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企業情報

2022.11.07

オンラインコミュニケーション時代の部下と上司の信頼の育て方 「1on1」講座

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2020年の新型コロナウイルス感染症の感染拡大に伴い、企業ではテレワークの普及率が向上しました。コミュニケーションの方法がどのように変化しようとも、上司と部下の信頼関係の構築は社員がパフォーマンス高く働く上で大切な要素です。
ヤフーではその信頼関係を築く施策として、上司と部下が1対1で対話を行う「1on1ミーティング(以下、1on1)」があります。
今回はその1on1の導入・定着化を推進した本間浩輔が実施したZアカデミア(※1)の特別講演「そうだ!1on1を学び直そう」の一部を紹介します。

本間 浩輔(ほんま こうすけ)
早稲田大学卒業後、野村総合研究所に入社。2000年にワイズ・ スポーツ(現スポーツナビ)の創業に参画。同社がヤフー傘下入りしたのち、Yahoo!スポーツのシニアプロデューサーなどを担当しワイズ・スポーツ株式会社社長に就任。2012年ヤフー株式会社 PD(人事)本部長。2014年より執行役員。コーポレート統括本部長を経て、常務執行役員コーポレートグループ長。2019年、Zホールディングス株式会社 常務執行役員(コーポレート領域管掌)に就任。2021年よりZホールディングス株式会社 シニアアドバイザー。
著書に『ヤフーの1on1入門』『会社の中はジレンマだらけ』(光文社新書)『スポーツMBA』(分担執筆・創文企画)など。

1on1が生まれた背景

Yahoo!スポーツを担当していた頃、いいチームに恵まれてコミュニケーションも問題ないと思っていました。ですが、ある時、私が部下に結構きついネガティブなフィードバックをしたことがあります。部下が逆に怒ってしまって「本間さんが普段何やっているのかわからない」と言われました。

そういうことがあり、きちんとコミュニケーションができていないと反省して、定期的にしっかりコミュニケーションしようと考えて1on1をはじめました。
その後、2012年に社長に就任した宮坂さんが1on1を全社に広げようと言ってくれて、全社に導入することが決まりました。
その際に考えた理論的な枠組みは「コルブの経験学習」というものです。ベースになっている考えは、子供の学びと大人の学びは異なるという点です。
簡単に言うと、子供の場合は、まだそこまでの経験がないので学校や本で学ぶほうが効果的。大人の学び方は、たくさんの経験をしているので経験をベースにして学んだほうが効果的ということです。

何か経験をして、その経験から良かった点や悪かった点を振り返ります。そして、そこから教訓を引き出します。その教訓をベースにして、新しい試みを行う。これが、経験学習のサイクルを回すということです。

当時のヤフーにも、いろいろな経験と能力を持った個性的な人がいました。この人たちがこの経験学習のサイクルを高速で回すと、もっとよい会社になると考えました。
それまでの管理職の役割は、部下の手を借りて、自分の組織の成果を上げるというものでしたが、「社員の才能と情熱を解き放つ」というコンセプトを導入して、管理職が部下をサポートすることが管理職の役割という定義に変えました。
当時の人事制度は「才能と情熱を解き放つ」というコンセプトを中心にいろんな制度が成り立っていて、その中心が1on1という位置づけでした。

1on1を行う際のポイントは?

1on1をやるときに、こちらが話すテーマを決めるのではなく、まず冒頭で「今日、話したいテーマは?」「今日、何を話しますか?」と聞いてから始めます。
会話が盛り上がったとしても、相手にとってよいテーマかどうか分からないので、ひとつの会話が終わると「ほかに話したいことある?」と何度も聞くようにしています。

最初の3分~5分間はできるだけ傾聴した方がいいと思います。
また「いいですね」「ありがとう」や「その話もっとしてよ」など相手に興味を示すことは重要なことだと思います。そして、最後に「何か私に手伝えることはありますか?」と言って、やってほしいことを聞くようにしています。

・最初の3分~5分間はできるだけ傾聴
・最後に上司にやってほしいことを確認

オンラインで1on1(経験学習)は可能?

オンラインだからこそ、よりこの経験学習のサイクルを回す必要があると思います。しかし、オンラインがベースのコミュニケーションになると、上司は部下の行動が見えにくいので1on1を行う難易度は増していると思います。
そのため、上司は「部下の行動」を見る努力をする必要があるし、部下も何らかの形で、上司や他の人が分かるように、自分の活動をシェアすることが求められていると思います。

・オンラインで1on1は可能だが難易度は高くなっている
・上司は「部下の行動」を見る努力をする
・部下は自分の活動をシェアする努力が必要

内省・成長支援のためには、どのような問いがよいのか?

「なぜ」という質問をするときは、責めるようにならないように、未来に向かって使うように意識しています。過去について聞くと、どうしても問い立てるような質問になる傾向が高いからです。
相手の関係性や会話の流れによりますが「なぜ、そうしたのか」と聞くのではなく「将来どうなりたいのか」「なぜ、そう思ったのか」「この仕事をして、どうなりたいのか」という未来に向けたポジティブな問いやフィードバックを繰り返していくことが大切だと思います。

上長がやらなければいけないことは1on1する相手の人をきちんと観察すること。上長が部下の仕事に興味を持たないと「昨日のあの仕事頑張っていたよね」「最近夜遅くまで頑張っているけどどう?」などの質問が出てこきません。
上長は部下に対して関心を持つべきですし、興味を持てば部下も雑談ではなく、内省・成長支援になるような話をしてくれると思います。

・質問する際に責めない。問いつめない
・過去ではなく、未来に向けた質問を行う
・上長は部下に対して関心を持つ

目の前の課題に必死な人や課題が出て来ない人にどう対応するのか?

部下ができるだけ未来のことを話せるような土台をつくることを上司は意識すべきです。
たとえば1on1の会話のなかに、少しだけ未来に対しての問いをしてみる。だが、その場ですぐに答えを求めずに、次回の1on1の宿題と言うかたちで伝えて、部下に考える時間を与えるとよいか思います。また、普段の会話のなかでも、問い掛けをすることはとても重要だと思います。

また、人は話しながら考えが整理されるので、意識している課題は常に変化するものです。最初に話していることが「時間の使い方」で、途中から「優先順位の話」になったり、最終的に「この仕事が嫌いです」のような話になったりするので、私は課題を何度も聞くようにしています。

常に答えを与え続けてしまう上長の部下は考えなくなります。または、上長の考えていることを当てにいく考え方になりがちです。そうすると、部下が自分の頭で課題を考える機会を失っています。ですので、普段から上司が考える環境をつくることが重要だと思います。

・過去ではなく、未来に向けた質問を行う
・課題は常に変化するので、何度も課題を聞く
・上司は部下の考える時間をつくる

部下の本音が聞ける具体的なテクニックは?

1on1では、部下が本音を言っているかどうかを気にするだけで十分です。そもそも、部下が上長に本音を言うことはあまりないと思います。話している内容が、本音ではなくても、本音に近いものが聞けるだけで問題ないと思います。
重要なのはテクニックではなく、上長と部下の信頼関係のために1on1をやっているということ。そして、本音が聞けたかどうかではなく、わからなくて不安だから、信頼関係を作ろうとしていること。それで十分だと思います。

・部下が上長に本音を言うことはあまりない
・1on1は上長と部下の信頼関係を築くために行う

1on1を行う際には事前準備が必要

その場の思いつきで話すのではなく、部下から見れば上長が自分のために時間を取ってくれているわけですので、どんな話をどういうふうにしようかと考えておく。準備の方法は、簡単に頭の中でリハーサルしておく感じです。

この順番でこうしてこう話そう、この話をするとなにかヒントが出てくる、せっかくだからこの話しをしてみよう、など頭の中でリハーサルをして、それを話すというやり方がおすすめです。1on1の前に考え、話した後に振り返ることによって、勉強になり、業務に対する気持ちが変わります。部下の経験学習を進めていくためにも、事前準備はとても重要なことだと思います。準備といっても「今日はこんな話をしよう」と頭の中で簡単に考えておくくらいでいいと思います。

・1on1を行う際には頭の中でリハーサルを行う。

部下思いだと自分の話が多くなる

実は、上長が部下思いだと1on1は下手なことが多いです。部下のことを考えるからこそ、いろいろと「こうしたのか、ああしたのか?」など聞いてしまうんですよね。1on1は、部下思いである人ほど、言いたいことをぐっと我慢して聞いてほしいです。
これは1on1に限りません。やはり上長は「何を言うか」よりも「何も言わない」ほうが大切だと思います。

上司が教えようと思ったことを部下が言ってくれたときに「自分で言わなくてよかった」と思えるのがいい上司だと思います。1on1のときは、上司が答えを言うのではなく、ちょっと待ってみる姿勢が必要だと思います。

具体的には、相手の反応を5秒待てば、こちらが考えていることを部下が言ってくれることもあります。1on1は上長が相手をどれぐらい待てるか、どれぐらい沈黙に耐えられるかが重要だと思います。

・1on1は上長が相手をどれぐらい待てるか、沈黙に耐えられるかが重要
・上長は何を言うかより何も言わないかのほうが大切

望まない方向に話が進むのを回避する方法

たとえば、組織や人に対する批判が出てきた場合は、まずは、徹底的に全部吐き出してもらいます。上長との1on1でそういう内容になるということは、それだけ部下が、その件で悩んでいると思うので、まずは全て話してもらいます。

また、話す内容が常に変化している場合は、話を最後まで聞くこと。そして、最後に「来週はキャリアについて聞かせてください」とオーダーをすることで次回以降の1on1の方向を変えることができます。
しかし、1on1は上司のためではなく、部下の時間なので、部下側がどう使うかを決めればいいと思います。上長と部下との信頼関係を築くという点からすると、話す内容がドラマの話のような雑談でも問題ないと思います。3カ月から6カ月続けていけば、いつかは期待している言葉が出てくることもあるので、ある程度時間をかけて焦らず行うことが重要です。

・不満は全部話してもらう
・上長と部下との信頼関係を築ければ、話す内容は雑談でも問題ない

自分よりも人生経験、キャリアが長い部下への1on1の仕方は?

最近では、若くして管理職になることも多いと思いますし、キャリアが長い方とどう話をするか悩んでいる人も多いと思います。
1on1は経験学習のサイクルを回すという考えがあるので、話をした後に「教訓は何ですか」とたずねることを意識していました。

キャリアが長い人は、実はどう組織に貢献すればよいのか悩んでいるケースも多いので、自分と組織がどう期待しているのかということを伝えていました。これをいきなり行うのは難しいと思います。まずは人間関係をしっかり築いていくことが先決だと思います。

・自分と組織がどう期待しているのかということを伝える

リモートワーク下での部下の状況を把握する方法は?

私は部下のことを現場や周りに取材していました。周りの人に「今の俺のチームで誰か心配な人いますか?」や「来週、Bさんと1on1なんだけど、Bさんは最近どうですか?」などとヒアリングします。
周りの人に聞くとその人の活動をいろいろな視点で知ることができます。注意しないといけないのは、内緒で聞いていると誤解されないように、取材をするときはオープンにして行うことです。

・部下のことを周りに聞くときはオープンにすること

効果的なネガティブフィードバックとは?

ネガティブなフィードバックは、そういう行為が出たときに指摘しないと認識してもらうのが難しいと思います。たとえば、行為が出た1週間後に「先週のあの会議のあの言動は問題です。」と言われても本人の認識や記憶がないことも多いです。

1on1で伝えることではなく、その現象が出たタイミングですぐに伝えて、その後の1on1で再度話をするというのがよいと思います。ネガティブなフィードバックをしたあとに、ポジティブなことを言うとネガティブなフィードバックが打ち消されてしまうため、注意が必要です。
「会議でそういう発言しないほうがいい、でもこんないいところもある」と伝えると、受けた側は、後者のほめられているほうが記憶に残るので、ネガティブなフィードバックに絞って伝えなければいけません。それでも効果がなければ、エビデンスを残すという意図でメールなどのテキストで再度伝えるべきだと思います。

一方で、ネガティブなフィードバックをしたあと、いかにポジティブな行動につなげられるかどうかも重要です。ネガティブなフィードバックをしたあとに改善されたら、改善したということを伝える。変化があったときにその行為をポジティブに見て、声をかけられるかが大切なので、部下をみている観察眼が必要だと思います。 

ネガティブなフィードバックをするのは、本当につらいと思います。自分の上司や人事などの、経験豊富な人に相談しながら自分であまり抱え込まずに行うとよいかと思います。

・ネガティブフィードバックは行為がでたときに間をあけずに指摘
・ネガティブなフィードバックのあとに、ポジティブなことを言うと打ち消される
・改善したら、そのことを指摘してあげることが大切

最後に1on1とは?

1on1は部下の時間ですが、「上司が部下のために取ってくれた時間」と思うことも大切です。上司は、お互いを知る時間は3カ月から6カ月ぐらいかかると思うくらいがいいと思います。
その期間にネガティブなフィードバックを伝えないといけないこともあると思います。そのような話ができる信頼の基盤をつくることが重要だと改めて思います。1on1を活用して上司と部下の信頼関係を築いてください。

※1 Zアカデミア:
Zホールディングスグループ(以下、ZHDグループ)の従業員の横糸をつなぎ、グループシナジーを加速させるため、2020年に設立されたZHDグループ企業内大学。
幅広いプログラムを開催し、ZHDグループの従業員が集まって学び、成長する、ベースキャンプのような場を目指しています。

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