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2023.06.28

「風を見やすく、わかりやすく伝える」Yahoo!天気アプリの風レーダー

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春の訪れを知らせる「春一番」、新緑が美しい初夏のころに吹くさわやかな「薫風(くんぷう)」、秋に木の葉を散らす「木枯らし」、冬の冷たい「北風」など、季節と風の関係は深く、風に関する季語も多くあります。
私たちが日々感じている風は目には見えませんが、Yahoo!天気アプリの「風レーダー」を使うと、風の動きや強さを簡単に「見る」ことができます。
風レーダーの機能、特にこだわった点、風レーダーを使って風とうまくつきあうためのコツなどを、担当者に聞きました。

田中 真司(たなか しんじ)
Yahoo!天気・災害サービスマネージャー。民間気象会社、一般財団法人気象業務支援センターを経て2008年に入社。入社以降、企画担当としてYahoo!天気・災害の業務に従事。「雨雲レーダー」の開発や「Yahoo!防災速報」の立ち上げに携わる。気象予報士の国家資格を保有。
風を意識する瞬間は?
趣味で海釣りに行くのですが、風が7~8メートルあると波も高くなり釣りがしにくくなります。逆に、まったく風がないと、それはそれで船が動かないですし、夏なら無風の船上はかなり暑くなります。風がまったくなくてもダメだし、強くてもダメなので、海釣りのときはそよ風ぐらいが一番好きです。
概念的な風についていうと、人生で「無風」はちょっとつまらないと思うので、仕事における向かい風は好きかもしれません。人生も海釣りもそよ風が常に吹いているぐらいがいいですね。
瀬川 浩司(せがわ ひろし)
2012年入社。ヤフー天気災害のエンジニア、風レーダーのプロジェクトマネージャーを担当。風レーダーの他にリアルタイム震度や地震、津波情報の可視化にも携わっている。
風を意識する瞬間は?
山に畑を借りて20~30品目の野菜を作っているので、ある程度の風が吹くと、倒れないように支えやカバーをつけるなどの対応が必要になります。作業予定は空模様にかなり左右されるので、風は私にとっても重要な情報です。
赤木 祥平(あかぎ しょうへい)
2019年入社。Yahoo!天気アプリでデザイン業務を担当。
風を意識する瞬間は?
風速8メートルぐらいあると移動しにくい、7メートルぐらいで洗濯物が飛ぶくらい、という体感から目安を知りました。でも、実は3~4メートルの風でもタイミングによっては強いなと感じることもあります。
また、たとえば公園にいるときに風が吹くと、大人は平気でも、子どもにとっては砂が目に入ってしまって危ない風になるなど、大人と子どもでも風の体感は違う、ということにも気がつきました。

風はなぜ吹くの? どこで何をするかによって風の強さの基準は異なる

田中:
風の吹くメカニズムを簡単に説明します。まず、ある場所の空気が太陽で暖められて空気が膨張すると気圧が低くなり、その周りとは気圧の差が生まれます。その気圧の差をなくそうとする動きが働くと、気圧の高いところから気圧の低いところに空気が移動します。この空気の移動が「風」です。気圧の差が大きいほど強い風が吹きます。
風とは、「温度差を埋めるための空気の運動」だと思っていただけるといいかもしれません。

日々の天気予報では、「南の風がやや強く吹く」というような形で伝えることが多いので、やや強い風が具体的に風速何メートルなのか、みなさんはあまり意識していないと思います。
たとえば、いわゆる街中で強風注意報が発表されるのはだいたい、風速10メートルの風が吹くくらいが目安です。

また、街の中で髪の毛が風で乱れやすくなってしまったり、スカートをはいたり帽子をかぶったりするときに気をつけた方がいいくらいの風は、だいたい4~5メートルくらいから気になるのではないかと思います。
さらに、たとえば海釣りをされる方、マリンスポーツをされる方からすると、7メートル、8メートルの風でも危険だなと思うこともある風です。そのため、「どこで何をするか」によっても、風の強さの基準は変わってくると思います。

また、風の特徴として、天気はだいたい、「東京エリア全域で晴れ」という形で、「面」的な予報ができますが、風や気温は、少し場所が変わるだけで状況が変わってしまう「点」の情報です。たとえば、その場所では南風でも、ちょっと離れた建物の陰に行ったら違う方向から風が吹いている、という情報になるので、均一ではありません。

風と天気の関係
・天気は「〇〇地域で晴れ」という「面」的な予報が可能
・風や気温は場所が変わると状況が変わる「点」の情報

風の強さの目安
風速4~5メートル:出かけたときに髪が乱れてしまう
風速7~8メートル:海釣りやマリンスポーツをする方が危険を感じる
風速10メートル:強風注意報が発表される

これまでYahoo!天気アプリでは、代表地点で吹く風についての情報を表示していました。たとえば、東京都千代田区の情報は、千代田区役所があるところを基準として、どの方向に風が吹いているか、という情報です。そのため、千代田区全域で同じ風が吹いているわけではありません。風の強さも山の麓と少し登った所では全然違います。
みなさんが日常生活やレジャーで過ごす場所で、「今日は風が強いな」と感じたときに風レーダーを見ることで、「このくらいの体感の風は風速何メートルぐらい」という基準を自分の中で作っていくような使い方もおすすめです。自分の生活に合った風の強さがわかり、「このぐらいの風が吹いていたら強いから、今日は外でのレジャーはやめておこう」などの判断がしやすくなるのではないかと思います。

風レーダーを実装した背景

田中:
2014年ぐらいからは、NHKさんがテレビで台風情報と一緒に風の情報を使って解説していましたし、インターネット上にも東京地方の風情報が見られる「Tokyo Wind」というサービスがありました。その後、「earth」というサービスが出て来て、その後「Windy」が生まれたという流れです。
私たちも、これらの風のプロダクトが世界中でアップデートされるたびに追いかけていて、いつか天気アプリでもこういうことをやりたい、と話していました。

瀬川:
風の粒子の可視化については、かなり前からYahoo!天気・災害のエンジニアが取り組んでいました。ただ、当時はプロユースの方だけを考えていましたが、この1年くらいの調査で趣味(サーファーや釣り人など)を楽しむ方に利用されることが結構あるかも! と考えるようになりました。
ただ、田中が先ほど話した「Windy」というサービスを私たちも台風のときに見ていて、「風の詳細な情報が見られるのはやっぱりいいね」と話していたので、少しずつ、サービス化を目指してプロトタイプの開発を進めていました。
昨年、再度プロトタイプを開発・検証したところ、改めて今の技術やアプリのスペックなどを鑑みて、今ならサービスに反映できるのではないかという話になりました。

風をより、見やすくわかりやすくするために特にこだわった点

赤木:
風の強さを表現するために使った色については、社内のアクセシビリティ推進部に協力してもらい、ユーザビリティテストを実施しました。たとえば、ロービジョン(※)など多様な色覚の人を対象に画面を見てもらい、「この色は見やすいですか」などとヒアリングしながら改善していき、今の色味に整えました。最初は5色ぐらいのグラデーションだったのですが、調整した結果、最終的にはキーカラーとして13色必要なことがわかりました。その間の段階を埋める色として、全色は31色設定しています。
※ロービジョン:
「見えにくい」「まぶしい」「見える範囲が狭い」など、日常生活での見えにくさがある状態のこと

上:キーカラーの13色 下:キーカラーの間の段階を埋める全31色
瀬川:
風をどのような色、形で可視化していけばいいか調整するため、風レーダーのプロトタイプを開発しました。パラメーターを自由に設定できるようにし、たとえば風の動きを示す線の太さや動くスピード、線が出ては消えての繰り返しをする「減衰」の量や色味などを細かく調整していきました。
最初はもう少し粒子が多く、粒子そのものに色がついていました。ただ、それですとスクリーンショットにしたときに少しわかりにくいという声があり、最終的に風の動きを示す粒子は「白」で表現することにしました。

左が粒子に色がついていたパターン、右が今回実装したパターン

黄色からオレンジに変わるあたりの風がちょうど危ないと伝えたい基準なのですが、黄色からオレンジに変わるときにこの2色を並べると見えにくくなってしまうということが、ユーザビリティテストからわかりました。だんだん風が強くなる表現(色設定)がなかなかうまくいかず、ここはかなり苦労しましたね。

普段から風を気にしておくことで、台風接近時などに気をつけやすくなる

瀬川:
風レーダー画面の下部にある時系列のグラフを見ることで、最大72時間後までの風の強さを簡単に確認できますので、台風の接近時などは、危険な風が吹いてきそうか確認してみてください。
また、「今日の風概況」では今後強い風が吹くと予想されているときは「何日は強い風に注意」など、わかりやすく伝えていますので、こちらも合わせて確認いただければと思います。

田中:
もう少し詳細に見たい方は、時間のナビゲーションを動かして、風レーダーの色の変化を確認してください。だんだん赤い濃い色になっていく時間帯は風が強くなる、何時ごろが風の一番ピークで、今後強まるのか弱まるのかが確認いただけるようになっています。
また、今(6月8日14時)の風を九州で見てみると、九州の宮崎県の東沖合と長崎県の沖合の両方で渦を巻いているような風が吹いているのがわかります。今日は梅雨前線が九州にかかっているのでその影響ですが、このように、天気図だけではあまりわからないような風の動きまでわかります。
旅行や海や山でのレジャーをされる方など、少し専門的に見たい方にはレーダー画面が見やすいと思います。

たとえば、小中学校などが休校になる基準は、全国的に「暴風警報」「暴風雪警報」が多いです。このように、強風は社会的にも影響があるものですが、どのくらいからが暴風なのか、学校が休みになるくらいの強風なのか、実はあまりわからないという方も多いのではないでしょうか。
多くの方にとっては、風はかなり強く吹いているときしか気にならないものだと思います。風レーダーを見て普段からちょっと風を気にすることで、たとえば台風が近づいているときに気をつけるべき風の目安がわかる、という状態になっていただけたらうれしいですね。

風の強さによる影響の目安
強い風:風速8~14m 傘をさすことが難しくなる
非常に強い風:風速15~29m 物が飛んできて負傷するおそれ
猛烈な風:風速30m以上 屋外での行動は極めて危険

Yahoo!天気アプリ 風レーダーの使い方

・アプリを起動し、「雨雲レーダー」を表示
・画面左上にあるモード切り替えボタンで風レーダーに切り替え

地図上の流線で風の動きを、色で風の強さを確認できます。

下部のシートでは表示地点の1時間ごとの風速・風向きをグラフで表示。最大72時間先までの風が確認できます。

マンガ「風レーダー」の使い方

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