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企業情報

2022.06.15

刻々と変化する災害状況をリアルタイムに届ける「災害マップ」

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2022年1月にYahoo!天気・災害のTwitterアカウントで実施したアンケート「電車に乗っているときにもし大きな地震が発生したらどうする?」では、急な災害時にはまず、「手すりやつり革などにしっかりつかまる」と回答した方が63.4%でした。そして、次に多かったのは「スマホで最新情報をチェックする」の27.1%でした。

Yahoo!防災速報アプリの「災害マップ」は、災害発生直後や災害発生前後にユーザーが投稿した災害情報が地図上にリアルタイムに表示される機能です。また、2021年12月からはTwitterに投稿された災害状況もリアルタイムに確認いただけるようになりました。これらの情報を確認することで、災害時にどう行動したらよいか判断する際に役立てていただくことを目的にしています。

今回は、AI(人工知能)と人の目で解析したSNSからの災害情報を災害マップに配信している、株式会社Spectee(スペクティ)代表取締役の村上さんに、連携の経緯やスペクティのこれまでの取り組み、災害時にSNSに投稿する際に心がけたいことなどをうかがいました。

    目次:
  1. 災害マップとスペクティ 連携の背景
  2. SNSに投稿された内容をAIと人の目で精査してから発信
  3. 最初はAIのみで対応 その後、人が入ることで臨機応変な対応が可能になった
  4. SNSで災害時に役立つ投稿をするために知っておきたいこと
  5. 災害時に正しく情報を得て判断するために心がけたいこと
  6. 日本を「災害大国」から「防災大国」へ変えていきたい
  7. 災害マップでリアルタイム検索の投稿内容を確認するには
  8. マンガ「災害マップ」の使い方
左から、Spectee村上さん、ヤフー諸岡
村上 建治郎(むらかみ けんじろう)さん
株式会社Spectee(https://spectee.co.jp/)代表取締役 CEO。エー・アイ・アイ株式会社(ソニー子会社)にて、デジタルコンテンツの事業開発を担当。2005年 米Charles River Laboratories入社、日本企業向けマーケティングに従事。2007年 シスコシステムズ入社、パートナー・サービス・デベロップメント・マネージャーなどを経て、2011年 同社を退社し独立、ユークリッドラボ株式会社(現・株式会社Spectee)を創業。

Spectee(以下、スペクティ)が生まれたきっかけ:
1995年に発生した阪神・淡路大震災の当時、私は大学生で神戸市のアパートに住んでいました。そのときに被災地のボランティア活動に取り組んだことで、「防災で何か役に立ちたい」という強い思いが生まれました。
2011年3月11日の東日本大震災の発生後にも、ボランティアとして現地に行きました。そのとき、TwitterなどのSNSによる個人からの発信は現場の「リアル」をタイムリーに伝えていると感じたことが、このサービスが生まれたきっかけです。

諸岡 達也(もろおか たつや)
アルプス社にて地図の仕様設計・編集・制作管理を担当。2008年にヤフーに入社し、Yahoo!地図・スマートフォン向け地図・カーナビ道路交通情報などの仕様設計やプロジェクト管理などを担当したのち、現在は災害マップを担当している。

災害マップとスペクティ 連携の背景

村上さん:
スペクティは、SNSの情報解析を通じて、災害時に有用性の高い情報をリアルタイムに配信するサービスです。現在は全国600社以上の企業や自治体・官公庁に提供しています(2021年12月末時点)。
私たちは、災害時に「必要な情報を」「必要な時に」「必要な人に」、「正確かつ最適な状態で」届けることをモットーとしています。
「to C(一般のお客様向けサービス)もやらないのか」とも言っていただくこともありますが、スペクティの災害情報をより多くの方に届けるためには、すでに知名度があり多くの方が使っているサービスと組ませていただく方がよいと考えていました。そこで、ヤフーさんのリアルタイム検索に災害関連の情報を提供するところから連携をスタートしました。
その後、災害情報を少しでも多くの方に届けたいと考え、ヤフーさんの(Yahoo!防災速報の)災害マップとの連携が実現しました。

諸岡:
ヤフーの災害マップでまだ実装できていない機能の1つが、写真や動画の投稿機能です。もちろん、言葉で非常に詳しく災害の状況を書いてくださるユーザーも多く、非常に参考になっています。
ただ、災害をより「自分事」として捉え、命を守る行動につなげていただくためにも、ゆくゆくは動画や写真もあわせて投稿できるようにしたい、と以前から考えていました。
スペクティさんがリアルタイム検索と連携して展開していた災害情報を見て、テキストだけでなく写真や動画も合わせることで、被害の状況などが一目瞭然になると感じました。

ただ、災害マップ側から投稿していただいたテキストは、その内容について必ずチェックが入っていますが、画像や動画を投稿していただけるようになったとしても、正確性の確認など仕組みや体制を作るための準備が必要です。
一方、スペクティさんの情報は、SNSの投稿内容をAIで分析した上に、人の目ですべてを確認した上で発信されています。そのような情報をぜひ、災害マップで多くの方に届けたいと思いました。

SNSに投稿された内容をAIと人の目で精査してから発信

村上さん:
約30人のチームで、24時間365日体制で情報の監視と精査、発信を行っています。すべての情報を必ず人の目で確認してから配信しています。
災害発生時にSNSに投稿された情報を、まずAIで選別します。具体的には、過去の災害時に流れたデマで投稿された画像やテキストなどと比べ、信用性やデマの可能性がどのぐらいあるのかを判断します。さらに、投稿者の普段の投稿、プロフィールやつながり、フォローしているアカウント、フォロワーとの関係などもあわせて確認しています。これらの情報から、「この人の投稿内容の信用性はどの程度か」をスコアリングしています。
AIで分析され「信用性がある」と判断された投稿内容は、さらに専門スタッフが確認します。投稿内容に問題がない場合は、その情報が配信されるという流れです。

災害時には「どこでどのような災害が起きているのか」という場所の情報がとても大切です。そのため、投稿された写真に位置情報がなかったとしても、標識や看板などが写っていたら、そこから文字を読み取って場所を自動検索し、AIが場所を判別します。そして、その結果が合っているかを人の目で確認しています。
また、SNSで投稿されたのはまだ1件でも、それは正しい情報である可能性があります。そのため、たとえば火災の映像が上がってきた場合は、消防署に電話して「今、この場所でおそらく火事が起きていると思うのですが、正しいですか?」と確認することもあります。

何か事故や災害が発生したなどの投稿は、AIと人の目による確認を経て、1投稿につき約1分から数分で配信しています。
対応メンバーが最終的にその情報を配信するかどうかを決めるため、災害時にはかなりプレッシャーもあると思います。対応チームの定例会議には私も必ず出席していて、疑問点やオペレーションの中で気になる点があれば、できるだけその場で意思決定しています。
また、その会議では必ずお客さまからのフィードバックを伝えるようにしています。
たとえば、お客様から「あのとき地震があって、この投稿が上がってきたことですごく助かった」などのフィードバックを伝えることで、「自分が配信した内容がお客様に役立てていただけた」という喜びやモチベーションにもつながっているようです。

SNSで投稿された内容を、AIと専門スタッフが24時間365日体制で確認
1)AIで分析、精査
・過去のデマ投稿と比較
・投稿者の投稿、プロフィール、フォローアカウント、フォロワーなども確認
・写っている標識や看板などから文字を読み取り場所を特定

2)人の目で必ず確認
・人の目で最終確認を行ってから配信
・AIの判別が合っているか、人の目で必ず確認

最初はAIのみで対応 その後、人が入ることで臨機応変な対応が可能になった

村上さん:
今後も基本、「人が確認してから配信する」ことを続けていくつもりです。これは、人が入ることで臨機応変な対応ができることが可能になるということも理由の1つです。
お客さまのニーズは変わってきているので、それによって対応の優先順位も変わります。たとえば、最初はいかにデマを排除するか、誤情報を抜くかがメインでした。ですが、今はそれだけではなく、災害が発生したときに優先順位がどうなるか、優先すべき情報は何なのかという情報も求められるようになってきました。

たとえば、台風にもいろいろな種類があります。風が強い台風では、屋根が飛んでしまうなどの風による被害が起きる可能性があるので、風による被害をより重点的に取る必要があります。
一方、大雨を降らすような台風の場合は、河川が氾濫する可能性も出てきます。そうなると注目すべき情報は風よりも雨になり、河川の氾濫を特に注視しなくてはなりません。
また、台風の通過範囲にある河川がどの河川かを調べて、注視する優先度を高くしておくなどの対応も行っています。たとえば多摩川が氾濫するかもしれない、となると、SNS上でも「多摩川」を含む内容をつぶやく人が多くなります。このような投稿をしっかり取得するためにも、台風が通る川の名前をあらかじめ情報取得用のツールに登録しておくなど、状況に応じて臨機応変に対応しています。
初期のスペクティは、投稿されたデータを完全に自動で取得し、フィルタリングしていました。臨機応変に優先順位を変え、「今はこの川が重要だから、ここはしっかり見ておこう」など柔軟な対応が可能になったのは、やはり人が対応しているからこそだと思います。

SNSで災害時に役立つ投稿をするために知っておきたいこと

村上さん:
たとえば大きな地震があったときには、SNSで「揺れた」とだけつぶやく方も多いのではないでしょうか? ですが、たとえば「(どこかで)崖崩れが起きている」という投稿があっても、それがどこなのかわからないと、災害情報として発信できません。
災害情報を投稿する際は、場所をできるだけ明確にしてほしいと思います。たとえば、崖崩れで崩れた部分だけを写したものだけでは、なかなかその場所を特定できません。ですが、周囲の建物や電信柱などを一緒に写してもらえれば特定できる可能性が高くなります。
また、SNS上でみなさんが投稿している災害関連の情報は、実は私たちのスペクティの仕組みを使って自治体やヤフーさんの災害マップを通じて多くの人の役に立っているということを、みなさんに知っておいてほしいと思います。

諸岡:
TwitterなどSNSで上げていただく情報は、その場所にいないとわからない情報です。村上さんがおっしゃったように、災害マップで投稿いただく内容もまさに、そのときにその場所にいるからこその状況がわかるものなので、とても役に立っています。 
投稿いただく際は、たとえば河川だったり山だったり、道路などについて、テキストで具体的に「〇〇川の周辺が危険です」など、可能な範囲で名称を書いていただけるとありがたいですね。
また、たとえばご家族など大切な人に「〇〇では危険な状況になっているから、命を守るための行動をとってほしい」と伝えるような気持ちで投稿いただくとよいかもしれません。

SNSで災害時に役立つ投稿をするために
1)場所をできるだけ明確にする
・写真や動画を投稿するときは、周囲の建物や電柱などの目印も一緒に
・テキストで投稿するときは、河川や山、道路などの名称も書く

2)家族などに伝えるような気持ちで
・大事な人に命を守る行動をとってもらうにはどう伝えたらよいか考える
・SNS上で投稿している災害関連の情報は、多くの人に役立っている

災害時に正しく情報を得て判断するために心がけたいこと

村上さん:
SNSにはいろいろな情報が投稿されるので、大規模な災害であればあるほど、本当に有象無象の情報になってしまいます。中にはちょっと怪しいものも入ってくるので、それらを受け取る際は、「SNSの情報には真偽不明なものも混ざっている」ということを認識することが大切です。
災害が発生したときに私たちが一番注意して確認するのは、派手な映像や写真の投稿です。もちろん、それが事実のときもありますが、たいていの場合、派手な映像は拡散目的で、災害に乗じてより人の目を引こうとするものが多いため、注意してください。

そのため、基本的に、災害はテレビの情報や公式サイトなど複数の情報で必ず確認をすることを習慣にした方がいいと思います。災害が発生したときに得た情報に対して、他のソースもあわせて見られる状態にしておいてください。

災害時にSNSから正しく情報を得るために
1)SNSの情報には真偽不明なものも混じっていると認識しておく
2)派手な映像や写真が投稿された際には拡散目的の場合があるため注意する
3)SNSだけでなく、テレビや公式サイトなど複数の情報を確認することを習慣にする

日本を「災害大国」から「防災大国」へ変えていきたい

村上さん:
災害時に、TwitterだけでなくInstagramやTikTokにも投稿する人は近年増えています。
これらSNSの投稿という、1つの点の情報を面的に表して、自分の周辺の被害状況をよりわかりやすくすることがとても重要です。
スペクティの災害情報を、Yahoo!防災速報を通じて1人でも多くの方に届けたいと思っています。また、今後はヤフーさんの災害マップに投稿された情報をスペクティ側にも出していくなどの連携も考えたいですね。

諸岡:
Yahoo!防災速報の災害マップでは、あらかじめ位置情報の取得を許可してくださっているユーザーの方に投稿していただくことが多いため、テキストを投稿いただくだけで「どこで起きていることか」がわかりとても有効な情報となっていると思います。
今後も、災害マップに投稿いただく情報と、スペクティさんからいただくSNS上で発信される情報をあわせることで、より多くの方に災害情報を届けたいと考えています。
また、災害時にも「日常的に見ている」SNSやアプリで情報を得る方が多いと思いますので、普段から災害に対する意識を高めていただいたり、災害マップを使っていただいたりする取り組みも、今後より強化していきたいですね。

村上さん:
スペクティは、東日本大震災をきっかけに生まれたサービスです。災害があったときに最適な情報を届け、被害状況を一番わかりやすく伝えていくことが、私たちがやるべきことだと思っています。
東日本大震災の発生時は、スマホの普及率は10%もなく、多くの方がまだガラケーでした。ですが、今は多くの方がスマホを使うようになり、「地震が起きたらSNSを見る」というような動きが習慣づいていると思います。何かあったときにSNSを見よう、スマホを見ようというのはもう当たり前になっています。そのときにヤフーさんとスペクティが発信する情報もあわせて見てもらうための仕組みも、今後は考えていきたいですね。

日本は、地震も起きれば、大雨も降るし、台風もやって来るし、津波も来るし。直近10年で国民1人当たりの自然災害による被害額が一番大きいのは日本です。
災害が毎年必ず起きている日本から出てきたテクノロジーやサービスを、もっと世界に広げていきたいと思っています。
また、私たちは防災や危機管理に特化して事業や実証実験も進めているので、これからもその内容を一緒に広めていただいて、国内、世界問わず、防災と危機管理のレベルを上げていくことに、双方の良さを生かして取り組んでいけたらと思います。

諸岡:
村上さんのおっしゃるように、日本は「災害大国」です。「防災大国」にするために災害から防災へ進めていく役割を、私たちはスペクティさんと一緒に担っていきたいと思います。

災害発生時に災害マップで確認できる情報
1)災害マップで投稿された災害情報
ユーザーが災害マップに投稿した災害情報を、人の目によるチェックを経て地図上にリアルタイムに表示

2)Twitterで投稿された情報
Twitterで投稿された災害情報を「スペクティ」がAIで解析、写真や動画をもとに正しい情報か人の目で判断した情報

災害マップでリアルタイム検索の投稿内容を確認するには

1. Yahoo!防災速報を開き、「マップ」をタップすると、災害マップが起動します。
2. 地図上に表示されているアイコンをタップすると、投稿内容が表示されます。
3. 「リアルタイム検索で続きを見る」をタップすると、Yahoo!リアルタイム検索に遷移し、投稿全体を確認できます。

主な機能

1. 災害状況の写真・動画が確認できる
災害に関する写真・動画付きのTwitterの投稿(以下、ツイート)を表示することで、災害状況が視覚的にわかります。
2.地震や大雪などの状況も確認できる
台風や大雨などの風水害だけでなく、地震や大雪など、さまざまな災害の状況を確認できるようになりました。冬場の降雪時における外出の判断や危険エリアの回避にも活用できます。
3. 災害に関するツイートの場所が地図上でわかる
災害に関するツイートが、どの地点のものなのかがわかるよう、マップ上で表示することにより、正確に災害発生地点を把握できるようになりました。

災害マップでできること
・災害状況の写真・動画も確認できる
・災害に関するツイートの場所が地図上でわかる
・地震や大雪などの状況も確認できる

マンガ「災害マップ」の使い方

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