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2019.03.28

ヤフーCTO藤門、Advent Calendar 「Best Author」に肉ランチで表彰!

Web業界ではもはや冬の風物詩となっている「Advent Calendar」。ヤフーでは今回、「若手クリエイターが注目する技術やデザイン」をテーマに、さまざまな領域で活躍するエンジニアやデザイナーが、それぞれの仕事や取り組みについてYahoo! JAPAN Tech Blogで発信する「U-30 Yahoo! JAPAN Tech Advent Calendar 2018」を開催しました。

なかでも社内外からの反響や評価が高かった記事の執筆者をCTOの藤門千明が「Best Author」として選び、ランチでお肉をごちそうするというイベントを2年前から行っています。

2018年は27本の記事が公開され、2名のエンジニアがBest Authorを受賞しました。さて、2月に都内某所で開催された栄えある「肉ランチ」。どんな話題が飛び出したのでしょうか。

「Yahoo! JAPAN Tech Advent Calendar」Best Author

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▲システム統括本部言語サポートチーム 栗山太希

Node.jsのエキスパートで第8代目黒帯。社内チャットシステムの運用のほか、Node.jsシステムの修整やシステムの高速化に従事。

今回の受賞対象記事は「ありがとう、MYM 安らかに眠れ」(2018年12月2日公開)。同期と共に栗山が2011年のHack Dayで開発したチャットシステム「MYM」は、2018年のSlackの全社導入までの間、多数の社員が日常的に利用するコミュニケーションツールとしての役割を担った。そこに実装された様々な技術を、開発の苦しさ、面白さとともつづってくれました。

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▲データ&サイエンスソリューション統括本部データフローチーム 寺田晃太朗

サービス間のデータ連係の効率化に取り組む。

受賞対象記事は「量子アニーリングがチョットワカルようになる記事」(12月15日公開)。業務とは直接関係ないものの、最近注目しているテクノロジーとして量子アニーリングを選び、その原理を白猫にも黒猫にもなれる不思議な猫の性質を使って解説するという意欲作。実際にアニーリングシミュレーターでプログラミングする様子や、最新の技術動向にも触れています。

紀尾井町の「ノマドグリル・ラウンジ」で表彰ランチ

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「あらためてBest Author受賞、おめでとうございます!」

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「ありがとうございます」

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「今日は僕とランチしながら、気軽にいろいろお話しましょう!」

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▲紀尾井町の「ノマドグリル・ラウンジ」を会場に、メイン料理は、黒毛和牛とアンガスビーフを掛け合わせた島根県産の大国牛のステーキ。支払いは藤門のポケットマネーで。
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「お二人の記事をまず総評しましょうね。栗山さんの『ありがとう、MYM 安らかに眠れ』には正直感動しました。どんなサービスも愛情込めてモノを作ることが大切だけど、開発は楽なことばかりではない。困難な課題を技術で乗り越えるストーリーにウルっとしてしまった。

それと、僕らは今年(2018年)からSlackに乗り換える選択をしたけど、なぜMYMがこんなにまで社内で愛用されてきたのかをあらためて振り返るよい機会になりました。今後のプロダクト開発の参考になります。

もちろん授賞にあたっては『はてブ』の数やPVなどの数字も受賞の参考にしました。ほんとは1つに絞りたかったのだけれど、寺田さんの『量子アニーリングがチョットワカルようになる記事』を読んで、これほんとに2018年新卒の社員が書いたの?!とびっくりした。技術的にすごい面白い論文になっているし、『チョットワカル』というタイトルづけもうまい。

エンジニアにとって『チョットワカル』というのは、本当にその技術を極め、その製品を自分でもイチから作れるような人しか使えない言葉。Linux開発者のリーナス・トーバルズが『ワタシハ リナックス チョットデキル』と日本語・英語でプリントしたTシャツを着ていて、それで知られるようになった。

だから寺田さんの記事は『これはヤバイ、読まなくちゃ』と思わされたんじゃないかな、みんな。最後まで読むと、『量子アニーリングを使って解けなかった問題を解けるようになったら、ちょっとわかるようになるよ』と書いてあって、タイトルの意味が腑に落ちるようになっている。文才を感じましたね。

結局、二つとも甲乙つけがたくて、両名授賞ということになりました。寺田さんは量子アニーリングの説明でネコを使っているけど、僕は真っ先に『シュレディンガーの猫』を思い出しました」

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▲ ヤフー株式会社 常務執行役員CTO  藤門千明
筑波大学大学院を卒業後、2005年にヤフー入社。エンジニアとしてYahoo! JAPAN IDやYahoo!ショッピング、ヤフオク!の決済システム構築などに関わる。決済金融部門のテクニカルディレクターやYahoo! JAPANを支えるプラットフォームの責任者を経て、2015年にCTOに就任。2018年より現職。
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「エンジニアはみんなネコ大好きだから、つかみとしては正解でしたね(笑)」

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「ネコを使うと物理に詳しい人に突っ込まれるかなと心配したんですけど……。まだ新卒1年目なので、業務で関わる技術についてはあまり詳しく書けることがない。そこで大学院時代にちょっとかじった量子アニーリングについてなら書けるかなと。

量子コンピューターもいろいろあって、なかでも量子アニーリングは実用化の一歩手前。そのすごさはよく語られていますが、原理的にわかりやすく説明している記事はさほど多くはない。僕にとってもチャレンジではありました」

社内チャットシステムの、愛情溢れる開発・運用史

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「栗山さんの記事には、MYMへの思いがあふれていましたね」

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「MYMにはこの8年間で計15万以上ものチャットルームができています。記事ではそのほんの一部を紹介したんですが、例えば子育て中のパパとママが子育ての悩みなどを語り合う『パパママサポート』。

社内のコミュニティーでそういった部屋が自然発生的に生まれるのは、規模が大きくダイバーシティに溢れるヤフーらしいと思って紹介しました。そうしたコミュニティーの広がりを支えるツールだったということをちゃんと記録しておきたくて」

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「そうしたコミュニティー基盤を自社開発してきたということは特筆すべきだね。しかもたった2人で?」

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「そうなんです、最初から開発は2人だけ。そこでの開発・運用のノウハウは、たとえSlackに移行したとしても参考になるはず。だからこそ書き残す必要がありました」

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「MYMは、2011年のHackDayで発表されたのが最初で、Node.jsで書かれています。まだ社内では実装実績がなかった頃だった。MYMを見て、サーバーサイドのJavaScriptでアプリ作れるんだと感心した。WebSocketについてもサンプルはあったけど、何千人、何万人のトラフィックをホストできることを社内で実証したのは、MYMが初めてでした」

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「今後、Node.jsはどんな使われ方をしていくと思いますか」

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「もともとインタラクティブなWebサービスには向いている技術。 NetflixやTwitterなどの大規模なサービスでも活用できることはすでに実証されている。今後、利用範囲は広がると思いますね」

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未来には何を始めるかわからない会社

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「2018年入社だから、入社前後の意識の違いをまだ覚えていると思うんだけど、ヤフーに入る前と入ってからって、何かギャップってありました?」

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「入社前はヤフーという大きい会社の中で、自分をどう生かせるのかわからなかったんですが、1年目でも力を発揮できているという実感があります。いま配属されているのは人数が少ないチームということもあり、自分の意見やアイデアがプロダクトに反映される。これは予想以上でした。

とはいえ、CTOとしょっちゅうコミュニケーションが取れる機会は少ないので、今日お会いすることができてうれしいです」

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「自分が入社した時もトップと気軽に会えていたわけではなかったけど、たまにそういう機会があると、フランクに突っ込んでも叱られないというのはあったかな。これは風土かもしれないね。

当時は四半期ごとに社員大会があって、当時の井上雅博社長が向こうから『おっ、君らは新卒か』と近寄ってきた。ガクブルしながら、僕も一生懸命話したのを思い出します(笑)」

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「そういえば、この前、藤門さんのTwitterをフォローしたら、すぐにフォロー返しをしてくれたのが、意外でした」

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「プロフィールを見たら、今後何か情報を得られそうだったから。僕は気軽にフォロー返ししますよ(笑)。

入社前に聞いていた話が入社したら違っていたということは、インターネットビジネスの企業ではよくあること。それだけ技術やサービスの変化が激しいし、事業の進化スピードがめちゃくちゃ速い。

僕も入社前に「Yahoo!知恵袋」のようなQ&Aサービスがこれから伸びると聞いて、それをやるのかなと思っていたけど、入社したらもう時代はSNSに変わっていて、全然別の仕事になった。

PayPayのようなサービスをヤフーが立ち上げるなんて、1年前は社内のほとんどの人が想像もできていなかったし、自信もなかった。未来は何が起こるかわからない、と思っていたほうがいいよね」

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Node.js、量子アニーリングの勉強会を盛り上げたい

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「二人はこれからヤフーで何をやってみたいですか?」

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「社内でNode.jsを使う人が増えてきたので、2年前からNode.jsの勉強会やハンズオンを開いています。それを通して人に教えることの面白さや気持ちよさに開眼しました(笑)。技術を吸収したり、サービスを開発したりするのも楽しいけど、人に教えて、感謝されるのはもっと楽しい。だから人に教えるスキルをもっと伸ばしていきたいですね」

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「たしかにエンジニアって、人に感謝されるとテンション上がるよね。ただ、アウトプットしないと、次のインプットがはいって来ないということもある。人に正しくわかりやすく説明するスキルがないと、アーキテクトにはなれないということも事実」

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「教えることによって、自分の中で腑に落ちるということは、よくありますね。ハンズオンでも参加者からの質問が刺激になります」

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「普段から自分の仕事には関係なくても、面白い技術は追いかけています。例えば、FPGAとか。藤門さんも以前言っていましたが、マイクロソフトのBingの検索エンジンがFPGAでカスタマイズされている話や、ハードウエアを使ってソフトウエアではできなかった課題解決をしようというアプローチ。そういうのをやってみたいという野望があります」

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「それと今回の記事の反響が予想外に大きかったので、社内向けに量子アニーリングの勉強会を開いてみたい。業務上では、サービス間のデータフローをWeb UI上で自由に設計できるApache NiFiというOSSのプロダクトを使っていて、それを社内向けに改修することなどもやっています。ゆくゆくはそのOSSのコミッターにもなりたいと思っています」

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「ヤフーがこれからサービスに量子アニーリングを活用するということも、ありえない話ではないですからね。勉強会には期待しています」

朝5時半起床。娘の保育園送り迎えもするCTO

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「今日は細かい話でも、なんでも聞いてほしいという会なんだけど、何か質問ありますか?」

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「この前、Yahoo! JAPAN Tech Conferenceのキーノート・スピーチを聞いて感動したんですけれど、あれってカンペがあったりするんですか?」

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「そんなことはないよ。ただ人前でアドリブを交えて伝える力がないと、聞いている人もスマホをいじりだすとか、エンジニアの世界は厳しいから(笑)。9年ぐらい前から意識的にアウトプットのスキルを磨くようになった。勉強会に一人で行って必ず質問してくるとか、朝礼で話すとか、場数を重ねています」

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「CTOになってからは、経営層を説得することも増えたと思いますが、技術的な面の説得はどう工夫しているのでしょうか」

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「エンジニアとしての直感や論理的な判断はあっても、その場ですぐには意見したりはしないですね。経営者には経営者の勘みたいなことがあるから、その判断の背景を探ることが大切だと思う。

CTOは技術のことだけを考えていればいいと思われがちだけど、ビジネスとなるとそれだけでは済まない。事業展開のスピードとかタイミングとかがあるから。まずはその人にはどういう言葉を使ったら伝わるかを考え、一呼吸置いてから、意見するようにしています」

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「唐突ですけれど、藤門さんって、普段はどういう生活をしているんですか。仕事と家庭のバランスとか?」

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「起床は5時半。朝食の後は、娘を保育園に送ってから出勤しています。週に2回は僕がお迎え担当。その当番の時は夕方5時に退社して、6時半に娘を迎えに行っています。休日も朝から娘と遊び回ってます」

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「藤門さんって、めちゃくちゃ家庭的なCTOなんですね!!」

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「その分、無駄な会議をやらないよう徹底しています。エンジニアって、そもそも会議が嫌いな人って多いんじゃないかな(笑)」

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おいしい大国牛のランチはまだまだ続き、藤門さんの知られざる側面に、二人のエンジニアも感動しきり。普段はゆっくり話す機会のないCTOと若手社員。ヤフーの開発現場について、注目の技術について、エンジニアとしての未来などについて、話題が尽きることはありませんでした。

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