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2022.11.04

検索データから見えてくる年代×曜日×悩みの関係性とは? 専門医に解説してもらいました!

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近年、ダイバーシティー&インクルージョンが働き方や人材開発において重要な考え方として注目されています。
ヤフーでは、ビジョンとして掲げる「世界で一番、便利な国へ。」の実現に向けて、「良いサービスを提供し、社会に貢献する」「良い会社をつくって、社会に貢献する」上で、ダイバーシティー&インクルージョンを不可欠な要素のひとつとして捉えています。
そのため、年に2回ほど、社員向けに啓発イベントを開催しています。今年は9月27日から29日までの3日間に、「ダイバーシティー&インクルージョンdays」と題して、さまざまなコンテンツを社員向けに提供しました。
今回のテーマは「ライフキャリアの多様性」。「仕事における経歴や経験」を意味するワークキャリアに対して、ライフキャリアとは、ワークキャリアに加えて、家庭や趣味などの日常生活やライフステージ、社会の中での役割などを総合した「生涯を通した生き方」を意味します。
そのなかで、年代や曜日ごとに現れた悩みに関する検索クエリ(キーワード)という、ヤフーならではのビッグデータを活用した課題解決の取り組みがありました。企画した担当者や医師による分析や解説とあわせてご紹介します。

    目次:
  1. 検索データから悩みを分析し、課題解決につなげる今回の取り組みの経緯
  2. 月曜日に、幅広い層で「やる気が出ない」「行きたくない」関連の検索が多い理由
  3. 水曜日や木曜日に、世代を問わず、ストレス関連の検索ワードが増える理由
  4. 土曜日に、30代後半以降で「足がつる原因」「こむら返りの原因」に関する検索が多い理由
  5. 日曜日に、30代後半から50代前半の層で、「二重まぶたにする方法」「離婚したい」などの検索データから読み取れる社会背景
  6. 座談会を踏まえてのまとめ
西村 由梨子(にしむら・ゆりこ)
2006年ヤフー入社。データソリューション本部、マーケティング本部でのデザイナー、企画などを経て、現在はニュース編集として、オリジナルコンテンツの制作に携わっている。また、社内の女性の活躍を支援する「ウーマンプロジェクト」にも所属。
小川 知紘(おがわ・ともひろ)
2018年ヤフー入社。データソリューション事業で、現在はデータプランナーとして、ビッグデータ分析によるクライアントの課題解決などを行っている。
三宅 琢先生(みやけ・たく)
医学博士、日本眼科学会眼科専門医、産業衛生専攻医、労働衛生コンサルタント、メンタルヘルス主務主任者。ヤフーの産業医も務めている。
※1:「マインドフルネス」とは? めい想の方法・効果と「呼吸のめい想」のやり方(外部サイト)

検索データから悩みを分析し、課題解決につなげる今回の取り組みの経緯

西村:
以前から社会課題に興味があり、データと専門家の意見を組み合わせることでコンテンツにできないか、リサーチをしていましたが、人事の方から「社内で同じような取り組みをしている人がいるよ」と、小川さんを紹介してもらいました。
小川さんに分析データを見せてもらい、自分の年代の悩みをみて共感でき、「自分一人だけではなく同世代の悩みってこうなんだ」と、客観的に俯瞰して見られるのも良いなと感じました。さらに、自分以外の世代の人の悩みも知ることができ、視野を広げられます。
私は、ヤフー社内で、ウーマンプロジェクトという女性の活躍を支援するプロジェクトに所属していますが、ダイバーシティーウィークのコンテンツにも適していると考え、今回のセミナーを企画しました。
また、私はデザイナーということもあり、「わかりやすく可視化する」ということもデータや分析の価値を高める大事なポイントだと考えています。そのため、曜日別・年代別の検索キーワードをよりわかりやすく伝えられるよう検討しました。
今回のセミナーでは、専門家として、ヤフーの産業医である三宅先生のほか、私がワーキングマザー向けのセミナーを通じて知り合った婦人科の医師である鴨澤千尋先生、内科の医師である有吉影子先生にもお声がけしました。

小川:
私はヤフーのデータを分析して、クライアントやユーザーの課題を解決するというミッションを持っています。note(外部サイト)では、「誰でもデータを身近に感じてもらう」ことを目的にした分析記事も発信しています。
今回は、曜日ごとに抽出したユーザーの悩みを見ながら、仮説を立てていました。ただ、医学的見地からの分析はできないため、医療の専門家である三宅先生たちに分析コメントやアドバイスをいただくことができ、とても勉強になりました。

三宅先生:
検索データは非常に興味深いものでしたね。人って「習慣の生き物」と言われているので、たとえば1週間が8日だったら別のデータになると思いました。7日というものに脳が支配されているわけです。
そして、社会性がこのような発言、検索結果を生んでいるといえるでしょう。また、リモートワークかどうかでも、検索ワードは変わってくると思います。
私は医師として分析するだけでなく、解決策まで考えてみました。今回の取り組みを通じて、一人でも多くの方が、悩みを解消してくれたらうれしいですね。

月曜日に、幅広い層で「やる気が出ない」「行きたくない」関連の検索が多い理由

※データは、プライバシーポリシーの範囲内でユーザーの同意に基づき取得したデータをもとに、統計化し個人を識別できない形に加工のうえで活用しています。

小川:
月曜日には、世代を問わず、「やる気が出ない」「行きたくない」関連の検索が多くなることがわかります。「月曜日から金曜日に働き、土日に休む」というスケジュールは共通している人が多いこともあり、「休日が終わり、平日が始まってしまう憂うつを多くの方が感じているのではないか」と考えました。

三宅先生:
これは「サザエさん症候群(※2)」の1つの現れといえますね。仕事が憂うつで朝起きるのが大変だと思われがちですが、実際は土日にゆっくり寝ているせいで、脳が時差ぼけしているために起床が難しくなっているのです。
「月曜日は仕事で嫌だから」ではなく、土日の起きる時間がずれているから、月曜に起きたり仕事をしたりするのがおっくうになるというわけです。
解消するためのポイントは、日曜日の朝起きる時間を平日とずらしすぎないこと。「土曜日は多少ゆっくり起きてもいいけど、日曜日の朝起きる時間は、月曜日との差を必ず2時間以内にしましょう」と新卒研修で教えています。それをやっておくだけでも月曜日の「イヤイヤ症候群」は減るのです。
週末にゆっくり寝たい人は、土曜日の夜に早く寝るのがおすすめです。睡眠時間を確保したいのであれば、それで解消できるはずです。
※2:月曜日の仕事のことを考えてしまい、日曜日の夕方から憂うつな気分になる現象のこと

西村:
なるほど、それなら誰でも気軽に取り組めますね。
他に、「寝汗の原因 女性」「やる気が出ない」「眠い」という検索も多くありました。
鴨澤先生によると、更年期障害という視点から、「一般的に40歳以降に現れる症状。明らかな病気が原因ではないが、日常生活に支障をきたす場合を言う。女性ホルモン(エストロゲン)の減少により、体内でダイナミックな変化が起こる。ホットフラッシュと呼ばれる多汗の症状や睡眠障害、抑うつ、不安、イライラなどの症状が出現する。エストロゲンは直接脳内に作用し、これが異常な発汗や、感情の制御に影響して精神的な症状を引き起こすのではないかと考えられている」という分析をもらいました。「更年期障害の代表的な治療法が女性ホルモン補充療法であり、更年期障害の約78%に効果がある。その他に漢方薬や睡眠薬などを処方することもある。しかし、医療機関への受診はハードルが高い人も多い。ホルモン補充療法が無効だった更年期障害に対してカウンセリングを行うと約90%で改善がみられたというデータもあり、まずは誰かに話してみる、というのも良い方法と考える」とのことです。

三宅先生:
寝汗の原因に関しては、男性の更年期症状との関連も見て取れますね。40代以降の男性でホルモンの減少による更年期障害が起こる人が一定の割合でいます。更年期は女性のものだと思われがちですが、男性にも意識しておいてほしいですね。

水曜日や木曜日に、世代を問わず、ストレス関連の検索ワードが増える理由

小川:
水曜日になると「ストレス」「疲労」が増えてきて、木曜日にピークを迎えていることがわかります。金曜日は翌日仕事が休みという事情が影響しているのでしょうか?

三宅先生:
そうですね。月曜日から働き始めて、だんだんと疲れてくるわけです。金曜日なら、「今日頑張ったら終わり」ですが、木曜日はその手前です。花金(翌日の出勤を気にせずに楽しめる「花の金曜日」)ではない木曜日は、一番ストレスがたまりやすいタイミングだと思います。
大事なことは、自分自身の不調を最初に気づくのは、かかりつけのお医者さんではなく「あなた自身」だということ。この悩みを解決するには、「自分を主治医にする」のが最も重要です。たとえば「自分は仕事が忙しすぎる時に、胃痛が出やすい」ということを、知っているか、知らないかで違います。腰痛、胃痛など、その人固有の体がなんらかのサインを出している時は、無視し続けていたら体調が悪化してしまいます。
その場合は、「仕事の量を減らす」「飲み会をスキップする」「週末の予定を入れすぎない」「リフレッシュの時間を増やす」など、早めに自分なりの対策をとりましょう。

西村:
火曜日や水曜日に多く見られた「血圧を下げる方法/血圧が高い時の症状」に関する検索について、有吉先生からは、「36歳から65歳の健康診断(健診)の異常をよく見る。健診でひっかかったものが気になって調べているのではないか。若い時は健診に引っかからないのが当たり前。日本人の大部分の高血圧は深刻なものではなく、食塩の過剰摂取、肥満、飲酒、運動不足、ストレスなどが原因(※3)」という分析コメントがありました。
※3:生活習慣病予防のための健康情報サイト(厚生労働省)

土曜日に、30代後半以降で「足がつる原因」「こむら返りの原因」に関する検索が多い理由

小川:
土曜日になると「足がつる原因」などや「こむら返りの原因」が特徴的に出てきていました。もしかすると一週間の疲れがたまった影響なのかなと思いましたがいかがでしょうか?

三宅先生:
月曜から金曜日もおそらく症状は出ているはずですが、忙しくて気づいていない可能性があります。フィジカルに感じていたストレスを自覚するのが土曜日ということです。緊張が抜けた土曜日に、一気に症状が出ているのではないでしょうか。ストレスの症状は緊張が抜けたところで出るのが原則といえます。
ストレスの対処法として、「マインドフルネス」もおすすめです。「めい想」と訳されることが多いのですが、究極的には「気づき」を意味します。腹式呼吸の最中に、肩、腰が痛いか気づきやすくなるからです。または腰痛や頭痛の頻度を日記に書くだけでも調子が悪いことに気づくことができます。

西村:
有吉先生からは、「高齢になると足がつりやすくなる。加齢にともなう筋肉量の減少などのため」という分析もありました。

日曜日に、30代後半から50代前半の層で、「二重まぶたにする方法」「離婚したい」などの検索から読み取れる社会背景

小川:
日曜日は、30代後半から50代前半の層で、「二重まぶたにする方法」「ほうれい線をなくす」「歯を白くする」「離婚したい」といったキーワードが目につきました。

西村:
鴨澤先生によると、「更年期障害の背景となる心理・社会的状況が想像できる。 更年期症状には老化による容貌・容姿の変化(女性美の消失感)、病気への不安、夫婦間の葛藤、成長した子どもの離反、職場でのトラブルなど、心理的あるいは社会的要因も関連する」という分析がありました。

座談会を踏まえてのまとめ

西村:
ダイバーシティー&インクルージョンdaysでは、データを活用しながら座談会を実施しましたが、参加者からさまざまな意見が出ました。たとえば、日曜日に、「夫にイライラが止まらない」という検索クエリが大きく出ていますが、男性から「これは、夫側も感じているケースもあるのでは」という声がありました。
性別によって異なるものの見方がありますし、議論をすることでそういうデータだけでは見えないものが見えてくることもあります。データ分析と、専門家による見解から「さまざまな世代の悩みを知り、視野を広げる」というテーマにおいて、それぞれに視野を広げる有意義な機会になったかと思います。ウーマンプロジェクトでは、こういう気づきの場を今後も作っていきたいですね。

小川:
私も座談会に参加しましたが、「こむら返りの悩みは周囲に話すほどではないと思っていたけど、実はみんなも悩んでいるんだ!」というコメントや、「みんなはストレスを感じた時どうしている?」といった議論も生まれていました。
データを分析することで、自分だけでなく他の人も同じだと、「共感」したり、自分では想像できないことを「知ったり」できます。その上で他の人と意見交換することは、とても意味のあることだと改めて感じました。
データの本来もつ価値を開示し、そこから対話を育んでいくという取り組みを今後も続けていきたいと思います。

三宅先生:
体や心の悩みを解決するには、「自分を主治医にする」のが最も重要なことです。今回は検索データをもとに対話をしてきましたが、悩みは自分一人で抱え込むのではなく、当人にとって人に話すことが一番の治療法です。
その意識を多くの方に持ってほしいですね。聞く側はあまり難しく考えすぎずに、相手の悩みは解決できなくても、ただ寄り添って聞いてあげることが1番のケアです。
フルリモートになったことで、コミュニケーション量が少なくなってきていますが、これは多くの人にとって良くありません。業務外で雑談する時間も定期的にもつなど、普段の会話の中で話すようにしましょう。それだけでもメンタルヘルスが変わってくるので、みなさんもぜひ意識してみてくださいね。

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