブフロント技術のスキル。バックエンドとフロントエンド両方の開発を経験していれば、それは強みになるでしょう。

一方で、専門的なスキルを深掘りすることも大切です。ゼロイチからの設計が好きな人はアーキテクトとして上流工程の設計を極める道もある。システム運用でSRE(サイト信頼性エンジニア)専門家としてキャリアを歩むという選択もあります。

それだけ多彩な技術ポジションを提供できるのも、ヤフーのショッピング事業ならではです。フロントエンドであればトップページ、検索、カートなどの機能があるし、バックエンドであれば注文、検索、CRMなどの要素技術がある。エンジニアには、できるだけその人のスキルに合った担当を決めるようにしています。

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「空振り三振」はOK。自社サービスならではの厳しさも覚悟して

中途採用で入社してくるエンジニアには、「これまで受託開発メインで仕事をしてきたものの、自社サービスに自分の意思で提案し、開発したかった」という人が多いですね。一方で、自社サービスならではの厳しさもあります。

受託開発であれば、基本的にシステムの納品がゴールですが、自社サービスではシステムリリースは終わりではなく、むしろ始まり。そのサービスを使うユーザーが満足し、売上に反映されることでエンジニアの仕事が評価されるのです。そのサイクルが永遠に続くわけなので、結構きつい面もありますよ(笑)。

ユーザーからの反応はダイレクトに見ることができます。新機能の追加ではA/Bテストをして、ユーザーの反応を定量的に計測します。実際のユーザーからの声も集めて、エンジニアにフィードバックします。顧客ロイヤルティーなどの指標なども使いますね。

もちろん、その数値が低いからといって、エンジニアが責任を問われることはありません。野球でいえば、空振り三振と見逃し三振は全然違う。たとえ失敗するにしても打席に立ってバットは振ってほしい。

野球でもヒットが出るのは、良くて3割。システムリリースでヒットする確率はもっと低いかもしれません。でも、たとえヒットを打てなかったとしても、なぜその結果となったのかがわかれば、次に生かせます。リリース件数が年間数千件ということは、それだけエンジニアが打席に立つ回数が多いともいえるのです。

ユーザーファーストが原点。「サービスななめ会議」での気づきを即実装

最近、社内で「サービスななめ会議」という取り組みが始まりました。「サービスななめ会議」とは、全社員が各サービスに対してユーザー視点で優れた点や改善点を提案し、サービス担当者は改善へ向けて検討し、改善アクションを宣言するというものです。その第一弾がYahoo!ショッピングでした。

この会議では社内から2,000件以上の意見が寄せられ、それを反映した新しい機能もすでに生まれています。例えば、以前はYahoo!ショッピングで商品を購入すると、「このストアからのメールを受け取りますか」というチェックボックスにデフォルトでチェックが入っていました。

この仕様に対し、「メールが多すぎて困る」「いちいちチェックを外すのが面倒」という声がヤフーの社員のなかから寄せられたのです。そこで私たちは思いきって、そのチェックをデフォルトで外すことにしました。「メルマガのデフォルトオプトアウト機能」といいます。ユーザーファーストの観点で大きな改善ができたと感じています。

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さらに「検索のしにくさ」に対しても、多くの意見が寄せられました。そこで、現在はAIを使った強力なアシスト機能の開発を進めています。具体的には、ユーザーが曖昧な言葉で検索しても、AIが「それはこの商品のことですか」「その商品にはいくつかサイズがありますが、このサイズでいかがでしょうか」というように、データを駆使して、最適な商品を提案してくれる機能です。

ひとつのキーワードのクエリに対して、マッチング率が高い結果を返す機能は、どこのECサービスでも当たり前になってきているので、差別化という点でも、より高度なものを提供しなければならない。いずれは「Yahoo!ショッピングは、なぜか自分にぴったりの商品を選んでくれる」という評判を得られるように、絶賛開発中の機能があるので、ぜひ楽しみにしていてください。

膨大なデータをAIで分析して、それをサービス改善に生かすことは、eコマース分野ならではの面白さです。データ分析を基にした改善がスムーズに進むように、ショッピング事業部内にはデータディレクターと呼ばれる役割があります。

データディレクターはデータエンジニアと協働しながら、データの収集・分析環境を提供してくれます。サービスの新機能をリリースしたら、関わりのあるディレクター、デザイナー、エンジニアの誰もが、すぐにその改善効果を知ることができるのです。

私も改善施策の結果を見ては一喜一憂しています。ショッピング事業部にはこうしたデータ分析基盤を運用する専門職種もあるので、データ系のエンジニアにとっても面白い職場だと思います。

豊富なテックリード層。若手の自立・自走を促す成長機会

ショッピング事業部は、ヤフーのなかでも、それぞれの機能に技術的な責任を持つテックリードが一番多い組織。だからこそ、大規模かつスピーディーな機能開発が実現できているのだと思います。若手でも実力があればテックリードになれる風土があります。

昨年度は新入社員研修の一環として、社内で使うコミュニケーションツールの開発を任せてみました。新入社員たちが作ったのは、どんな小さなことでもいいから、自分でやり遂げたタスクや提案を投稿する。すると、誰かが「ありがとう」と書き込んでくれるツールです。

仕様提案からプロト開発、コードレビュー、リリース条件の設定などは、すべてYahoo!ショッピングの機能開発に準じたものです。無事完成したこのツールには、「あざーす」と「SaaS」をかけて「AzaaS」とネーミングされました(笑)。

このツールの開発を通じて、事業部内の新規開発プロセスが体験できるだけでなく、コロナ禍のリモートワークでなかなか顔を合わせられない同期生どうしのコミュニティーもできました。これは一例ですが、ショッピング事業の開発風土はチームワークが良く、若手の成長支援に熱心なことには定評があります。

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他事業とデータ活用を連携してユーザー体験を高めたい

さまざまなECサービスがありますが社内の他事業と連携しながらデータを統合的に活用し、ユーザー体験を高めることができるのはヤフーの強みだと自負しています。

もちろん、このECサービスという世界はどこからゲームチェンジャーになるサービスが登場してくるかわかりません。世界の動向を注視しつつ、最適できめ細かなサービスを追求していくことも必要だと考えています。

どのようなバックグラウンドを持つ人でも、自分のスキルを生かして成長していける環境がヤフーにはある。この環境を最大限活用して、ぜひ開発を楽しんでほしいし、それが楽しいと思えるエンジニアにはとても向いている職場だと思います。

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