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2017.06.12

インターネット広告の未来は僕らが現場で切り拓く! ヤフーのアドテクエンジニア3部長が語る座談会

ヤフーの事業のなかで、コンシューマー事業と並び立つマーケティングソリューション事業。ディスプレイ広告や検索連動型広告を含む、多彩な広告関連サービスを提供しています。そこで重要な役割を果たしているのが、インターネット広告の運用や実際の広告配信にまつわるさまざまな技術とプラットフォームを開発する、アドテクエンジニアたちです。

月間700億ページ・ビューのユーザーに、数千万個の広告を瞬時に検索し、最適かつ高品質な広告をわずか0.2秒で配信する。その驚異的な技術の裏側を支える3人のリードエンジニアがアドテクへの想いを語ります。

広告主のためのプラットフォーム開発。AIを活用して、広告を自動カテゴライズ

──インターネット広告の入稿、管理、出稿といったデータの流れに沿って、皆さんの仕事内容をご紹介ください。

樋口:マーケティングソリューションズカンパニー(以下MSC)開発本部のマーケッタープラットフォーム開発部で部長をしています。広告管理ツールなど、マーケッター向け機能開発に責任を持っています。ここでいうマーケッターというのは、広告主や広告代理店などのことですね。

アドテクというと配信技術にフォーカスされ気味ですが、特に日々の広告運用により効果改善を行う運用型広告においては、広告の運用のしやすさは効果改善に大きく影響するので広告主・代理店などデマンドサイド(注1)に向けた機能開発も重要だと思っていて、今日はその話ができたらと思います。

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▲MSC 開発本部 マーケッターPF開発部 部長 樋口 亮

樋口:ヤフーの各サイトに掲載される広告のデータというのは、まずは私の部に送られてきます。一つは、代理店経由で広告を契約している企業──多くが大企業ですが、そこから入ってくる広告原稿があります。

それ以外にも、中堅中小の企業や個人事業主の方もオンラインサインアップさえすれば、誰もが広告を入稿できるんです。それらの入り口部分を私のところが担当しています。

流れとしては、まずヤフーに広告を打ちたいという人はアカウントの情報を登録いただく。代理店の場合はクライアントの情報を登録する。それから、いくらぐらいの予算でどういう広告をどのぐらいの期間、掲載するのかという設定をしていただく。掲載期間や予算によって出稿量をどう振り分けていくのか。そうした広告戦略に沿って、広告を入稿していただくわけです。

広告の形態もさまざまで、ヤフーも多様な商品(プロダクト)を提供しています。例えば「スポンサードサーチ」というのは、Yahoo! JAPAN上で何かを検索している瞬間、つまりユーザーの関心が高いときに、検索キーワードに関連して表示される広告ですね。

一方、「Yahoo!ディスプレイアドネットワーク(提供終了)」(YDN)というのは、Yahoo!ニュースやヤフオク!などYahoo! JAPANのコンテンツページの他、さまざまな提携サイトのコンテンツページをユーザーが見ているときに表示される広告です。何かを調べたいという顕在化された意識ではなく、むしろユーザーの潜在意識に訴えかける広告といえます。

広告表現も、近年はテキスト、静止画像、アニメーションGIF、あるいはテレビのスポットCMの動画をそのまま掲載するなど多様化していますから、それに応じて入稿データもさまざまです。

この入稿作業や入稿後の管理、広告料金の管理、さらにマーケッターへのレポーティング機能なども含めて、できるだけ管理ツールを使いやすい機能に改善していくというのが、私たちの第一のミッションです。

求められる技術もさまざまです。管理ツールのフロントエンド実装は、大規模なSPA(注2)での開発となります。クライアントサイドのトレンドは移り変わりがとても速いですが、有益な技術は積極的に取り入れています。加えて、ツールの利用者である代理店へヒアリングを行い、UX向上のため日々改善を続けています。

レポーティングについては1日43億の配信ログから素早く抽出するため、ストリーミング・分散集計処理・クエリエンジンといったビッグデータ処理技術が数多く利用されています。システム要件に答えられるよう、先を見越した設備投資や新技術導入を行っていく必要があり、チャレンジしがいのある面白い領域です。

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もう一つ私たちの部署の重要な任務は、広告の審査です。ヤフーでは広告主が登録したキーワード、広告、Webサイトなどについて、広告掲載ガイドラインに沿った審査を実施しています。これは、広告主とインターネットユーザーの両方のニーズを満たす、健全な広告市場を作り出すために必要不可欠なものです。

例えば、ユーザーがそれを見て不快と感じるようなキャッチコピーや画像は審査でチェックされます。一例を挙げれば不必要に女性の肌の露出が多い画像は、たしかにアイキャッチ効果はありますが、広告主の商品とまったく無関係だと判断されれば、審査は通りません

審査の過程では、人の目で見て判断する一方、AI(人工知能)などのテクノロジーも活用しています。幸い、ヤフーの広告は広告主にとってもユーザーにとっても品質が高いという評価を得ていますが、それはこの審査体制がしっかりしているからじゃないかと自負しています。

──AI技術は具体的にどういうふうに使われているのですか。

樋口:画像やテキストを機械学習のモデルを使って大まかに推定した結果を利用しています。1日何千万件という入稿データがあるので、いかにそれを迅速にチェックするかが重要です。

審査結果は3日以内にお返ししますというのがヤフーのポリシーなんですが、いまどき3日はかかりすぎ。動画などはまだ人海戦術となり人の目でチェックしていますが、テキストや静止画のチェックはかなり速くなりました。新しいコンテンツについてもAI技術を活用して審査の効率化を目指しています。

数千万規模の広告を高速検索。自分たちでPDCAを回せる仕事

──樋口さんのところで入稿・審査された広告データは次に佐々木さんの部署に回るわけですね。

佐々木:パブリッシャープラットフォーム開発部の仕事は、一口でいえば、ヤフーに入稿されている膨大な広告の中から、ユーザーにとって最適な広告を提供する、その仕組みを整備することです。テキスト、画像、動画、スマホのアプリ上に掲載する広告など、さまざまなタイプの広告が数千万規模で膨大にストックされているわけですが、それらを瞬時に選択して、決められた枠の中に掲載します。

そこにかかる時間が重要で、現在はユーザーがページを開いてから0.2秒(200ミリ秒)以内に広告を表示するというのがサービスレベル合意書(SLA)で決められているんですが、これを満たし、さらにスピードを高めることに日々、精魂を傾けています。

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▲MSC 開発本部 パブリッシャーPF開発部 部長 佐々木 陽一

ちなみにYahoo! JAPANのトラフィックは月間で700億PV、ユニークブラウザ数だけでも9000万あるわけですね。それをいかにさばくか。さらにユーザーを瞬時に分析して、それにフィットする広告を高速な検索エンジンで探し出し、最も広告効果が高いと考えられる広告をわずか0.2秒で掲載するわけです。まさにデータをいかに扱うかという技術が、私たちのコアテクノロジーになっています。

ただ広告を見ているだけでは、裏側で何が行われているかはなかなかわからないと思うんです。ユーザーからみると適当に出しているだけでしょと思われがちなんですが、そうではない。バックエンドの技術はものすごく緻密になっています。

樋口:サーバーの台数もハンパじゃないですよね。広告部門の物理サーバーだけでも数千台ありますし、さらにその中に仮想サーバーがあるので膨大なインスタンスになる。近年、インターネット広告の伸びはめざましく、入稿量も増える一方ですから、サーバーもどんどん増やしている。私の実感でいうと、この3年でサーバー規模は数十倍になっているんじゃないですか。

佐々木:インフラ専任のエンジニアはいますが、彼らが提供するインフラを選択するのは、僕らプラットフォーム開発部の仕事。どういうサーバー構成、ネットワーク構成がいいかということも、インフラエンジニアと一緒に考えます。

浅野:僕は新卒入社でヤフーに入り、最初はメディア事業にいたんですが、広告部門に移ってまず何に驚いたかというと、そのサーバーの規模ですね。個々のサーバーの数はもちろん、コンポーネントの数も全然違う。コンポーネントの構成図を最初見たとき、吐きそうになったぐらいです(笑)。

ものすごく複雑に絡み合っていて、何がどうなっているのか全くわからなかった。それぞれの機能を必要になったら勉強するという感じで、一つひとつ学んでいきました。いまでも広告システムの全体像を把握するのは大変。日々、どんどん新しくなっていきますから。

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▲MSC 開発本部 SSP(サプライサイド・プラットフォーム)開発部 部長 浅野 俊策

佐々木:逆にいうと、そこがアドテクエンジニアとしては面白いところなんですよね。膨大なトラフィックをさばくための数千ノード以上の大規模システムにおいて、ネットワークやカーネルパラメータのチューニング、リクエスト処理においてもアルゴリズム改善で1ミリ秒の高速化にこだわるチューニングがすごく楽しい。

ウェブのみならずスマホアプリにおいても広告を提供したり、最近は動画広告など見せ方もどんどん進化したりしているため、これらの多くの最新技術にもかかわっていける。ヤフーの広告事業では、エンジニアの存在が極めて重要なんです。エンジニア自身が主体になって、これらを考えながら、常に広告効果の向上を追求している。

その取り組みが、ヤフー全体のビジネスに直接的かつ大きなインパクトを与える。この、ビジネスにダイレクトにつながっている感じ、圧倒的な当事者感がたまらないんですよね。

エンジニアというと、上流に企画する人がいて、企画書通りの実装だけを担当ということが一般には多いと思うんですが、ヤフーのアドテクでは改善のためのPDCAのサイクルをエンジニア自身が回さないといけない。

自分がデータ分析した結果を基に、こういうふうにチューニングしたら、こんな結果になった。だったら次にこういう手を打てばいいんじゃないかと、次から次へと発想が湧いてきます。

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広告主、メディア、ユーザーそれぞれに価値の高い市場を作る

──浅野さんのSSP開発部のミッションを教えてください。

浅野:樋口さんのところは広告主向けのプラットフォームですが、僕のところは反対に、インターネットにメディアをもつ企業向けのプラットフォームです。それをサプライサイド・プラットフォーム(=SSP《注3》)と呼んでいます。

ヤフーのデマンドサイドで入稿された広告は、広告掲載メディアとしてのYahoo! JAPANにメインで配信されるわけですが、入稿された広告をより広くヤフー以外のメディアにも配信できるようにするという取り組みを進めています。

メディア側にとっても、自分のサイトに広告を出稿してもらうならヤフーのプラットフォームを経由して利用したほうが効率的でかつ収益性も高いとなれば、それを積極的に使いたいと思うはずです。ヤフーも含めたWin-Win-Winの構図です。

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まずは、弊社の営業部隊が、御社のメディアにヤフー経由で広告を出してはいかがですかと、営業をかけます。もちろん、それが適切なメディアであるかどうかは事前に審査させてもらっています。その後、そのメディアのどんな面(注4)の、どの枠(注5)に、どんなフォーマットで何本、広告を掲載するかという話を詰めて契約をいただきます。

もちろん広告ならどんなものでも配信するわけではないんです。例えばそのメディアにとって競合他社にあたるような企業の広告は出しません。なぜなら広告をクリックされれば、他のメディアにお客さんが流れていってしまうからですね。

僕らが開発するのは、一言で言えば大量のリクエストをさばく技術。30万qps、つまり秒間30万回のリクエストを200ミリ秒の高速なレスポンスで返していくわけです。佐々木さんのパブリッシャープラットフォームと同じ技術を使うこともあるし、異なる部分もあります。複数の広告プラットフォームからの入札を受け付けるので、そのことを前提とした技術選定になります。

僕らの仕事で忘れてはならないのは、広告を掲載していただいているメディアにどれだけ高い収益性を返せるか、ということです。このメリットを感じていただけないと、別にヤフーのSSPを使わなくたっていいじゃないか、ということになりかねませんから、ここは必死で作り込んでいます。

広告主の立場に立てば、コンバージョン(注6)の少ないメディアに広告が流れても広告効果は上がらず、それが続けば、CPA(顧客獲得単価)が高くなってしまいます。

つまり広告予算の配分バランスが悪くなると、広告主もメディアも共に困るわけです。だから僕らは、パフォーマンスの低い掲載面にはあえて配信を止めることもあります。

一方で、メディア側にこうしたほうがもっと広告効果が高まると思いますよ、とサイトの作り方や掲載面の実装に関して、技術的なアドバイスをすることもあります。メディアの質が高まれば、それだけ高単価で質のよい広告を集めることができるわけですからね。

例えばスマホ向けメディアに、ヤフーがタグを発行するだけで、あとの実装は「メディアさん、よろしく」で終わったのでは、メディア側も大変です。スマホ広告ではどこに気を遣うべきか、どんなふうにデザインを組み立てると高い収益を得られるかということを、担当営業と協力して僕らエンジニアがコンサルティングすることもあるんです。メディア側がより収益性の高いサイトに生まれ変わるためのツールも開発しています。

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佐々木:反対に不適切な実装をしているメディアを、パトロールしてチェックするということもやっていますよね。

浅野:例えばスマホ広告の場合ですが、パトロールしていれば、あるサイトの広告だけが異常なクリック率を示している、というのがわかります。調べてみると、クリック率を稼ぐために、ユーザーがほんの少し広告に触れただけでタップしたものと判定するという、独自の実装をしていたりするんですね。こういうのは止めてくださいと働きかけます。

佐々木:こういう実装を放置していると、結局その広告はコンバージョンには至らないわけですから、広告主のCPA(顧客獲得単価)は悪化し、すごくコストのかかる広告になってしまい、広告主の利益につながらなくなっちゃうですよね。

樋口さんのところでは広告商材の審査をしっかりやって、ヤフーの広告のクオリティーを担保している。浅野さんのところでも、掲載面の質の担保をとても丹念にやっている。このクオリティーの担保ということが、ヤフーの広告のブランド価値につながり、広告主やパートナー企業からの信頼につながっていくと思うんです。

アドテクは人間の深層に届く技術。可能性へのチャレンジを誰も止めない

──先ほど、エンジニアにとってのヤフーでアドテクを開発する面白さについて佐々木さんからいくつか話がありましたが、樋口さんや浅野さんはどうお考えですか。

樋口:アドテクってまだまだ発展途上の技術ですよね。だからこそ、私たちにはやりたいこと、試したいことが無数にある。膨大な実データを使って、新しい技術的なチャレンジを短期間にどんどん繰り返すことができる、そういう環境がヤフーにはあると思います。

誰も、そんなことをやるなと言わない。失敗するなとも言われない。万一、失敗してもその責任は上の人に投げちゃう(笑)。上司も「あ、いいよ、俺が責任とるから」と受け止めてくれる。

インターネット技術はさまざまな領域で日々進化していて、アドテクはいかに人々の深層心理に近づくかを最終的なテーマにしている。そこが僕は好きですね。どんなに追究しても、答えはなかなか見えないけれど、そこが面白い。

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佐々木:アドテクには、人間の潜在的欲求にささる可能性があると僕も思います。


浅野:ヤフーの広告ビジネスは、単に自社のメディアに広告を呼びこんで、その量を極限化していくというだけには終わらないと思うんです。もっと広がりがある。5月に僕らは「Yahoo!アドエクスチェンジ」というサービスをリリースしました。

ヤフー以外のメディア企業にも、積極的にヤフーのSSPのプラットフォームを使ってもらって収益を出していただく。広告主にとってもヤフーのプラットフォームに入稿することが一番効率的だという状態をつくる。そういう市場を形成して、そこで活発な広告の売り買いができるようにしたいですね。

これまでヤフーが提供していたのは、アド・ネットワークの領域でした。今後は「Yahoo!プレミアムDSP」(Yahoo! JAPANのマルチビッグデータとメディアをフル活用することができるDSP(=Demand-Side Platform《注7》)などを通して、プログラマティック(注8)な領域を攻めていくという宣言は以前からしているんですが、それをさらに突き進めようと思います。

そこで果たすエンジニアの役割は極めて重要だし、それにチャレンジすることは、エンジニアにとってもかなり刺激的なんじゃないかなと思いますよ。

佐々木:DSPやSSP、掲載面をもつメディアといった、それぞれの個別領域の企業で専門性を高めるというのも、アドテクエンジニアのキャリアとしては一つの方向性だとは思います。

ただ、ヤフーに来れば、メディアもデマンドサイドもサプライサイドも、全部のフィールドがある。ヤフーのアドテクエンジニアは、こうした総合的な視点からアドテクの未来を見ることができるんじゃないかと思っているんですけれど。

浅野:それと、広告って単に企業の金もうけの手段じゃないかと思う人もいるかもしれないけれど、そうはいっても人間の消費欲望というのは決してなくならないわけですよね。広告を通して消費を促すことは、結局、経済を豊かにすることにつながる。

インターネット広告のプラットフォームを洗練させて、その消費行動やお金の循環がより円滑に進むようになれば、僕は社会全体がハッピーになると思うんです。詭弁でも建前でもなく、本音で僕はそう思っています。

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アドテクの前に広がる壮大な未来。それを切り拓く冒険が始まる

──佐々木さんが先ほどおっしゃった「アドテクの未来」。皆さんはそれぞれどんなイメージをお持ちですか。

佐々木:世の中にさまざまな広告があふれるなか、唯一、インターネット広告だけが個々のユーザーに直接ささる、カスタマイズされ、すなわちパーソナル化された広告を提供できます。それ以外はどうしてもマス広告にならざるをえません。そういうインターネット広告の価値をさらに高めるためには、やはり、これからはAIなんじゃないですか。

例えば、現在は広告のターゲットを設定においても、無数の複雑な組み合わせがある。だから大変なんですよ。そこをいかに自動化していくか。そのためにより高度なAIの導入に注力する方向になっていくことは間違いありません。

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浅野:ヤフーが提供する広告プラットフォームは、広告主にとっては、自動的にお客さんを連れてくる仕組みであってほしいし、消費者にとっては自動的に自分が欲しい商品を紹介してくれる場所であってほしい。これが一つの未来の理想系ですね。

今後、広告にアクセスするデバイスはますます多様化していくでしょう。AmazonのDash Button などはある意味、物理的な形をもった新手の広告とも言えるものです。

eコマースが発展していくと、物理的なボタンを押して買うか、アプリやブラウザ経由でモノを買うか、その区別もどんどん曖昧になっていく。さまざまなデバイスが混在していくだろうと思います。僕らも対応の幅を広げていかなくてはなりません。

佐々木:将来的には、情報コンテンツと広告が同質化する世界になっていくんじゃないかな。

樋口:街を歩いていたら、ウェアラブル端末に「近所のスーパーでまもなく特売が始まりますよ」という案内が届く。SF映画によくある世界だけれど、そういう世界はまもなく実現すると思います。

浅野:端末がウェアラブルになれば、それだけ人間は情報に接する機会が増えるわけですよね。テレビの旅番組とスマホの地図アプリが連動して、地域のお店のマッピング情報を表示するなんてことも可能になりますよ。

これからいろんなメディアがミックスしていって、広告の表現手法もますます多彩になる。エンジニアリングだけでなく、クリエイティブな領域でもまだまだやれることはたくさんある。少なくとも、そこには“先細り感”って全然ないですよね。

樋口:ヤフーって企業文化自体、あんまり冒険しない会社ってイメージがあるかもしれないんですが、実際はそんなことはない。過去には広告表現でとんでもない冒険をして、ユーザーさんに怒られたなんてこともありましたしね(笑)。

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例えば、サーバー仮想化もそうだし、大量データをさばく技術もそうだし、インフラ、設計、チームビルディング、すべて新しい体験でした。その経験からいうと、現時点でのスキルにこだわるのではなく、新たな技術や手法に食いつけること。好奇心をもてること。それが一番ですね。

それと、アドテクは継続的インテグレーション(CI)、継続的デリバリー(CD)の連続作業。リリースしたら、納品したら、とそれで終わりではない。そういうマインドにいかに早く切り替えられるかも大切です。

佐々木:僕も前職はスマホのプラットフォーム開発とか携帯電話用のブラウザ開発。ヤフーに入社するまではアドテクの技術というのは触れた事がなく、早くスキル的にもキャッチアップしなければと思って頑張りましたね。

ヤフーでは「圧倒的当事者意識」というのが発揮しやすいし環境で、それを身に付けたエンジニアが多い。これってエンジニアの本能を刺激するんですよね。自分で見つけた課題だから自分でやりたいじゃないですか。そういうチャンスが作れるし、やらせてくれる。だから、そういう環境を求めている人が来てくれると、すぐにフィットするんじゃないかと思います。

浅野:プラットフォームを開発する仕事は、企業のビジネス全体に与える影響力が絶大です。だからこそ、このビジネスインパクトを楽しめる人がいいと思います。そのためにこそ、変化を恐れるな、ですね。

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―― 注釈 ――
(注1) デマンドサイド
広告枠を買う、広告主・代理店側のこと。

(注2) SPA(Single Page Application)
単一ページで構成されるWebアプリケーション。

(注3) サプライサイドプラットフォーム(SSP=Supply-Side Platform)
広告収益の最大化を目的とした媒体側(広告枠の販売側)の
ツールおよび入札システムのこと。

(注4) 面
広告を配信するページ

(注5)枠
広告を配信する場所(位置)

(注6) コンバージョン
広告のゴール(広告クリック、商品の購入、資料請求など)

(注7) DSP(Demand-Side Platform)
オンライン広告において、広告主側(購入者)の広告効果の最大化を
 支援するツールおよび配信システムのこと。

(注8) プログラマティック
プログラマティック・バイイングの略。データに基づいたリアルタイムな広告枠の自動 買い付けのこと。運用型広告とも呼ばれ、DSPやSSPを活用したRTB(Real Time Bidding) がその代表例である。


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