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2017.05.01

夢を諦めず、働きながら博士号取得を目指す――ヤフーの社会人ドクター進学支援制度とは

田島の写真

コンピューターやインターネット技術など理系分野の学生の間では、大学院修士課程に進学してから企業に就職するというキャリアは決して珍しくありません。ただ、修士課程修了後の進路については、大学に残り博士課程まで進むか、それともアカデミアの道は諦めて就職するかで迷った経験のある人も多いはず。

そういう経験を持ち、かつ業務経験を通して、あらためてより深い勉強の必要性を考えるようになった社員のためにヤフーが提供するのが「社会人ドクター進学支援制度」です。今回は、Yahoo! JAPAN研究所所長の田島玲にこの制度の趣旨を語ってもらいました。

仕事も学位も諦めない──第三の選択肢

「ヤフーがいる業界の特性として、研究・開発とサービスの現場の距離が近いことが挙げられます。最先端研究の成果が現場にすぐ採り入れられることが多いのです。そのため、高度な学術研究の経験とそこで得たタイトルは大きな意味を持ちます。

ポテンシャル・キャリア採用を問わず、エンジニア採用でも博士号取得者の応募は少なくありません。私が所長を務めるYahoo! JAPAN研究所の研究員も大半が博士号を取得しています。さらに、研究所だけでなく、事業部門の開発の現場でも、先端的な研究開発に従事する社員の中にはいずれは博士号を取りたいというニーズが徐々に増えてきました」

と語るのは、Yahoo! JAPAN研究所所長の田島玲。2015年秋にスタートした「社会人ドクター支援制度」の創案者で、制度設計にもかかわってきました。

田島の写真

「若手のエンジニアには修士課程修了者は多いのですが、なかには就職のために博士号の夢を諦めたという人もいます。そんな人でも、企業の中で数年経験を積むと、現場ならではの課題を背景に自分の研究テーマを深掘りしたくなるもの。

むしろ、修士から博士課程へすんなり進学するよりも、いったん企業で業務を経験してからのほうが、研究テーマがより具体的になるのでよい、という人もいます。そうした人々に、会社を辞めて大学院に戻るのでもなく、博士号を諦めるのでもない、第三の道──業務を続けながら博士号取得を目指すという選択を用意することにしました」

週1日の学習日を保証。学費も全額補助

「社会人ドクター進学支援制度」では、データプラットフォームやサイエンス領域におけるテーマで、社会人向け大学院の博士課程に進学し、最終的には博士号取得を目指す社員を、学費の全面補助(上限年間100万円)や学習日の確保などを通して支援します。

学習日というのは、週1日は会社に出社することなく自宅や大学で勉強できる権利のこと。対象の研究分野は今のところ、自然言語処理、画像処理、音声処理、機械学習、情報検索、レコメンデーション、コンテキストアウエア、HCI(ヒューマン・コンピューター・インタラクション)、大規模分散処理、HPC(ハイ・パフォーマンス・コンピューティング)、仮想化技術、統計モデリング、セマンティックウェブ──の13分野。

国内外の大学などへの社会人留学制度を設ける企業は少なくありませんが、博士号取得を明確に掲げた制度は珍しく、その分、一般的な留学制度よりも審査条件は厳しいものとなります。

「審査では研究テーマと業務との関連性も重視しますが、最も大事なことはその人の覚悟と準備です」と田島は言い切ります。

田島の写真

準備とは、どこの大学、どこの学部、どの先生につくか、どういう条件がそろえば学位を取得できるのか、取得まで何年ぐらいかかりそうか──といった事前調査のことだ。覚悟とは文字通り、勉学を続ける決意のこと。

「博士号を取るのは決して甘くない。3年で取れれば早いほう。終業時間のあとに研究する、土日も研究に充てる、それらを家庭生活と両立させるなど、強いモチベーションがなければとうてい続くものではありません。審査ではその覚悟はあるかどうかをしっかり確認することにしています」

大学院進学後も、さらに半期に一度は、研究の進捗状況を確認する面談の機会が設けられています。

「研究のために業務が滞っては困りますが、むしろ私たちが心配するのは大学院での研究が行き詰まってしまうこと。二足のわらじを履いている間に、部署が変わったり、研究テーマと仕事の内容が違ってしまったりすることもあります。そのあたりはきめ細かく相談に乗りたいと考えています」

所長である田島自身の経験を踏まえて、制度を設計

田島自身が前職の日本アイ・ビー・エム東京基礎研究所時代に、社会人留学制度を利用して東大大学院の博士課程に進み、博士号を取得した経験の持ち主。「学位取得と子どもが生まれたのがほぼ同じ時期。もし子どもがもっと早く生まれていたら、かなり厳しい状況になっていた」と述懐します。

社会人ドクターを応援する制度には、こうした田島自身の経験も反映されているのです。

現状ではこの制度の適用を受け、4人の社員がそれぞれ京都大学、北陸先端科学技術大学院大学、情報セキュリティ大学院大学、お茶の水女子大学の博士課程で学んでいます。

社会人向けコースなので、レポートや論文提出が主で、毎日授業に出る必要はありません。それでも一瞬とも気を緩めることができないチャレンジであることはたしかなのです。

「この制度の目的は、博士号のタイトルを増やすことではありません。単にそれを目的とするなら、学位取得者を採用すればいいだけの話。私たちの仕事では最先端を究めれば究めるほど、博士号を持つにふさわしい人材が必要です。

そうした人々の可能性を広げるための選択肢がどうしても必要でした。意欲と可能性を持つ人たちにとって、ヤフーがより外に開かれ、より恵まれた職場になるためにも、社会人ドクター支援制度は不可欠なオプションだと考えています」

田島の写真

社内公募は半期に一度。2017年4月の受付けが終了したところなので、次のチャンスはこの2017年の10月。

「事業の現場からも、この制度にエントリーする若手エンジニアが次々に生まれること」を田島は期待しています。

次回は、実際にこの制度を利用して博士号取得を目指す一社員の奮闘記を紹介します。

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