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2018.06.05

ヤフーアプリのスマホ決済サービスがリリース!――モバイルペイメントが変えるキャッシュレス社会とは?

全世界で利用が進むモバイルペイメント――ヤフーはこの6月からヤフーアプリにバーコードを使って決済できる機能を追加し、実店舗で利用できるスマホ決済サービスの提供を開始します。
このスマホ決済サービスの狙い、キャッシュレス社会がもたらす変化、それを実現するためのエンジニアの条件などについて、決済金融統括本部の白石陽介が語ります。

POS端末のない小規模店舗でも気軽にスマホ決済

ヤフーはこれまで「ヤフオク!」や「Yahoo!ショッピング」をはじめとした、有料サービスの課金決済に「Yahoo!ウォレット」を活用してきました。
オンライン決済機能はヤフーが提供するサービスから、他事業者のサービスの課金決済に広がったものの、基本的にはインターネット内に留まるもの。それをネットの外のリアル店舗にも広げ、より便利な決済体験をユーザーへ提供することが、今回のスマホ決済サービス開始の狙いです
2018年6月5日から実店舗での利用に順次対応するとともに、それに先立ち、2018年4月からは、払込票に記載されたバーコードを読み取り自宅などで税金や公共料金を支払える「税金・公共料金のスマホ決済」の提供を開始しました。

▲ 税金・公共料金のスマホ決済_読み取り方法

バーコード(1次元バーコード、QRコード)による決済方法には、以下の2通りの方式があります。一つは、ヤフーアプリ上に表示したバーコードを、店舗の端末やレジに提示する「コード支払い」(2018年6月5日より開始)。
もう一つが、店舗に掲示されているバーコードを、ヤフーアプリでスキャンする「読み取り支払い」(2018年秋開始予定)です。

▲ ヤフーアプリ上に表示したバーコードを提示する「コード支払い」イメージ

「コード支払い」は、主に販売時点情報管理(POS)端末を導入している店舗での決済方法。レジでの精算時に、ユーザーがアプリにバーコードを表示し、それを店側が読み取るだけでキャッシュレス決済が完了します。
店側は「コード支払い」に対応させるためにPOS端末を改修する必要がありますが、認証・決済のフローは従来の電子マネーやクレジットカードとほとんど変わりません。

▲「コード支払い」のフロー図

一方、「読み取り支払い」は、中国、インド、東南アジアで普及しているQRコード決済とほぼ同様のもの。精算時に、店がシールやステッカーで掲示している店舗固有のQRコードをユーザーがヤフーアプリで読み取り、購入金額を入力するだけで、決済が完了します。

店側には電子マネーやクレジットカードを読み取る機械や通信回線すら不要。これまで設備負担となるため、クレジットカードの取り扱いをしていなかった小規模店舗でも導入しやすいソリューションになっています。
こうしたスマホ決済は、国内では「Origami Pay」「LINE Pay」「d払い」など先行のサービスがいくつかあります。

「日本のモバイルペイメントはまだまだ発展途上。互いにシェアを奪い合うというより、競合各社との健全な競争が、市場を拡大することにつながると考えています。もちろん約4,000万という口座数を持つ『Yahoo!ウォレット 』のユーザーがすぐにでも使えるサービスですから、加盟店にとってはリアル店舗への集客につながるのではないかと思います

ただ、日本国内でPOS端末を導入している店舗はコンビニエンスストアも含めて100万店もありません。その他は、オンライン化されていないレジスターを使用しています。しかし、『読み取り支払い』では、こうしたお店でも、最先端のスマホ決済サービスが使えるようになるわけで、店舗の活性化を期待する声は高まっています

と語るのは、サービスを担当する決済プロダクション本部長の白石陽介です。

キャッシュレス社会実現に向けて、日本の決済インフラをアップデートする

ユーザーベースが巨大である、ということはモバイルペイメントビジネスが成功する重要な条件です。白石いわく、その発展パターンは二つあるといいます。
「一つはLINEや中国のWeChat(微信)のような有力なメッセージングサービスを背景に、運営企業がペイメント事業に乗り出す例。もう一つは、eBayやアリババといった巨大なeコマースサービスからスピンアウトする形でPayPalやAlipayなどのペイメント事業が生まれたケース。いずれも背景には巨大なユーザーベースの存在があります」(白石)

まさしく今回の「Yahoo!ウォレット」のスマホ決済サービスも、4,000万という口座数、ネット上の決済金額が年間1.4兆円に上る巨大なeコマースの実績を背景にしているだけに、成功への土台はあるといえます。
とはいえ、日本は欧米に比べてクレジットカードの利用率が低いなど、キャッシュレス購買への抵抗感がまだまだあります。その理由には借金を嫌がる国民性が指摘されることがあります。

また、日本では現金が偽造されにくい、ATMが全国津々浦々に展開されている、治安がよいなどの諸条件があって、現金を引き出したり持ち歩いたりすることへの不安や不便さが少ないというのも理由の一つでしょう。

「そもそも、現金経済というのは意外とコストがかかるもの。紙幣や硬貨の製造・運送なども含めてキャッシュを扱うためにかかる維持コストは、年間2兆円にも上るという試算もあるぐらいです。

商品・サービスの購入にあたって、キャッシュレスの割合が増えれば、この維持コストを減らすことができます。さらに支払い行為がデータ化されることで、トレーサビリティも容易になり、結果として国民の所得が明確になって徴税率も高まることになります。
徴税率が高まれば税収が増えます。その分、増税の必要性が減り、国民の資産が増えて、消費に回り、景気が向上するという好循環にもつながります。キャッシュレス経済は国家財政にも寄与するわけです

白石の視線の先は、単にスマホ決済が便利に使われるようになるというだけでなく、日本の経済インフラを大きく変えるところまで見通していました。
こうしたインフラに関わるサービスを実現できる民間企業は、日本に決して多くはありません。ヤフーはその一つ

「当社はUPDATE JAPANというビジョンを掲げていますが、日本の決済インフラをアップデートするのもその一環。モバイルペイメントはわれわれが取り組むべきテーマとしてはまさに打ってつけだったのです」

自分たちが作ったシステムを誰もが普通に使う環境

今後は、コンビニエンスストア、総合スーパーなどの企業はもとより、街中の個人店も含めて、スマホ決済に対応した店の数を増やしていく必要があります。

「日常的に使う店で、普通にスマホ決済ができる世界にしたいと思っています。日本人のショッピング習慣をガラッと変えていくというぐらいの決意で、この事業には臨んでいます

加盟店営業のチームを増強するとともに、エンジニアチームの強化も焦眉の課題です。

「現在、『Yahoo!ウォレット』のトランザクションは年間1.4兆円に上りますから、数秒間システムがダウンしただけで、毀損は莫大な額になってしまいます。絶対にシステムダウンを許さない技術力を身につけようというエンジニアには挑戦しがいのある職場だと思います。自分たちが作ったシステムがスケールして、最終的に誰もが毎日使う欠かせないサービスになる。そういう可能性に挑戦しない手はありません

「もちろん、ヤフーの電子マネー事業は資金決済法で規制されている業種ですから、サービスの実装は、監査要件や権限管理等はもちろんですが、UXに関わる部分まで法律が関わってきます。
“こちらのUIのほうがCVRはアップする”と思っても、数字がよいからという理由だけでは判断はできません」
しかし、白石はその制約さえ楽しんでいます。「制約のあるなかで、ベストプラクティスを見いだしていくというのは、エンジニアにとって面白い仕事」なのだそうです。
これまでeコマースで経験してきたノウハウは、もちろんスマホ決済にも生かされるはずです。ただ、スマホ決済は決済と商品の引き渡しが店頭で瞬時に完結してしまうため、eコマースにはないリスクもあります。
「万一、不正と思われる取り引きを検知した場合、eコマースでは商品の発送を止めるという形で被害を未然に防ぐことができますが、スマホ決済ではそれが困難。だからこそ、極力リスクを排除する安全性を確保するための技術を、私たちももっと磨かなければなりません」

「データの会社」になることを標榜しているヤフー。「Yahoo!ウォレット」のスマホ決済機能は、今後、ヤフーの他のサービスとも連携していくことになります。
そして、トランザクション・データをトレースすることで得られる知見は、これからのヤフーの各サービスにも重要な資産として活用されていくことでしょう。

「ヤフーだけでなく、ソフトバンクグループ全体で考えると、認証・決済が必要となるサービスは無数にあります。認証技術も、QRコードだけでなく、今後は顔や指紋も使われるようになるでしょう。例えば、海水浴を楽しんでいるとき、現金の入ったお財布って持ち歩きにくくないですか?手元にスマートフォンがあれば、そんな不便は一挙に解消です」

サービスの近未来のシーンを創る白石。1,000年以上も続いた貨幣流通の仕組みを新しいテクノロジーで刷新していく、大きなチャンスがいま到来していることを実感しているようです。

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