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2021.12.22

「LGBTQについて知り、サービスづくりに生かす」LGBTQ勉強会

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近年、「多様性」が時代を象徴するキーワードの一つになっています。2021年に開催された東京2020オリンピック・パラリンピックでも、「多様性と調和」がコンセプトの1つとして掲げられました。また、LGBTQ(性的マイノリティ/セクシャルマイノリティ)である、と公表した選手は約180人で、前回大会の3倍以上となっています。

性的少数者に関する専門シンクタンク「LGBT総合研究所」が約42万人(20~69歳)を対象に実施した「LGBT意識行動調査2019」によると、「LGBTQ(性的マイノリティ/セクシャルマイノリティ)」の当事者は日本の人口の約10%ということがわかっています。
参考)「LGBT意識行動調査2019」を実施

日本は欧米などに比べるとまだLGBTQに対する理解が進んでいないといわれていますが、近年のダイバーシティ推進の流れを受けて、多様な性のあり方を個性としてとらえる人が増えています。

今回は、LGBTQの当事者が有志で活動するレインボーPJ(※)のメンバーに、ヤフーのサービス担当者に向けて実施している「LGBTQ勉強会」の内容、多様性を大切にしたサービスづくりのために心がけたいことなどを聞きました。
※レインボーPJ:
ヤフーが推進しているダイバーシティプロジェクト(女性・育児・LGBT・障がい者・グローバルなどのプロジェクトで構成。以下ダイバーシティPJ)のひとつ。LGBTQ当事者が働きやすい環境整備、LGBTQに対する理解促進を通じ多様性を受け入れる組織風土醸成を目指して、当事者を中心に活動している。

    目次:
  1. LGBT(Q)の今
  2. ヤフーのLGBTQ勉強会
  3. 多様性を大切にしたサービスづくりに必要なこと
  4. 今後の展望
吉川 宗志(よしかわ そうし)

2017年新卒入社。デザイナーとして、ヤフーのインターネット広告をプロモーションする公式サイトや、広告について発信しているオウンドメディアのウェブデザインなどを主に担当。2020年からレインボーPJのリーダーを務めている。

「社内外にカミングアウトして活動しています。まだカミングアウトをしていない人たちから『吉川さん、カミングアウトしても楽しそうに過ごしているな』と、自分を見て少しでも勇気づけられる人がいたらと思っています。
また、周囲にLGBTQの当事者がいる方はそこまで多くありません。勉強会の参加者からは「当事者から直接話を聞いて実感が湧いた」「想像できるようになった」という声があり、当事者として顔を出して伝えていくことが大切だと感じています。
たとえば英語を覚えるにはネイティブの友だちと一緒にいると上達が速いように、当事者が『その言い方は避けたほうがいいと思う』と直接伝えることで、考え方をアップデートするスピードが速くなるのではないかと思います。

当事者にどう配慮したらいいのかわからない、という人は、たとえば、飲み会や雑談などの際に交わされる『彼氏(彼女)はいるの?』『結婚の予定は?』などの話題を苦痛に感じる人もいる、ということをちょっと想像してみてほしいです。性的指向や性自認が多様であるという前提で、『パートナーはいるの?』などと聞いてもらえるとうれしいですね」

LGBT(Q)の今

LBGTとは

LGBTは
性的指向:どのような性別の人を好きになるか
L:レズビアン(同性を好きになる女性)
G:ゲイ(同性を好きになる男性)
B:バイセクシュアル(性別にかかわらず、恋愛対象になる人)

性自認:自分の性をどのように認識しているのか
T:トランスジェンダー(身体的な性と自認する性が一致しない人)

これらの頭文字をつなげた略語のこと。

日本では、LGBTを含めた性的マイノリティ(性的少数者)全体を指す用語としても使われています。「LGB」までは性の対象がテーマ、Tは性自認がテーマの話で、性同一性障害の人や、どちらの性でもないと感じている人も含まれます。

また、「LGBT」と表現すると性の少数者は4つに分けられると思われがちですが、実際はさらにいろいろな性的少数者がいます。

たとえば、
A:アクセシャル(無性愛の人)
I:インターセックス(性分化疾患)
Q:クイア/クエスチョニング(分類に違和感)

このように「LGBT」と表現される中には、頭文字にはありませんが「A」「I」「Q」といった性的少数者も含まれています。

「LGBT総合研究所」が実施した「LGBT意識行動調査2019」によると、「LGBT」という言葉の認知率は9割を超えていますが、その内容を理解しているという人は5割程度です。

出典:「LGBT 意識行動調査2019」

また、8割以上の人が身の回りに当事者がいないと回答しています。当事者の8割が友人・家族も含め誰にもカミングアウトしていないという背景もあるため、LGBTへの理解がなかなか進みにくい面があるのかもしれません。

出典:「LGBT 意識行動調査2019」
出典:「LGBT 意識行動調査2019」

ヤフーのLGBTQ勉強会

レインボーPJでは、これまでヤフーのサービスや制度に対して、以下のような活動を行ってきました。

・Yahoo! JAPAN IDの新規取得時の性別選択項目に「その他」「回答しない」を追加した際のフィードバック
・「Business for Marriage Equality(※1)」について賛同・社内制度化の提案
・「Eaquality Act Japan(※2)LGBT平等法に関する賛同キャンペーン)」について賛同
など
※1:Business for Marriage Equality
日本で活動する3つの非営利団体による、婚姻の平等(同性婚の法制化)に賛同する企業を可視化するキャンペーン。
ヤフーでは、2017年6月より同性パートナーや内縁パートナーに対し、育児休暇や結婚祝金など、配偶者と同等の福利厚生を適用している。
※2:Eaquality Act Japan
性的指向や性自認による差別的取り扱いを禁止し、LGBTも、LGBTではない人も「平等に扱う」ための「LGBT平等法」に関する賛同キャンペーン。誰もが自分らしく生きられ、平等な取り扱いのもとで働くことができる社会の実現を目的として実施されている。

今後はこれらの延長として各サービスに向けて勉強会を開催したり、相談に乗ったりしていきたいと考えていました。そのタイミングで、あるサービスからLGBTQに関する表現について相談されたことをきっかけに、サービス担当者向けの勉強会を開催しました。
近年、LGBT平等法や同性婚についての判決などがニュースで取り上げられることも増えてきましたが、正しい知識がないために誤った表現をしてしまうリスクがあります。そのようなことがないようにするために最低限知っておくべき知識を教えてほしい、という要望がサービス側からありました。
この勉強会ではまず「LGBTQについて知ってもらう」ことを目標にしていますが、最終的なゴールとして「サービスやプロダクトに活かしてもらう」というねらいがあります。 そのため、勉強会は次のようなステップで進めました。

LGBTQ勉強会のステップ
1.「知らない」→「知っている」
2.「知っている」→「想像できる」
3.「想像できる」→「行動が変わる」

1.「知らない」→「知っている」

LGBTQについて「何となく知っている」もしくは「あまり知らない」という人のために、まず統計的なデータを踏まえた各種の知識や最近ホットなLGBTQ関連のニュースなどについて紹介することで、「知らない」から「知っている」にステップアップしてもらいます。
LGBTQなどのマイノリティへ配慮すべき点に気づくためには、正しい知識が必要なので、LGBTについて最低限の基礎知識をきちんと伝えることを心がけました。

2.「知っている」→「想像できる」

LGBTQについての知識が十分についてくると、当事者の目線でその気持ちや思いなどを「何となく想像できる」ようになります。
知識がある程度あったとしても間違ったことを言ってしまわないか心配、という人もいるかもしれません。でも、もし間違っていたら「間違っていたからアップデートするね」と認めて直していければいいと思っています。

3.「想像できる」→「行動が変わる」

もしかしたら身近にいるかもしれない、「LGBT」の当事者たちをちょっと想像してみることができるだけでも、日々の行動や想像できることが変わると思っています。そして、場合によってはその視点をサービスやプロダクトに活かすことにもつなげられるかもしれません。

また、参加者とのインタラクティブな質疑応答や、LGBTQ当事者から見たサービスの課題や改善点などについても勉強会に盛り込みました。

多様性を大切にしたサービスづくりに必要なこと

先日行った勉強会には90人くらいが集まりました。実施後のアンケートでは、「当事者から直接話を聞けたことで、実感が湧いた」という声もありました。
サービス側からは、「当事者が見たときにこの表現をどのように感じるのか?」と聞かれることが多いです。
また、具体的にどのような点に配慮すればよいのか? という点については、以下のような内容を伝えました。

1)色の使い方

たとえば、日本では「男性のトイレは青、女性のトイレは赤」という色分けになっていることが多いですが、それって本当にそれでいいのだろうか? と考えてみてほしいです。現在の「男性は青、女性は赤」に色分けされたマークが生み出されたのは、1964年の東京オリンピックだといわれています(※3)。
性別で色分けを考えたときに、「赤の方が女性だとわかりやすいから」女性を赤で表現しているのであればそれでもいいのですが、実は海外では「男性は青、女性は赤」という色分けではない国もあります。そのような情報や背景を知った上で検討したり、そもそも色分けをする必要があるのかいったん立ち止まって考えたりするだけでも違うと思っています。
とはいえ、グラフや図などは、そうした「当たり前」や社会通念、ステレオタイプを使うことでデザインとしてわかりやすくなる面もあります。男性は青、女性は赤を使うことがだめ、ということではなく、「さまざまな背景も理解した上で、このような理由でこの色を使っています」という意図のもとに色を選び、使ってもらえたらと思います。

※3:
トイレマークのデザインは以前からあったが、1964年の東京オリンピック開催時に、男性がスカートを身に着ける国もあるという背景から、男女のマークを色分けで区別したともいわれている。

(画像:アフロ)

2)カップルの表現

たとえばカップルのイラストを記事の中に使うときに、何も考えずに男女のカップルを入れてしまう方が多いと思います。でも、それで本当にいいのかな? と一度立ち止まって想像してみるだけでも、表現が変わってくるかもしれません。

3)性別の選択項目

心の性が体の性と一致しない人 は、トランスジェンダーやXジェンダー、クエスチョニング、ノンバイナリーなどが該当します。また、ゲイの方でも心の性が男性であれば「男性」を選択します。
そのような方への配慮のひとつとして、今は「その他」や「回答しない」などの項目を用意しておくことが一番妥当だと思っています。自分では「その他」を選択しない場合でも、「その他」があるだけで配慮されているのだな、と感じます。
また、「性別を何のために聞かれているかわからないと答えづらい」「そもそも男女を選択させる項目って必要なの?」という声もPJメンバーからあがりました。今後は、あえて性別を選択させる必要がないなら項目をなくすことも検討されるようになるかもしれないと思います。

(Yahoo! JAPAN IDの取得画面)

みなさんがさまざまな人に利用されるサービスをつくったり、表現を考えたりするときには、常識や固定観念にとらわれないことを意識してほしいと思います。
この話をするときよく引き合いに出すのが、「常識は18歳までに身につけた偏見のコレクションである」という、アインシュタインの言葉です。「自分が常識だと思っていることは、実はこれまで蓄積された偏見なのかもしれない」ということを前提として理解しているだけでも、だいぶ行動が変わってくるのではないでしょうか。

たとえば、実はみそ汁の具は家庭ごとに全然違います。「みそ汁の具は何だった?」という話をすると、それぞれ育った家庭で出てきたみそ汁がその人の「みそ汁の具は〇〇」という「常識」になっているのがわかります。そんな風に、いったん立ち止まって相手のバックグラウンドを想像してみたり、自分の考え方が偏見からきているものなのか、そうではないのかを考えてみたりすることは、多様性を大切にしたサービスづくりに必要なことだと考えています。

多様性を大切にしたサービスづくりに必要なこと
・それで本当にいいのかな? と一度立ち止まって想像してみる
・常識や固定観念にとらわれないことを意識する

「自分が常識だと思っていることは、実はこれまで蓄積された偏見なのかもしれない」ということを前提として理解しているだけでも、行動が変わってくる

今後の展望

このPJの一番の目的は、まず、ヤフーで働いている当事者たちが、カミングアウトしていてもしていなくても働きやすく、自分の個性を生かして働ける環境をつくることです。その上で、今後もヤフーのサービスや制度をさらに良くしていくために貢献していきたいです。
また、今後はZホールディングスのグループの各社とコラボした取り組みを行っていきたいと考えています。1人の力ではできることは小さいですが、各サービスの方々にも協力してもらうことで、日本をLGBTQフレンドリーな方向へ少しでもアップデートしていきたいと思っています。

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