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2020.12.24

「契約締結にかかる期間が1週間から最短3分に」電子サイン化のメリットとは?

「契約締結にかかる期間が1週間から最短3分に」電子サイン化のメリットとは?

新型コロナウイルスの感染拡大により、テレワークや在宅勤務などのオフィスに出社しない働き方が広がっています。その一方で、書類の押印のために出社を余儀なくされるという、日本特有の「ハンコ文化」による課題も出てきました。そのような背景から、紙の契約書に押印・署名する代わりに、デジタルな契約書に電子サインをして取引先とやりとりする「電子契約」が注目されています。

ヤフーは、2017年ごろから電子契約を推進しており、2019年9月からは取引先との契約の捺印(なついん)や署名を電子サインに順次切り替えています。
今回は、電子サインの導入を進めた理由、導入のメリットなどを担当者に聞きました。

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生平 正幸(おいだいら まさゆき)
2007年入社。法務本部法務企画室室長。
法務本部全般の業務改善、システム導入、インフラ整備などを担当。

日本特有のハンコ文化について
「まだ、紙に押印した契約書の方が安心で、セキュリティもしっかりしているという認識をお持ちの方もいらっしゃいます。また、書面で送られてきた方が、メールよりもしっかり見なければ、という意識が働きやすいので、そのような信頼感が紙とハンコにはまだあるのかもしれません。ただ、押印に使われるハンコにも偽造されたり盗まれたりというリスクはあります。電子サインでは、契約書をデータで保管するため、紛失・漏洩(ろうえい)リスクが低くセキュリティ的に優れているということが、まだ伝わりにくいのかもしれないと感じています」

越智 敦子(おち あつこ)
経営支援部にて、2020年5月より電子サインでの契約オペレーション業務を担当。

電子サイン導入で働き方はどう変わった?
「印鑑を社外に持ち出すことは禁止されているため、紙の契約書に押印するために出社する必要がありましたが、電子サインを導入してからは、押印するための出社はほとんど不要になりました」

ヤフーが電子サインを導入した理由

生平:
ヤフーで扱っている契約書は、年間約1万1000件。業務委託や受発注、M&Aなど、その内容は多岐にわたります。また、企業間だけでなくヤフーが運営しているショッピングモールに出店する店舗との契約などもあり、非常に数が多いです。
電子サインを導入するまでは、案件の担当者が契約書を印刷・製本して、捺印申請して押印し郵送していたので、その作業工数が課題だと感じていました。ハンコを押印する窓口のフロアは決まっているので、そこまで書類を持って移動することも結構負担になります。また、紙の契約書の場合、郵送が必要になるので国内で2週間程度、海外とのやりとりでは1カ月ほどかかります。 それらの工数・所要時間を削減することで、ビジネススピードにも貢献できるのではないかと考えたことが、電子サイン導入のきっかけです。

ただ、これまで他社において電子サインの導入が進んでないなかで先陣を切って進めるためには、セキュリティ面・技術面などでまだ判断が難しいという課題もありました。社内システムをクラウド化していく動きは当時からすでにありましたが、契約書という重要な書類を外部のクラウドラサーバーに置いて大丈夫なのか、誰がいつ同意したのかという契約締結の証跡をどのように担保するのかなど、事前にしっかり技術責任者とも検討・確認してクリアする必要がありました。

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電子サインとは? そのメリット

生平:
電子サインとは、紙に押印・署名する代わりに、PCやスマートフォン上でPDFなどの電子ファイル上で契約への同意証跡を電子データとして保存する仕組みです。

メールアドレスで本人確認を行い、ブラウザ上で署名を行いますので、インターネットがつながっている場所であれば、いつでもどこでも署名ができます。メールアドレスさえあればスマートフォンからでもサインできるため、時間と工数を大幅に削減できることもメリットです。

・締結までの時間を短縮できる
・紙の契約書の捺印手続きが不要になるため、捺印のための出社する必要がなくなる
・PCやスマートフォンなどで対応できるため時間と場所の制約を受けない
・印刷、製本、郵送、保管などの手間・費用がかからない
・契約書をデータで保管するため、紛失・漏洩(ろうえい)リスクが低くなる

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これまで1~2週間かかっていた契約書のやりとりが最短3分で完了

越智:
ヤフーの場合、押印プロセスを電子サイン化しているため、契約書の内容合意から社内決裁に至るまでのプロセスは従来通りです。社内決裁を得た契約データでないと電子サインできないルールになっています。

契約書の印刷と製本は、慣れている人がやれば短時間でできますが、郵送にかかる時間は減らせません。紙の契約書に押印する場合、まず契約書が先方に届くまでの時間、そして先方が捺印して戻す時間がかかります。そのため、双方の捺印が終わって原本を回収するまでには、国内企業で2週間程度、海外企業だと1カ月以上かかってしまいます。
電子サインであれば先方のメールアドレスさえあれば一瞬で届き、最短だと3分くらいで手続きを完了できます。

電子サインの流れ(一例)

越智:
以下は電子サインで手続きを完了するまでの一例です。複数回のクリックで署名が完了します。どのメールアドレスがいつ、どのようなアクションをしたかが証拠として完了証明書に記録されますので、サイン済みのPDFとセットで保管していただくことで手続きが完了します。

1)文書への電子的な署名を求める電子メールを受信
2)文書にアクセス
3)文書全体を確認してから、署名(活字体での記入、マウスなどによる手書きなど)
4)関係者全員が文書への署名を完了したことを確認する電子メールが届き、完了

ヤフーから捺印をお願いした場合、電子サインを利用するにあたり取引先で必要なものは実は何もありません。弊社から先方に電子サインを送る場合、先方のメールアドレスさえわかればそのまま手続きが可能です。ライセンス登録や費用、専用アプリケーションのインストールは不要ですので、利用のハードルはかなり低いと思います。

取引先のみなさまに電子サインについて少しでもご理解いただくため、家電を購入した際に同封されている「簡単ガイド」のようなマニュアルを作成しました。電子サインの操作方法や、よくいただく質問への答えなどを記載してお渡ししています。

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ギグパートナー104名との契約はすべて電子サインで完了

越智:
今年10月、ヤフーは10歳から80歳までのギグパートナー104名と業務を開始しました。
3分の1は東京以外の16都府県と海外2カ国からご参加いただいていますが、全員と電子サインで契約を結んでいます。電子サインだと進捗状況をリアルタイムで確認できるため、適切なタイミングでフォローが行え、契約書に修正が入った際にもスムーズに差し替えることができたので、短期間で全員との契約手続きが完了できました。紙にハンコと比較すると考えられないスピード感です。

ヤフーが電子サインにスムーズに移行できた理由は「ハンコの一括管理」

生平:
なかなか電子サイン化できない理由の一つに、企業規模が大きい会社ではハンコが200~300個あり、それらすべてを電子サインに切り替えることがすぐには難しいということがあるようです。
また、各部署がそれぞれハンコを持ち、管理部門がばらばらであることも、電子サイン導入のハードルになっているのではないかと思います。そのような場合は、それぞれの部署で電子サインの利用方法を習得しなければならず、導入時の教育コストがかかります。

ヤフーでは、もともとハンコの数がそれほど多くなかったこと、契約書を取り扱う部署でハンコを一元管理していたことで、その部署内の教育だけで電子サインに切り替えることができたので、教育コストもミニマムに抑えることができ、電子サインへのスムーズな移行を可能にしたと感じています。

電子サインの導入を検討するときに心がけるとよいこと

生平:
ヤフーが使っている「DocuSign」は、基本的に外国、欧米ではすでに主流なシステムだったので、海外の取引先との契約でスムーズに進められるというメリットから選びました。また、アクセス権限の制御を行って複数の部門で利用できたり、「Salesforce」を入れていればDocuSignをオプションで追加できたりするなど、機能やシステム連携が豊富なことも選定の理由です。
私たちが電子サイン化を検討したとき、ベンダーはまだ3社でしたが、この2年くらいでベンダーが増え、10社くらいになっています。ベンダーの選定をされる際には、取引先にどのような企業が多いのか、必要な機能がそろっているかなどを確認した上で検討していただくとよいと思います。

「新しい働き方にもマッチする」電子サイン化 今後の展望

生平:
現在は全体の約50%を電子サイン化できています。残りの50%は取引先様の事情や、契約締結日までに時間が足りず、社内調整が難しいので紙にさせてほしい、というケースもありますので、まだこれから電子サインを使っていただく余地はあると考えています。
私たちが目標としている「2021年3月末までに民間取引先の100%電子化」のハードルは高いと感じていますが、少しずつ地道に進めていきます。最終的には、日本のハンコ文化そのものを変えていきたいと考えています。
まだまだ紙という安心感、データに対する不安を持っている方も多くいらっしゃると思いますが、一度導入していただければ、利便性やリモートワークなどの新しい働き方にもマッチするメリットを感じていただけると思います。また、電子サインを導入する企業が増えれば増えるほど、そのメリットをより実感できる方も増えるはずです。

私自身、仕事以外でもハンコを利用する機会はほとんどなくなっています。近い将来には、「紙とハンコを使っていた時代は何て不便だったのだろう」という時代になるかもしれません。コロナ禍においてもスピーディーに契約を締結し、攻めの事業展開を進めるためにも、より多くの方に、電子サインの仕組みを知っていただきたいと思います。

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