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2023.07.31

だれもが楽しめる高校野球の魅力とは? 地方大会から全国大会まで全3,000試合以上を配信するスポナビの取り組み

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新型コロナウイルスの感染拡大により、2020年の全国高校野球選手権大会が戦後初めて中止されてから3年。
新型コロナウイルスの感染症法上の位置付けが「5類」に移行し、今年8月6日に開幕する第105回大会では、2020年から制限されていた声出し応援もできるようになります。

「夏といえば高校野球!」と観戦を楽しみにしている方もいらっしゃるのではないでしょうか。なぜ、夏の高校野球に多くの人が心奪われ、応援せずにはいられない気持ちになるのでしょうか。

夏の風物詩でもある全国高校野球選手権大会(主催:朝日新聞社、日本高等学校野球連盟)。第105回となる今年も、ヤフーが運営するスポーツ総合サイト「スポーツナビ(以下、スポナビ)」内で展開する「バーチャル高校野球」では、試合のライブ配信を実施します。
さらに今年は初の地方大会全試合の配信を実現。全49の地方大会を含め、8月6日に阪神甲子園球場で開幕する全国大会も、全ての試合でライブ配信を予定しています。

今回はこの「バーチャル高校野球」の楽しみ方やサービスの裏側、それぞれの高校野球に対する魅力や思いを、サービスに関わる4名に聞きました。

    目次:
  1. 高校野球ならではの楽しみ方や見どころは?
  2. 応援が選手たちの大きなパワーに
  3. 春から夏へ、選手やチームの変化
  4. スポナビのバーチャル高校野球とは? スポナビが提供する新たな価値
  5. 多くの人の協力と工夫で成り立つサービスの裏側
  6. 一生懸命に向きあう自分を誇れる世界へ
前左から麻生、森。後左から守田、安倍。
麻生 裕一(あそう ゆういち)
2016年ヤフー入社。新卒で農業に携わった後、ITのスタートアップ企業に転職。その後ヤフーでは広告やスタートページに関わり、現在スポナビのプロジェクトマネージャーを務める。

森 隆史(もり たかし)
2012年 スポーツナビ入社。前職では業界紙の新聞社にて記者をはじめとするメディア系の仕事に携わる。現在は企画職として速報やデータ管理のディレクションを務める。

守田 力(もりた ちから)
2017年スポーツナビ入社。前職ではスポーツ新聞の記者として高校野球の現場を取材し記事の執筆などを行う。現在は、高校野球を盛り上げるためのコンテンツ制作などを行う。

安倍 勇志(あべ ゆうじ)
2018年スポーツナビ入社。2年ほどライブ配信などのシステムを担当。現在開発部内のチームリーダーを務める。野球の担当としては、「フォロー機能」などのシステム関連を担当。

高校野球ならではの楽しみ方や見どころは?

高校野球の楽しみ方
・母校や地元の高校など「おらが町の学校」に注目
・学校ごとに異なる「応援」も魅力
・地方大会の1試合も全国大会の決勝も同じ熱量
・プロでは考えられないくらいの逆転劇が起きる理由
・地方大会で敗れた学校にすごい選手がいることも

応援が選手たちの大きなパワーに

守田:
今年の夏の地方大会は、3,744校3,486チームが参加しています。そして、チームの数だけドラマがあります。舞台は違っても1試合にかける思いは、たとえ全国大会の決勝と地方大会の1回戦でも同じだと思っています。今回からは地方大会を含む全試合の配信が可能になったので、ぜひ1試合1試合に注目して観戦してもらえたらうれしいです。

森:
応援という視点だと、やはり自分の母校や後輩を応援したくなりますね。たとえ母校が出場していなかったとしても、いわゆる「おらが町の学校」、地元の学校を応援できるのも魅力です。
どうしてもプロ野球選手だと遠い存在ですが、「町のあの子」のような身近な選手が頑張っている、という魅力もあるんじゃないかなと。それぞれ皆さんが思う「ふるさと」と「高校野球」は結構リンクするところが多く、それが地方大会や高校野球の魅力だと思います。

また、個人的には、いかに「公立校」が「私立校」と戦うかという点も注目しています。東京の場合は私立校が圧倒的に強いのですが、僕は都立高校出身なので。まれに都立高校が地方大会を勝ち上がって全国大会へ行くのですが、公立校が出場した! というところに楽しさを見いだしてもいいかもしれません。楽しみ方は人それぞれで、応援する切り口もいろいろあると思います。

安倍:
私はエンジニアとして関わるようになるまでは、高校野球にはあまり興味がありませんでした。今は強豪校から地元の高校まで広い範囲で戦うというところが、地方大会の良さだと感じています。
同じエンジニア職の中でも、高校野球にあまり興味ない人もいたのですが、自分の高校が出ていることで気になってスポナビを見始めた人も多くて。スポナビが速報やライブ配信をすることで、初めて高校野球に触れる人が増えるといいなと思っています。

守田:
高校野球の応援はブラスバンドがいて、チアリーディングがいて、という光景を想像すると思うのですが、夏の地方大会は本当に出場するチームが多いので、各校が思い思いの形で応援しているのも、魅力の一つだと思います。
中にはたった一人でトランペットを吹いている、トランペットもなくて応援に駆け付けた人たちがひたすら声援を送っている光景もあります。その学校が持つカラーがあると思うので、そういった部分でも楽しんでもらいたいです。

そして、その応援がものすごいパワーになっているのも高校野球で見る光景です。「甲子園の魔物」と言われる、奇跡みたいな逆転が起こることもあります。選手たちの頑張りによって応援したいなという雰囲気になり、その気持ちをどんどん選手たちも受け取って、普段は出ないようなパワーが出るみたいなことが、結構起こるんですよね。
かつて自分も高校球児だったのでよくわかるのですが、応援が選手たちの力になりやすいというか、球場の声援が、ものすごく選手の力になることが多いです。

森:
そういう意味では、いわゆる番狂わせが起きやすいのもありますね。全国大会の出場常連校が序盤で無名の学校に負けてしまうなど、予想通りにいかないところがプロ野球と違うところかなと思いますね。

3年生は最後の大会だということがわかっているので、応援のパワーもすごいし、選手たちも「これが人生最後の公式戦だ」と本気のプレーをするので。そういう意味でのドラマというか、すごい力が発揮されることがあります。
地方大会でも9回の9点差から逆転して全国大会出場が決まるような試合がありますし、1イニングでそういった逆転が起こりうるというのは、守田が言う通り応援が持つパワーみたいなところがありますね。

守田:
前職の新聞記者時代、まさに夏の地方大会で、本当に9回8点差を逆転した試合を取材したことがあります。逆転したチームのメンバーは、大差で負けていても誰もあきらめていなかったんですよね。
そんな状況でもみんなすごく笑顔で、本当に楽しそうにプレーしていて。それがだんだん球場の雰囲気を変えて、最後に大逆転。このようなドラマを目にできることも、高校野球のおもしろさですね。

麻生:
「最後まで絶対にあきらめずに得た勝利」を経験した選手たちは、9回裏9点差でもあきらめない人生を歩むのではないかと思います。なぜなら最後まであきらめないことの大切さを知っているから。
逆に負けてしまったチームの選手も、9回裏9点差で勝っていても油断しないという人生を歩むのではないでしょうか。

森:
地方大会には、実はすごい選手が隠れていることもあります。たとえば、大谷翔平選手は高校3年生の夏の全国大会には出場していないんですよね。メジャーリーグで活躍する選手ですら、全国大会しか見ていないと見られないです。地方大会の1回戦でも注目の選手がいるんですよね。
プロ野球の球団からしても「うちの球団へ入ってくれたら」という目線で見ていると思います。そういう逸材がもう本当にたくさんいます。「この子がもしかしたら未来の大谷選手になるかも知れない」と想像しながら観戦するのも楽しみ方の1つだと思います。

春から夏へ、選手やチームの変化

守田:
甲子園で行われる大会には春と夏の2つがありますが、ファンでない方にはその違いって意外と知られていないかもしれないですね。

夏の大会はわかりやすくて、地方大会を最後まで勝ち抜き、都道府県の代表になり全国大会に進みます。一方、春の大会は秋に行われる地区大会の結果をもとに選考が行われて出場校が決定します。
仮に地区大会で優勝できなくても出場できる可能性もあるのが春の大会です。夏の大会は本当に一発勝負で、負けてしまったらそこで引退という選手も大勢いるので、そこが一番の違いだと思います。

森:
春夏を通じて高校野球を楽しむ中で「夏に向けて春から進化するチーム」も見どころです。
というのも、夏で引退する選手がいて、新しいチームができ、秋に戦って春のセンバツに出場する。この時点ではまだ次の1年生が入ってきていないので、2学年だけのチームで戦います。よく「ひと冬越える」と言いますが、冬には公式戦がありません。

この間に2倍にも3倍にも成長する選手が出てきます。たとえばピッチャーでいうと球速が120キロしか出ていなかったのに140キロ出るようになることもあります。
その成長をみんなが楽しみに見ていて、夏に1年生が入ってきてどう融合してチームがどう進化するのか、という楽しみ方です。選手やチームの成長物語として、そこの伸びしろやステップアップはすごいですね。

麻生:
春のセンバツには21世紀枠といって、離島や過疎地など部員が少ない中でも一生懸命頑張っている高校が選抜されて全国大会に出場できる制度もありもします。春夏それぞれの大会にそれぞれの魅力がありますね。

守田:
チャンスという意味では、夏の大会にも似たようなケースでの出場もあります。冒頭でお話したとおり、学校の校数と実際のチームの出場数が違ったと思うんですが、連合チームという形式も注目のポイントです。

たとえばA高校が5人、B高校が2人、C高校が3人みたいな感じで、何校かが一緒になってチームを作って戦います。そうすると、家から30キロ以上離れている練習場まで頑張って通って、一緒に練習してみたいなこともあるんですよね。最後の晴れ舞台に向けて、違う学校の選手たちが一緒になって1つの舞台に向けて頑張る姿も魅力的です。

春の大会と夏の大会の違い
春:95回の歴史。選考委員会を経て出場校が決定
夏:105回の歴史。地方大会を勝ち上がった高校が出場

スポナビのバーチャル高校野球とは? スポナビが提供する新たな価値

麻生:
大前提として、105回にわたって、その間に戦争を挟んでも「高校野球」というものを支え続けている主催者への敬意は忘れてはいけないと思っています。その歴史があるからこそ、今でも多くの人が高校野球を応援できるわけです。
また、われわれが夏の高校野球を配信するのは今年で2回目ですが、バーチャル高校野球はもともと朝日新聞社さんと朝日放送テレビさんが取り組んでいたものです。われわれがご一緒する前の期間も含めて、本当に多くの関係者の思いが実って、今回の全試合配信が実現できたのだと思っています。それに感謝しながらも私たちが携わるからには、スポナビにしかできない高校野球の見せ方をしたいとも強く思っています。

スポナビのバーチャル高校野球は、試合映像はもちろん、スコアなどのいろいろなデータを同時に楽しむことができる作りになっています。また、気になる学校を「フォロー」して応援メッセージを投稿することも可能です。
「フォロー」すると試合開始のタイミングなどで通知を受けることもできるので、みなさんにはぜひ気になる高校を「フォロー」してほしいです。
気になる高校を「フォロー」するとその高校への応援メッセージや、実際に映像で高校生たちが活躍している姿が見られます。そうすると「自分の県の代表ってどこかな」「全国大会はどこまでいったかな」などさらに興味が広がってくるのではと思っています。

安倍:
学校を「フォロー」すると、試合が開始して応援メッセージが盛り上がったタイミングにも、スポナビ 野球速報アプリやYahoo! JAPANアプリからプッシュ通知が届きます。
急に自分の地元の高校名がプッシュ通知で出てきたらちょっとうれしいですよね。まずはそういうところから入っていただくのもいいかなと思います。

麻生:
地方大会も含めた全試合配信は、きっと選手のご家族に喜んでいただけるのではないかと思いますね。今までは映像に残らず、息子の晴れ舞台をどうしても仕事で見られなかった親御さんもいらっしゃったと思います。
ですが、今回全試合の配信が実現することで、息子が一生懸命やってきたことが映像やデータに残ります。本人たちもそうですが、選手を支えてこられたご家族もすごくうれしいのではと思います。

森:
同じことは同級生にも言えますよね。学校の都合などでどうしても応援に行けないみたいなときに、お昼休みや休み時間に同級生たちの頑張りを見ることができる。
どうしても休みの日しか球場に行けないという制限がある中で、全試合を配信していることで同級生の頑張りを見ることができるという話は、SNSなどでも「ありがたい」という声をいただくことがあります 。

多くの人の協力と工夫で実現できたサービスの裏側

安倍:
プロ野球と比較してもあまりに試合数が多く、球場も北から南まで全国各地にある地方大会の全試合を1回戦からすべて速報することが、大きなチャレンジでした。試合の進行を見ながら速報を入力する作業がすべての試合で必要なのですが、本当に多くの方からご協力いただくことで成り立っています。

また、実際の試合では試合開始の直前に先攻と後攻が入れ替わることもあります。そういったときに誤ってスコアが表示されることがないよう、緻密に連絡を取りながらできる限り正確な情報をお届けする工夫をしています。
このように変更があったときに正しく素早くユーザーに情報を届けるために、昨年よりもデータの更新間隔を短くするなどの改善にも取り組みました。更新間隔を短くするとデータを取り込む回数が増えるため、システムへの負荷の調整にも今年はより注力しています。

麻生:
試合日時の変更に対する対応も今年の大きなチャレンジです。地方大会は多いと1日に約300試合以上あり、全国各地で行われているので、どこかの試合のスケジュールが天候の要因などで変動します。その変動を正しいデータとして反映し、ユーザーに提供し続ける部分には、みんなで力を合わせて取り組んでいます。

森:
この試合日時の変更に対応することで、本当に多くのユーザーに喜んでもらえています。というのも、昨年までは当日の試合分しかスポナビとして情報を提供できていませんでした。
ユーザーからすると「明日どこで試合がある?」「次はいつ試合があって、どこに行けば見にいける?」という状態でした。今年は、朝日新聞社さんをはじめ関係各所にご協力いただき、常に最新の日程を届けることができています。

守田:
コンテンツ企画側の視点では、全試合の情報をどう届けるかという部分を考えています。
今行っているのは47都道府県それぞれの特集ページを用意して運用することです。また、Yahoo! JAPANの地域タブとも連携を行っています。たとえば千葉県を「フォロー」している人には、千葉県の高校野球の情報が届きます。とくに地方大会は情報の幅が広いので、必要な人にしっかり情報を届けるコミュニケーションを心がけています。

一生懸命に向きあう自分を誇れる世界へ

守田:
僕は高校球児時代、控え選手で試合には出られませんでした。でも高校3年生の時にたまたま自分の学校の試合が地元のテレビ放送局で放送され、その際に僕が伝令(でんれい)としてマウンドに行ってピッチャーへ伝達した姿が、映像として1分程度放送されました。

その約1分でテレビ局の方が、私がどんな選手なのかしっかり紹介してくれたことがいまだにすごくうれしいですし、自分が頑張ったことがそのように記録に残ったことが誇りに思えました。このように、一生残るようなものでもあるという意味でも、地方大会の1回戦からの全試合が配信できるのは、とてもうれしいことだと思っています。

麻生:
今は「映える写真」「バズる動画」などが本当に一瞬で生まれては消えていく時代です。
でも、「人生において本当に大切なものってそれなのか?」と思うことがあります。
映える誰かに憧れて「いいね」を押すのではなく、自分なりに何かを一生懸命頑張って「昨日の自分に勝てた」ことを誇る。コスパとタイパの良いアウトプットとは程遠くても、愚直にプロセスを繰り返す。そして、負けそうになったときには、仲間との絆を糧にする。われわれやインターネットの技術が大切にすべき未来は、こういった「一生懸命」を支えることではないでしょうか。

そう考えると、もしかしたら映えないかもしれないけれど、一生懸命野球に向き合う高校生を心から応援したいなと、いつも思っています。
選ばれた人たちや才能ある人たちだけではなく「一生懸命何かに取り組むこと」そのものを大切にする世界があるべき姿だとしたら、全国大会も地方大会も同じ熱量、同じモチベーションで取り組みたいですね。

さらなるサービスの進化にむけて

安倍:
全試合の速報は実施していますが、今はまだ道半ばだと思っています。イニングごとの速報、1打席ごとの速報など、粒度の差異があるものを扱っていて、より情報が詳しい打席ごとの速報の方はまだ全試合に対して3割ぐらいのカバー率です。

先ほど守田の話にもありましたが、個人個人の結果など細かい情報を速報としてお届けできたらなと思っています。引き続き、関係者のみなさまのお力もお借りしながら、スポナビとしても来年に向けて進化したいですね。

麻生:
このサービスを通じて「何かを一生懸命頑張ることの尊さ」を次の世代にしっかり伝えていくということに、引き続き取り組んでいきます。
また、いつかスポナビを通じて選手たちに差し入れができるような仕組みもつくりたいと考えています。たとえば、自分の母校にスポーツドリンクを届けられて、応援のメッセージも添えられたら最高じゃないですか。これ以外にもまだまだやりたいことはたくさんあります。

サービスの進化という意味では高校野球を中心に輪を広げて、競技や種目を越えて「頑張る誰か」やそれを応援する文化、これらを大切にする世界を、少しずつでも広げていきたいです。

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