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2022.05.31

水害大国の日本に潜むさまざまなリスク この夏、水の事故から身を守るために必要なことは?

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融雪や集中豪雨、台風などで川が増水しやすい時期を出水期(6月から10月ごろ)といいます。近年、集中豪雨などで災害が発生したり、子どもたちの夏休みやお盆期間には、レジャー中の水難事故がニュースで報じられたりしています。
新型コロナウイルス感染症に関して、行政の規制も緩和されたことで、今年のゴールデンウィーク中には各地で昨年や一昨年に比べて人出が増えました。今年の夏は、海や川、湖での釣り、海水浴など、さらにレジャーを楽しまれる方も増えそうです。
災害や水難事故から身を守るためには、どんなことに気をつければいいのでしょうか。そして、親や大人は子どもが水難事故に巻き込まれるリスクを減らすために何ができるしょうか。
今回は、2019年7月からYahoo!ニュース 個人で水難事故の専門家として精力的に執筆を続け、水難事故の恐ろしさや救助法をわかりやすく解説したことで、オーサーアワード2021(※)で大賞を受賞された斎藤秀俊さんにお話を聞きました。

※オーサーアワードでは、オーサー(Yahoo!ニュース 個人で執筆する有識者や専門家)による投票などをもとに「Yahoo!ニュース 個人」の編集部が審査を行い、毎年オーサーの中から大賞1名を表彰しています。
Yahoo!ニュース 個人「オーサーアワード2021」水難学会会長の斎藤秀俊氏が大賞を受賞(プレスリリース)

斎藤 秀俊(さいとう ひでとし)さん
一般社団法人水難学会会長、国立大学法人長岡技術科学大学大学院教授
https://news.yahoo.co.jp/byline/saitohidetoshi

出水期に気をつけたいこと、私たちにできるのはどんなことでしょうか?

2021年は首都圏で目立つほどの大きな水害がなかったと、少し安心されている方もいるかもしれません。しかし、7月に静岡県熱海市や神奈川県箱根町などを襲った集中豪雨、8月に九州、北陸、中国地方を襲った集中豪雨では大きな被害がありました。2020年の7月に、西日本から東日本、東北地方の広い範囲を襲った豪雨(令和2年7月豪雨)では、熊本県などで河川の氾濫が相次ぎ、甚大な被害がありました。2019年10月の台風19号では、記録的な大雨によって都内でも多摩川沿いの一部地域に被害が出ましたよね。
近年、温暖化の影響もあって日本全域で台風や豪雨の被害は増え続けていますので、今年も水害に対する備えが必要です。
豪雨災害時は、警戒レベルに応じて、注意情報を確認しながら早め早めに準備をしたり、避難をしたりすることが大事です。水害の可能性が高いエリアにお住まいの方、高齢者のみなさん、高齢者や小さなお子さんと同居されている方は特に意識していただきたいと思います。

※画像制作:Yahoo!天気・災害

スマートフォンなどの緊急通報手段を肌身から離さないことも大事です。また、着替えやタオルなどをポリ袋に詰め、リュックサックに入れて避難すれば、いざというときに、浮き具になります。直前に慌てても遅いですから、日頃から意識して備えておくことが必要です。
冠水(※)が始まったら、建物の2階などに垂直避難しましょう。緊急時、流れのある水中を歩かなければならない場合、大人は水深40cm程度では歩行できますが、腰下くらいまでになると足を取られてしまい大変危険です。なお、警戒レベルが上がった場合、車は避難場所になりませんので、ご注意ください。
※冠水:集中豪雨や洪水などによって道路や畑など、普段は水のない場所が水に浸ること

また、水難事故から身を守るキーワードとして覚えておいていただきたいのが、「ういてまて」です。これは、仰向けに浮かぶ「背浮き」で、水面から顔を出した体勢で救助を待つ技能。決して無理して泳ごうとせず、ただ浮いていましょう。ぜひ覚えておいてください。

※画像制作:Yahoo!ニュース

コロナ禍で迎えるこの夏、水辺のレジャーで注意喚起したいことは何でしょうか?

ここ数年来(コロナ禍前から)、子どもが海で命を落とす事故は減っているのですが、川の事故が少し増えている状況があります。また、今年については、昨年、一昨年に比べて、「コロナ自粛」が意識されなくなってくるかもしれない、という懸念もありますね。
川には流れがあるだけではなく、急に深くなるところがあります。川では歩けるほどの浅いところと急に深くなっているところと極端に分かれるのです。人はその深みにはまって呼吸ができなくなり、溺れます。
ですから、足を入れるなら膝下までで、泳いではいけません。また、ブロックなどの河川構造体の近くは危険なので近づかないように。川は子どもたちだけで遊びに行ける場所でもありますが、川に近づくリスクを認識して、日頃からよく注意喚起をしてください。

※画像制作:Yahoo!ニュース

最近は、EC(ネット通販)などで安価にライフジャケットを購入できます。また、学校の授業などでは「ういてまて」が指導されるようになってきていますが、レジャーに行く際は、親子でいざというときの備えをしっかり意識してほしいです。
また、万が一、事故に巻き込まれたお子さんなどを目の前にすると、助けに行きたくなるのが人間の本能かもしれません。ですが、訓練を受けていない方が救出に向かうことで被害が拡大するのが実情です。冷静になって、ご自身で対処できることを心がけてください。
それから、検証してわかったことですが、マスク着用が定着した昨今、自分がマスクをしていることを忘れる危険なケースが多々あります。マスクをしたまま水に転落したら呼吸ができませんので、水辺でのマスク着装は、呼吸を確保することを優先して、柔軟に判断してください。

約3年間で208記事、764オーサーコメントと、ハイペースで執筆・コメントされていますが、オーサーにはどんなやりがいがありますか?

※2022年5月27日時点

多くの方が読んでくれることは励みになります。PVはもちろん、Yahoo!ニュース 個人の編集部に提供いただいているデータ分析ツールを使うことで、記事によって、どういうユーザー層が関心を持って読んでくれているのか、ということがわかります。
水難事故は特に若年層に被害が多いため、若い方にも読んでほしいという思いが強くあります。そこで、記事と連動する形で、YouTubeで動画を配信してみたり、Twitterで拡散してみたりということにもチャレンジしています。
動画は基本的に、三脚などを活用しながら私自身が制作しています。最初は時間がかかっていましたが、少しずつ慣れてきました。動画で仮説の検証を撮影して、それを元に記事を書き進めていくと、起きた真実だけを記していくため執筆しやすいという利点もあります。
オーサーになったことで、テレビや新聞などのメディアから解説コメントを求められる機会がとても増えました。影響力のあるプラットフォームで情報発信ができていること、ユーザーに検索されやすい記事をストックできていることを日々、実感しますね。

<ため池に落ちる様子(YouTube)>

オーサーとしての思い出深いエピソード、反響の大きかった記事などはありますか?

ため池に落ちると、なぜ命を落とすのか」を動画付きで公開しました。2016年に香川県丸亀市で実際に起きた事故に対する一連の検証、調査レポートです。
波のない水面の穏やかなため池に落ちても、「大人なら、なんとかはい上がってこられるのではないか?」と考える方もいらっしゃるかもしれません。しかし、実は危険な場所です。
この記事を読まれた遺族の方が連絡をくださって、「事故の原因を誰も教えてくれず、時間が経ち、遺族以外の人たちから忘れ去られた頃に詳細なレポートが出て、救われました。やっと事故現場に花を手向けることができました」という、ご連絡がありました。
多くの方の知的好奇心を満たすことも重要ですが、行き場のない喪失感や疑問を抱えたままの遺族に寄りそえたことは、オーサーならではの経験でした。
亡くなられた方の命が戻ってくるわけではありませんが、水難事故の研究者である私にとっても救いになりました。今後も、ユーザーのみなさまのためになる記事や動画を作成していきたいと思います。同じような事故が繰り返されない一つのきっかけになったら何よりです。

※Yahoo!ニュース 個人は、各分野の専門家であるオーサー(書き手)が、その専門知識をもとにニュース記事を執筆・発信するプラットフォームです。
https://support.yahoo-net.jp/SccNews/s/article/H000011258

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