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2017.05.23

成長したいエンジニアに知ってほしい、マーケティングコンサルタント・広瀬信輔とヤフーMSC開発本部長・小沼剛が語るアドテクの魅力

ヤフーのビジネスの柱の一つに「マーケティングソリューション事業」があります。これは、広告をはじめマーケティングに関わるさまざまなソリューションサービスを提供する事業です。広告市場を支える技術=アドテクノロジーというと、DSPやSSPといったプラットフォームを思い浮かべる方が多いかもしれませんが、技術分野としてはフロントエンドからバックエンド、ビックデータなどのサイエンス領域まで非常に幅広く、常に進化が求められ、ビジネスとしての成長も著しい、とてもエキサイティングな領域なんです。

その面白さを多くのエンジニアに知っていただきたいと考え、今回はこの分野をよく知る、「Digital Marketing Lab」運営者でありマーケティングコンサルタントの広瀬信輔氏とヤフーのマーケティングソリューションズカンパニーで開発部門の責任者をつとめる小沼剛の2人に、アドテクの今と未来への期待を語ってもらいました。(以下、敬称略)

シンプルな目的を達するための長い道のり「アドテクノロジー」

ネット広告はもともとメディアがWebページにバナーをベタ貼りするところから始まり、アドサーバーやネットワーク配信、DSP、RTBなど、広告主や配信元の要望に応える形でさまざまな技術を取り込みながら進化してきました。広告配信の舞台裏はどんどん複雑になってきたわけですが、表側にある目的は常に明快です。

広瀬氏の写真
▲ 株式会社マクロミル マーケティング&プロダクト本部   シニアプロジェクトマネジャー 広瀬 信輔 氏

広瀬「全体像としては非常にシンプルで、広告主とメディアの利益を最適化するという目的のために何が必要か、それを追求して成長してきたのがアドテクノロジーの歴史です。具体的にはCookieを用いた広告ターゲティングやRTB(リアルタイムビッディング)などの入札取引の仕組みといった話になりますが、既存のWebテクノロジーを広告の仕組みに応用したものが多いと思っています」

小沼「情報を届けたい企業がいて、それを受け取るユーザーがいる。広瀬さんがおっしゃったように、機能としてはシンプルなんですよね。そのシンプルな機能に、いつ・誰に・どこでなど、細分化されたニーズが生まれ、それまでできなかったことを技術により実現してきたというのが、アドテクノロジーの変遷だと思っています」

現在ヤフーでは、Yahoo!ディスプレイアドネットワーク(YDN)という広告サービスを提供しています。もともとはアドネットワーク配信が普及した2008年頃に「インタレストマッチ」という名称で、興味関心連動型広告の先駆けとなった商品でした。社内でも一大プロジェクトとして取り組んだものでしたが、プロジェクトの初期ではユーザーや広告主の期待に十分に応えることが難しく、「プロジェクトに関わったほぼ全ての人は広告のプラットフォームをイチから作ることの楽しさと難しさを痛感したと思います(笑)」(小沼)と言います。

小沼の写真
▲ ヤフー株式会社 マーケティングソリューションズカンパニー   開発本部長 小沼 剛

小沼「たとえば優れた広告配信アルゴリズムとひとことで言っても、影響を及ぼす要素はさまざまです。データの処理速度かもしれませんし、それ以外の要素かもしれません。いずれにしてもさまざまな要素が関連しあった結果が最終的な広告のパフォーマンスになるので、継続的な改善がとても重要だと身を持って経験しました」

単に機能を実現することと、1秒間のリクエスト数が30万リクエストにもおよぶ大規模な環境で実現することは、技術的なチャレンジという意味で大きな違いがあります。そこには、ヤフーならではのエンジニアに対する技術的な要求があるのです。

1秒間のリクエスト数が30万リクエストなど、ヤフーのアドテクエンジニアが支える環境を図式化した画像
▲ ヤフーのアドテクエンジニアが支える国内最大級の環境。常に新しいものを取り入れる「技術の総合戦」が求められる(※通期売上高は2015年度マーケティングソリューション事業のみの金額)

「テクノロジー」だけではない、「人」の理解

近年、スマートフォン・タブレットの普及や通信の高速化により、人は時間や場所に制約されずインターネットを使うようになりました。同時に技術面の制約も徐々に取り払われ、動画などのリッチクリエイティブが使われるようになったことで、マーケティングにおける広告の使い方が変化していると言います。

広瀬「従来は比較検討から購入までの部分でPDCAを回し、コンバージョン数やクリック数で成果を判断していました。つまりダイレクトレスポンスの部分をWebが担っていたわけです。それが、動画の登場によってWebでブランディングするという発想が広がり、PDCAを回す範囲を大幅に変える必要が出てきたんです」

動画が広く用いられるようになったことで、Webマーケティングの使われ方に大きな変化が現われたことを表す画像
▲ 動画が広く用いられるようになったことで、Webマーケティングの使われ方に大きな変化が現われた

さらに、今後はビッグデータの活用も大きな変化をもたらすと期待されている他、人の感情反応をクリエイティブ制作に生かす技術、ジオデータやWi-Fiビーコンを使った位置情報との連携など、マーケティングに活用されるデータはさらに増えるでしょう。

小沼「アドの世界はインターネットテクノロジーの最高の実践・応用の場なので、新しく学ぶことには事欠かないですね。フロントエンドはフレームワークのトレンドが激しく変化し、また、さまざまな技術スタックの動向だけでなく、IAB(Interactive Advertising Bureau)に代表される広告取引の標準規格についての動きもプロダクト開発に影響するので、常に考慮する必要があります。今だけを考えるのではなく、先を考えた開発が求められます。そのような環境だからこそエンジニアが成長し続けることができるんだと思います」

変化が著しいビジネス環境であるからこそ、技術スタックや開発手法がモダンであり続ける必要があるというアドテクの世界。広告プロダクトの特徴のひとつは、開発して終わりではなく、その後の継続的な改善が重要であり、アジャイル、スクラムといった開発手法も積極的に取り入れ、「ものづくり全般にわたって磨き込みをしないと良いプロダクトにはならない。逆にそんな欲張りなところが面白い」(小沼)と言います。

一方で、広告事業者としては「人の意図を理解すること」が必要だと言います。たとえば、ビッグデータを活用して配信精度を高めても、それが受け取る側にとって最も価値あることだとは限りません。押し付ければその広告はたとえ価値がある広告だったとしても、ユーザーからは受け入れられない広告になってしまいます。

小沼「ユーザーにとって何が正解なのか、広告を受け取る側の気持ちを忘れてはいけないと思っています。人の意図を理解するための改善は、これからも取り組まないとならない部分ですね」

広告主とメディアのニーズから発展してきたアドテクですが、本来はそれを受け取る側=ユーザーを含めた三者の間に存在するものです。三者のうちの誰もが誰かを必要とする関係であるからこそ、全員が幸せになれる広告システムが理想的と言えます。

広瀬「そのためには開発の力が必要です。広告主とメディアとユーザー、三者の視点を持つエンジニアがいれば、非常に魅力的だと思いますね。ネットで調べるだけでなく、コミュニティーや勉強会に自分で足を運んで情報をキャッチアップし、マーケターやメディアの人と話す中で必要とされるものを知り、アイデアにつなげてほしいですね」

広瀬氏の写真

エンジニアがビジネスを動かす、その醍醐味

2017年、世界の広告市場においてはインターネットが初めてテレビを抜くまでに拡大。高い技術を持ったアドテクのスタートアップも続々と起業しています。日本国内でもネット広告は継続的に成長し、そんな中で今後のさらなる成長のカギを握るひとつが、アドテク領域におけるビッグデータの活用だと言われています。

広瀬「ヤフーは持っているデータの量が多いだけでなく、きちんとアスキングした、質の高いデータであることが強みになりますね。このデータをクリエイティブに活かすのか、ユーザー分析に活かすのか、良い素材がそろっているため、活用先の選択肢が豊富に思えます」

小沼「そうですね。広告もサービスも、データを活用することでさらに良いものができると思いますし、プロダクトの継続的な改善は、最終的にはユーザーにとっても広告主やメディアにとっても、より良いプロダクトにつながると考えています。また言い方はありきたりになりますが、これまでアドテクが技術によりさまざまなニーズを実現してきたように、われわれも解決できなかった課題をデータや技術により解決していきたいと思います。」

そして先の話のとおり、ビジネスニーズに対してエンジニアは常に技術で貢献することでアドの世界を進化させてきました。エンジニアがビジネスに対して技術的な提案をできる、そんなダイレクトなつながりを実感できるのも、アドテクの醍醐味と言えます。

マーケティングとテクノロジー、それぞれの視点からアドテクの広がりや可能性を語っていただきました。アドテクの面白さが少しでも伝わっていればうれしいです。

次回はアドテク領域の現場ではたらくエンジニアに話を聞いてきますので、お楽しみに。

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