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2023.01.23

金融事業のVPoE が語る「PayPay経済圏」のUI/UXの統一化とモダン化の取り組みとは

Zホールディングスグループでは、カード・銀行・保険・投資信託、さらにはスポーツくじに至るまで、「PayPay」を起点としたあらゆる金融事業を展開しています。 この「PayPay経済圏」における幅広いサービスや技術をモダン化し、UI/UXの統一化を図っているのが、金融統括本部のエンジニアとデザイナーたちです。今回は、その取り組みや開発の舞台裏について、VPoEを務める柏木孝映に語ってもらいました。

プロフィール

柏木のプロフィール画像:パソコンを操作しながらカメラを見ている柏木
柏木 孝映(たかあき)
金融統括本部 開発本部 本部長兼VPoE
SI会社を経て2007年にヤフー入社。メディア系サービスなどに従事し2016年から金融系部門に異動。現在はPayPay銀行に出向中

「PayPay経済圏」の金融システムを高いエンジニアリングで支える

ヤフーは社内およびグループ内での各事業間の連携が非常に密接で、それがエンジニアにとっても面白いところです。ただ、そうした事業間の協業が外からは見えにくい面もあります。金融統括本部もその一例かもしれません。

金融統括本部の業務を一言でいえば、PayPay経済圏への金融サービスの提供ですが、金融サービス自体は一つひとつが事業免許を持つ金融子会社が担っています。 具体的にはホールディングス企業の傘下にある、Zフィナンシャルの子会社のPayPay銀行、PayPay保険サービスや、PayPayの子会社であるPayPayカードなどの企業がサービスを提供しているわけです。

柏木の記事中画像1枚目:PayPay経済圏での金融サービス提供について説明している資料画像
例えば、最近PayPayの決済方法に「PayPayあと払い」という新しい方法が加わりました。これは、その都度PayPayにチャージする手間を省くサービスです。PayPayアプリに搭載されているそのシステムをつくっているのが、PayPayカード社から委託を受けているヤフー金融事業本部のエンジニアたちです。 特に顧客向け機能の開発については、要件定義から技術選定、実装、テスト、システム運用まで幅広く携わっています。そういった業務をヤフーのアジャイル開発で実現することにより、よりスピーディーにデプロイできる状態となっているのです。

もう一つの働き方として、PayPayカード社、PayPay銀行社などの金融事業会社に出向して一緒に開発業務を担うというパターンもあります。 金融機関は一般的に基幹系・勘定系といった事業のコアになるシステムを持っていますが、そのシステムがかなりレガシーになっている場合は少なくありません。

そのため、PayPayカード社も基幹系システムをよりモダンにしたいというニーズがあり、その開発を、ヤフーのエンジニアが支援しているのです。 カード業務はコアシステムなので、協働で開発したほうがより品質高く、スピード感を持ってできるため、出向先の開発チームと一体になってシステム開発を行っています。

柏木の記事中画像2枚目
▲金融統括本部 開発本部 本部長兼VPoE 柏木 孝映(たかあき)
QRコード決済システムのPayPayがリリースした際も、ソフトバンクとヤフーの合弁会社としてPayPay株式会社が設立され、ヤフーから多くのエンジニアが出向して事業がスタートしました。

出向というと、ネガティブなイメージがあるかもしれませんが、当社グループではその逆で、グループとしての事業を伸ばすために、意気揚々と手伝いにいくことが当たり前の文化になっています。そうしたグループ内の受託・出向で経験を重ねることで、エンジニアのスキルの幅が次第に広がっていくわけですね。

ちなみにヤフー固有の金融事業としては、サッカーくじの「Yahoo! toto」がありますが、規模はそこまで大きくありません。eコマースの「Yahoo!ショッピング」も決済を必要としますが、あくまでもショッピング事業なので、金融事業ではないのです。

とはいえ、グループのあらゆるサービスにおける金融システムの基盤開発に関わり、新たな金融サービスを実現する変革を起こしてきたことは間違いありません。そうした経験と高い技術力を持っていることが、グループ内から声をかけてもらう背景の一つとなっています。
また、ヤフー社としての金融事業に関わるシステムやサービスもいくつか計画されています。

金融の業務知識以上にスピード開発、技術のモダン化を重視

金融に特化した業務知識には、金融関係の法律や銀行・カード・証券など、それぞれの金融業界独自の商習慣や用語など専門的なものがあります。しかし、それらは実際に金融の仕事をしていけば、自然と身につくものです。

また、金融システムをつくる技術という観点でも、何か特殊なものがあるわけではありません。主な仕事内容としては、要件定義から基本設計、PoC (Proof of Concept:概念実証)に基づいた技術手段の検討、 そのうえでのサービス/プロダクト開発であり、技術もJavaなどを用いたバックエンド開発、Vue.jsなどを用いたフロントエンド開発、AWS環境の構築から保守運用など、ほかのインターネットサービスと根本的に異なるものではないのです。

ただ、金融業界のエンジニアに比べると、ヤフーのエンジニアはインターネットサービスに習熟しており、開発のスピード感やモダンな技術への志向性は強いと思います。そこが金融関連企業からサポートを求められる理由でもあります。

柏木の記事中画像3枚目
一方で、金融関連企業のエンジニアは、業務知識や品質管理、コスト管理などの知識が豊富です。開発体制では、そうしたお互いの得意分野を生かせる役割分担にしています。いわばお互いの“良いとこ取り”をしながら、よりわかりやすく、有意義な金融サービスをグループとして実現しようとしているわけです。

また、インターネットを舞台にした新しいデジタル金融サービスを提供する場合、データ活用も重要になります。ヤフーおよびグループ会社に蓄積されたデータは、きわめて希少価値の高いものです。ヤフー、PayPay、各金融事業会社のデータを組み合わせることで、ユーザーにとっても、より利用価値の高い金融サービスを提供することが可能になります。

データサイエンス活用の例では、ヤフーの金融事業本部とデータサイエンス本部が協力し合い、お客様の与信を正しく把握し、求められている信用を提供するようなモデルの研究も行われています。
当然ながら、顧客のプライバシーには十分な配慮が必要です。それを担保したうえで、お客様のライフプランやマネープラン設計のお手伝いができる総合的なサービスを実現したいと思っています。

日本の金融イメージを変革させるスタート地点にいる

これまでの金融サービスは専門用語ばかりでわかりにくいなど、ちょっとハードルが高い面がありました。そのあたりをどう変えていくのか。デジタルならではの利便性を提供すると同時に、アプリからも簡単に使えるようなUI/UXを常に洗練させていくことも求められます。それを考えるのは、デザイナーだけではなく、エンジニアの使命でもあります。

アプリやウェブフロントエンドのUI/UXを洗練させ、どのサービスを使っていても、共通のユーザー体験が得られるようにすることもその一つ。昔ながらの言語で書かれていた基幹系システムをJavaで刷新し、大胆にクラウドを活用するバックエンドのチャレンジもその一つです。

PayPayのQRコード決済など、私たち金融事業本部の仕事はPayPayを中心としたエコシステムを構築することとも言い換えられます。 銀行、カード、保険などのさまざまな金融サービスを融合させながら、それを一つのPayPayアプリ上で提供するといったサービスはなかなかできない。そうしたPayPay経済圏において、非常に親しみやすいUIとそれを実現するインフラをつくっていくことは、とてもワクワクする仕事だと思っています。

柏木の記事中画像4枚目

金融経験者・未経験者ともに歓迎。手を動かすことが好きな人はさらに成長できる

いま一緒に働きたい人財として、金融システム開発に関わってこられた方でしたら、例えば大手プライムベンダー所属ではなく、その委託先の有識者として直接開発に従事していた人は理想的です。ただ、仕様だけ検討し、実際に手を動かしていなかったという経歴は、残念ながらヤフーには向いていないと思います。

実際、応募される方の志望動機を聞くと、金融システムをつくりたいが、今度は下請けの立場ではなく、金融事業者の側で仕事をしたいという方が多いですね。その思いは大切にしたい。そのような意思があれば、すべての仕事を“自分ごと”として捉えることができるし必ず成長できますから。

ヤフーのサービスであれ、金融事業会社のサービスであれ、その先には膨大なエンドユーザーがいます。そうした多くのユーザーの存在を直接感じながらシステムをつくるという体験は、SIerやそのパートナーという立場では、なかなか感じにくかったかもしれない。ぜひ、これをヤフーで実践してほしいと考えています。

柏木の記事中画像5枚目
一方で、銀行・カード・保険など、これまで金融システムを全く経験したことがない人も全然問題ありません。業界は全然関係なく、手を動かしていた人を優先したいし、どちらかというと金融のシステムをつくっていたというより、エンジニアとしていろんなものをつくってきた。その経験のほうがいろいろ生かせるシーンが多いのではないでしょうか。

実際に現在の金融統括本部のエンジニアは、半数が新卒入社で半数が中途採用です。新卒であればもちろん金融システムの知識がゼロからのスタートですし、中途入社者においても半分が未経験者です。そうした人が戦力の半数を占めているという点から考えても、金融システムの経験は必須ではありません。

私自身、前職は通信系のSIerで、ヤフーに転職してからもしばらくは金融以外の事業を担当してきました。金融システムに関わるようになったのは6〜7年前からで、金融の業務知識を覚えたのもまさにそこからでした。そんな私こそが金融未経験者が活躍している最適の事例といえるかもしません。ぜひ、一緒にエンジニアリングの力で、日本一親しみやすい金融サービスをつくっていきましょう!

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