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2023.05.10

「偶然」を「チャンス」に変えるための5つのポイントは?「対話」から学ぶコミュニケーションのヒント 「聴く」ための中級編(71~80)

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この連載では、よい対話にするために心がけたいことや「聴く」ためのヒントを、「YJぴあさぽ(※1)」のメンバーがお伝えしています。
※1 YJぴあさぽ:
産業カウンセラーや国家資格キャリアコンサルタントの有資格社員によるボランティアプロジェクト。

まさみん
ZアカデミアでZホールディングス全体の組織活性、人材育成、コミュニケーション円滑化の取り組みなどを担当。
保有資格:国家資格キャリアコンサルタント、トラストコーチングスクール 認定コーチング スキルアドバイザー

前回は、気持ちを「言葉にする」ために心がけたいこと、について書きました。
記事を読んでくださった方からは、「案外、自分のもやもやを言葉にしていないなと気づいた」という声を多くいただきました。

私は、もやもやを感じたときは「ん? 今、どうしてもやもやしたんだろう…?」と数秒でも時間を取って、考えるようにしています。
また、「なんとなくうれしかった」時なども、そう感じた理由を、できるだけ言葉にしてみます。
相手に伝える時も、たとえば「とても好きな色の花だったので、プレゼントしてくれてうれしかった」などと「一言」添えることを心がけています。

春は新年度や新学期など、いろいろなことがスタートする季節ですね。
今回のテーマは、「思い通りにならない」ことが「チャンス」に変わることもある、です。
このブログを書き始めた時に、春になったらぜひ、今回の話をお伝えしたいと思っていました。

この春、新しい環境に身をおくようになった方のなかには、進学先や就職先、または、配属先が思い描いていた道と違ったという方も少なからずいると思います。
ときには、職場や学校などに向かう足取りが少し重い、ということもあるかもしれません。
今回の記事が、そんな方へのヒントになればと思います。

71.想像していたのと違う道だと感じた時は?

進学先や就職先などの新しい環境が、想像と違っていた…という経験はありませんか?
たとえば、就職先は希望通りだけど、配属先が希望通りではなかった。
希望の学校に進学したけれど、1カ月過ごしてみたら、なんとなく想像していた学校生活とは違っていた…など。

以前の私は、「想像と違う」ことを悲観して、足を止めてしまったこともありました。
でも、キャリアコンサルタントの勉強を始めてからは、「見方やとらえ方を変えてみる」ことが自分を救ってくれたことがありました。

YJぴあさぽで話を聴いている時は、共感的理解を示しつつ「違う視点で見てみるとどうですか?」「こんなふうには考えられないでしょうか?」などと問いかけています。
このように。第三者の視点で自分を俯瞰(ふかん)してみる、「メタ認知」の視点はとても大切です。
想像と違う道が出てきたら、自分をたとえばゲームやドラマの主人公に見立ててみてはどうでしょうか。
ゲームボードの上にいくつか道があり、1つはふさがれてしまったとします。そんな時は、すべてのボードが見える位置に立っている自分を想像してみてください。
想像と違う道しかないけれど、もしかしたらその道の先は明るく、チャンスにつながっているのかもしれません。

72.想像もしない偶然の出来事が、よい結果につながることも

ここで、「計画された偶発性理論」(Planned Happenstance Theory)という理論をご紹介します。
キャリアについて学ぶ中で、この理論が好きという方が多いのですが、私もその一人です。
この理論は、アメリカのスタンフォード大学のジョン・D・クランボルツ(Krumboltz.J.D)教授が唱えました。

・キャリアの8割は偶然の出来事で決まる
・個人のキャリア形成は想像もしない偶然の出来事に大きく影響をうける
・偶然に対して最大限努力することで、よい結果がもたらされる

キャリアプランにおけるゴールは、そこに迷わず進むためにも決めた方がいいと思います。でも、そこに「固執しすぎない」というところがポイントだと思います。
キャリアプランにおける「こうでなければいけない」は、ときには自分を苦しめてしまうからです。

そして、キャリアは「偶然の出来事」(偶然にみえるような出来事)に左右されることも多くあります。
「計画された偶発性理論」は、その偶然を「おお、そうきたか!」と前向きに受け止めて努力してみると、想像していなかった良い結果がもたらされることがある、という考え方です。

この理論については、もう少し後ろでふれていきます。
※参照)キャリアコンサルタント大辞典: 【キャリアに役立つ】クランボルツの「プランドハップンスタンス理論」とは?

(写真はイメージです)

73.思うようにいかないことは「特別」ではないのかも

先ほど「キャリアプランに固執しすぎない方がいい」と書きましたが、実は、私は「計画」が大好きです。
以前は、計画が思い通りにいかないと落ち込んだり、機嫌が悪くなったり、時には他のことが考えられないこともありました。頭の中は「あれだけ努力したのに、どうしてこうなるのよ!」という思いが渦巻いていました。

また、たとえば、一緒にイベントに行く予定だった友人が待ち合わせ時間通りに来ず、もう始まってしまった。自分は予定通りに来ていたし、少し余裕をもって向かいたかったのに…といらいらしてしまったことはありませんか?
このように、相手がいる時は特に思うようにいかないと感じることが多いのではないでしょうか。
「相手がいるときは、思うようにいかないのが当たり前」くらいの気持ちでいたほうが、気持ちが楽かもしれませんね。

74.偶然を「チャンス」に変えることのできる人はどんな人?

73.で紹介した「計画された偶発性理論」(Planned Happenstance Theory)。
この理論を提唱したクルンボルツ教授自身は、大学時代に大好きなテニスに熱中しすぎてしまい、なかなか専攻分野を決められませんでした。そこで、テニスのコーチに相談してみたところ、そのコーチが偶然にも心理学を専攻した人で、それをきっかけに彼も同じ道に進んだとか。

まさに「計画されていない偶発的な出来事でキャリアが決まった」ことをきっかけに、この理論を世の中に広めることになったそうです。彼も偶然を「チャンス」に変えたひとりでした。
※参照)新版 キャリアの心理学 渡辺三枝子編著

75. 「宇宙兄弟」のムッタは、好奇心と柔軟性で偶然を「チャンス」に変える天才?

「計画された偶発性理論」では、偶然を「チャンス」に変えるための5つのポイント「好奇心」、「持続性」、「楽観性」、「柔軟性」「冒険心」をあげています。

これを見た時、私は自分の大好きなマンガ「宇宙兄弟」の南波六太(以下、ムッタ)を思い出しました。
宇宙飛行士を目指す彼が、この5つのスキルを体現している理由を、私なりに解釈してみました。
※参照)日本の人事部
「宇宙兄弟」(Yahoo!ショッピング)

ムッタは偶然を「チャンス」に変えて宇宙飛行士になったのだと、キャリアコンサルタントの勉強をしているときに、感じました。
ムッタは優秀なのですが、自分の能力を信じられず、ネガティブ思考に陥りがち。
ですが、「失業」という挫折のなか、幼い頃に弟と誓い合った「宇宙飛行士になる」夢を取り戻し、すでにその夢をかなえていた弟・ヒビトの後を追い始めます。 ※「宇宙兄弟」公式サイトより

ムッタが失業した理由は、弟を侮辱した会社の上司に頭突きをしたからなのですが、これをきっかけに、ムッタにとっての「想像と違う出来事」が始まります。
「宇宙飛行士になる」という昔からの夢や「宇宙が好き」という思いに気づき始めたムッタは、弟や、両親のサポートも得ながら、宇宙飛行士選別試験の選考を通過していきます。

JAXAの選考が進み、閉鎖空間で5名の中から2名を選ばないといけない場面で、ムッタは「じゃんけんで決めよう」といいだします。これはかなり柔軟な発想なのではないでしょうか。
他にも彼の「柔軟性」を感じる場面はいろいろあります。たとえば「近いうちに実現可能な基地」をテーマに「崖や谷に落ちない、月面バギーの改良案」設備を考えるという試験を受けたときのこと。
ムッタが提案したのは、「道なき月面に道を映し出す」という、誰も考えなかったアイデアでした。

76.誰の心にも、好奇心は眠っているはず

1.「好奇心」新しいことにワクワクできる。興味を持てる
2.「持続性」仮に失敗しても、立ち直り努力が続けられる
3. 「楽観性」物事をポジティブに捉えることができる
4. 「柔軟性」こだわりすぎず、行動や思いを変えることができる
5. 「冒険心」リスクを取れる。先が見えない、結果がわからないことでも、トライできる

ムッタは、これらのスキルをすべて持っていると思ったのですが、その好奇心はときどき隠れてしまうことにも気がつきました。

ムッタたちが住む町の天文台で暮らしている、世界的な天文学者・シャロン博士。常にポジティブでムッタや弟のヒビトの第二の母的な存在です。
幼い2人は、シャロン博士のところに行き、宇宙の話を聞いたり、惑星をみたりしたことで、宇宙への夢を加速させます。

ある時、3人で演奏をしようという話になります。幼いムッタは、ギター、トランペット、ピアノなどの楽器から「全部やってみなきゃ決められない」とすべて試した結果、音を出すのが一番難しい、トランペットを選びます。ムッタの好奇心旺盛な性格がよくわかるシーンです。
ですが、大人になったムッタは、宇宙飛行士の選抜の途中で「宇宙飛行士なんてほんの一握りの人しかなれない、無理かもしれない」と思い始めます。
そんな彼にシャロン博士は「昔は、なんでも試して、その中でも一番難しいものに挑戦していたよ!」と言うのです。

大人になるとだんだん、幼いころのような好奇心は薄れたり、隠れてしまったりします。
でも、自分の中に眠っているかもしれない好奇心を見つけて、それに素直に従うことは、大人になっても大事なことだと思います。

(写真はイメージです)

77.今に集中してポジティブに! 少しだけリスクを取る冒険心

宇宙飛行士になったムッタは、月への一歩となるNEEMO訓練(※2)に参加します。
※2 NEEMO訓練:フロリダの海底20Mで海底に2週間居住しながら行う訓練

選抜試験のころからの仲間でもある、親友のケンジとこの訓練では競い合うことになります。
さらに、1人しか月への訓練には参加できないと知り、2人の間には微妙な空気が流れます…。
でも、ムッタはこの時、ケンジにこう言います。
「大事なのは結局『今』だ。今、この訓練がどうやったら最高のものになるかだけ考える。やったことはきっと俺らの力に変わるはず。だからケンジ、ちょっとだけ無理なことに挑戦してこーぜ」

宇宙飛行士は、いつアサインされるかわかりません。そのために、いつアサインされてもいいように過酷な訓練を積んでいく。先が見えないけど、トライし続ける。
先が見えない、結果がわからないことでも、トライできる「冒険心」を持ち続けること。
これが、一番難しいように感じます。

78.周りからサポートを受けて5つのスキルをそろえるのも「あり」 ?

ムッタのキャラクターの設定上「ネガティブに考えがちな兄」だからなのか、「楽観性」が少し低いのかもしれません。
なのに、なぜ、彼はうまくいっているのか? それは、周りの人たちが「楽観性」を補っているからなのではないかと感じました。

まず、元気でマイペースな南波兄弟のお父さん、お母さん。
お母さんは、失業したムッタの転職活動のため、JAXAへ履歴書を送っています。そして、お母さんはオリジナルの歌をよく口ずさみ、いつも笑顔で陽気なムードメーカーでもあります。そして、お父さんはダジャレが大好き。
このご両親は、二人の子ども(ムッタとヒビト)のことを、常にポジティブに捉えています。親が子供にできる一番のことは、「子どもを楽観的にみる」ことかもしれません。
自分では自分のことをポジティブに捉えられなかったとしても、足りない部分は周りの人から補ってもらうこともできると思います。
※参照)宇宙兄弟オフィシャルウェブサイト

79.「絶対にあきらめない」持続性がチャンスにつながる

NASA宇宙飛行士室長バトラー(※3)に評価されていなかったムッタは、月への訓練にアサインされるために、何度も何度も思いを伝えます。
さらに取った手段は、最も激しい急上昇をするアクロバット「バーティカルクラムロール」を見せるというもの。
※3 バトラー:アメリカ空軍士官学校卒業の空軍パイロット。多くのミッションに参加しており、操縦の腕も巧みという設定

自分がムッタの立場だったら、何度もあきらめたくなるだろうな…と思うような厳しい状況でも、ムッタは「もうだめだ…」と一度は落ち込むものの、翌日には気持ちをまた切り替えて挑戦し続けます。

改めて、「計画された偶発性理論」であげている、偶然を「チャンス」に変えるための5つのポイントは、以下の5つ。

1.「好奇心」新しいことにワクワクできる。興味を持てる
2.「持続性」仮に失敗しても、立ち直り努力が続けられる
3. 「楽観性」物事をポジティブに捉えることができる
4. 「柔軟性」こだわりすぎず、行動や思いを変えることができる
5. 「冒険心」リスクを取れる。先が見えない、結果がわからないことでもトライできる

このスキルを持っている人は、偶然を「チャンス」に変えられる人。
次は、あなたがムッタのように偶然をチャンスに変えてみませんか? また、ご自分の好きな漫画やドラマのキャラクターに5つのスキルはあるか? と考えてみるのも楽しいと思います。

80:「どちらが正しいか」ではなく「ワクワク」する方を選ぶ

最後に、ぜひお伝えしたいヒントです。

「宇宙兄弟」の中でもう一つ、キャリアの理論に通じると感じた場面があります。 宇宙飛行士選抜試験のエピソードに戻ります。5人の中から2人選ぶようにと言われ、どうやって選ぶのが正しいのか、悩んでいる時、ムッタは「迷ったときはね、『どっちが正しい』で考えちゃだめよ。『どっちが楽しいか』で決めなさい」という、シャロン博士が言っていた言葉をふと思い出します。

この記事で以前書いたことに通じるような気がします。
47.多くの人は「Must」と「Want」を使い分けている

大人になればなるほど、何かを選ぶとき、どうしても「どちらが正しいか」で決めてしまいがちです。
でも、何が正しいのか、何をする必要があるのか、何をしなくてはいけないのかを「Must」で考えるのではなく、何がしたいのか、何にワクワクするのか、何が楽しいのか「Want」で考えてみると、チャンスが増えるのではないかと思います。

今回は、思いがけないことが「チャンス」につながることもある、というテーマでヒントをご紹介してみました。
読んでくださる方の気持ちが少しでも前向きになれば、うれしいです。

YJぴあさぽおすすめ:「対話」「コミュニケーション」のヒントになる本

「共感的理解」「コミュニケーション」のヒントになる本

いちにちおもちゃ
作:ふくべあきひろ 絵:かわしまななえ

新学期の始まりの時期ですね。今回は、特にお子さんがいらっしゃる方におすすめしたい本をご紹介します。「相手」の気持ちを推しはかれるようになるためのヒントをくれる絵本です。

「いちにちおもちゃ」は、「警察の一日所長」のように、主人公がさまざまな「おもちゃ」体験をするお話。
「いいかげんにもてあそぶ」ことを「おもちゃにする」と言いますよね。
つまり「おもちゃ」とは、「いいかげんにもてあそぶ対象」と言えるかもしれません。
でも、この絵本を読んだら誰もがおもちゃをとても大事にしたくなるはずです。

たとえば、「クレヨン」になった主人公は、画用紙に顔を力強く押しつけられて、顔がゆがんでしまいます。それでも頑張って絵を描く役割を果たそうとしているんだな、とクレヨンの気持ちや立場を想像したり共感したりできます。

人とのコミュニケーションでも、同じことが言えると思います。
他人とは、考えも行動も立場も異なることがほとんどでしょう。でも、「もし自分が相手の人の立場だったら?」とお互いに想像できれば、「いいかげん」じゃなく「真摯(しんし)に」「大事に」相手のことを受けとめられるかもしれません。

大人になるとつい忘れがちな大事なこと。相手の立場を想像し、共感的理解をもって、お互いを大切にしたい、と改めて思える絵本です。 (YJぴあさぽ おゆみ)

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