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企業情報

2023.09.06

誰もが自分らしく働ける環境のために ソフトバンク・ZOZO・ヤフーが推進するダイバーシティ&インクルージョン

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近年、「LGBTQ+(性的マイノリティ・セクシャルマイノリティ)」へ理解が深まり、企業の中でも支援の声が高まり、さまざまな取り組みも推進されています。性的指向や性自認に左右されることなく、誰もが自分らしく働ける環境のためには、どのような取り組みや制度が必要なのでしょうか?

LGBTQ+に対する理解促進を通じてダイバーシティ&インクルージョンを推進している、ソフトバンク、ZOZO、ヤフーの有志PJのメンバーや担当者が集まり、当事者やアライから評判のよい施策や取り組み、新たに取り組んでいきたいことについて話しました。その内容の一部をお届けします。

ZOZO

篠田 ますみ(しのだ ますみ)さん
ダイバーシティ推進担当。フレンドシップマネージメント部にて次世代支援をテーマに地域や学校などとの連携も担当。
橋本 愛香(はしもと あいか)さん
ダイバーシティ推進担当。フレンドシップマネージメント部にて次世代支援をテーマにNPO法人や養護施設、特別支援学校などとの連携を担当。
仲宗根 清竜(なかそね せいたつ)さん
当事者として参加。業務ではファッションコーディネートアプリ「WEAR」の運用を担当している。

ソフトバンク

大神田 賢翔(おおかんだ けんと)さん
ソフトバンクの人事本部の人事企画部で、就業規則、働き方改革の制度などをダイバーシティ推進課と連携しながら担当している。
宮城 紀子(みやぎ のりこ)さん
「カラフル・プロジェクト」にアライとして2018年から参加している。
Aさん
当事者として「カラフル・プロジェクト」に2~3年前から参加。
Bさん
当事者として「カラフル・プロジェクト」のメンバーとして活動している。

ヤフー

木下 恵梨子(きのした えりこ)
有志の当事者で集まっている「レインボーPJ」のリーダーを2022年から担当している。
山田 玲恵(やまだ あきえ)
人事企画部でダイバーシティ、エクイティ&インクルージョン推進の事務局を担当。レインボーPJもサポートしている。

LGBTQ+とは

LGBTQ+とは
性的指向:どのような性別の人を好きになるか
L:レズビアン(同性を好きになる女性)
G:ゲイ(同性を好きになる男性)
B:バイセクシュアル(同性も異性も恋愛対象になる人)
Q:クエスチョニング(自らの性のあり方について、特定の枠に属さない人、わからない人)

性自認:自分の性をどのように認識しているのか
T:トランスジェンダー(身体的な性と自認する性が一致しない人)

これらの頭文字をつなげた略語のこと。近年は「さらに多様なセクシャリティ」を示す「+」も含めた「LGBTQ+」と表現されます。

性的少数者に関する専門シンクタンク「LGBT総合研究所」が約42万人(20~69歳)を対象に実施した「LGBT意識行動調査2019」によると、「LGBTQ+(性的マイノリティ/セクシャルマイノリティ)」の当事者は日本の人口の約10%、という結果になっています。
参考)「LGBT意識行動調査2019」を実施

ソフトバンク、ZOZO、ヤフーの主な取り組み

各社の主な取り組み
ソフトバンク:LGBTQ+に関する全社員受講必須のeラーニング
ZOZO:社内向けのオンラインセミナー、小学校でダイバーシティやLGBTQ+に関する授業の実施
ヤフー:当事者同士の交流会、サービス向けの勉強会

ヤフー木下:
ヤフーでは、社内で当事者交流会を開催しています。コロナ禍をきっかけに、オフライン開催からオンライン開催になりました。オンラインなら顔や名前を出さずに参加できるため、当事者がより気軽に参加しやすくなったと思います。開催後のアンケートにも、「こういう場があると落ち着く」「当事者が会社にいるとわかって安心した」という声が多く寄せられています。

また、「東京レインボープライド」への参加も評判がよく「東京レインボープライドに参加していたからヤフーを選びました」と入社後に話してくれた新卒社員もいました。

ヤフー山田:
社内でレインボーPJが実施しているサービス向けの勉強会をきっかけに、「(LGBTQ+関連の)このような内容の記事を出そうと思うのですが、こういう表現はどうですか?」という相談も増えてきました。この活動も、いい循環づくりにつながっていると感じています。

ヤフー木下:
「この勉強会があるおかげで、当事者はこういう人だと目に見えてわかるようになった」という声が多いです。
ヤフーでは、当事者同士の交流会、勉強会といった取り組みが活発に行われていると感じています。

ソフトバンクAさん:
ソフトバンクでは、LGBTQ+に関する知識を増やしてもらうことを目的とした、全社員受講必須のeラーニングを実施しています。

ヤフー木下:
ヤフーにもeラーニングがありますが、これによって当事者ではない人にも意識してもらえたり、理解を深めるきっかけになったりしていると感じます。ソフトバンクさんのeラーニングで特に意識していることは何ですか?

ソフトバンク大神田さん:
文字だけで伝えると、少し押しつけてしまうような印象にもなりかねないため、漫画が得意な社員にeラーニング用の漫画を描いてもらっています。たとえばSOGIハラ(※1)など、実際の場面をイメージしやすい形で伝えることを意識しています。
※1 SOGIハラ:
性的指向や性自認に関連した差別的な言動などによる嫌がらせのこと。 また、自身の望む性別と異なる強制的な待遇や差別を受ける生活環境(学校や職場など)も含まれる。
「SOGI」はすべての人が持つ性的指向(好きになる相手の性)・性自認(心の性)を表す言葉。

ソフトバンクのeラーニング画面。漫画も掲載することで、実際のシーンをイメージしやすい。

ZOZO仲宗根さん:
ZOZOでは、2021年に女装パフォーマーのブルボンヌさんをお呼びして、「アンコンシャス・バイアス(無意識の偏見)」について解説する社内向けのオンラインセミナーを開催しました。ブルボンヌさんは言葉の選び方がとても上手なので理解しやすく、社員からは「ラジオを聴くような感覚で聴こうと思っていたけど、話がとても面白かったのでずっと聴き続けてしまった」という感想も多く寄せられました。
参考)【ZOZOテクノロジーズScrum#4 レポート】テーマは「アンコンシャス・バイアス(無意識の偏見)」、全社員でダイバーシティ&インクルージョンについて考えてみました。

ZOZO篠田さん:
社外向けの施策では、2022年の「プライド月間」でZOZOTOWNのロゴマークやアプリのアイコンなどをレインボーカラーに変える月間とし、お客様の考えやご意見も募集する活動も展開しました。ただ、当社からのメッセージに対して、一部の方からご指摘をいただいたため、今年はZOZOとしてどう表現すべきか、ご自身も当事者でいらっしゃるコンサルタントの方に相談しながら検討しました。

今年は、アライを表明するだけでなく、当事者を支援していく活動を「プライド月間」だけでなく1年を通じて行うと方針を定めて、同性婚法制化を目指す団体などに寄付させていただきました。
また、小学校でダイバーシティやLGBTQ+に関する授業も実施するなど、今後も地道に活動を続けていくための準備を進めています。

当事者やアライから評判のよい施策や取り組み

特に評判のよい取り組み
ソフトバンク:全社員必須のeラーニング、啓発映画をオンデマンド配信
ZOZO:当事者でもあるアパレルブランドの社長とのディスカッションをオンライン配信
ヤフー:サービス向けの勉強会

ヤフー木下:
次に、社員から好評を得ている取り組みを教えていただければと思います。

ヤフーでは、先ほどもお伝えしたサービス向けの勉強会は、業務に生かしやすいということもあり評判が良い取り組みです。
たとえば、あるサービスがLGBTQ+に関するオリジナル記事を作ったときなどに相談を受けますが、私たちもうれしいですし、サービス側は当事者からの意見を通じて、読者が傷つく表現がないかをチェックすることで、より良い記事を作成できます。

ヤフー山田:
レインボーPJの相談窓口がわかるように社内ページを作ったり、Slackチャンネルを立てたりしていて、木下がフロントに立って相談を受けてくれています。そんな風に相談できる場があること自体が良い取り組みだと言っていただくことがあります。
また、さきほど木下がお話しした勉強会については社内広報でも取り上げてもらい、読んだ社員から「ぜひ相談したい」という声がありました。

ソフトバンク大神田さん:
反響が大きいのは、全員受講必須のeラーニングです。また、制度面では就業規則の中にハラスメント禁止について入れたり、採用エントリーシートの性別選択欄に性別補足欄を自由記述で設けたりしています。制度面は比較的整っているので、「制度を利用できて良かった」という声は一定数寄せられています。
その一方で、社内の啓発セミナーには、過去には人が集まらなかったことがありました。後日、アンケートを見てみたら「興味はあったのがその日は行けなかった」という人が大勢いたことがわかりました。

そのため、次の開催時には「カランコエの花(※2)」という啓発映画をオンデマンド配信し、「申し込んだ人はこの期間ならいつでも視聴可能です」と案内しました。初回のセミナーの参加者は45人ぐらいでしたが、「カランコエの花」のオンデマンド配信では申込者が約150人まで増えました。また、必要な手続きを経てご家族も視聴できるようにしたところ、上映後のアンケートで、「子どもへの教育にもなった」というコメントも寄せられました。
※2 カランコエの花
LGBTをテーマに、国内の映画祭でグランプリ6冠を含む計13冠を受賞。

ソフトバンクAさん:
以前、採用担当者用のマニュアルを見せてもらったことがあります。
たとえば学生の採用面接でLGBTQ+関連の質問が出た場合、会社としての取り組みや姿勢をどう説明するかしっかり記載されており、いい取り組みだと感じました。

ZOZO篠田さん:
ZOZO社では、ダイバーシティの取り組みの主幹は人事部門ではなく、私たち「フレンドシップマネージメント部」という、社内と社外の交友関係を築くことをミッションとした部署が担っています。
去年の「プライド月間」では、社員向けの取り組みとして、自身も当事者でもあるアパレルブランドの社長を招いて弊社の社長とディスカッションを行い、オンライン配信しました。

ZOZOではまだ、当事者やアライのコミュニティーはつくれていませんが、みなさんのお話をうかがって、当事者同士・アライのコミュニティーはとても重要だと感じました。
当事者やアライも含めて社員からの声をまだ十分集められていないのが現状なので、eラーニングだけでなく、対話を促進する施策を進めていきたいと思います。

ZOZO仲宗根さん:
ソフトバンクさんもヤフーさんも当事者同士のコミュニティーが存在している点が素晴らしいと思いました。たとえば、当事者がハラスメントを受けた際の対処法は、みなさん独自の方法を持っていると思います。
そのような、「上手に対応するための工夫やコツ」を共有できるコミュニティーがあれば、みなさんの心が少し楽になるのではないかと思います。

今後、新たに取り組んでいきたいこと

ヤフー山田:
ヤフーでは、LGBTQ+と性的マイノリティに特化したeラーニングは取り組めていません。
マネジメント研修にはもちろん入っていますし、ケーススタディーも組み込んでいるのですが、先ほど(ソフトバンクさんに)見せていただいた、漫画も使ったeラーニングでしっかり伝えていくアプローチも、とてもいいですね。

ソフトバンク大神田さん:
制度は整ってきているものの、社員がしっかり理解しているかはまだ課題があると思います。お店にたとえるなら、裏メニューが豊富だけどお客さんは知らず、「あるよ」と教えてもらうまで気づけない状況に似ているかもしれません。
全社員が制度を理解することがゴールなので、これまでは制度を作ったり直したりすることに注力していましたが、これからは制度の理解を深めてもらうことを重視して取り組んでいきたいですね。

ソフトバンクはさまざまな会社との合併から成り立っているので、出身企業などを問わず、誰もが努力を発揮できる会社だと思っています。その観点からも、ダイバーシティ関連の取り組みとは相性がいいはずなので、さらに推進していけると思います。

ソフトバンク宮城さん:
私たち「カラフル・プロジェクト」も、全社に対してイントラページやSlackチャンネルなどで情報発信したり、相談窓口のメールアドレスを案内したりしています。ただ、業務が多忙であまりそれらの情報を見られない方も多く、私たちの取り組みへの認知度はまだ十分ではないと思っています。

今後は、管理職など高い立場の方たちにもアライとして支援してもらうことを検討するなど、認知度を高めるための活動にこれまで以上に力を入れたいと改めて感じました。

「周りに当事者がいない」→「周りに当事者はいる」価値観をアップデートしていくためには?

ソフトバンク宮城さん:
「周りに当事者がいないのでわからない」という声が社内では多いですが、今ではLGBTQ+の割合は10人に1人という統計も出ています。「カラフル・プロジェクト」で実施した勉強会では、メッセージとして「当事者が周りに『いない』のではなくて、周りには必ず当事者が『いる』」と伝えています。

ヤフー山田:
周りには当事者がいないかもしれませんが、自分の子どもやそのクラスメイトの中にもある一定数いると思います。
正しい知識を持っておくことで、いつ子どもや身近な人が当事者になるかわからない、という視点も持つことができるのではないでしょうか。

ソフトバンクBさん:
たとえば、LGBTQ+関連の記事に興味を持ち、それを読んで「知る」という行動だけでもアライの活動の一部になると思います。

ヤフー木下:
「当事者は、自分とはどこか違う人」と感じている方もいるかもしれません。そんなときに見てもらいたい、自分のセクシュアリティをひと目で理解してもらうための「自己紹介カード」があります。 参考)
理解しているつもりが傷つけているかもしれない…「LGBT」という言葉には“魔力”がある 【“LGBT”再考】前編(性のあり方はグラデーション)
自分の恋愛指向/性的指向を整理するために利用できるオリジナルテンプレート(特定非営利活動法人にじいろ学校)

(イラストはイメージです)

誰かの“性”を説明する時に必要な4つの要素
・からだの性(生物学的性):外性器や性染色体といった生物学的特徴からあてがわれた性
・こころの性(性自認):「自分は男性だ」「自分は女性だ」「どちらでもない」など、自分の性をどう把握しているか
・好きになる相手の性(性指向):「男性が好き」「女性が好き」「どんな性かは問わない」など、恋愛および性愛の対象がそのセクシュアリティに向かうか
・性表現:「ドレスが着たい」「化粧はしたくない」など、どんな装いやふるまいを性の側面から行いたいか

このグラフでは、たとえば「自分の体の性別は女性で、心の性は女性。好きになる相手の性別は…」など、自分について伝えることができます。
また、「性の表現」を考える時には「男性の服を着たい」など具体的に考えてみると、一見自分が当事者でないと思っている人でも、この枠組みのどこかに自分を位置づけることができます。
この「〇」の位置が人によって違うだけで、LGBTQ+の人もみなさんと同じ人間、ということが理解しやすくなるのではないかと思います。

ZOZO橋本さん:
以前、ZOZOTOWNのサイトについて当事者から話を聞いたとき、意見が割れていると感じました。サイトは男性用の服、女性用の服、子ども用の服というカテゴリに分かれていますが、それぞれアイコンの色は男性が青、女性が赤、子どもが黄色で表示されています。
この分け方は当事者の方にとってはどうなのだろう…? と思っていました。

ある当事者は、性別による色分けやカテゴリ分けを疑問視していました。ですが、別の当事者は色にはあまり違和感が無く、メンズ、レディースのサイズで分かれている方が選びやすいと考えていました。「大事なのはその人の性自認がどうあるか。メンズ風の服が好きであればメンズカテゴリを選べばいい」という考え方だったようです。

「当事者だからこの考え方、アライだからこの考え方」というように一律に考えられるものではなく、人が10人いればそれぞれの考え方は異なるはずです。

ただ、アライが気を配るべき言葉遣いや考え方と、逆に配慮しすぎて「過剰に考えすぎた言い方になってしまう」部分との境界が難しいと感じます。
みなさんは普段、どのような点に配慮しながら推進されていますか?

ヤフー木下:
先日、勉強会であるサービスの担当者から似たような質問を受けました。たとえば「男らしい」「女性受け」「女房役」「男泣き」「男気あふれる」のような表現を全部消してしまった場合、その代わりにどのような表現を用いればよいのか、という話が出たんですね。

ですが、「これは傷つく人がいるかもしれない、と考えながら記事を書いている時点で、それで当事者が傷つくような表現にはならないのではないか」と伝えました。

配慮しすぎて言葉狩りのようになってしまうより、「この表現は誰かを傷つけるかもしれない」と思いながら書くことが大事なのではと思います。これは私たちレインボーPJの見解ですが、何かの参考にしていただければと思います。

ソフトバンクBさん:
木下さんのお話のように、誰かが問題に感じる可能性のある表現をピックアップし、できる限り他の言葉に置き換える方針は素晴らしいと感じます。ただ、読む人や聞く人の解釈はそれぞれなので、全員に受け入れられる表現を見つけるのは難しいと私も感じました。

それでも、小さいところからでも当事者が気になる点を知り尊重する姿勢は、企業としてとても重要だと思います。一緒に働く仲間がこうして当事者の声を聞こうとし、気にしてくれているのは、とても幸せなことだと思います。

これからやってみたい取り組み

ソフトバンクBさん:
私はソフトバンクの子会社に所属していますが、制度の認知はまだそれほどされておらず、利用している人も少ないと感じています。当事者のための制度が「当たり前にある」状態になれば理想的だと思います。

ヤフー木下:
「当たり前」って大事ですよね。「当事者がいることも、当事者をサポートするための制度を使うのも当たり前」という状態が、グループ会社全体で当たり前になるといいですね。

ZOZO篠田さん:
今回の「プライド月間」では、同性婚や若い当事者を支援する団体に寄付させていただきました。この活動をきっかけに、より深くLGBTQ+について学びたいという声が経営層から上がり、執行役員以上の役員に向けて研修を実施することになりました。
すべての社員が「私たちの会社は多様性を尊重している」と感じ、マイノリティの問題を自分の問題として考えられる施策を推進していきたいと考えています。

ヤフー木下:
今回、みなさんとお話しさせていただいたことで、各社の取り組みがそれぞれ異なること、そして良い点があることがよくわかりました。
今後、これらの取り組みを集めることで効果を最大化したり、「東京レインボープライド」に今日集まった3社で参加するなど、さらに大きなことができたらとてもうれしいですね。

(写真はイメージです)

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