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企業情報

2023.08.28

身近なサイバー犯罪から最先端のAIとセキュリティまで 大学生に向けたセキュリティ講義

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ヤフーとZHDグループは、大学などの教育機関と連携しながら、IT教育の推進、人材教育を進めています。その取り組みの一つとして、2016年から九州大学で、2019年からは東京大学でもサイバーセキュリティの講義を行っています。
この取り組みをスタートした経緯、企業がセキュリティ教育を行う意義、学生たちに理解してもらうための工夫などを担当者に聞きました。

    目次:
  1. 大学生に向けたセキュリティ講義を始めた理由
  2. 講義の内容は身近なサイバー犯罪の話から最先端のAIとセキュリティの話まで
  3. 講義を通して新たな視点を得られる貴重な機会に
  4. 今後の展望
日野 隆史(ひの・たかし)
2015年ヤフー入社。CISO室セキュリティ戦略室などを経て、ZホールディングスのGCTSO プライバシー&セキュリティ統括部で、社内のセキュリティ推進業務を担当。現在はセキュリティ情報発信を担当するチームのマネージャーを務めている。
青黄 由美子(あおき・ゆみこ)
2000年ヤフー入社。CISO室セキュリティガバナンス室で教育啓発を現在担当。ZホールディングスのGCTSO プライバシー&セキュリティ統括部で、グループ会社のセキュリティ施策支援も担当している。
水摩 直子(みずま・なおこ)
2014年ヤフー入社。広告事業にてセキュリティ部門、リスクマネジメント部門を経て、SR推進統括本部CSR推進室へ。地域貢献サステナブルプロジェクトのプロジェクトマネージャーを務めているほか、ESG推進室も兼務し、プロジェクトを通して未来世代への支援活動を推進している。

大学生に向けたセキュリティ講義を始めた理由

日野:
取り組みのスタートは2015年までさかのぼります。国立大学で初めて、九州大学にサイバーセキュリティセンターができることを知りました。その当時CISO(Chief Information Security Officer)だった工藤が中心となり、「ヤフーが一緒にできることはありませんか」と、大学側と話し合いました。
大学からは「セキュリティの授業に現場の実践的な内容も入れたい」という要望があり、まず2015年に特別講義を行いました。その後、2016年の後期からヤフー社員による全8回の講義が正式にスタートし、現在は前期、後期に全学年を対象とした講義を実施しています。
最初の講義の受講生は4名でした。チラシを作成して学生に配るなど、プロモーションを工夫した結果、次の講義では50人、その次は160人と受講生が増えていきました。その後、収容人数250名の最大の教室にも入りきらなくなり、抽選方式で受講者を募集するほどの人気プログラムに。2020年にコロナ禍でオンライン講義として実施した際は、席数の上限がなくなったので、800名以上の受講が可能になりました。

水摩:
この取り組みを始めた当時は、ヤフーのセキュリティ部門にプロジェクトがありましたが、社会貢献活動の一つでもあるという理由で、2019年からは私が所属するCSRの地域貢献プロジェクトチームで引き継ぎました。さらに2019年にグループの再編があり、ZHDのグループ会社と共創して行う取り組みになりました。講師陣もグループ各社に拡大して講義を行うことで内容の幅も広がったと感じています。
2019年からは東京大学での講義もスタートし、学部生に向けた一般教養の講義に加え、工学部や院生向けに専門性の高い講義も実施しています。

講義の内容は身近なサイバー犯罪の話から最先端のAIとセキュリティの話まで

日野:
この講義では、世間で起きている身近なサイバー犯罪の話から最先端のAIとセキュリティの話まで、幅広い領域でセキュリティについて伝えています。
世の中の流れとして、「セキュリティを考えるのは専門家のみ」という話ではもうなくなっています。サイバー犯罪は、年齢、業種や職種を問わず、誰もがかかわらずには生きていけない社会課題の1つです。
また、ZHDグループのセキュリティ講義の特徴として、グループ各社にはバラエティに富んだサービスがあるので、「セキュリティとeコマース」「セキュリティと電子決済」など、学生にとっても身近なテーマとセキュリティを結び付けて話ができることが強みです。

青黄:
私は社内セキュリティ教育を担当しているため、講師として「セキュリティの脅威と教育」というテーマでお話しています。今まさにどんな脅威があるのか、それらにどう対策したらいいのか、学生に自分ごと化してもらうことを意識しながら伝えています。
また、私はこの取り組みの運営側でもあるので、使う言葉や内容がより学生に伝わるかという視点で講師にアドバイスもしています。
意識していることは、「中学生でもわかる内容かどうか」という視点です。専門用語や略語を使う場合は、必ず意味や背景を丁寧に説明します。私たちが当たり前のように使っている言葉でも、学生では初めて聞く言葉ということもあるため、補足説明がないと理解しにくいからです。学生に伝えるために、自分自身の業務について言語化したり、多角的な視点で見直したりすることができるため、講師にとって貴重な経験だと感じています。
また、セキュリティのリスクを自分ごと化してもらうために、私の場合は実際にそういうシーンをイメージしてもらうための工夫をしています。たとえば、若い世代でSNS投稿は一般的ですが、「自宅の猫ちゃんです」と言って、猫の画像を投稿するユーザーもいます。本人は個人情報(住所)を載せたつもりはなくても、画像ファイルから「緯度経度」情報が取得されて自宅が特定されるリスクがあります。スマホの設定で、写真データに「緯度経度」情報を記録しない方法(iPhoneの場合、設定>プライバシーとセキュリティ>位置情報サービス>カメラ>位置情報を利用しない)を説明したところ、教室内の学生みなさんの手が一斉に各自のスマホにのびた光景は、印象深いシーンでした。
他に、映画やドラマなど、エンタメ作品のストーリーやシーンから、学生にリスクをイメージさせている講師もいますね。若者の立場にたって、興味関心をセキュリティに絡めている講師が多い印象です。

九州大学の講義は、基本的に講師が現地で講義を行う。現地での運営にはヤフーの北九州、福岡拠点の地域貢献サステナブルPJのメンバーが携わっている。

講義を通して、新たな視点を得られる貴重な機会に

日野:
会社という限られた環境の中で仕事を続けていると、自分の会社やサービスがユーザーや社会からどのようにみられているのかを見失いそうになってしまうこともあるのではないでしょうか。
大学での講義を経験し、学生からの質問やアンケート、対話の中で「このサービスを愛用しています」「御社がこれほどユーザーのことを考えてくれていることを初めて知りました」「講義の内容に興味をもったので、将来は御社で仕事がしたいです」などの声を直接いただく機会があります。
自分の仕事がユーザーや社会に貢献していることを改めて実感できる貴重な機会となり、「明日からまた仕事頑張ろうという気持ちになった」という声を講師からも数多くもらっています。

青黄:
この講義を選んでくれた理由を聞いてみると「企業で実際にセキュリティに携わっている人からダイレクトにいろんな話が聞けて興味深い」と回答をもらうことが多いです。
学生と直接接することで新たな視点を得られることも多く、仕事にも役立っています。アンケートでもらう学生からのフィードバックを楽しみにしている講師も多いですね。

水摩:
講師を担当している社員は、「サイバー犯罪から若者を守りたい」「新しいテクノロジーではここにセキュリティの落とし穴があるので学生に伝えたい」など、強い思いを持っている人が多いと感じています。
また、講師はさまざまな分野で仕事をしているので、講義を通じてキャリアの歩み方を学生のみなさんに知っていただく機会にもなっていると思っています。そのため、講師には「自己紹介欄もできるだけ充実させてほしい」とお願いしています。

登壇者の自己紹介スライドの一例(日野隆史の資料より)

今後の展望

日野:
これまで、ヤフーやZHDグループのさまざまな講師と接してわかったのは、ベテラン世代は「仕事で得たことをベースに社会に貢献したいが、なかなかその場がない」と感じているということでした。その一方で、若い世代は「自分たちと近い世代の後進のためにも、自分が会社でどんなことをして世の中に役に立っているかを伝えたい。でもなかなか挑戦する場も機会もない」と感じているようです。
また、学生と大学側は「企業の中でリアルな仕事の経験に基づく学び」を痛切に求めていることが数年間のアンケート結果からわかってきました。

この取り組みを始めたころ、工藤が「私たち企業がこうして存続できるのもユーザーがいて、社会が成り立っているからで、ほんの少しでもいいからユーザーや社会に還元し、常にユーザーや社会への感謝を忘れないでほしい」と語った言葉を今でも記憶しています。その思いを忘れずに、今後も課題解決に取り組んでいきたいです。

水摩:
企業としてサステナビリティという角度で社会と事業の両軸のバランスを考えていくことも重要ですね。このような機会をより多くの方に届けられるように貢献していきたいです。
10月には、LINEヤフーとなるなど、会社をとりまく環境に大きな変化がありますが、進化するテクノロジーに必要なセキュリティ対策の大切さを、未来世代へ直接的、間接的に伝え続け、貢献できる取り組みを進めていきたいと思います。

工藤 克美(シニアアドバイザー)
企業は利益の追求を目的としますが、相反して、目先の利益よりも5年後、10年後を見据えて、社会に対して果たすべき使命を見極めることも重要です。
ヤフーは長年、国内におけるインターネットの普及に力を入れてきた企業ですし、LINEも幅広い世代がスマホを使うきっかけを作った企業です。
今後も多くのユーザーを抱える企業として、セキュリティや次世代への教育といった重要な課題に対して責任を果たし、真摯にユーザーと持って向き合い続けてほしいと願っています。

2019年には九州大学から「サイバーセキュリティ教育への貢献」を理由に感謝状をいただきました。

ZHDのサステナビリティ基本方針

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