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2023.03.31

内閣支持率をビッグデータで読み解けるか?〜国民の興味関心と内閣支持率との関連性〜

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こんにちは、Yahoo! JAPANビッグデータレポートチームです。

内閣支持率は、国民の支持の度合いを世論調査で計測するもので、時の内閣や政策に対する国民の信頼または不満を反映する指標です。

一方で、内閣支持率の変動には経済状況や時事報道などさまざまな要因が影響すると考えられ、必ずしも政府の国民人気をダイレクトに反映しているとも言い切れません。
そこで今回は、ヤフー検索によるビッグデータを活用し、国民の興味関心と内閣支持率の変動との関連性を考えてみました。
なお、以下の分析はNHK世論調査内閣支持率に基づきます。

歴代内閣の内閣支持率は?

まず、歴代の内閣支持率の動きを確認してみました(図1)。
上段は2005年6月から2022年12月、第88代小泉純一郎内閣から現在の第101代岸田文雄内閣までの内閣支持率の変遷を示しています。赤線が自民党政権、青が民主党政権です。
下段は主要政党のインターネット上の相対的注目度を表しています。相対的注目度とは、主要政党に関連する総検索量に占める相対的な強さを表す割合です。現与党である自公を赤で、その他主要野党を青で示しています。

総じて言うと、いずれの内閣でも発足時は支持率が高く徐々に下がる傾向のようです。ただ、直線的に下降したのは第93代鳩山内閣のみであり、多くの内閣では任期中に高下が見られます。
長期政権だった第96~98代安倍内閣では中期的な高下を繰り返しているのがわかります。現在の岸田内閣は2021年10月発足から2022年6月頃までが上昇傾向でその後ダウントレンドに転じています。発足から約半年間上昇傾向という動きは、2005年以降の歴代内閣の中では唯一です。

なお、内閣支持率とネット上の相対的注目度は短期的には必ずしも連動しないものの、中長期的にはある程度の関連が見てとれます。
2006年から2009年にかけて自民党政権の内閣支持率下降とともに自公の相対的注目度も落ちており、2010年以降に民主党政権の支持率が下がると再び盛り返していました。第96~98代安倍内閣時代も緩やかな連動が見られたようです。

図1 2005年6月以降の内閣支持率と主要政党のネット上の相対的注目度

資料:ヤフー検索、NHK世論調査 内閣支持率

図2は各内閣の内閣支持率の分布を箱ヒゲ図で比較したものです。縦線が最大値から最小値までを表します。箱の部分に分布の真ん中50%分のデータが収まることを示し、箱の横線は中央値を表しています。縦の線が長いほど高下の幅が大きく、箱が長いほどデータのばらつきが大きいことを意味します。第93代鳩山内閣は分布の幅が特に大きかったことがわかります。
一方、第96~98代安倍内閣は徐々に下がりつつも分布の幅は小さく総じて高めであり、比較的安定した支持率を得ていたと言えそうです。

図2 歴代内閣の支持率の幅

資料: NHK世論調査 内閣支持率

内閣に対する国民の関心の推移は?

次に、各政権に対して国民がどのような関心を寄せていたのか、内閣支持率と検索傾向の関連を調べてみました。
まず、内閣の関連ワードを図3に示すカテゴリーに区分し、その変化を確認しました。ここでは「〇〇内閣」「〇〇首相」など、単独で調べられた関連ワードを伴わない検索は除外しました。

図3 検索ワードのカテゴリー区分

検索ワードのカテゴリー6区分の説明表

図4は現職の岸田内閣のケースです。折線が内閣支持率、棒グラフが各月の関連検索ワードを100%とした時のカテゴリー別の構成比を示しています。
先ほど見た通り、前半の支持率は上昇傾向にあり、その後下降傾向に転じています。支持率低下とともに「ネガティブ」カテゴリーが増えるかと思いきや、実は支持率の上昇時期にもネガティブな検索はコンスタントに存在していたことが読み取れます。むしろ「政策」カテゴリーの減少傾向が気になるところです。

図4 岸田内閣支持率と検索傾向

(折線グラフは内閣支持率、棒グラフは各月の関連検索ワードを100%とした構成比)資料:ヤフー検索、NHK世論調査 内閣支持率

菅前内閣はどうだったでしょうか(図5)。内閣支持率は緩やかなダウントレンドでした。
岸田内閣の場合は発足後半年間ほど「政策」カテゴリーの構成比が4割以上で維持していたのに対し、菅内閣は発足時6割以上と高かったものの、翌月には半減の3割程度まで落ち込み、低水準のまま推移しています。
2021年2~3月に「家族・家系」カテゴリーが突出したためその他カテゴリーが極端に縮小したものの、それ以外は総じて変化が少なかったようです。

図5 菅内閣支持率と検索傾向

(折線グラフは内閣支持率、棒グラフは各月の関連検索ワードを100%とした構成比)資料:ヤフー検索、NHK世論調査 内閣支持率

続いて、2017年12月以降の安倍内閣のケースです(図6)。
支持率は2018年から2019年秋頃まで緩やかな上昇トレンドであり、2019年10月の消費税増税とその後の新型コロナウイルス禍以降は下降に転じていました。「政策」カテゴリーを見たところ、支持率上昇時期には穏やかな連動が見られ、支持率が下降に転じる時期に大きく減じています。
ただ、その後の支持率下降時期にも「政策」カテゴリーの関心は盛り返していました。安倍内閣は近年の内閣では支持率が比較的高止まりでした。ビッグデータの観点でも政策に関する関心が継続した内閣だったようです。

図6 安倍内閣支持率と検索傾向

(折線グラフは内閣支持率、棒グラフは各月の関連検索ワードを100%とした構成比)資料:ヤフー検索、NHK世論調査 内閣支持率

内閣支持率と関連する頻出関連検索ワード

内閣支持率が上がっている時期と下がっている時期で、関連検索ワードに傾向の差異はあるのでしょうか。岸田内閣と安倍内閣を元に確認してみましょう。
なお、菅内閣の支持率は穏やかな下降傾向が継続していたため、考察からは除外しました。

図7 内閣支持率上昇時と下降時の第二検索ワード

(期間中の検索数を標準化し上昇時と下降時の差分をスコア化)資料:ヤフー検索

図7は各内閣の第二検索ワード検索数を標準化し、内閣支持率の上昇時と下降時の差分が大きいワードをピックアップしたものです。「岸田ノート」などの時事的なワードは除外し、一般的なワードを対象としています。青が内閣支持率の上昇時に増えるワード、赤が下降時に増えるワードを示しています。

どちらの内閣でも、内閣支持率上昇時には首相動静に関する関心が高い傾向が見られました。首相や内閣の動きに対する関心が高まっていると内閣支持率が上向く傾向があるのかもしれません。
また、家系や学歴など首相本人の経歴もよく見られている傾向がありました。首相の身長がよく調べられているのも興味深いところです。
一方、支持率下降時には共通するワードは少なく、両内閣に共通するのは「コロナ」のみでした。また、「評判」「内閣改造」は両内閣で逆の動きが見られました。

まとめ

以上の結果からビッグデータから読み取れる国民感情と内閣支持率との間には関連性が見られることがわかりました。ただし、内閣へのダイレクトな批判のみに着目すると読み誤る可能性がありそうです。
むしろ警戒すべきは、政策に直接関連のない話題が盛り上がることにより政策関連の関心が相対的に薄れている状態かもしれません。ネガティブ反応だけでなく総合的な関心動向を読むことで、国民感情を捕捉する助けになることが推測されます。

(補足)直近の内閣支持率を確認したところ低調が続いているものの、やや回復傾向のようです。3月は首相のウクライナ訪問が話題になりました。それらの動きが影響しているのかもしれません。

図8 直近の岸田内閣支持率

資料:NHK世論調査 内閣支持率

内閣支持率は、内閣に対する私たち国民の信頼を示す重要指標であり、そこにはさまざまな要因が複合的に影響しています。内閣支持率の動きに対する洞察を深め、より良い政治につなげるためにビッグデータを役立てることができれば幸いです。
今後ともYahoo! JAPANビッグデータレポートをよろしくお願いいたします。

文・図/Yahoo! JAPANビッグデータレポートチーム

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