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2022.12.07

「対話」から学ぶコミュニケ―ションのヒント 「聴く」ための中級編(41~50)

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この連載では、よい対話にするために心がけたいことや「聴く」ためのヒントを、「YJぴあさぽ(※)」のメンバーがお伝えしています。
※YJぴあさぽ
産業カウンセラーや国家資格キャリアコンサルタントの有資格社員によるボランティアプロジェクト。

まさみん
ZアカデミアでZホールディングス全体の組織活性、人材育成、コミュニケーション円滑化の取り組みなどを担当。
保有資格:国家資格キャリアコンサルタント、トラストコーチングスクール 認定コーチング スキルアドバイザー

「聴く」中級編

12月、師走ですね。「師走」の語源には諸説あるようですが、この季節は「お坊さん(師)が、お経をあげるために東西を馳(は)せる」。普段は走らないお坊さんでも走るくらい忙しい時期なのでしょうね。
みなさんも忙しい毎日を送っていらっしゃると思いますが、そんななかでも、ほんの少し立ち止まって周りの方との「対話」の時間を取ってみてください。

7月にこの連載を始めて、準備編、初級編と「聴く」ための40のヒントをお届けしてきました。 「あ、これくらいならできそう!」と思ってトライしてくれた方も多いようで、とてもうれしいです。
正直、始めるときは、読んでくださった方に役に立つのかな、とドキドキしていました。でも、読んでくださる方がいて、お伝えした内容を試してくれる方がいて、その結果、笑顔になる人がいることがとても幸せだと感じています。

今回から、「聴く」ためのヒント「中級編」をご紹介していきます! 

41.話している相手の表情にも注目 「笑い」のなかに本音が隠れていることも

YJぴあさぽの私たちが参加者と同じ社員同士ということもあり、参加者側もある程度、気を使いながら話すこともあるようです。
たとえば、家庭内の話をどこまでしていいのか、悩んでいる様子が見えることがあります。
「わが家は共働きなのですが、夫は家事がほとんどできなくて、小松菜とほうれん草の違いもわからないので(笑)、食事は全部、私が作るんです。
3食作るのも大変なので、時々は外食にしようと言うと嫌がるんです。おかしいですよね(笑)」(※実際された対話内容ではなく、作例です)

人は、本当におかしい時や楽しい時も笑いますが、何かをオブラードに包んで伝えようとするときにも、ぎこちなく笑ったり、または、「おかしい」と口では言っていても笑っていなかったりすることがあります。
このようなときの「笑い」には、話している内容をあまり深刻に捉えてほしくない気持ちが込められているように思います。でも、ご本人の中では、実は大きな引っかかりがあることもあると感じます。

42.相手の隠された本音に気づいたときはどう「聴く」?

前の項目のような話が出てきたら、あなたならどうしますか?

その1:一緒に笑い、同意する
「えー、そうなんですね。どうしてそんなに外食を嫌がるんでしょうね」などと同意します。

その2:表情は変えずに聴く
「○○さんは、本当におかしいと思われていますか?(優しく聴いてください)」
「どのあたりが、おかしいと思ったのでしょうか…?」

私は、話している方の表情を見ていて「ん?」と思ったら、その2の方法で聴くようにしています。
もし、ここで一緒に笑ってしまったら、その方は本当の思いを話せなくなってしまう気がするからです。

この方は、自分が家事を一手に引き受けていて、時間の余裕がないので外食したいという提案をしたら夫が嫌がった。本当は、困惑しているし、ご家族とのコミュニケーションがうまく取れていないことに悩みを感じているのだと思います。

それなのに一緒に笑ってしまったら、この大切な気持ちが流れてしまいかねません。そのため、話している人の表情もよく見るように努めています。

参考)
17.表情や声のトーン、身振りなどの非言語のコミュニケーションも大切
19.話している相手の様子を観察して、気づいたことを質問してみる

43.あえて空気を読まずに、さらに聴いてみる

たとえば、お子さんが「部活の顧問の先生から、『やる気あるのか? 真剣にやれよ』って言われるんだけど、私は真剣にやってるんだよね…」と感じているとしましょう。
顧問の先生には、真剣にやっていないように見えた。でも、本人は真剣にやっている。ちょっと不本意な状況ですね。
よく「空気を読む」といいますが、こういう場合も、お子さんは「えー先生ひどい。本気でやっているのに(笑)」と、つい答えたくなってしまうかもしれません。でも、「え、先生にそんな風に言われるなんてちょっと心外だな…」と感じた時は、空気を読まずに、先生がどうしてそう思ったのか聞いてみてもよいと思います。

また、上長と部下の関係でも、言われた内容について「?」と思った時は、空気を読まずに、「ちゃんと理解したいので、もう少し〇〇と言われた意味を教えていただけますか?」など、言えるといいですよね。

意外と、深い意味や相手に悪気がない時もあると思います。相手の意図をしっかり理解するためには、疑問に感じたときは確認する勇気を持つことも必要だと思います。

YJぴあさぽで、話を聴いているときにも、「ん?」と思ったら、首をかしげてみたり、ちょっと考える時間をあえてとったりします。
「ここはそのまま流して聞いていいのか?」と自分に確認して、ときには空気を読まずにより質問することも意識的にします。
話の流れを止めることにもなるので、勇気もいりますが、必要なことだと感じています。

相手の本音をさらに聴くために意識したいこと
・間をおく
・あえて大きく反応しない
・言われた言葉を、繰り返してみる

「ん?」と思ったらちょっと考える時間をとることも(写真はイメージです)

44.「相手の話したい」サインを見逃さないためには観察が大切

また、身近な人が、なんとなく話したそうにしているなと感じるときはありませんか?
たとえばお子さんなら、意味もなく親の周りをうろうろしたり、保育園や幼稚園の行き帰りに、親の手を引っ張ってゆっくり歩いたり。

私の息子たちも、台所で家事をしていると、近くに座って「今日さあ…」と話してくることがあります。
内心「今とっても忙しいんだけど…」と思うこともありますが、そんなときは、少しだけでも家事や仕事の手を止めて聴くようにしています。もし、時間がどうしてもなかったときは、あとで聴く時間をきちんととると約束しています。

私たち大人も、会議が終わっても会議室からなかなか出ないで待っているそぶりがあるなど、なんとなく「話したそう」な人を見かけることがありますよね。
また、リモートワークでZoom会議のときは、あえて最後まで退室せずに残るようにしている、という上長の話を聴いたこともあります。大勢の前では、話せなかったことを話すチャンスをあえて作っているのだそうです。

身近な人や、職場などで相手の「話したい」サインをできるだけ、見逃さないためには、日ごろの様子を観察しておくことも大切です。

参考)
23.身近な大切な人の話を「聴く」にトライ! その1
29.「聴く」モードスイッチをオンに

身近な人の「話したい」サインを見逃したくないですね(写真はイメージです)

45.「話したそう」なサインは、何度も出てくる単語や「気にしていない」という前置き

私たち、YJぴあさぽは、オンラインで「聴いて」いますが、その中では、たびたび同じ内容に戻りながら話す方もいます。
「仕事でパフォーマンスが出ていない。その原因はいくつかあると思っています。
ひとつは子どもが小さいので、休日も、ゆっくり休めない…。子どもと遊びに行けるのは楽しいのですが…。妻も忙しくて、子どもの教育も…」

このように、何度か同じ単語が出てくる時があります。この場合は、「子ども」です。
仕事も頑張りたいけど、お子さんのことがとても気になっているのだと思います。
そんな時は、あえて、仕事の話ではなく、「お子さんは、今 おいくつですか?」「どんなところに遊びに行くのですか?」など、お子さんの話を聴いてみます。

また、「(このことは)全然気にしていないんですけどね」と前置きししてから話す方もいます。でも、本当に気にしていなければ、限られた時間の中でその話をしないはずなので、きっと「ものすごく気にしている」のだと感じます。
これも、「話したそうなサイン」だと思っています。

そういう時は、「全然気にしていないんですか?」と返してしまうと、かえって身構えられてしまいます。自分は気にしていない、ということを相手に強く印象付けたいから話していると思います。
こんなときは少し言葉を変えて「そんなに気にしていないけど、ちょっと○○かなあ、という思いがあるんですね」と、その方の思いを尊重しながら聴くようにしています。

また、YJぴあさぽでは、最後の5分に振り返りの時間を設けています。そして、「〇〇さんの良いタイミングでご退室くださいね」と伝えて、お見送りをしています。
そこで、なんとなく退室がゆっくりの方もいるため、そんな時は、「話したいことは、全部、話せましたか?」と確認することもあります。そして、言い足りないことがあった場合は、「では、次はその話をしましょう」と次回の時間をご案内します。

46.結婚や昇進に「おめでとうございます!」と(すぐには)言わない

もちろん、一般的には、「結婚や昇進=おめでたいこと」というイメージがありますし、普段であれば、たいていは「おめでとうございます!」でいいと思います。
でも、「聴く」の中では、できるだけ話の内容をフラットに聴くように心がけているので、大げさにはリアクションしません。話がそこで止まってしまったり、違う方向に行ったりすることがあるからです。

もしかしたら、結婚はしたけれど、相手との価値観が違いすぎて、今は、ちょっと悩んでいるのかもしれません。
でも、「ご結婚おめでとうございます!幸せな毎日なんじゃないですか?」などというと、もしかしたら、話し手が空気を読んでしまって、ネガティブな内容を話しづらくなることもあるかもしれない、ということを頭の片隅に置いています。
また、会社などの「昇進しました」にも同じことが言えます。「昇進したけれど、実は望んでいなかった」場合もあります。「昇進した結果、今はストレスを抱えている」ということもあるかもしれません。

これも、話し手の表情をみているとわかることが多いです。
YJぴあさぽで話を聴かせていただいているときは、まずは、「結婚されたんですね」「昇進されたんですね」と事実だけを受け止めるようにしています。

47.多くの人は「Must」と「Want」を使い分けている

前の例の続きです。
「結婚して、家事もきちんとやりたいと思うので、3食作らないといけないし、掃除も毎日しないといけないし…」
「昇進をしたので、部下よりも遅く退社しないといけないし…」

このように、多くの人は無意識に、「Must」と「Want」を使い分けているように思います。
「~しなければいけない」という言葉。
もちろん、しなくてはいけないことは、それぞれの役割や立場においてたくさんあるのだと思います。
ただ、そこにあえて「問い」というアンテナを立てて聴いてみてください。

「3食作らないといけないし、掃除も毎日しないといけないのですか?」
「部下よりも、遅く退社しないといけないのですか?」

このように「本当にそうですか?」とあえて質問することがあります。

48.「本当にそうなのか?」考えてみることで、目線を変えられる

「本当にそうですか?」と聴くことで、「え? 今まで当たり前と思っていたけど、本当にそうなんだっけ」と、相手にもう一度考える時間を取ってもらえると思います。

「そうですねえ、作るのは朝晩の2食でもいいかもしれない。毎日必ず作れなくてもいいんですよね」
「確かに、部下より早く帰ったらいけないわけではないかもしれません。隣の部長は、曜日を決めて定時退社していますね」

など、その人にとっては「当たり前」で「しなければいけない」と思っていたことが、「実はそうではないかもしれない」と目線を変えることができます。
他者だからこそ見えること、言えることも多いと思います。

あえて「本当にそうですか?」と聴いてみることも大事(写真はイメージです)

49.できるだけ「Want」を話してもらう

私もよく、「お弁当を作らないといけないし、お昼までに買い物も行かないといけないし…」と「Must」の言葉が出てきます。でも、「Must」の言葉ばかり使っていると、だんだんと疲れてきますね。
朝は起きなければいけない、食事は3食取らねばならない、仕事はしなければいけない、塾にいかねばならない…。私たちは多くの「しなければならないこと」を抱えています。
でも、できるだけ「Want」、つまり「自分がしたいことは何か」を問いかけることも忘れないでいたいと思っています。
Wantで動くと主体的になり、人生や時間の使い方が変わってくるように思うからです。

YJぴあさぽで話を聴く際も、「〇〇さんは、なにが一番やりたいですか?」「家事の中で、好きなものはありますか?」「部長になり、やってみたいことはありますか?」と、「Want」を知るための問いかけをはさみます。

50.「聴く」ときに大切なのは、相手を思う気持ち

最後に、改めて「聴く」ときに大切にしたいのは、相手を思う気持ちです。それさえ忘れなければいいと思います。
私もつい、考えすぎてしまうこともありますが、そんなときは「相手のことを思う気持ちが一番大切」ということを思い出すようにしています。

「対話によって自分の人生をつかまえる」。
これはZアカデミアの学長でもある伊藤の著書の一説です。
参考)「FREE FLAT FUN」 伊藤羊一

聴くことで、その人の人生が見えてくることがあります。対話を通じて自分の思いを言葉にすることは、大切ですね。

次回は、より具体的な質問の仕方や、言葉にすることの大切さについてお伝えできたらと思います。

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