Hack Dayは24時間でアプリやIoTハードウエアなどの「動くプロトタイプ」を開発、90秒間でプロトタイプのプレゼンテーションを実施し、デモ展示を行います。今年もたった24時間で作られたとは思えない素晴らしい作品が発表されました。ハッカソン会場での開発の様子や受賞作品をご紹介します!
10年間新しい挑戦を続けてきたHack Day
もともとはアメリカのYahoo! Inc.で行われていたエンジニア向けのイベントを日本でもやってみようと、社員の有志が集まり、ヤフー社内のイベントとして始めたのがきっかけでスタートしたHack Day。一般の方も出場できる「Open Hack Day」や、大学で開催される「Hack U」など、形を変えながら進化を遂げてきました。
ヤフーのものづくりに挑戦する文化をまさにイベント化したHack Dayは、毎回必ず新しいチャレンジを重ね、けっして前回と同じ内容のイベントにならないよう妥協せず続けてきました。
2012年に「Open Hack Day」として社外の方も参加できるようになってからは正式に会社のプロジェクトとして認められるようになり、外部からの出場者も年々増加し、今年は80チーム320名のプログラマーを中心としたクリエイターが出場しました。

24時間勝負の開発、90秒間のプレゼン
Hack Dayでのプロトタイプ開発に与えられる時間は24時間。テーマはなんでもありのフリーテーマなので、アイデアを自由にカタチにできます。作ったプロトタイプは90秒間でプレゼンテーションを行い、優秀な作品には豪華な賞品が贈られます。
審査基準は以下の通り。
- Fun:プロダクトが楽しいか
- Tech:技術力が優れているか
- Hack:他の人が思いつかない用途開拓や応用力に優れているか
今回は「Hack Day 2017 学生部門」として 2016年9月~12月に開催された 「Hack U 2016」の決勝大会も同時に実施。小学生から大学院生まで全国の学生283名73チームが挑んだ予選を勝ち抜いてきた14チームが学生王座を競いました。
1日目。ハッカソン開始直前、会場の雰囲気はこんなかんじ。

第1回から運営に携わっているHack Dayサービスマネージャーの武居の掛け声により、Hack Day 24時間プロトタイプ開発がスタート!

ここから24時間ぶっ通しで開発が行われます。カメラを向けると、皆さん元気なピースサインを送ってくれました。 最年少の小学生チームや女性チームも笑顔でハッカソン開始!

最新テクノロジーを使った体験型アトラクション
今回の Hack Day には、一般来場者向けに超・感覚テクノロジーを体験できるアトラクションも用意されました。


24時間ハッカソン締め切り前の様子は?
2日目。ハッカソン終了前の会場にもお邪魔してみました。開発に使われたさまざまな材料や道具が机や通路にところ狭しと散乱し、修羅場を感じさせます。

真剣にはんだごてに取り組む人や、ビールサーバーやハンガー、カーテンなどを使って作品を創作している人も。ギリギリまで開発に没頭しています。

会場を移して、90秒間のプレゼンテーションタイム
24時間ハッカソンの後はステージ会場に移り、1チーム90秒という短い時間で作品のプレゼンテーションを行います。

司会進行は山下まみさん(所属:青二プロダクション)と、技術の解説を担当するヤフー加藤佑典が担当。イベントの様子は、ニコニコ生放送とYouTubeの公式アカウントから生中継され、会場でニコニコ生放送ユーザーのコメントが画面に流れることで、ネットとリアルを越えた一体感が生まれていました。

完成したモノはどの作品も24時間で作り上げたとは思えないほど完成度が高く、楽しい作品ばかりでした。そのなかから、いくつかご紹介します。
社会問題化する長時間労働をなんとかしようと考えた「偽装社畜」。ロボットが代わりに仕事をしてくれたり、居眠り対策などをハックしたりしています。

振ると欲しいものが届く現代の打ち出の小槌「amason kozchi」。強く振ると高いものを購入します(ただし、クレジットカードで)。

三重県から初めての新幹線に乗ってやってきたのは、小学生 from PCN 三重チーム!初めて会う子とも仲良くなれる「ハッピーすごろく」を堂々とプレゼンしました。

参加者の中にはヤフー社員もちらほら。仕事とはまったく関係なく、チームを組んで参加しているそうです。

90秒では語りきれなかった開発の苦労話やデモなどは、再びハッカソン展示会場で。審査員の村上や藤門らが作品を見てまわる姿も見かけられました。

── そして、いよいよ審査結果の発表です!
学生部門 最優秀賞は、温度で服を選んでくれる「Tokichiro」
学生部門 最優秀賞を受賞したのは、UEC InSillico チームの「Tokichiro」。プレゼンターは審査委員長の村上臣が務めました。副賞は無重力ツアー!

「Tokichiro」は保熱性を自動計測して、今日のオススメ服を教えてくれるIoTハンガー。かわいいサルのイラストは、メンバーの友人がこの日のために描いてくれたのだとか。

村上は最優秀賞の選考理由を以下のように述べました。
「モノとネットサービスを融合したIoT的な作品が時流をとらえていました。天気に応じて動く作品はハッカソンでもよく見ますが、ヒーターと反射率を分析して服の保温性まで選んでくれるところはとても新しく、そこまでこだわって作った点を審査員一同が大変評価しました」
チームメンバーは作品の出来栄えを「安定性と実用的なところが少し足りないので70点」と謙遜しつつ、「いろんなハッカソンで経験した課題をつぶしていった結果が出てうれしい」とコメント。
ぎりぎりの土壇場でモーターが回ったときの喜びや、時間制限の厳しさについて振り返りながら、「これからも新しいものを作りたい。人の意見を気にするんじゃなくて自分の作りたいものを作っていきたい」と、抱負を語りました。

最優秀賞はLEGOで作るVR迷路ゲーム「まよいの墓」
最優秀賞を受賞したのは、チーム名「アルカナラボ」が作ったVR迷路ゲーム。
レゴブロックで作った迷路をカメラで画像認識してコースを作成するのですが、なんとゲーム中にタブレットでいたずらをしてコースを変えることができるというもの。副賞にはポリゴンローズトロフィーとシリコンバレーツアーが贈られました。

審査員長の村上は、「VRゲームは周りの人は見ているだけでつまらないという孤独な部分があるが、外からちょっかいを出せるようにしたのは新しい。誰でも使えるものでコースを作ったという点や、24時間でそれをすべて作り切った総合力が最優秀賞にふさわしいと評価しました」と選考理由を発表。
さらに、レゴブロックを動かしてリアルタイムにちょっかいが出せるようにしてほしいと、継続開発への期待を述べました。

アルカナラボチームはWeb制作会社の同僚で、Hack Dayには前々回から参加していて、今回で3回目の参加。技術力の高い人たちが集まっている中で優勝できてうれしいとコメントしました。
「本当は村上さんも言われた通り、レゴを動かしていたずらできるようにしたかったのですが、影やテカりなどの問題で24時間以内に収まりきれませんでした。これからも少しずつ進化させて、会社のエントランススペースに置いて楽しんでもらえるようにしたいと思います」と喜びを語りました。

優秀賞・Hack賞・Tech賞・Fun賞
【 優秀賞 ①】チーム名:むっちり 作品名:「いらすとか」
優秀賞一作品目は、イラスト化Webサービス「いらすとか」。文章を解析して、1枚のいらすとやさんのイラストにまとめてくれるWebサービスです。
選考理由は、「単純なテクノロジーの組み合わせでしっかりしたサービスになることが証明された」とのこと。あらためて、いらすとやさんがたくさんのイラストを描いていることも証明された作品でした。

【 優秀賞 ②】チーム名:けんけんぱ 作品名:「ファンさん」
優秀賞二作品目は、感情表現する扇風機「ファンさん」。見せたものに反応して、感情表現する扇風機がかわいいと評判になりました。

選考理由は、「動くところを工夫するとかわいくなるという目の付け所がよかった」からだそう。

【 優秀賞 ③】チーム名:YAY2017 作品名:「VibRouter」
優秀賞三作品目は、 ナビゲーションアプリ「VibRouter」。画面を見ずに振動のみで目的地へ誘導してくれるアプリです。

「アプリ一つで全て表現した完成度の高さ」が評価され、見事優秀賞を受賞しました。

【Fun賞】チーム名:Team OBCN 作品名:「Recipe Mixer」
Fun賞は複数レシピを同時進行で知らせてくれる調理手順ガイドBot「Recipe Mixer」。料理一つ一つのレシピはあっても、複数のレシピを一度に作る時の手順を教えてくれるレシピはない。マルチタスクを並列にシングルタスクに落としこんだその発想が評価されました。

クリエイティブ-Board 宇野も「純粋に今日から使いたいと思った」と絶賛!

【Tech賞】チーム名:UinProducts 作品名:「Magic Window」
Tech賞は、パソコン画面内に両手が入るような没入感が味わえるVRコントローラー「Magic Window」。

ヤフーCTOの藤門も、Leap Motionというワンデバイスのセンサーだけで、バーチャルリアリティの物体操作まで24時間で作り上げた実装力、完成度の高さを褒めたたえました。

【Hack賞】チーム名:genpei 作品名:「HACKFON」
Hack賞はアナログ電話のダイヤルボタンでEC注文できる「HACKFON」。

「アナログ電話をインターネットにつなぐという発想はありそうでなかった」と選考理由を語るCTO-Boardの小久保。「明日から世の中に出てきそうなものが見られて楽しかった」と語りました。

好きなものをとことん作ってみたい人に活用してほしい
最後に、村上から総評のコメントがありました。
「Hack Dayは社内の有志でやっていたイベントからオープンなイベントになり、今年でちょうど10周年を迎えました。皆さんの顔がとても楽しそうで、また、受賞者の方々が喜んでいる顔を見ると本当にやってよかったと思います。
Hack Dayは、仕事でプログラミングをしている人もやったことがない人も、自分の好きなものをとことん作ってみたいという共通の想いで集まるイベント。好奇心を24時間で必ず動く形にするのは、非常にチャレンジングで面白いことです。
さらに壇上で発表するというのは非常に緊張もしますが、フィードバックが会場やネットでもらえる貴重な機会。今後もこういった機会を楽しみながら活用してもらえるとうれしいです。来年もお会いしましょう!」

3月20日 に「Hack Day Exhibition 2017」を開催
3月20日に、見て・触れて・語って楽しめるインタラクション展「Hack Day Exhibition 2017」を開催します。
「Hack Day 2017」で創作・発表された作品のうち、特に人気の高かった作品に贈られる「Happy Hacking賞」の発表・授賞式も行われます。
「90秒では語りきれなかったアツい想い!」「作品についてのこだわり!」「Hack Dayで起きたトラブル・珍事件」などが語られるLTも行われますので、興味のある方はぜひチェックしてみてください!