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2023.04.05

気持ちを「言葉にする」ために心がけたいことは? 「対話」から学ぶコミュニケーションのヒント 「聴く」ための中級編(61~70)

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この連載では、よい対話にするために心がけたいことや「聴く」ためのヒントを、「YJぴあさぽ(※)」のメンバーがお伝えしています。 ※YJぴあさぽ:
産業カウンセラーや国家資格キャリアコンサルタントの有資格社員によるボランティアプロジェクト。

まさみん
ZアカデミアでZホールディングス全体の組織活性、人材育成、コミュニケーション円滑化の取り組みなどを担当。
保有資格:国家資格キャリアコンサルタント、トラストコーチングスクール 認定コーチング スキルアドバイザー

前回、「自分との対話」について書きました。 「セレンディピティ」について、「素敵な言葉ですね!」「私もその能力を高めたい」「この記事に後押しされて、新しい1歩を踏み出してみました」など、うれしい反応をいただきました。

そして、今回はこの原稿をベトナム、ホーチミンで書きました。ベトナムに行った理由は、私もセレンディピティを感じたから。
今年の初めに、Zアカデミアの会で、ヤフー初の海外開発拠点「Techbase VietNam Company Limited」(以下「テックベースベトナム」)の通訳チームが企画して「ベトナムからこんにちは! ベトナムのリアル」を開催。ベトナムのおいしい食べ物や魅力的なスポットなど、現地の方ならではのおすすめ情報を紹介してくれました。

私はこの会の運営メンバーとして通訳チームのメンバーとやりとりしていたこともあり、今回、ベトナムへ行ってきました! 1週間ほどテックベースベトナムに滞在しつつ、キャリアに関するワークショップも開催し「聴く」の大切さを共有する時間を持つことができました。

61.いろいろな方法で、一生懸命伝える

相手が自分の「気持ち」を言葉にして伝えてくれる。そして、自分も相手に自分の「気持ち」を言葉で伝える。
これは当たり前のようで、なかなかできないことだと思います。
ベトナムに滞在していた間にテックベースベトナムのみなさんと話して感じたことがいくつかありました。
今回は「思いを言葉にすること」「思いを伝えること」をテーマにご紹介していきます。

通訳チーム(テックベースベトナムでは「コミュニケーター」と呼んでいます)は、日本語とベトナム語を駆使して技術開発をサポートしています。
また、通訳チーム以外の方も、オフィスですれ違ったときなど、私には日本語で「お疲れさまです」と声をかけてくれました。日本語を勉強しているエンジニアも多くいるそうです。

ある日の午後、前のデスクに座っていた女性が、「どうぞ」と手作りの生春巻きのようなものをおすそ分けしてくれました。
ベトナムでは小腹がすくと、職場で簡単な軽食を作ることもあるのだそうです(オフィスの引き出しにライスペーパーがあるなんて不思議ですね)。
「おいしい! これはどうやって作るんですか?」と(英語で)聞くと、「ライスペーパーに塩と小エビとオニオンなどをはさんだり巻いたりして、作る」と英語とベトナム語を交えながら説明してくれました。小腹がすいた時によく食べているそうです。

中身は何なのかが英語だとどうしても聞き取れず、「?」という顔を私がしていたら、みんな身振り手振りで、一生懸命伝えてくれました。
さらには、「一緒にもう1つ作ってみましょう」と言ってくれて、二人で作りました。

言語が違っても、「伝えよう」という気持ちがとても大切だと、改めて感じた瞬間でした。

左上:人民委員会庁舎
右上:中央郵便局
左下:ホーチミンの街並み
右下:テックベースベトナムの入っているビルからの眺望

62.どんな時にその言葉を使うか聞いてみる

ベトナムの通訳チームの方は、みなさんコミュニケーション能力が高く、言葉に対して常に、どう伝えると、理解が深まるかを考えていました。
ある時、通訳チームの女性と話しているとき、私の服装を「とても日本人らしい」と言われました。その日の服は、トップスが白、スカートは黒。
「どんなところが日本人らしいと思ったの?」と聞くと、「日本人はとてもクールな印象で、まさみんが着ている服もそんな感じだから!」とのこと。

元の英語の意味だと、「クール」というと、冷たい、涼しい、冷静な、落ち着いたなどですよね。また、「すごくかっこいい」という意味でも使われています。

文脈や話の流れによって大きく言葉の意味もかわるとは思います。彼女の話の流れでは、なんとなく、「クール」と 「シンプル」が似ている印象がありました。
さらに、彼女がどんな風に「クール」を使っているのか詳しく聴いてみると、より理解が深まるような気がしました。

63.同じ言葉でも、その人が持っているイメージがある

YJぴあさぽで話を「聴く」とき、仕事の話がよく出てきます。
あるとき、こんな風に話していた人がいました。

「今は、少しサポート的な内容の業務を担当しています。私自身は、とても大切な仕事だと思っているのですが、周りのメンバーはそうとらえていないような気がして、少し悲しい気持ちになることがあります」

ご自身の気持ちをとても「言語化」できているなあと思いました。
そんなとき、私たちは、「悲しい」という気持ち、その人が持っている「悲しい」の意味を聴くようにします。

その「悲しい」という気持ちには、どんなイメージがあるのか。
その人が持っている独特の「悲しい」のイメージがあるはずなので、そこをていねいに聴いていきます。
日本語の辞書には、「悲しい」という意味はもちろんのってはいますが、それだけではないその人なりの「定義」があると思っています。

64.「桜が咲く季節」のイメージは…?

「日本の桜がとてもきれいで好きです」と話してくれた通訳チームの方がいました。
そして、「なぜ日本では桜がとても愛されるのか」という話になり、私は「はかなさ」があるからではないか、と話しました。
咲いてから1、2週間で散ってしまうこと、年中咲く花ではなく、一時のために最大限美しく咲くからではないか…と。
「桜が咲くと、私は少し心がざわざわするんだよね」とも話しました。
日本人同士だと、桜が咲くとき=春というイメージが定着しています。そして春は、いろいろな出来事が、ひと段落したり、始まったりする季節。卒業式や入学式、入社式、転勤…などいろいろな節目のときでもありますよね。

国が違えば、同じ「桜が咲くとき」のイメージも違うのだなと、改めて感じました。
その人なりの、「自分にとっての前提」に立って、人は話していることに気づけると、より対話を深められるように思います。

キャプション:上野公園の桜

65.「ざわざわ」「もやもや」も言葉に置き換えてみる

いろいろな変化がある時、なんだか心が落ち着かないけれどそれを具体的な言葉にするのが難しい時に、私も「ざわざわ」という単語を使っていることが多いなと思います。「もやもや」も同じような気持ちの時に使うこと多い気がします。
でも、その「ざわざわ」「もやもや」こそ、言葉に置き換えてみることが、実はとても大切なことだと思います。

「どうして、わたしは、今、もやもやしたのかな…」
予想外のことが起きた時に不意打ちをくらったように感じた、何かが違う、と感じたけど、すぐにその思いを表す言葉が見つからない時などに「もやもや」という言葉を使うことが多いのではないでしょうか。
一呼吸おいて、それに代わる言葉を見つけてみると、すっきりするような気がします。 YJぴあさぽでは、このような「ざわざわ」「もやもや」の思いを言葉にするお手伝いもできたらと思っています。

66.言葉にならない時は、五感を聴いてみる

「つらい」「苦しい」という感情の言葉が出てきて、その言葉のイメージを聴いても、他にはなかなか言葉が浮かばず、言葉にすること自体が苦しくなってしまう方もいるようです。そんな時は、少し角度を変えて、その方の「つらい」「苦しい」のイメージを共有してもらえるように質問してみます。

「たとえば、色で言うと、どんな感じですか?」
「濃い紺ですかね」
「たとえば、温度だと、どれくらいですか?」
「零度以下です」
「たとえば、音がしているとしたら?」
「無音ですね」
など…。

言葉にならないときは、自分の五感を聴いてみましょう(写真はイメージです)

このように聴いていくうちに少しずつ、その方が今どんな風に感じているのか、そして「つらい」という気持ちが理解できるような気がしませんか…?
これは、お子さんなど、まだあまり言葉を駆使して気持ちを伝えることが難しい方にも、有効だと思います。
たとえば「体で、あらわすとどんな感じなの?」と聞いてみるといいかもしれません。たとえば、もしかしたら、うまく言葉にできない気持ちを「しぐさ」で伝えてくれるかもしれません。相手の気持ちを理解するための方法は、言葉以外にもありそうです。

67.今の気持ちをスケールで表してみる

その方の今の気持ちを以前と比べたり、「スケール」で表してもらったりするのも1つの方法です。
たとえば、「すごく落ち込んでしまって…」とその後言葉が続かない時もありますよね。
今までで一番落ち込んだ時とくらべて、どのくらい落ち込んでしまっているのか比べてみてもいいかもしれません。
不安を感じている人に、「今の不安は、0-10で言うと、どれくらいですか?」などと聴くことで、スケールで表してもらうこともできると思います。

このようにすることで、感情を少し俯瞰(ふかん)して見てもらうことができます。
私も時折、不安になることがありますが、
そんな時は、「今の自分の不安は、0-10だと3かな」「いや、5かな」などと考えてみるようにしています。
自分の中の平均値を見つけておいて、その上か下かを感じるのも、自分の気持を知るための1つの方法だと思います。

68.「やばっ」は「すごい」? 「困った」?

子どもと話していると、「やばっ!」というワードが時々出てきます。
「なにが、『やばっ』なの?」と聞くと、「超すごいんだよ、このバスケのプレイ」などと、少し文章が長くなります。
今回の「やばっ」は「すごい!」の意味なのだったのだと理解できます。
そしてまたある日。「課題終わらない…まじ、やばっ」。
この「やばっ」は、ある種本来の意味で、きっと「課題が締め切りに間に合わないような気がする…」ということなのだろうと思います

言葉は、その言葉を使う年代や状況によって変わります。
「今の言葉はどういう意味で使ったのか」理解してみるのも、気持ちを知るためには有効な方法かもしれません。
ただ、お子さんにあまり聞きすぎるのも考えものです。うるさがられてしまうかもしれませんので、気をつけてくださいね。

69.「一言で言うと?」と考えてみる 言葉にするトレーニング

かなり意識しないと、言葉にすることが難しいと感じている方も多いと思います。
簡単なトレーニング法があります。それは「一言で言うと!」と考えてみることです。
それが「まじ!」でも、「しんどい…」でも、「うれしい!」でも、何でもいいので、まず、頭に浮かんだ言葉を大切にしてみてください。
そして、その言葉をもう少し、「わかりやすく誰かに伝えると、どういうふうに、自分なら話すだろうか」と、順を追って考えてみるといいと思います。

「一言で言うと…?」と考えてみてもいいかもしれません(写真はイメージです)

70.「気持ちを言葉にする」ことで、より伝わりやすくなる

「言葉にすること」のが大切な理由はなんでしょうか?
1つ目は、やはり相手に思いが正確に伝わるようになること。
2つ目は、自分の心の中にあるふわふわとしている思いを伝えると、気持ちの整理がつきやすくなることだと思います。

誰かに話すことは苦手、という方は、書いてみるのも1つの手ですよね。
その時も、できるだけ人に伝わるように書いてみるといいと思います。
私は、10代のころ、祖母にほぼ毎週手紙を書いていました。毎日の気持ちを読んでもらうことで、自分なりに気持ちの整理をしていたのかもしれません。

私たちの思いは時々、絡まってしまった毛糸のようになります。
それをていねいにほどいていくように、1本1本に「言葉」の意味をのせていけたらいいですね。
これからも、私たちYJぴあさぽが、そのお手伝いができればと思います。

YJぴあさぽおすすめ:「対話」「コミュニケーション」のヒントになる本

NVC(非暴力コミュニケーション)について理解し、さらに実践できるようになる実用書

NVC 人と人との関係にいのちを吹き込む法(新版)
マーシャル・B・ローゼンバーグ/著 安納献/監訳 小川敏子/訳

お互いに思いやりをもって、気持ちの通じ合うコミュニケーションができたらいいですよね。家族や親しい人との関係や職場でのコミュニケーションがそうあってほしいと、多くの人が心の底では望んでいるのに、どうしてできないのでしょうか?

それは私たちが長い歴史上で身に着けてしまった「暴力的なコミュニケーションの癖」が原因でした。本書を読むと、「比較」や「評価」「決めつけ」など、誰もがやっている普段の考え方や話し方が対話を妨げていることがわかって驚く方も多いかもしれません。
そのような悪い癖をやめ、「NVC(非暴力コミュニケーション)」に直すことで、人と人との関係は温かいものに変わります。
これからの人生をより良く生きたい方、関係を改善したい人がいる方など、すべての人におすすめです。(YJぴあさぽ みーさん)

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