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2023.07.04

【風と私】サーファーとクリエイターの両立 山中海輝さんが感じている「風」

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ご両親の影響で5歳からサーフィンをはじめた、山中海輝さん。現在はプロのサーファーとして活躍されています。
サーフィンには波が重要ですが、その波をつくり出すのは風。風の強弱がパフォーマンスに強く影響するため、風とうまくつきあうことができるといい波に乗れるそうです。山中さんに、サーフィンと風との関係、サーフィンの魅力、そしてクリエイターとしての活動についてうかがいました。

山中 海輝(やまなか かいき)さん
サーファーである両親の影響で5歳からサーフィンをはじめ、大阪を拠点にサーフィン生活を送る。16歳で全日本ジュニア優勝、日本代表キャプテンとして世界選手権へ2度出場。16歳でプロ資格を獲得。大学へ通いながらツアーを回るプロサーファーとして4年間を過ごす。
卒業後は、本格的に海外ツアーを転戦中。プロサーファーとしてだけでなく、表現者として写真や動画で世界各地の魅力を伝えることにも取り組んでいる。

サーフィンをするときに好きな風は?
サーフィン用語で「サイドオフ」と呼ばれる、陸から海に向かって斜めに吹いていく風が好きです。わかりやすく言うと、海を見ているときに少しななめ後ろから吹いてくるような風です。
この風が吹くと波の形が整えられる上に、「エアー」という空中に飛び出す技をするときに向かい風となるため、技をかけやすく一番好きな風向きです。
僕のサーフィンは、他の日本人選手よりも体が大きいこともあり、パワーが特徴だと思います。具体的にはターンしたときに上がる大きな水しぶきやスピード感など、勢いのあるサーフィンが僕のスタイルです。

サーフィンと風の関係はとても密接 「オンショア」と「オフショア」とは?

サーフィンに、どのように風の変化が影響するのか教えてください。

サーフィンと風の関係はとても密接です。まず、「オンショア」と「オフショア」の風があります。
オンショアは海のほうから陸に向かって吹く風。この風が吹くと、強さにもよりますが波が荒れます。
オフショアは陸から海に吹く風。この風が吹くと波がきれいに整えられるため、僕たちサーファーが「いい波になる」と思うのは、オフショアの波です。

とはいえ、サーフィンは自然相手のスポーツなので、風向きを選ぶことはできません。多くのサーファーは仕事や学校のない土日に海に行きます。その日に、もしオンショアの風が吹いていても、「今日はやめておこう」ということにはなりません。乗りにくいオンショアのときでも波には乗りますし、もしオフショアの波がきたら、「今日はラッキー」と思います。

※左から、オンショア、オフショア
オンショア=海から陸に向かう風 オフショア=陸から海に向かう風

ちなみに、風速何メートルくらいだったら、今日は波に乗るのをやめておこうと思いますか?

オンショアのときに風速が8メートルを超えると、かなり強い風が吹くので海がぐちゃぐちゃだと感じます。ですが、3から5メートルぐらいの風速だと、沖から陸に吹く風が後押ししてくれることで波が割れやすくなり、乗るのに適した波になります。
オフショアの風が強く吹いた場合は、波が風にあおられて割れにくくなるので、きれいな波はできますが乗りにくくなります。先ほど、オンショアはあまり乗りやすい風ではないとお話しましたが、風速5メートルぐらいのオンショアの風が吹くときは、サーファーが乗りたいパワフルな波になるイメージです。

※左からオフショア、オンショア(写真はイメージです)

たとえば、海に向かって右手に大きな崖があるとします。そうすると、右から来る風はその崖にブロックされるので、そのエリアは無風状態になるため、いい波ができることもあります。サーファーの多くは、海の地形が頭の中に入っているので「南東の風が入ったらこちら側に行こう」「堤防が海に向かってある場所なら、左右どちら側でサーフィンをするか」なども考慮します。
まだ行ったことのない海外の海でも、事前にGoogle Earthなどで地形を見て「ここに山がある」「この建物で風がブロックされていそうだな」などと予想して、現地では風の方向を見ながら波を選んでいます。

※右手に崖のある海(写真はイメージです)

また、海ではずっと同じ波が来るわけではありません。5分に1回、10分に1回おきぐらいに「セット」と呼ばれる、同じ周期の中で3本くらい続く大きな波が来ます。その周期も見ながら、「いい波がきそう」と思ったら迷わず乗ります。
ちなみに、その波が最初に割れた「ピーク」と言われる場所に一番近いサーファーが乗れる権利がある、という世界中どこのサーフポイントでも共通のルールがあります。

ピークの一番近くにいるサーファーが優先される

このように、いい波がきても自分が乗れるわけではない、というのがサーフィンの特徴と言えるかもしれません。
サッカーなどの競技場に行って練習する競技とは違い、「海に行ったら確実に何本の波に乗れる」という確実性はありません。むしろ、海まで行ったものの思うように波に乗れなかった、ということの方が多いと思います。今日も午前中に海に行きサーフィンをやってきましたが、まさに思うように練習できませんでした。サーフィンを約20年続けていますが、いいときも思うようにいかないときもあるのも、この競技にひかれる理由です。

練習したくないと思ったときは「練習を続けることが運にもつながる」と考える

サーフィンを20年以上やられている間に、もうやめたいと思ったことはありますか?

何度もあります。サーフィン自体をやめたいと思う瞬間は、試合で負けたときです。
そして、トレーニングなども含め練習したくないな…と思うことはもっと多いです。好きな仕事をしている方でも、おそらく毎日100%のモチベーションで仕事に向かえる方はあまりいないと思います。それでも、みなさんが仕事に向かうように、けがをしたなどよほどの理由がない限り、基本的に毎日練習しています。
2年前までは海のない大阪に住んでいたので、週に1、2回しかサーフィンができませんでした。大学を卒業してから、海外ツアーなどを本格的に回るようになり、コロナ禍に千葉県に家を借りたので、今は週3、4日海で練習しています。

自分はそれまで趣味だったサーフィンを仕事にしています。周りの人たちは、仕事で大変なこと、ときにはやりたくないこともやりながらも好きなことをする時間をつくっているのに、サーフィンだけに打ち込める自分が「甘えてはいられない」と思っています。
そして、「この練習をサボったら試合で負けてしまうかもしれない。日頃の行いが大切だから、こうやって練習を続けることが運にもつながるはず」と考えることもあります。神様は見ていると思っているので、練習はサボらないようにしています。

自然を相手にするスポーツでは、常に謙虚になる

サーフィンの経験がない人に、その魅力をどのように伝えますか?

これはサーフィンだけでなく何事にも言えることかもしれませんが、スポーツをきっかけに世代も性別も関係なくいろんな人とつながれることが魅力です。僕は5歳からサーフィンを始めたので、当時はまだ子どもでしたが、周りの人からは1人のサーファーとして扱っていただきました。海外で言葉がわからなくても、「サーフィン行こう」というジェスチャーだけでコミュニケーションできます。
サーフィンをするためだけにブラジルの小さな島まで、2日半ぐらいかけて行ったこともあります。そこに海がなければ行くことのなかった場所に行く経験も含めて、サーフィンが多くの新しい経験や出会いのきっかけを生んでくれると感じています。

また、サーフィンは自然を相手にするスポーツだということもあり、常に謙虚な気持ちにもなります。海に入ったら、その人がどれだけ力が強くて、頭が良くても、海には勝てません。そう考えると、僕たち人間は、自然に「生かされている」と感じます。がむしゃらに頑張っても波には乗れないので、「波と調和する」ことも意識するようになりました。

試合や練習のために海外にもよく行くのですが、基本的に海外では自分が思っている通りにはいかないことも多いです。たとえば待ち合わせの時間に人は来ない、決まった時間にお店が開かない…など、「常に時間を守る」日本とは違って、かなりマイペースな国もあります。
考えてみたら、サーフィンでも波相手に思うとおりにはいかないので、「思い通りにならないこと」に対してかなり柔軟になりました。いい波が来るまであせらないことや柔軟性など、サーフィンを通じて得られたものは多いです。

映像を撮るときにも「風」を意識する

山中さんはカメラマンや動画クリエイターなどとしても活動されていますが、それらの活動はいつから始めたのですか?

10歳ぐらいのとき、親に使い捨てカメラを渡されたことが写真を撮るようになったきっかけです。その後、SNSを利用するようになった16歳ごろからは、人に見せることを意識して撮るようになりました。
映像を撮るときも、風を待つことはよくあります。髪がなびいているなどの動きで風を表現することもありますし、水中で撮影したいときは、さきほどお伝えしたオンショアとオフショアの波のうち、オンショアの波のときは撮らないので、風の向きも意識します。

幼いころから世界中を旅したことで、人よりも表現の引き出しの数が多いと思っています。自分が自然の中にいる時間が長いからこそ感じるものを作品に落とし込むことも得意です。
たとえば、この人は何を思ってそこにいるのかが周りの雰囲気も含めて伝わるように、全体の空間も一緒に撮るようなイメージです。
僕の写真について、「プロフィールにしたい写真より、飾りたい写真を撮るよね」と言ってもらったことがあります。そのように、その人を「きれいに撮る」というよりは、空間ごと切り抜くようなドラマチックなものが好きですし、僕だからこそつくれる世界観だと思っています。

コロナ禍前はサーフィンだけに集中する生活で、試合や練習以外の時間でクリエイターとしての活動をしていました。ですが、コロナ禍にサーフィンができなくなった期間に時間があったので、撮影スキルをさらに学んだことで、ありがたいことにお仕事がかなり増えました。
ただ、クリエイティブ活動とサーフィンは、両立するにはあまり相性がよくないと感じています。動画の編集作業中はずっと座り続けていますし、頭もかなり使うので体がしっかり休められないこともあり、サーフィンのための体づくりに影響してしまうと感じています。どちらも本気でやると決めていますが、サーフィンとクリエイター活動の両立には、まだまだ挑戦中です。

サーフィンは「向かい風」クリエイターとしては「追い風」

サーフィンとクリエイター活動それぞれに吹いている「風」についてはどう感じていますか?

サーフィンについては、今は向かい風ですね。先月、サーフィンの練習を目的に10日間バリ島に行っていたのですが、2日目にけがをしてしまいました。おそらく、動画を編集してから海へ行って練習する、という生活を続けたことで体が疲れていたことも原因の1つだと思っています。約1カ月間治療を続けて、今日(5月23日)からやっと、海での練習を再開できました。

けがが治ったので、今は猛烈に頑張りたいのですが、まだあまり無理はできません。でも結果は欲しいというジレンマもあり、向かい風の状況に挑戦しているところだと思います。
また、2カ月前にトレーナーとコーチを替えました。さらにレベルアップして、今いるリーグよりも1つ上のリーグに上がりたいですね。アジアトップ5に入れば次のリーグにいけるので、そこを目指して取り組んでいるところです。

クリエイター活動では、今年は個展を開催予定ということもあり、追い風を感じています。今後は写真や動画だけでなく、物づくりや服のデザインなど、新たなジャンルに挑戦していきたいと考えています。カメラマンという立場にとらわれず、いろいろなものを創作したいですし、少しでも多くの方に自分の作品を見ていただけるよう、努力していきたいですね。

サーフィンとカメラは「表現」という共通点があると思っています。
サーフィンも波の上では自由に自分を表現しますし、カメラでも自分の撮りたいものを自由に表現します。サーフィンで得た経験を写真に、撮影の経験で得たものをサーフィンに取り入れながら、いつか「山中さんにすべてお任せします」と言っていただけるよう、サーファーとしてだけなく、クリエイターとしてのスタイルも確立していきたいと思います。

Yahoo!天気アプリの「風レーダー」

最大72時間先まで世界中の風速と風向の予報が、流れる線のアニメーションで視覚的にわかります。また、選択地点の風速と風向の推移をグラフとテキストで「非常に強い風」「猛烈な風」など、いつ風が強まるのか、どの方角にどの程度の風が吹くのかを一目で確認できます。
風の影響を受けやすいスポーツやレジャーをする際などにもぜひご利用ください。

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