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2022.04.27

新CTO小久保が描く人財育成論──理想に掲げる「広くて、深い」エンジニア組織とは

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2022年4月より、これまでヤフーのコマースCTOを務めてきた小久保雅彦が、会社全体の技術を統括するヤフーのCTOに就任しました。ヤフーのビジネスを支えるエンジニア組織をどのように強化するのか、どのような人財を育てたいのか、その抱負を語ってもらいました。


小久保のプロフィール画像
ヤフー株式会社 取締役 常務執行役員
CTO(最高技術責任者) 小久保雅彦
1972年生まれ。大学卒業後、SIerでの銀行ネットワーク構築、C++コンパイラ開発、インターネットプロバイダーの認証・課金システムの開発・運用などを経て、2004年ヤフーに入社。ポイント、カード、公金決済システムのほか、法人向け課金プラットフォーム、IDプラットフォームなど主に決済・ID系の開発業務に携わる。2018年にはコマースCTOに就任し、その後執行役員の兼任を経て、2022年4月よりヤフーのCTOに就任。

技術の決定権と結果への責任。その両方でエンジニアは成長する

──まず、小久保さんがこれまでエンジニアとして、どのようなキャリアを歩んできたのかお聞かせください。

私がヤフーに入社したのは2004年です。その前は、SIerを2社経験しています。1社目では金融系や通信系のシステム、2社目ではC++のコンパイラの開発を担当してきました。コンパイラ開発では数十万行ものコードをひたすらデバッグするのは正直つらかったですが、そのおかげでC++の言語仕様をとても深く理解できました。その後、インターネットサービスプロバイダー向けのシステム開発を担当。この時はじめて、インターネット技術に関わりました。

インターネットサービス開発は、OSSの活用など自分自身にとって過去に経験したことのない選択の自由があり、自分次第で開発効率をあげることができたので、そこに面白さを感じました。C++コンパイラよりもっと簡単にシステムの全容を把握することもできました。シンプルな実装でも、インターネットでできることが無限にあるんだなと気づいて、ますますインターネットサービス開発に魅力を感じました。ただ、業務委託という立場から自分の裁量にも制限があって、物足りなさを感じて、ヤフーへの転職を決意しました。

──ヤフーではさまざまな部署を経験されていますね。

はい、入社早々に担当したのは、ポイントサービス(Yahoo!ポイント)の立ち上げ。立ち上げ当初は開発リソースが割りあたっておらず、外部ベンダーと一緒に開発することに。社員は、自分を含めてエンジニア3人だけ。ヤフーの各サービスにつなぎこむのは私たち社員が担当。入社早々で、ヤフーの全体像がまだみえていないなか、ヤフー独自の技術仕様を調べるところからのスタートでした。数年後、内製でシステムリニューアルしましたが、これも結構大変で、、、ですがとても良い経験になりました。

その後も、「Yahoo!ウォレット」や「Yahoo! JAPAN ID」など、決済系やサービス系のプラットフォームを担当することが多かったですね。法人向けの課金プラットフォームを担当した頃から、マネジメントも担当するようになりました。

エンジニアからマネジメントにシフトしていった時期は、どのようにメンバーを導けば良い結果につながるのかと、試行錯誤を重ねました。そうした経験を経て、2018年からはコマース領域のCTOになり、2021年からは執行役員も兼任することになりました。

──開発手法や技術の選択ができる環境で開発したい、という転職時の目標は実現しましたか。

私はサービスそのものを企画するというより、その企画をどう最適・最速で実現するかを考えるタイプのエンジニアでしたが、アーキテクチャや開発の進め方などは自分たちで決めることができました。サービスを迅速に開発することで、ビジネスサイドから感謝されることがうれしく、それがエンジニアとしての充実感につながりました。

ただ、自分の裁量範囲が大きく、技術の決定権も与えられているということは、それだけ責任も大きいということです。決定権と責任はいつもセット。だからこそ、ヤフーのエンジニアは成長できるのだと思います。

小久保さんのトーク中画像
▲取締役 常務執行役員 CTO(最高技術責任者) 小久保 雅彦

システムのモダン化プロジェクトや「PayPay」立ち上げにも関わる

──コマースCTOとしてはどんなことに取り組まれましたか。

コマースCTOになる前年から、これまで20年以上にわたって使われていたヤフーのシステム全体を対象にモダナイゼーションプロジェクトが始まりました。コマース領域で言えば、「Yahoo!ショッピング」「ヤフオク!」「Yahoo!トラベル」やそれらを支える決済プラットフォームのモダナイゼーションです。どのくらいのコストや期間をかけて推進するか、それをCTO(※当時)の藤門さんと一緒に考えました。

2018年の「PayPay」の立ち上げも、大きな経験になりました。リリース当初の「100億円還元キャンペーン」では、予想以上のトラフィックで一時サービスを止めてしまったことがありました。その教訓から、大容量のトラフィックをさばく仕組みづくりはもちろん、それを超えるトラフィックが来た場合にどのような対策をとるか、さらには本番環境での負荷試験において、システム全体で想定通りの動きになっていることを確認する大事さを痛感しました。

また、コマースの超PayPay祭などに代表される「大量トラフィックをいかにさばくか」は、エンジニアの手腕にかかっています。システム全体がダウンして、多くのユーザーが利用できないという事態は避けなければなりません。仮にエラーになってしまった場合でも、そのお客様を迷わせることなく適切に誘導する仕組みも必要です。

その観点や改善が、仕様を知り尽くしたショッピング担当のエンジニアだけに閉じていては万全ではない。そこで負荷試験では、サービスエンジニアだけでなく、プラットフォームエンジニアも参加し、多面的に評価する体制にしました。また、ショッピングの仕様に精通していないテストチームを別に結成し、第三者目線での試験も行いました。そのような結果、新たな気づきを多く得ることができ、客観的なテストの大事さを学びました。

サービスを直接担当するエンジニアとそれを支えるエンジニアが協業したことは、相互理解のいいチャンスになりました。自分の領域だけでなく全体をみることが大切です。そういう意識をもつきっかけにもなったと思います。

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継続的なモダナイゼーションをテーマに、AI・データ活用にも取り組む

──ヤフー全体のCTOとして、技術戦略はどんなことを考えていますか。

エンジニアがサービス開発に専念できる環境をいかに整えるかが重要です。数年かけたシステム全体のモダナイゼーションもそのための施策でした。このプロジェクトはほぼ完了していますが、それですべてが安泰ということではないのです。完了後に何もしなければいずれ技術は陳腐化します。これを防ぐためには継続的なモダナイゼーションが必要ですし、そこで重要なのは効率化だと考えています。

デプロイやテストの自動化など、CI/CD(継続的インテグレーション/継続的デリバリー)を中心とした開発スタイルをより強固にすることで開発生産性を向上させる必要があります。開発だけでなく、オペレーション作業でも、まだまだ自動化できる余地があります。これらを徹底して進めたいと考えています。

もちろんAIやデータ活用を採り入れたサービス開発も重点目標です。まず、データ活用のためのデータ整備を優先的に進めていきます。広告のクリック予測やショッピングにおけるレコメンド技術など、従来の技術を磨きながら、これを一部のサービスではなくすべてのサービスに広げることが課題です。

AI技術については、3段階のレベルがあると思っています。まずはチャレンジ領域で新たなAIの仕組みをつくること、それをできるだけコモディティ化したうえですべてのサービスで使える状態にすること、さらに現場の日常的なオペレーションにおいてこれまで気づけなかったことをAIでできるだけ早く発見し、誰もがデータ活用できる状態にすること。これらを順に進めていきます。

データ活用においては、ユーザーの個人情報保護も重要な課題になってきました。今後、国内の法規制も進むと思いますが、これに柔軟に対応するためには、まずは社内にどんなデータがあるのか、どのように活用しているかを把握し、整備することが欠かせません。この点については、CDO(チーフ・データ・オフィサー)やCISO(チーフ・インフォメーション・セキュリティ・オフィサー)と一緒に考えながら、ヤフーとしての方針がぶれないようにして進めていきたいと思います。

「広くて深い」エンジニア組織が理想

──エンジニア育成における基本方針策定もCTOの重要な役割だと思います。エンジニアが成長できるために、どういう環境をつくりたいと考えていますか。

「良いサービスをたくさん世にだすこと」がやりたいことの根幹です。そのもとでエンジニア一人ひとりが自身の能力を最大限発揮できる環境を提供することが、引き続き重要なテーマになります。

コロナ禍でヤフーは大胆なリモートワーク施策を進めました。エンジニアは東京、名古屋、大阪、福岡に開発拠点がありますが、これまではそれぞれの地域で開発チームをつくることが多かった。しかしいまはオフィスに出勤することも少なく、多くのエンジニアが在宅で仕事をしています。となれば、拠点ごとにチームをつくる必然性もないわけです。大阪の部長が東京のメンバーを率いて、全員がリモートワークで仕事をすることもできます。拠点を越えたコラボレーションが、コロナ禍をきっかけにむしろ容易になってきたのです。

キャリアパスで言えば、一つの部署で技術を積み上げ、特定のスキルのスペシャリストになるという道もあります。また、いろんなサービスを渡り歩いたり、フロントエンドエンジニアからバックエンド、プラットフォームエンジニアなど役割を変えたりしながら、複数の技術や領域にまたがって経験をつみ、成長していくこともできます。

ヤフーには、「ジョブチェン」という社内で新たな経験にチャレンジしたい場合に、その希望を自己申告できる異動制度があります。また、「SWAT」と呼ばれる社内の困りごとを解決するエンジニア組織もあります。このようにエンジニアが新たな経験をつめる仕組みをさらに強化したいと考えています。多くのエンジニアが新たな仕事や変化を享受できるような仕組みにしたい。さまざまな仕事を経験することがエンジニアの成長の鍵になるでしょう。

小久保さんのトーク中画像
一方で、優秀なメンバーに異動されてしまうのは困るという声がまったくないわけではありません。しかし、その人でしかできない属人化された技術があったとしたら、その技術はできるだけ冗長化して誰もができるようにし、その人は別の新たな技術にチャレンジする。そのサイクルをどんどん回していける仕組みづくりが重要になってきます。

もちろんその過程で、自分のスペシャリティーを深く掘り下げることもぜひやっていただきたい。スペシャリストの象徴として「黒帯制度」がヤフーにはあります。これにもぜひ多くの人がチャレンジしてほしいと思います。幅広いスキルをもつ人と、スペシャリストがそれぞれ活躍することで、ヤフーのエンジニア全体でみれば「広くて深い」状態になっている。それが理想です。

トライの数だけ成長できる。新たな仕事や変化を楽しもう

──こうした考え方は、小久保さんご自身の経験にもとづくものでしょうか。

ヤフー入社後、数年に一度くらいの頻度で負荷のかかる仕事を経験させてもらいました。時々波が来るような感じで大きな使命を与えられ、それを乗り越えることで自分が成長できたという実感があります。

一つの仕事を成し遂げてしばらくすると、また新たな課題を与えられる。そのたびに新鮮さもあり、技術に対しても会社に対しても興味をずっともち続けることができました。自分がヤフーで仕事をする価値をそのたびに再発見できる。おそらくそのことが、ヤフーで長く働くことになった要因かもしれません。

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こうした成長機会は特別に私だけに与えられたものではありません。担当サービスや日々の業務から課題をみつけ、それをチャンスと捉えトライする。そのような成長機会はすべてのエンジニアに公平にあります。トライの数だけエンジニアが成長し、それがヤフーの成長につながるのです。

ヤフーを経験したエンジニアは、たとえヤフーを離れることになったとしても市場価値は高いと思います。もちろん、そう簡単にヤフーを辞めてもらっては困るので(笑)、「ヤフーのエンジニアとして成長を実感できて楽しい」という状態を恒常的につくり出すことが、私のCTOとしての最大のミッションだと考えています。

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