ヤフー株式会社は、2023年10月1日にLINEヤフー株式会社になりました。LINEヤフー株式会社のコーポレートサイトはこちらです。
当ページに記載されている情報は、2023年9月30日時点の情報です。

企業情報

2023.06.20

【風と私】「子どもがあこがれるスポーツに」フリースタイルフットボーラーの吉田伊吹さん

画像

サッカーの基本技術であるリフティングをはじめ、テクニックによってボールをコントロールし、パフォーマンスを披露する競技、フリースタイルフットボール。サッカーボールを使ってリフティングやドリブルの技術を発展させた「カルチャー」ともいわれているそうです。
フリースタイルフットボールに高校生のときに出会ってからのめり込み、すぐに結果を残し、現在もプロのフリースタイルフットボーラーとして活動している吉田伊吹さんに、これまでの取り組みや集中してステージに立つノウハウについてうかがいました。

吉田 伊吹さん(よしだ いぶき)さん
プロフリースタイルフットボーラー。1996年生まれ、兵庫県出身。2012年から競技をスタートし、2015年にG-STYLE FOOTBALLで優勝し、日本一に。その後、2019年にアジア大会のAsian Pacific Freestyle Football Championships優勝など、国内外で数多くのタイトルを獲得。2020年、世界連盟WFFA公式ワールドランキング ランク2位(歴代日本人最高位)。現日本・アジア王者。

好きな風のシチュエーションは?
僕の好きな風は、秋の木枯らしのような、少し冷たく季節の変わり目を感じる風です。大会やイベントなどは、春や夏に開催されることが多いので、それらが一段落した11月ぐらい、そのシーズンを振り返り始めるタイミングに吹く風が印象に残ります。
日本の四季を感じながら散歩中に浴びるそよ風も気持ちいいですね。大会などで海外にも行きますが、その土地ごとに違った風が吹いていると感じます。
ですが、練習や大会でパフォーマンスするときに風に吹かれると、風が今度は「敵」になってしまいます。風の影響を受けやすい競技なので、できれば味方につけたいですが、なかなかそうはいきません。
強い風になると、ボールが風にあおられるので、コントロールが難しくなります。

フリースタイルフットボールは、オーディエンスと一緒に盛り上がった時が一番楽しい

フリースタイルフットボールの特徴、サッカーとの違い、ルールはどのようなものでしょうか?

その名の通り、サッカーボールを使って、リフティング、ドリブルなどの技術を発展させた「自由な形のフットボール(サッカー)」です。
足でリフティングをするという制限の中で、トリックをやりながら自由に技を増やすことで、さらにおもしろい競技として発展していったようです。ボールさえあれば、自分のやりたい技を、場所や服装、音楽など、好きなものを掛け合わせてできるところが魅力です。
フリースタイルフットボールの技はかなり多く、僕個人でも数百の技を持っています。おそらく、プレーヤー全員の技を合わせたら、約数千になるのではないかと思います。

大会ごとにルールは異なりますが、基本的に「30秒3ターンでお互いに演技し合う」スタイルが多く、ダンスバトルのようにDJが音楽をかけ、2人のプレーヤーが即興でプレーし合うのが主流です。

審査ポイントは、技の難易度、目新しさのほか、パフォーマンス性、音楽とあっているか。また、オリジナリティ、クリエイティビティ、全体の流れをプレーヤー自身が作ったものかどうかも重要視されます。海外では主にエアムーブと呼ばれるボールを跨ぐ技を中心にスキルを競う面が強く、日本ではトリックやムーブ全体のクリエイティビティやオリジナリティがより重視されています。

僕は事前に内容を半分ほどしか決めないようにしていて、即興の要素が必ず入るように組み立てています。パフォーマンスの瞬間に、頭か体が反応してその場で生み出したものが、オーディエンスに届いて会場が盛り上がったときが、一番楽しいと感じる瞬間です。相手との駆け引きはもちろん、流れに任せるアドリブの部分や「オーディエンスを驚かせる」こともとても大事にしています。

高校生のとき、トッププロのプレーを生で見て、教わってからまっしぐら

競技との出会い、のめり込んでいった経緯について教えてください。

中学から、地元のクラブチームでサッカーをしていました。テクニックに特化したチームだったため、ドリブルやリフティングなど、毎日ひたすらテクニックを磨きました。高校でもサッカー部に入りましたが、テクニックよりフィジカルを重視していたため僕のスタイルとは合わず、すぐ辞めてしまいました。

でも、何か違う形でサッカーをやりたいと思い、テクニックを磨く努力を重ねて、YouTubeも参考にリサーチしていたところ、フリースタイルフットボールの動画に行きつきました。興味を持ちまして、約1カ月後、大阪で開催されたフリースタイルフットボールの練習会イベントに参加しました。当時の日本トッププレーヤーが集まった練習会でしたが、その姿がとてもかっこよくて、衝撃的でした。彼らから新しい技も教えてもらったこともあり、その練習会の日に、より深くフリースタイルフットボールにのめり込んでいった気がします。
実は、高校を卒業したら就職する予定でしたが、価値観が変わり、「もっと本気でやってみたい。フリースタイルフットボールでどこまでいけるだろうか」と思い、大学に進学しました。

競技を始めてまだ2年半くらいの大学1年の夏、勢いでオープン戦の世界大会にも挑戦してみました。海外プレーヤーを生で見て、一緒に戦って、いろいろなものを吸収して帰国。その1~2カ月後に開催された、招待制の日本選手権では初めて優勝できました。始めて3年弱のタイミングで優勝したことも異例だったため「もしかしたら、本当にいけるのかもしれない」と、自信もつきました。
まずパフォーマンスのステージに立つところから始めてみようと、バトルに執着するだけではなくなったことで、フリースタイルフットボールのプロとして生きる方向を考え始めました。

一発勝負の緊迫した舞台で、集中力を高めて、自分の出したいものを出し切る

一瞬で勝敗が決まるフリースタイルフットボールでは、緊張感のなか、高い集中力が求められると思います。どのように意識をコントロールされていますか?

昔は集中力をコントロールするのが大変でした。一発勝負で勝ち負けが決まるため、短い時間の中に、緊張感、高揚感などが混在しています。
しかも、フリースタイルフットボールでは、緊張の影響が一番先にくる足先でコントロールするので、昔は苦戦したことも多かったですね。

以前は「うまくやらなきゃ」、「ここで勝てなかったら嫌だ」、「負けたくない」などの思いでその場に挑んでいました。ですが、2019年にアジアチャンピオンになり、世界大会に代表で出るようになった時期から、その意識が少しずつ変わりはじめました。
ステージ上で何をするか、自分自身がどんなプレーをするかは、自分だけのものというより、「パフォーマンスを見て何かを感じてくれる、多くの方がいるからこそのステージだ」と思うようになったのです。

それまでは、自分ありきだったので、負けることやミスすることを、必要以上に怖がっていましたね。でも、視点が切り替わったことで、「ミスや勝敗も当たり前。その上で、準備して、整えてきた自分の最高のパフォーマンスをすることが、オーディエンスに楽しんでもらえる」と思えるようになりました。
また、全てがうまくいく瞬間に一番気持ちいいのは自分で、プレーの質やマインドもさらに良くなることがわかりました。いわゆる、「ゾーンに入る」感覚でしょうか。

今は、「そのステージで自分が何をやりたいのか」を明確に持って練習しています。「心が整って、体が整って、最後に技」で、心体技の順番で整うと、自分のプレーにも一貫性と説得力が生まれます。わかりやすくいうと、プレーが圧倒的で、「絶対に良いものだ」と観ている人全てを信じ込ませる力ですね。それを意識することで、心が揺れることなく、いい集中力で挑めるステージが増えました。

フリースタイルフットボールをやめようと思ったことは一度もない

競技への深い愛情を感じますが、やめようと思ったことはありませんか?

この競技をやめようと思ったことは一度もありません。約10年前にフリースタイルフットボールを始めてからは、目に入るライバルたちを「全員倒して1位になるためにノンストップで走り続ける」ことしか考えていませんでした。
ですが、次第にフリースタイルフットボールが人生の一部になり、そして競技を離れてからも関わっていきたいものに。大会以外でも、ステージやイベントをつくったり、人に教えたり、あらゆる楽しみ方で、競技に関わってきました。

もちろん、思うようにならず悔しかったこともあります。2020年には、練習のしすぎなどが原因で「ジストニア」という症状に似た状態に陥って利き足が使えなくなり、リフティングができなくなってしまいました。
フリースタイルで利き足が使えなくなるのは、かなり厳しいことです。得意技も気持ちよくやっていた技も、すべて思い通りにはできなくなってしまったので、正直、最初は「ああ、(競技人生が)終わったな…」と思いました。
たとえると、右利きの人が食事するときに右手では普通に食べられるのに、いきなり「左手で食べて」と言われるような感覚です。全然、思うように体が動かせませんでした。もともとやっていたプレー、自分の得意な技や気持ち良くやっていた、すべてが思い通りにコントロールできなくなったのです。

その時期は、コロナ禍でイベントや大会が全て中止になっていました。大会に出場するという目標が存在しない中で、さらに自分自身のパフォーマンスが最悪なところまで落ちたことはかなりつらかったですね。今でもまだ症状自体はありますが、それでもやめようとは思いませんでした。
できなくなった技は、また1つ1つできるようにしていくしかありません。その状態でもできる形を探していき、1年後には自分が持っていた技の7割、8割ぐらいまでは戻せた状態になりました。ただ、大会ではまだうまくいかないことも多かったため、本番想定の練習を何度もやるしかないと思い、できることを全部やりましたね。
最近やっと、外から見たときには痛めているとは思われないくらいのパフォーマンスができるようになってきました。今年の3月に出場した国際大会では、最初から最後までしっかり自分がイメージしていたパフォーマンスができ、優勝しました。「やっと戦える場所に戻ってきた」という感覚です。

目標は、フリースタイルフットボールを、子どもがあこがれるスポーツにすること

これからどんなことを成し遂げたいですか? モチベーションの原動力はなんでしょうか?

フリースタイルフットボールを含めたストリートジャンルの業界を「カルチャー」という言葉を使って表現します。フリースタイルフットボールの競技というよりは、「フリースタイル・フットボール・カルチャー」と表現することが多いです。
僕はフリースタイルフットボールに出合ったことで人生が大きく変わったこともあり、最初はプレーヤーとしての目標だけを持って進んでいました。ですが、その後プロプレーヤーとして活動するうち、この競技の「カルチャー」を考えるようになりました。カルチャーにいる人たち、プレーヤーやファンがもっと増えて、もっと競技を楽しめて、認知度や大会の優勝価値も上がることで、もっと誇れるような世界にしたいと思っています。

今では、自分の人生とフリースタイルフットボールが完全に融合し、引き離せないものになっています。最後は死ぬときがゴールだと思っていて、その瞬間に1ミリでも心残りがあったら嫌なので、ずっと戦い続けたいと思っています。

僕が想像する、フリースタイルフットボールが普及して文化として根付く理想形は、公園などで、子どもたちがフリースタイルフットボールを日常的にやっている世界です。
フリースタイルフットボールはスタートしてまだ20年くらいの歴史なので、まだ遠い道のりですが、そんな風に生活のなかに自然に溶け込む競技になっていったらうれしいですね。

Yahoo!天気アプリの「風レーダー」

最大72時間先まで世界中の風速と風向の予報が、流れる線のアニメーションで視覚的にわかります。また、選択地点の風速と風向の推移をグラフとテキストで「非常に強い風」「猛烈な風」など、いつ風が強まるのか、どの方角にどの程度の風が吹くのかを一目で確認できます。
風の影響を受けやすいスポーツやレジャーをする際などにもぜひご利用ください。

このページの先頭へ