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2022.02.09

なぜ、いまあらためて “消費者理解” が重要なのか  Zホールディングス・グループ企業が進める消費者理解とデータ活用

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2022年1月にオンラインで開催した「Yahoo! JAPAN DATA CONFERENCE 2022」では、データ活用の具体的な事例にもとづき、6つのセッションを行いました。
今回はそのなかから、「なぜ、いまあらためて “消費者理解” が重要なのか Zホールディングス・グループ企業が進める消費者理解とデータ活用」のレポートをお届けします。
コロナ禍により新たな生活様式が生まれ、消費者からサービス、商品に対するニーズの移り変わりがありました。変化する消費者ニーズを捉え、どのようにデータ活用しサービスに反映していくべきか、ZHDグループ企業のデータ活用のキーパーソンをお招きして、with/afterコロナに考えるべき今後の消費者理解とデータ活用の関係についてディスカッションしました。

    目次:
  1. コロナ禍における顧客ニーズの変化、サービスにおける消費者理解の取り組み
  2. プラットフォーマーだからできるデータ活用とは
  3. マーケティング担当者はデータ・AI(人工知能)とこれからどのように向き合うべきか
野口 竜司さん
株式会社ZOZO NEXT 取締役 CAIO(Chief AI Officer)兼 日本ディープラーニング協会 人材育成委員
砂金 信一郎さん
LINE株式会社 執行役員 兼 AIカンパニー カンパニーCEO
谷口 博基
ヤフー株式会社 チーフデータオフィサー(CDO)

コロナ禍における顧客ニーズの変化、サービスにおける消費者理解の取り組み

ZOZO野口さん:

コロナ禍においては、非常に大きな変化があったと思います。データやAIにおける予測テーマは「顧客予測」と「需要予測」の大きく2つがあります。

世界各国での共通の現状だと思いますが、コロナ禍でそのうちの「需要予測」が壊滅的に当たらなくなりました。さらにファッションや趣向品における顧客ニーズの変化が起こり、コロナ禍になってから過去のデータだけに頼れないという状況にもなりました。
その中で、過去データや過去の実績分析だけに頼らずに、直近のデータからいかに予測するかということがとても重要になっています。

LINE砂金さん:

予測する際には「データがたくさんあればあるほどよい」と思われるかもしれませんが、実は逆にデータがあり過ぎても、それらを選別することなく学習に使ってしまうと精度が下がる可能性があります。

そのため、どこまでが本当に有効に使えるデータなのか慎重に選ばなければいけない、と改めて思いました。
コロナ禍におけるLINEの利用状況の変化ですが、まず、メッセージング、コミュニケーション領域では引き続き使っていただきつつ、音声通話やビデオ通話の利用がかなり増えました。なかなかリアルに会えない状況が続いて、テキストやスタンプよりもちょっとリッチな何かで補完したいというユーザー心理が現れたと思っています。また、動画を消費するという感覚が、ユーザーにとって普通のことになってきたのかもしれません。LINEのビデオ通話でずっとつなぎっぱなしにするという方が非常に増えています。

LINEグループ内では、出前館のサービス改善にも力を入れていて、出前館の正規スタッフだけではなく、他の配送員にも配送を手伝ってもらうことをやっています。その実現のため、出前館のアプリの「あと25分で届きます」というような到着予想時間の予測や、「このエリアでこのぐらいの注文が発生しそう」という需要予測のためにデータを活用して急ピッチで対応しています。注文をいただいたら、1分単位でお客様へのお届け時間を合わせられるようにしたり、配送員がより多く稼げるようにしたりするために、AIの活用にも取り組んでいます。
メニューの検索やレコメンデーションについても、「なんとなくこういうメニューを頼みたい」というあいまいなテキストで検索されたときも、レコメンデーションと合わせることで、食べたいと潜在的に思っているものがちゃんと注文できたり時間どおりに届いたりするというところにチャレンジしています。

ヤフー谷口:

新型コロナウイルスの感染が広がり始めたころでいうと、みなさんご自宅で過ごす時間が増えて、オンラインで過ごされる時間がすごく増えていたと思います。

Yahoo! JAPANは約100のオンラインサービスを提供していますので、全般的に利用が増えるというのがまず大きな傾向でした。
また、ヤフーは検索サービスを提供していますので、皆さんが困っていらっしゃる事がつぶさに見えてくるということが、今回のコロナにおいてさらによくわかりました。

たとえば、初めのころは「マスク 在庫」という検索がすごく多かったです。マスクがなかなか手に入らなかったこともあり、どこに行ったら売っているのか知りたいというニーズがあったのだと思います。次第に「マスク 洗濯」「マスク 再利用」「マスク 手作り」など、簡単に買えないので同じマスクをもう1回使ったり、ご自身で作ったりする方も多かったのだと思います。そのようにつぶさにニーズが見られるようなデータを預けていただいているのだなと、身が引き締まりました。

プラットフォーマーだからこそできるデータ活用とは

ZOZO野口さん:

プラットフォーマーの特徴は、やはり巨大なデータがあることです。私もAIの専門家として予測のAIモデルをたくさん作ってきました。

その中から有効なデータを精査し、使うことで予測精度が高い状況になるので、何か予測をしたいことがあれば、プラットフォーマー内のデータを活用して予測モデルを作れますし、やるべきことだと思います。
一方、各事業会社ではデータ量に限界があるため、予測モデルのベースとなるアルゴリズムがどれだけ発展しても、予測精度の面で難しさを感じることが多いかもしれません。プラットフォーマーの立場としては大量のデータが手元にあることで予測精度の高いモデルを作って提供できるため、それを事業会社とともにどう生かしていくかが非常に重要になってくると思います。

LINE砂金さん:

「プラットフォーマー」を、みなさんがインターネットやアプリの中で過ごしたり、データを預けたりする存在と考えてお話します。

われわれLINEの社内で「Zフィーチャー」と呼んでいるものがあります。LINEのサービスをご利用いただいている方たちが、どのようなコンテンツに興味があるのかについては、約8,900万人(2021年9月末時点)のLINEユーザーのデータをもとに理解やユーザー属性を推定することが進んでいます。
そのユーザー属性の推定に基づいて、コンテンツをレコメンドしたり、より必要と感じていただけそうな広告を表示したりということが精度高くできるようになってきています。データをもとに、ご利用いただいている方のペルソナを推測することがかなりの精度でできるのが、プラットフォーマーの非常に強いところだと思っています。ただ、これが本当にちゃんとできているのかと問われると、まだまだ改善をする余地はあると考えています。

ヤフー谷口:

ヤフーもプラットフォーマーと呼んでいただくことが多いのですが、それはたくさんのサービスを通じて多くのお客様にご利用いただいているからだと思っています。

当然、お客様のデータを守り、プライバシーやご同意いただいた内容に従いながらデータ活用していくのがベースです。これについてはヤフーだけでなく、ZHDグループ全体で共有している点だと思っています。
プラットフォーマーとして、約100あるYahoo! JAPANの各種サービスを通じて、お客様がどのようなコンテンツを見ているのか、どのようなキーワードを検索しているのか、どのような商品を購入しているのかなどを、Yahoo! JAPAN IDを通じて立体的に理解する。そして、それをもとに、記事や商品など、ニーズに合ったご提案ができる状態が、まさにデータ活用なのではないかと思います。また、広告主さま、ストアさまに対しては、これらの顧客理解を通じて事業成長に役立てていただくことが私たちの使命であり、取り組んでいることです。

LINE砂金さん:

お客様からお預かりしているデータを自社サービスやグループ内のサービス改善のために使うことでお客様にメリットを還元できると考えています。

自社に閉じてデータを活用していた方が、自社サービスをより成長させられるという考え方もあると思います。でも、先ほど谷口さんが話していた通り、ユーザー同意などをしっかりと行ったうえで、データを外部の方が使えるようにすること簡単にはできないことだと思います。
データソリューションを利用されている方が活用しやすいように必要なデータが整理されていること、プライバシー的な配慮、データの取り扱いの配慮やガバナンスなど、非常に難しいことをクリアしないとできないことだからです。

ヤフー谷口:

砂金さんのおっしゃる通り、各データはお客様からの同意内容に沿った形で、基本的に統計データでしか出しません。

データソリューションを立ち上げたのは2年ほど前ですが、お客様からお預かりしているデータをヤフーのサービス改善に使わせていただくことはもちろんのこと、このデータを外の企業の皆さま、自治体の皆さまにもご利用いただくことで、さらにより良い社会にしていけるのではないかという思いがありました。消費者の声がよりダイレクトに届くことは、世の中にとっても良いことなのではないかと思って始めたようなところがあります。

マーケティング担当者はデータ・AIとこれからどのように向き合うべきか

LINE砂金さん:

データサイエンティストや数式を解ける人だけがAIやデータの専門家ではないと思っています。

「直感的にこうだと思うが本当にこの仮説は正しいのだろうか」ということを簡単に検証できるようなツールはどんどん使っていくとよいのではないでしょうか。
また、今後、よりセグメンテーション、パーソナライズされていくのではないかと思っています。たとえば、直近のデータで次の行動を予測したり、この世代のこういう人、こういう趣味を持っているユーザー属性が推定できたりしたとします。ですが、お仕事中の人と、家に帰ってくつろいでいる人、家で晩ご飯の準備をしている人は、同じ人間だったとしてもそのときにいる場所やタイミングによって、その情報の受け取り方が違うはずです。属性推定もただ「この人がこういう人です」と推測するだけではなく、時間や場面に合わせてよりパーソナライズされた情報をお届けすることが必要とされると考えています。

今までは、たとえば顧客ごとに完全パーソナライズされたメッセージを用意するのは無理だったのですが、AIを活用すれば100万通り作っておくことも可能になります。今まで技術的制約や人的リソース制約でできなかったけれど、本当はもっとユーザーに寄り添ってパーソナライズさせたいとマーケターの皆さんが思っていたら、それを解決するためのAIのツールをご活用いただける機会があればどんどん使っていただきたいです。

ZOZO野口さん:

先ほど砂金さんがおっしゃったように、データの取り扱い、AIの領域において、やっぱり自然言語系の大ブレークスルーが今起こっています。

触りやすい構造化されたデータだけを取り扱っていてはだめで、これからは言語系に関してもデータ分析したり、AIの介在で扱えたりするものになってくると思います。
その上で、いかに「打席数を増やすか」ということだと思います。たとえばデータを漫然と眺めているだけでは、まだ観客席から見ているだけです。データを見て仮説を立てて、実証する、そこまでのサイクルっていうのを体験するために、皆さんに打席に立っていただき、バットの振る数を増やしていただくかとがポイントになると思います。

「顧客理解」が今回のキーワードだと思うのですが、今、消費者の皆さまはすでにAIに「アルゴられながら」生きているのではないかと思っています。そして、AIのアルゴリズムによってサービス体験のレベルが上がり、その分消費者は「わがままに」なっていく傾向にあるのではないかと。私は、これを「消費者は“アルゴられるまま、わがままに”になる現象」と呼んでいます。
「アルゴられる」とは、AIのアルゴリズムを使いながら身を委ねるというか、そのような意味合いで使っている独自用語で、AIがサービスのパーソナライズをはじめどんどん最適化してくれるので、それに慣れてきて、さらに上を求めていくという肯定的な意味です。このように、アルゴリズムを利用しつづけて「わがままに」なっていく消費者さんにどう向き合うべきか、これは特にマーケティング担当者さまの非常に重大なイシューになるのではないかと思っています。

・消費者のニーズが変わっていく
・事業者はデータでしっかり捉えそれに合った価値を届ける
・その結果、望まれるものが世に届きやすくなる

ヤフー谷口:

ヤフーでは「全社員AI化」を進めております。ただ、これは全員がデータサイエンティストになってください、ということではありません。

もちろんデータサイエンティストは重要ですし、これからも増やしていきたいと思いますが、先ほどお二人からもあったように、自然文でデータ・AIを扱うことが簡単にできるツールやサービスがどんどん増えてくると思います。AIの中身を自分でつくるのではなく、ツールを活用することで、マーケティングはもちろん、それ以外のあらゆる業務、あらゆる業種の仕事がAI化していくのではないかと考えています。
ツールを積極的にご利用いただいて、ご自身の業務、特にマーケターの皆さまであれば顧客を理解し、わがまま=要望にしっかりと応えていくというところにデータ・AIを使っていっていただければと思います。

LINE砂金さん:

ZホールディングスのAI人材教育で大切にしている考え方が「事例共有」です。AIやデータを使って何かやりたいと思った方は、自社の課題を考えることはもちろん、「周りの会社や英語圏の会社の人たちはどうしているのだろう」など、他社事例にもいろいろなヒントが隠されていると思います。

まとめ
・コロナ禍におけるユーザーニーズの変化が大きいため、コロナ禍以前のデータだけに頼れず、直近のデータの重要性が高まっている
・データ・AIはデータサイエンティストだけのものではなく、より多くの人が仮説検証にデータを使うべきであり、データを見て仮説を検証し実証するサイクルをまわす「打席数」を増やすことが重要
・データ・AIを活用して、もっと世の中をより豊かにできる

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