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2021.06.15

「経営とデザイン」の新しい関係 デザイン経営とは?

「経営とデザイン」の新しい関係 デザイン経営とは?

2018年5月に経済産業省と特許庁が打ち出した「デザイン経営宣言」。「デザイン経営」とは、デザイン的な思考を経営に活用し、企業のブランド力やイノベーション力を向上することで、国際的な競争力を高めていこうという考え方です。

ヤフーは、経済産業省と特許庁が表彰する令和3年度「知財功労賞(※1)」の「特許庁長官表彰」において「デザイン経営企業」を受賞しました。なお、IT企業が「デザイン経営企業」を受賞するのは初めてです。
※1 知財功労賞
経済産業省と特許庁が、毎年4月18日の「発明の日」に合わせて、知的財産権制度の発展および普及・啓発に貢献のあった個人や、制度を有効に活用し円滑な運営・発展に貢献のあった企業を表彰している。2019年からは新たに「デザイン経営」にスポットライトを当て、知的創造サイクルの実践に寄与した人材や、デザイン経営を取り入れながら知的財産を有効活用している企業を表彰する「デザイン経営企業」のカテゴリーが新設された。

今回は、デザイン経営とは何か、ユーザーのみなさまがわかりやすく便利にヤフーのサービスを使えるようにするため、ヤフーがどのようなことに取り組んできたのか、企業がデザイン経営を取り入れることの意義などについて聞きました。

内田 伸哉(うちだ しんや)
大手広告代理店を経て2013年入社。ブランド・コミュニケーション・クリエイティブを マネジメント。PayPay、Zホールディングス、Y!mobileなど多くのブランドの立ち上げに携わる。
高部 博(たかべ ひろし)
2009年入社。知的財産部で特許・商標・意匠・著作権など知的財産全般にかかわり、権利化・渉外・契約・企画推進などを担当。現在、知的財産部門のマネジメントを務めている。
浜 さおり(はま さおり)
2008年より知的財産権業務を担当。2013年から意匠・商標業務を担当し、PayPay、Zホールディングスなど多くのブランドの立ち上げに知財観点で携わる。

デザイン経営とは?

高部:
デザイン経営とは、経済産業省と特許庁が日本企業の競争力をさらに向上させることを目的に打ち出した考え方で、デザインの力をブランドの構築やイノベーションの創出に活用する経営手法です。
グローバル的に競争力のあるGAFAを筆頭とした各企業の多くが、経営戦略においてデザインを重視しています。たとえば、海外ではAppleの商品の使いやすさやデザイン、国内では良品計画の「MUJI」ブランドといったデザインの力で価値を生み出している企業が、例としてわかりやすいかもしれません。

ただ、日本ではまだデザインを重視して成長している企業はそれほど多くありません。そのため、経済産業省と特許庁が「デザイン経営」を宣言、「デザインを経営から考えていくことで、海外にも通用する企業競争力をつけていこう」というメッセージを打ち出しました。
「デザインを大切にする」というのは、ユーザーにとっての価値や体験を第一に考え、サービスや商品で応えていくことです。その考えが徹底できている企業は、やはりブランド力も高くなり、商品やサービスが広く利用されるため、結果成長し、競争力が高まっていくと考えられています。

「デザイン経営」という言葉自体はこの3年くらいの間に新たに生まれてきたものですが、ヤフーではもともと大切にしてきた考え方です。
ヤフーはインターネット業界の発展とともに成長してきましたが、創業時から、「ユーザーファースト」の理念で、ユーザー体験の質をいかに高めるかを全社を挙げて追求してきました。「デザイン経営」という言葉が定義される前から、その考え方を実践して成長してきた、という点が、今回の功労賞受賞において評価いただいた大きなポイントでした。

出展:特許庁

ヤフーのデザイン経営の取り組み

内田:
井上前社長の時代から、経営層がサービスを使い倒して気になる点をサービス担当者にフィードバックするような仕組みがあったこともあり、自然にデザインを重視する文化ができたのかもしれません。「トップがまずサービスをとことん使い倒せ」というメッセージが代々からあり続けていることはとても大きいと考えています。
ヤフーは、100を超える多種多様なサービスを展開していますが、複数サービスでの横断的な体験や「ヤフーらしさ」を、より自然なかたちでユーザーのみなさまに提供することをとても大切に考えています。そのため、デザインにおける「ヤフーらしさ」を明文化した「Yahoo! JAPANデザイン原則」を策定し、全社をあげてブランドを体現していく取組みを行っています。

また、デザイナーというと、かつてはグラフィックやインターフェースをデザインするだけの存在でした。しかし、現在ではその職務範囲がより広い意味でのデザインに変わってきています。たとえば、ロゴや名称がビジネスにしっかり寄与するか、ユーザーがどの様な環境でそのデザインを使用するか、など、さまざまな観点から考えたコミュニケーションデザイン、環境デザインを求められる存在になってきています。

サービスではPayPay、プロモーションとの複合では311検索や超PayPay祭など、多くのユーザーが利用・参加するサービスやコミュニケーションをデザインの力で設計しています。
また、古くはCtoC(Customer to Customer)の文化を日本に産んだヤフオク!、新しい携帯事業の形を切り開いたY!mobile、日本に新しい決済手段を広めたたPayPayなど、デザインの力で多くのブランドが生み出されてきました。ブランドからUIUX(※2)、ビジネスにいたるまで総合的にデザインした結果、これらの成功が生み出せていると感じます。
※2
UI:「ユーザーインターフェース」の略。ユーザーが見たり触れたりして接する部分のこと
UX:「ユーザーエクスペリエンス」の略。ユーザーがサイトや製品、サービスなどを通じて得られる体験や経験のこと

浜:
知財担当としては、ブランドコミュニケーション担当と連携して、PayPayや、ヤフーのデータソリューションといった新たなブランドの価値づくりに貢献してきました。それぞれのサービスで磨き込まれたヤフーらしいUI・UXを知的財産として積極的に保護しています。
また、ブランドを浸透させるために必要なルールやガイドラインの策定や運用を行い、ブランドイメージをつくりあげることに貢献しています。

次の時代のスタンダートとなる体験デザインを

内田:
2021年は通信が5Gとなり、スマートフォンの普及率が80%をまもなく超えます。この世の中だからこそできる次のコミュニケーションの形が今年も生まれるはずです。直近で言えば「Clubhouse」や「Dispo」など(※3)はわれわれが想像もしなかったような新しいデザインの形ではないでしょうか。その中で、ヤフーも次の時代のスタンダートとなるような体験デザインを生み出し、次の時代を築いていければと思っています。
※3
Clubhouse:
招待制の音声SNSアプリケーション。テーマを設定した「ルーム」でいろいろな話、それを聞いたり、発言権をもらって会話に参加したりできる。
Dispo:
招待制の写真SNSアプリケーション。次世代Instagramとも呼ばれている、使い捨てカメラ風のカメラアプリ。

浜:
私たち知財担当者は、「ヤフーらしさ」を守ることで、ユーザーのみなさんに安心してヤフーのサービスを使っていただくことを第一に考え知財活動を行っています。
複数の知的財産権(意匠・商標・特許)を組み合わせて、ユーザーにヤフーならではの使いやすさ、便利さを感じていただけるようなUI・UXのデザインを積極的に保護していきます。引き続き、ヤフーらしいデザインの浸透、そこからつながるブランドの価値づくりに貢献していきたいと考えています。

高部:
ユーザーファーストのもと、ひとつひとつの改良の積み重ねや、次の時代に向けて生み出されるデザインなど、ユーザーの皆さんがヤフーのサービスを使って最高の体験をしていただけるよう全社を挙げて磨きこまれていくデザインを、知財制度を活用して守っていきます。
今後も引き続き、ユーザーやパートナーのみなさんがヤフーのサービスを安心・安全に使っていただけることを第一に考えた活動を行っていくことで、会社の成長、そして業界全体の発展にも貢献していきたいと考えています。

ヤフーのデザイン経営の取り組み

ヤフーのデザイン経営の取り組みの一部をご紹介します。

1)トップマネジメントがデザインを理解、支持している
重要な決定に関しては経営層もデザイン、ブランドに関連する判断を行っています。デザインにおけるルールの制定、商標やデザインに関してはガイドライン(※4)、スタイルガイド(※5)などのルールで統率され、それらの重要な変更は必ず役員会を通して行われます。
※4 ガイドライン:
Yahoo! JAPANらしさ(サービス憲章・デザイン原則)を体現するためのUIにおける品質基準について記載したもの
※5 スタイルガイド:
スマートデバイスにおける「Yahoo! JAPAN標準ビジュアルスタイル」を定義。ビジュアルスタイルに一貫性を持たせることで統一された世界観を提供し、複数サービスを併用するユーザーのサービス間体験を分断しないことが目的。

2)長期的な視点でデザインに取り組むための組織となっている
採用において毎年一定数のデザイナーを採用し、新入社員の育成においてもデザイナー向けの研修制度を整備しています。また、デザインやUI・UXにおいて長けた人材においては「黒帯(※6)」と呼ばれる役職が用意され、各分野でのデザインのエキスパートが任命されます。
※6 ヤフーの黒帯制度:
「該当分野について突出した知識とスキルを持っている第一人者」として実績を上げている優秀な人財を称賛し、新たな活躍の場を提供するための制度。黒帯に任命される社員は、全社員の1%以下。

3)デザイン手法による製品・サービスの開発に詳しい者がチームに参画している
各サービスのデザイン責任者やプロジェクトマネージャーが中心となり、サービスの知識や開発に長けた人材がデザイン視点で判断を行っています。また、プロモーションなどにおいては社外のデザイン会社や広告代理店のアートディレクターと協業することも多く、社内外のクリエイターの交流なども積極的に行っています。また、外部人材や会社との連携も行い、常にデザイン的・技術的に最新の環境を保っています。

4)デザイン力の強化に向けた投資
デザイナーには自身の技術力向上を図るための学習支援制度があり、自分の裁量で学習支援を利用できる制度が整っています。
ヤフーは、従業員一人ひとりのパフォーマンス向上にむけた持続的な変化と成長を支援する「人財開発企業」を目指しています。すべての従業員に無限の可能性があるという考えのもと、一人ひとりが経験から学び、成長につなげていくことを推進しており、デザイナーに限らず、エンジニアを含めたクリエイター向けの制度が充実しています。
なお、知財部が中心となる取り組みとしては、「発明報奨制度」があります。対象は、発明と意匠の創作(デザイン)。優れた創作をした従業員に対して報奨金の支給のほか、よりイノベーティブな創作と評価されるものについては全社的に表彰(スーパーエジソン賞)しています。

5)デザイン手法の導入による顧客の潜在ニーズの発見
サービスやプロモーションは公開後も、ユーザーの課題やニーズを発見した際はすぐにサイトやサービスを改善しています。ユーザーインタビューも実施しており、ユーザーの声をサービス・デザインの改善につなげています。

6)デザイン思考に基づいてアジャイル型の開発を行っている
デザイン思考に基づいたアジャイル型(※7)の開発を行っています。公開前はテスト環境で何度もテストを実施。公開後もユーザーが使いづらい点などあった場合はすぐに改善しています。 ※7 アジャイル型:
仕様や設計の変更があるという前提で、おおよその仕様だけで細かく開発し、小単位での実装とテストを繰り返し、徐々に開発を進めていく手法。

7)長期的な企業価値を向上させるため、デザイン経営の指標を策定している
ユーザーインターフェースやサービスを改善した結果、多くのユーザーに利用いただき、満足いただけるかどうかがデザイン経営の成果であり指標であると考えています。
多くの方に満足して利用いただけるということが企業として重要であり、そのサービスは必ずUI・UXのテストを繰り返してから公開されます。また、ABテストなどで複数のデザインを試し、数値を検証しています。

8)デザイン経営の取り組みで生まれた知財などについて、知的財産権を取得している
ユーザーがヤフーならではの使いやすさ、便利さを感じて価値を感じてくださるようなユーザーインターフェースやデザインは積極的に意匠出願・特許出願しています。意匠出願に関しては、これまでに画面デザインを中心に意匠出願をしています。
また、ヤフオク!、Yahoo!知恵袋などの100を超える多種多様なサービスを展開しており、サービス名称や機能名称など、ブランド保護の観点で積極的に商標出願を行っています。

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