こんにちは、株式会社LIGの外部メディアコンテンツ制作チームで編集を担当しているやぎです。
先ほど打ち合わせが終わって、早めに会社に戻らないといけないんですが、実は小腹が空いていまして……。漁師直営の「魚谷屋」というお店で遅めのランチを食べているんです。


やぎ
おいしい!やっぱりお刺身はおいしい!
でも……正直これが何の魚なのかもよくわからないんだよね……。魚なんて普段は鮭しか食べないからなあ。

長谷川
何か魚のことでお困りですか?

やぎ
え? ……あなたたち誰ですか?(髪の毛がすごい)

長谷川
僕は魚について話し出したら止まらない、ヤフー株式会社「Gyoppy!(ギョッピー)」プロデューサーの長谷川琢也です。

久保
同じく「Gyoppy!」編集長の久保直樹です。
PROFILE

- 「Gyoppy!」プロデューサー・長谷川 琢也
- ヤフー株式会社 SR推進統括本部 社会貢献事業本部 東北共創
- 2003年にヤフー入社後、コマース担当部長などを歴任。東日本大震災後の2012年に石巻へ移住、「復興デパートメント」の立ち上げをはじめとした復興支援に携わる。同地域の主要産業である水産業の活性化を目指し、2014年に若手漁師たちと「フィッシャーマン・ジャパン」を設立。水産業が抱えるさまざまな課題を解決するための取り組みを多数実行している。
- 「Gyoppy!」編集長・久保 直樹
- ヤフー株式会社 SR推進統括本部 社会貢献事業本部 CSR推進室
- Yahoo!スポーツ(現スポーツナビ)、Yahoo! JAPANトップページの編成などをはじめ、ヤフー社内で10年間、編集やウェブディレクションに携わる。現在は、社会貢献事業本部にて、CSRレポートの執筆や、社会課題を伝える記事の編集などを担当。
肩書、部署名は掲載時のものです。
INDEX
実は課題だらけ?海のリアルを伝える「Gyoppy!」とは

やぎ
ぎょっぴい……? 「ぎょっぴい」って誰でも知っている体で話されていますけど、なんですか「ぎょっぴい」って。

長谷川
「Gyoppy!」はヤフーが運営していて、海と海にまつわる人・もの・ことに興味を持ってもらうことを目指しているメディアです。水産業だけでなく、プラスチックゴミのような環境問題など、海に関するあらゆる課題を取り上げて発信することで、読者に少しでも興味を持ってもらい、行動を起こしてもらいたいなと。僕らはその運営に関わっているんです。魚や海について分からないことがあるなら、僕たちが答えますよ。

やぎ
え、ああ、はい……(せっかくだしちょっとだけ聞いてみようかな)。じゃあ、このお刺身はそれぞれなんていう名前の魚なんですか?

長谷川
これは、水ダコ・ソイ・メカジキ・スズキですね。この時期のメカジキって、ものすごくうまいんですよ。脂が乗ってて、口の中でトロけるでしょ!?

やぎ
そうですね。一口食べてみて感動しました。

長谷川
これだけ脂が乗っているんですけど、コレステロールや中性脂肪酸を減らすDHAっていう栄養素が含まれていて逆にヘルシーなんです。カリウムやビタミンDも含まれていて、すっごく体にもいいんですよね。さらにタンパク質も豊富だからダイエット中にも……。

やぎ
ちょ、ちょっと待ってください。なんでそんなに詳しいんですか?

久保
あ、さっきも言った通り、長谷川は魚のことを話し出すと止まらないんです。海にまつわるメディアを運営していると自然に知識が身についちゃって。

長谷川
みんな何気なく魚を食べているけど、その魚がどこで獲れてどうやって食卓まで届いているかわからないですよね? でも、その魚が住む海がいま危険なことになっている。なので、いまの「海の課題」を「Gyoppy!」で伝えて、関心を持ってもらおうというわけです。

やぎ
へえ~、「海の課題」なんて初めて聞きました。具体的には、どんな課題があるんですか?

長谷川
とにかく全て減っているんですよ。海に泳ぐ魚の数や漁獲量もそうだし、漁師の数も減っていますからね。
一方で、海外で魚の需要が増えているから人気のある魚は獲られちゃう。一部の魚が高騰しているのは、そういう背景があるんですよね。

やぎ
なるほど、そういう背景があったんですか。でも、需要が増えているんだったら、養殖でまかなえばいいんじゃないかと……。

長谷川
と、思うかもしれないけど、卵から成魚まで育てる「完全養殖」はまだ確立しきっていない技術なんですよ。養殖は海から稚魚を獲ってきて育てることもあるし、育てる魚の餌も海産物だったりするから、全て人間の手で養殖できるわけじゃない。

やぎ
ということは、将来的に魚の量が減って、お刺身が食べられなくなる未来もありえるってことですか?

久保
全てではないけれど、一部の魚には言えるかもしれないですね。たとえばニホンウナギはIUCN(国際自然保護連合)のレッドリスト(※1)に掲載されています。好きなものが食べられなくなるって、身近な話題じゃないですか。まずはそこを切り口に若い人たちに情報を届けて、行動に移してもらえたらと思っているんです。

長谷川
もっと言うと、海の課題って地域の課題にもつながるんです。漁師の数が減ると、水産業を中心にしている町は産業がなくなっちゃう。すると、学校が減り、人口も減って、町そのものがなくなってしまうかもしれない。

やぎ
え、そこまで大きな話につながるんですか!?

久保
そうなんです。海の課題だけれど、海だけの話じゃないんですよ。

長谷川
だからこそ、「Gyoppy!」を通じてさまざまな海の課題を知ってもらい、その先にあるアクションを起こしてリアルに自分ごとにしてほしい。
実は僕、もともと魚が苦手だったんです。目が怖くて、合わせられなかった(笑)。でも、漁師さんや水産業と触れていくうちに奥深い世界だと感じて、今は魚が大好きになっちゃいました。
魚以外にもサンゴやプラスチックゴミの問題なども深刻な海の課題なんです。
「Gyoppy!」は、「海とそこに関わる人たちって面白い!」と思ってくれる人を増やすことを、まず目指しています。その中から、頑張っている団体に寄付をしたり、魚の出自を考えて買ったりといった、課題解決へのアクションを起こしてくれる人が出てきて、海の豊かさを次世代につなげていければいいなと思っています。

やぎ
なるほど、いろいろと教えていただいて、ありがとうございました!

長谷川
ちなみに、僕らの仕事仲間が宮城県石巻市で水産業を盛り上げる仕事をしているんですけど、もし興味があったら話を聞いてみませんか?

やぎ
今日お話を聞いて、興味がわいてきたのでぜひ!

やぎ
あ、もうこんな時間……。会社……。
レッドリスト・・・レッドリストとは絶滅のおそれのある野生生物の種のリスト
撮影協力:魚谷屋 宮城漁師酒場
「かっこいい」「稼げる」「革新的な」水産業を目指す、「UPDATE水産業プログラム」
PROFILE
- 企画・松本 裕也
- ヤフー株式会社 SR推進統括本部 社会貢献事業本部 東北共創
- 2009年ヤフー株式会社に入社。3年間広告営業として従事。その後学生時代からNPOの活動に関わっている経験を活かし社会貢献系サービスの担当者となる。2014年から石巻で復興支援を行う部署への異動に伴い、家族とともに石巻に転勤。ヤフーが立ち上げからサポートしている「フィッシャーマン・ジャパン」の活動を主に行っている。
肩書、部署名は掲載時のものです。

やぎ
ということで、ヤフー石巻ベースで働いている松本裕也さんとお話しすることになりました。松本さんは宮城県石巻市で、水産加工業の活性化を行っているそうで、先日のお話とどのようにつながるのか楽しみです。

松本
はじめまして、ヤフー石巻ベースの松本です。

やぎ
はじめまして。松本さんは石巻市で水産業を盛り上げていると伺ったんですが。

松本
はい、「UPDATE水産業プログラム」という水産加工業の振興プロジェクトを進めています。現地の若手経営者たちを中心にヤフーの組織づくりのノウハウを伝えて、水産業の課題を解決の後押しができればと。これもヤフーのCSR活動なんですよ。

やぎ
へー、「Gyoppy!」のようなメディアだけじゃなくて、現地で実際に動いたりもしているんですね。

松本
伝えるだけでは物事は動きませんからアクションが必要です。

やぎ
具体的にはどのような活動をされているんですか?

松本
ワークショップ形式で参加者と対話をしながら「将来はこうしていきたい」というビジョンや目標を引き出しています。
たとえば、初回では「いい会社ってなんでしょう?」と参加者に答えを聞いたんですよ。こっちでも行政などが主導でビジネス講座は開かれていたんですが、講師が一方的に話し続ける形式も多かったようで、対話を交えたワークショップにみなさん驚かれていましたね(笑)。

やぎ
たしかに面食らってしまいそうですね。プロジェクトはいつから始まったんですか?

松本
プロジェクトは2018年に始まったばかりですが、2012年に復興支援事業の拠点となるヤフー石巻ベースを開設したときから下地は作っていました。
当初は水産品をネットで売るなど、地元の漁師の復興支援をしていたんですけど、漁の道具が流されて引退する人も多かったんです。
石巻は水産業が一番の産業だから、このままでは三陸の漁業がなくなってしまうかもしれない。そんな課題意識から三陸の水産業を盛り上げるために若手の漁師を集め、2014年に一般社団法人フィッシャーマンジャパンを立ち上げました。先日来店いただいた「魚谷屋」も活動の中から生まれたんですよ。
ちなみに、僕は2015年10月から石巻に移住して、フィッシャーマンジャパンの事務局次長もしています。

やぎ
6年間も地道に活動されてきたんですね。現地にいるからこそ、課題もたくさん見えてきたんじゃないでしょうか。

松本
石巻は水産業の町なので、多くの若者が水産加工業や漁師など、海に関わる仕事をしています。でも3Kと言われるように、「きつい」「汚い」「危険」というイメージがつきまとい、仕事のなかで自己実現をしづらい状況が生まれていました。
だからフィッシャーマンジャパンは新3Kといって、「かっこいい」「稼げる」「革新的な」水産業をかかげて、魂を込めて働ける人を増やそうとしてきたんです。「UPDATE水産業プログラム」もその流れから生まれています。

やぎ
「UPDATE水産業プログラム」を始めてから手応えはありましたか?ヤフーのノウハウのここは役立ったとか、逆にここは現地にはハマらなかったとか。

松本
目標設定やマインドセットなど、働き方の意識改革のノウハウは役立ちましたね。地方では「親から受け継いだ社訓を守らなければいけない」など保守的な風潮も強いんですけど、そこを問い直して「これからどうしていきたいかを組み立ててみよう」と提案しています。参加者にビジョンが生まれていたので、それが組織改革の原動力になるはずです。
逆に経営のより具体的な部分、たとえば評価制度や人事制度などは、伝えてもあまり意味がないかもと感じていますね。ヤフーと石巻の各社では風土もビジネスモデルも違うので、現場に即した制度が必要なのだと思います。

やぎ
やはり現地に行かないと見えてこないことがあるんですね。今後の活動についても聞かせてもらえませんか?

松本
このプログラムは、即効性のあるものではないんです。組織改革はすぐにはできないこと。だから地道に進めていくしかありません。
2018年度は人材・組織作りをメインとしていましたが、来年度は事業まで踏み込んだプログラムも検討しています。また、来年度以降は石巻以外の地域も巻き込んでいけるよう準備をしたいですね。
ヤフーのビジョンは「課題解決エンジン」です。僕らが取り組んでいるような大きな課題から、日常の小さな課題まで、さまざまな取り組みを行っていきたいと思います。

やぎ
今回のお話って、居酒屋でお刺身を食べていたことから始まったんですよね。大好きなお魚の背景に、たくさんの課題が隠れていたり、人々が関わっていることを知ることができて面白かったです。またお店にお邪魔させてもらいますねー!!

松本
大歓迎です!よかったら石巻にも遊びに来てください!