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2022.06.06

「対話」を通じて、同僚を応援 ヤフーの「ぴあさぽ」とは

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みなさんは最近、自分の話をしっかりと「聴いて」もらっていますか? また、何気ない会話を楽しんでいますか? リモートワークによる働き方が浸透し、同僚との「対話」の時間が以前より減っている…という方もいらっしゃるのではないでしょうか。

今回は、産業カウンセラーや国家資格キャリアコンサルタントの有資格社員によるボランティアプロジェクト「YJぴあさぽ」をご紹介します。
これは、「将来のことを考える時間を持ちたい」「漠然と感じている不安を共有したい」「話して心の棚卸しをしたい」という社員と「対話」し、同僚として寄り添うことで、心身ともに健康に過ごすことをサポートする活動です。
この活動が生まれた背景、よい対話にするために心がけたいこと、対話することは私たちの心にどのようなよい効果があるのかなどを、担当者にききました。

    目次:
  1. YJぴあさぽとは
  2. ヤフーの「ぴあさぽ」が生まれた背景
  3. 対話をオープンに ヤフー独自の「2on1」と「オープンダイアローグ」
  4. 「ていねいに聴いてもらう」経験を ぴあさぽの活動を通じて感じていること
  5. 対話のヒント「きちんと話を聴いてもらった」と相手が感じてくれることがとても大事
  6. ヤフーの中に「対話」を広げていきたい
(左から鈴木、後藤、水摩)
鈴木 麻未(すずき まみ)
グッドコンディション推進室で従業員の健康増進企画を担当。
保有資格:産業カウンセラー(JAICO)、交流分析士インストラクター、国家資格公認心理師

後藤 雅美(ごとう まさみ)
ZアカデミアでZホールディングス全体の組織活性、人材育成、コミュニケーション円滑化の取り組みなどを担当。
保有資格:国家資格キャリアコンサルタント、トラストコーチングスクール 認定コーチング スキルアドバイザー

水摩 直子(みずま なおこ)
グループリスクマネジメント部で、グループ会社のERM活動支援や人権分科会活動などを担当。ヤフーではCSRを兼務し、企業価値の向上を目指した地域貢献活動や、ESG推進などを担当。過去に学んだ産業カウンセラーの知識を生かし、「ぴあさぽ」の運営事務局を担当している。
保有資格:リスクコミュニケーション技能認定第一種 認定リスクコミュニケーションアドバイザー  

YJぴあさぽとは

「ぴあさぽ」の「ぴあ(ピア)」は英語のpeerで、仲間、対等、同輩を意味します。また、「さぽ」は英語のsupportで援助を意味し、ここでは「仲間同士の支え合い」の意味で使っています。
YJぴあさぽは、同僚を「ピア=仲間」ととらえ、支え合う仕組みです。産業カウンセラーやキャリアコンサルタントの有資格社員が、希望する社員に対し、キャリアや人間関係などに関する対話をすることで応援・支援します。具体的には、定期的に「オープンダイアローグ(※)」と「2on1」を実施しています。

※オープンダイアローグ:
フィンランドで開発された精神科医療の包括的なアプローチで「開かれた対話」と訳されます。YJぴあさぽでは、話すこと、そして聴くこと、「対話」を大事にしたいという思いから、対話の場を「オープンダイアローグ」と呼んでいます。

ぴあさぽの活動内容
・メンバー
産業カウンセラーや国家資格のキャリアコンサルタントの資格を持つ
・実施形式
オープンダイアローグ
YJぴあさぽ2名と参加者複数名の「対話」で、参加者を応援・支援する。
2on1
YJぴあさぽ2名と参加者1名の2on1形式の「対話」で、個人を応援・支援する。

「対話」を通じた応援、支援の機会の提供(Zoomミーティング形式)
「ここでの話は他には漏らさない」というルールがあり、何を話しても大丈夫な場

ヤフーの「ぴあさぽ」が生まれた背景

後藤:
2021年に取得したキャリアコンサルタントの資格を生かして、社員の方を何かサポートできないだろうかと考えたことがきっかけです。資格取得後は、しばらく所属部署の同僚を対象に1on1をしていました。このような活動を社内に広げたい、同僚のサポートをしていきたい、という思いを、鈴木と水摩に話してみたところ、すぐに同意してくれました。 企画書を作成し、社内のいろいろな人に「こういうことがしたい」と話したり、人事部門にも有志のプロジェクトとして活動できないだろうかと相談したりしていたところ、人事部門がこの活動をバックアップしてくれることになり全社対象の活動としてスタートしました。

鈴木:
活動を始めるにあたって、ソフトバンクでは既に、資格を持つ社員がボランティアとして社員をサポートする「ピアサポーター制度」があったため、活動内容や、運営についてのノウハウを事前に教えていただきました。
その際、ソフトバンクではボランティア社員へのサポート体制も考慮されながら運営されていることがわかり、ヤフーでもそのような体制も整える必要があるということで、人事担当者に協力をお願いしました。

後藤:
全社的にも、コロナ禍で社内のコミュニケーションが希薄化になっていることに課題を感じていたようです。そのような中、オンラインのコミュニケーション中心になったヤフーにはぴあさぽのような活動が必要だと思ってもらえました。
まずはトライアルとして、2021年10月から活動をスタートしました。サポーターとして活動する際は全員、選考プロセスを経ています。また、産業医の先生の研修を受けたり、人事のコンプライアンス研修、傾聴の研修なども受けたりした上で活動しています。2021年12月に、オープンダイアローグと2on1を初めて実施し、現在もこの2つがぴあさぽ活動の軸となっています。

対話をオープンに ヤフー独自の「2on1」と「オープンダイアローグ」

2on1

後藤:
キャリアコンサルタントや産業カウンセラーの活動では、基本1on1でお話します。
ですが、YJぴあさぽでは、「同僚としての支援」と私たちぴあさぽ側の心理的負担の軽減という点を大切にして、できるだけ、オープンな関係性が保てる方法はないかと考えました。
検討の結果、ヤフーでは2on1という形でやってみるという新しい案が生まれました。これは、結果的に参加者側にとっても良い点が多いと感じています。

鈴木:
2対1の対話にすることで、客観性が保たれたり、1対1のときに感じる逃げ場がなくなることがなくなったりするのではないかとも考えました。
どのような形が今のヤフーの働き方や私たちがやりたいことにも合っているのか、2on1の形式でも良い対話のサポートができるにはどうしたらいいのかについては、かなり検討しました。

そのとき、「オープンダイアローグ」というものが世の中にあることを知りました。これは、フィンランド発祥の、精神疾患の方を支援する治療スタイルです。対話のプロセスが心の健康にはとても大事だという内容が、ぴあさぽでやりたいと思っていたこととマッチするのではないかと思いました。この手法について関連書籍などを読んでエッセンスを取り入れた上でヤフーに反映しやすい形に組み立てていきました。
また、「リモートワークで働いていると雑談がない」「1人でいると自問自答ですごくクローズな状態になりがちだ」という声をあちこちできいたこともあり、対話をクローズではなくオープンにすることが1つの解決策なのではないかと考えました。

オープンダイアローグ

鈴木:
オープンダイアローグは、2on1だけだと支援できる人数に限りがあることから、複数の参加者が同時に参加できる形をとりたいという思いがきっかけです。参加者も複数ならよりオープンな対話になりそうというポジティブな予感がありました。
また、忙しい社員が利用しやすい時間は最大どのくらいか、そのうえで1人に対してどのぐらいの時間だとしっかり聴いてもらったと感じるのか、他の人の対話も聴けるかも検討しました。その結果、オープンダイアローグは1時間でぴあさぽ2人につき3人まで、という形がよさそうだということになりました。

「ていねいに聴いてもらう」経験を ぴあさぽの活動を通じて感じていること

後藤:
ぴあさぽとの対話がいわゆる「雑談」と違うのは、聴くことと話すことをしっかり分けている点です。みんなでワイワイ話すというよりは、1対1で「聴いて」「話す」という形です。
「対話」とは、思い込みをなくして、しっかり聴き「私は今の話を聴いてこう感じました」などと伝えることだと思います。
これまで実施して感じているのは、みなさん「ていねいに聴いてもらう」という経験が以前より減っているのかもしれないということ。「10分間でもこんなに話せて、自分のことをみんながこんなにていねいに聴いてくれるんだ」「なんだか思ったよりすっきりしました」などと言われることもあります。

鈴木:
印象的なのは、深刻な話ではなくても、「こういうもやもやしていることをほかに話す機会がない」という人が多いことです。秘密でもないしセンシティブでもない、「ちょっともやもやする」というぐらいのことであっても、ここ(ぴあさぽとの会話)以外では話す機会がなかったという方が思ったよりいると感じています。

みなさんのお話を聴いていて思うのは、周囲の人との関係は決して悪くないのですが、リモートワークを主体として働く社員が増えたためか、「薄い」と感じている方もいるようです。理性的で希薄な分、淡々と仕事の事ができるというのはすごく効率的で良い面もあるものの、どこか「隙間がある」ように感じている人も多いと思います。「その隙間を何かで埋めたい、でも何なのかわからない」というような気持ちがあるのかもしれません。

そして、1人で自問自答したときには「自分って最高! すごく頑張っている!」とはなかなかならないんです。自問自答するとどうしても課題に意識が向いて、反省会になってしまいがちです。オープンダイアローグや2on1を通じて、「そんなことはないですよ」「とても頑張っていると思いますよ」というフィードバックをもらうことで、どこか心がスッキリする効果があるのかもしれません。
人間は社会的な生き物で、人との関係性の中で生きているので、リモートワークでその関係性が薄くなることで、どこか自分を映す鏡がなくなってしまうような気持ちになるのかもしれません。ぴあさぽが「鏡」となって、必要なときにしっかり対話できる存在になれたらと思っています。

後藤:
ぴあさぽ利用者の中には、上長とは業務の話だけしかしてはいけない、と思っていた方もいました。リモートワークだとオンラインミーティングで顔が見えにくいことも多く、誰に話していいかわからない、という方もいます。
ヤフーの1on1は定期的に自分の上長と対話する素晴らしい取り組みです。そこに、ぴあさぽで行っている「2on1」や「オープンダイアローグ」などの「ななめの関係」の対話が選択肢の1つとして加わることで、将来のことを考えたり、漠然と感じている不安を話したりして心の棚卸しをする時間を持つことができるのではないかと考えています。

もちろん、とても深刻な悩みを抱えている人は産業医の先生にお話ししたり、健康上の課題であればグッドコンディション推進室に相談したりする方が適切かもしれません。具体的なトラブルがあったら専用の窓口にご相談してください、具体的な体調面の不調が現れているのであれば健康相談をしてくださいということも、あわせてお伝えしています。

水摩:
これまでぴあさぽを利用いただいた人からは毎回、対話への満足度や、対話を通してどのように感じたかなどのフィードバックをいただいています。利用者の96%が大満足・満足と回答してくれました。「気持ちが少しでも軽くなった」「何かしらの気づきやヒントを得ることができた」という回答からも、対話の大切さに気づいた方が多いのではないかと思います。
特に、「気づきについて、日常の中でももっと深めていきたい」「本音をさらけ出せる場所でした」など、ぴあさぽ活動の本質を再認識させられるコメント、なかには「このような取り組みはヤフーならではの活動だと思います」というメッセージもありました。

1人で過ごしていると、自分の状態を客観的に見ることが難しいのではないでしょうか。対話は相手を通して自分を知り、内なる自分と向き合う時間でもあると思っています。
ぴあさぽを利用する人の多くが、しっかり自分と向き合いたい、自分の気持ちを棚卸ししたい、何か自分の助けになるものを会話の中で見つけたいという思いを持っている印象を受けています。

YJぴあさぽが考える「対話」とは
・思い込みなく、しっかり話を聴く
・結論や解決ありきではない
・内なる自分が見えてくる

対話のヒント「きちんと話を聴いてもらった」と相手が感じてくれることがとても大事

鈴木:
まず、「聴く」と「話す」を分けることを意識してみてください。普段の会話では相手の話を「聞きながら」次に話すことを考えてしまうことも多いのではないでしょうか? ですが、「対話」のときは何を答えよう、という思いはいったん横に置いて、「聴く」に集中してください。
また、もし1対1で話すときに「(相手に)どうしても向き合い過ぎてしまう…」と感じたら、「うわさ話を本人の目の前でする」のもオススメです。

私は高校1年生の子どもがいるのですが、子どもに向かって直接話すと反発されることも…。そんなときは「最近、高校生活が始まったけど、(子どもが)頑張ってるよね」という話を、娘がテレビを見ている後ろなどで、家族とあえてすることがあります。そうすると自分に向けて直接言われていないので受け入れやすいようです。
この、目の前でうわさ話のように話す方法は、オープンダイアローグでは「リフレクティング」といわれています。
参考)「オープンダイアローグ」に学ぶ 子どもとの対話の持つ可能性」

ぴあさぽのオープンダイアローグでは、お話を聴いた後に「私だけだと間違って解釈してしまっていることがあるかもしれないので、〇〇さんとちょっとお話しさせてもらいますね」とお伝えして、「今の話を聴いていてどう思いましたか?」と、参加された方の前でぴあさぽ同士が話します。また、ぴあさぽだけでなく、参加者からも反応がもらえるので、多様な視点のフィードバックが得られることもメリットです。
そのように自分についてワンクッションを置いて受け止められるので、そういう目線もあるんだと知ることができるのではないかと思っています。参考にした書籍で紹介されていた「リフレクティング」を実践してみたところ、その効果を実感できました。

改めて対話のヒントとしてお伝えしたいのは、あまり向き合いすぎてしまうと難しいということを理解しておいた方がいいということです。
「向き合いすぎる」というのは、こちらの思いがありすぎるとも言えます。親だったら子どもにこうなって欲しい、仕事だったらこのプロジェクトを成功させたいなど…。
それらをいったん横において、聴く。そして「聴くことは難しい」と意識することで、少し力を抜いて聴けるようになるのではないかと思います。

後藤:
大切なのは、「アイメッセージ」を返すことだと思っています。たとえば「〇〇しないといけないんです」と話されたら、「私はこう感じたのですが、〇〇しないといけないと思う理由はなんですか?」と質問します。
そして、同じ体験をしていないかぎり、本当の意味では理解できないですし、話の内容に100%の共感ができることばかりではないと思います。そんな時も、話している人の気持ちに寄り添い、その方と同じ目線で見て、心で感じる姿勢を大切にしています。

たとえば「時間通りに来るのってバカみたいですよね」と言われたら、多くの方は「(いや、時間通りに来た方がいいですよ)」と思いますよね。そのようなときは、「時間どおりに来るのはバカみたいだと思う理由はなんですか?」など、その人がその発言をしたときの思いや、感じたことを素直に質問しています。

あとは、「間を怖がらない」ことでしょうか。沈黙は「沈黙」という大事な時間でもあります。また、評価を加えないことも大切だと思います。ヤフーの社員は課題解決思考の強い人が多いからか、「相談されたら相談に応えてあげたい!」という思いでどうしても解決したくなるようです。でも、そこをぐっとこらえてほしいです。私たちはご自身の中に答えがあると思っているので、アドバイスはしていません。

ちなみに、私たちは話すときにはいつもの0.8倍速ぐらいにしています。たいてい話したいことがある人は1.5倍速ぐらいで話すのですが、あえてそれに合わせないようにしています。そうすることで、話している人もだんだん落ち着いたり、ペースを落としたりしてくれるようになります。

よい対話にするためのヒント
・「聴く」と「話す」を分ける
 次に話すことを考えながらではなく、「聴く」に集中する
・「うわさ話を本人の目の前でする」のもオススメ
・「聴くことは難しい」と頭のどこかで意識しながら話す
・大切なのは「アイメッセージ」を返すこと
・「間」を怖がらない
・アドバイスをしない、どうにかしてあげなければ! とは思わない
・話すときにはいつもの0.8倍速ぐらいに

ヤフーの中に「対話」を広げていきたい

鈴木:
ぴあさぽが対話を大事にしながら話すことで、参加者が「これから、対話をもっと大事にしてみようと思います」と言ってくれることもあります。ぴあさぽとの時間以外にも、ヤフーの中に「対話」が広がっていったらいいなと思います。 問題解決の方法には2つあって、望んでいる問題を解決する方法と、解決しないままでも別に気にならなくなるという解決方法があると思います。
もしかしたら今の状態は別に悪くないのでは? というのも大きな気づきですし、自問自答ではない時間を持ってもらうことに価値があると思っています。

水摩:
ぴあさぽの活動が現在の状態になるまで、本当に多くの人の力を借りました。そこで感じたのは、会社や、仲間の役に立つことを実行してみたいという思いは、その実現に向けて後押ししてくれる人がヤフーにはたくさんいる、ということです。
ヤフーの仲間がいたからこそ、この取組みが実現できたと感謝しています。これからも安心して対話してもらえる場として活動を続けていきたいと思います。

後藤:
ぴあさぽは、「ちょっと遠い同僚」の立場で活動しています。たとえば「目標設定が大変です」と言われたら会社の制度などの前提はわかっている上で、「どう大変ですか?」とていねいに質問していくようなイメージです。同僚としてサポートできることなのではないかと感じています。

ヤフーは新しい働き方でこれからもリモートワークが続いていくので、「自分のことをしっかり聴いてもらう」時間も大事にしてもらいたいと思います。
「対話」がとても価値のあるものだということ、そして「対話」そのものを、私たちの活動を通じて少しずつ広げていけたらと思っています。

ぴあさぽの活動を検討した際に参考にした書籍

・「オープンダイアローグとは何か」斎藤環
・「まんが やってみたくなるオープンダイアローグ」斎藤環 (著)、水谷緑 (著)
・「感じるオープンダイアローグ」森川 すいめい
・「オープンダイアローグ 私たちはこうしている」森川 すいめい
・「仕事に効くオープンダイアローグ」鈴木隆

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