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2023.05.24

「人に自分の話をするのが苦手」どうしたらいい…? よい「対話」のヒント実践編

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この連載では、産業カウンセラーやキャリアコンサルタントの有資格社員で活動している「YJぴあさぽ(※1)」が、よい「対話」のヒントをお伝えしています。
※1 YJぴあさぽ: 同僚を「ピア=仲間」ととらえ、キャリアや人間関係などに関する対話をすることで応援しています。

みーさん
グッドコンディション推進室で従業員の健康増進企画を担当。夫と高校生の娘の3人暮らし。
保有資格:産業カウンセラー(JAICO)、交流分析士インストラクター、国家資格公認心理師

今回は、「人に自分の話をするのがちょっと苦手」というA太郎さんの悩みをもとに、「大切な人との対話のヒント」をお伝えします。

人に自分の話をすることが苦手です

A太郎さんのお悩み:
1on1やワークショップなど、自分の話をしなければならない場面で、苦手意識を感じます。
話すことが思いつかなかったり、話が弾まなかったりすると、どうしたらよかったのだろう? と思ってしまいます…。

コミュニケーションが上手でなければならない、自分のことを話して、相手の話を聴いて、人間関係をスムーズにしたい、とプレッシャーを感じる方がいるかもしれないと思い、今回の記事を書いています。
この連載では、「聴いてもらう」ことの価値をお伝えしたいと思ってはいますが、だからと言って「話さなければならない」というわけではありません。

「自分の話を聴いてほしい」「話をせずにはいられない」という状況の方もいれば、「自分の話をすることが苦手」という状況の方もいるのは自然なことだと思います。
「状況」と書きましたが、「自分の話をすることが苦手」というのは、その人のすべてではなく、そういう状況や場面なのだと思っています。
自分のことを話すことが少し苦手な人に、「聴くからなんでも話して」と押しつけることなく、苦手な気持ちに寄りそって、いくつかの視点から考えてみたいと思います。

「苦手」は「下手」ではない

まず、「苦手」というのは、「下手」とは違います。本人が苦手だと感じていても、実は、普通にできていて、ただ苦手意識をもっているだけの場合もあります。また、苦手意識があるのでやる機会もなく、実際に下手な場合もあるでしょう。

たとえば私自身、自己評価としてコミュニケーションが得意だと思っているかというと、実はそうでもありません。
コミュニケーションにも、仕事上、友人・家族関係、全くの他人などのいろいろなシチュエーションがあり、ひとくくりで説明することも難しいものです。私も、過去の人間関係がうまくいかなかったことを思い出すと、決してコミュニケーションが得意で上手だとは思えません。
とはいえ、これまで勉強して意識して取り組んでいることについては事実として蓄積されているので、「ある程度訓練したので、基本的な場面では支障なくできると思います」というのがしっくりきます。

そして、訓練などしなくてもできる人がいるのは、他のスポーツや仕事のスキルなどと同じです。ただ、話すことは生きていく中で多くの人が意識せずにやっていることなので、改めて分解して考える機会があまりないため、自分が「苦手」かどうかわかりにくいのだと思います。
苦手を解決したいと思ったときは、苦手意識がなくなるという解決方法もあれば、苦手意識があったままでもさほど困らないようになるという解決方法もあります。

誰になら話すことができるのか、経験を再評価してみる

自分のことを人に話すのは、リスクを伴うことでもあるので、自分の情報を伝えることに慎重になるのは、自分を守るためにも正しい反応だともいえそうです。
そのため、私たちは常に「この人になら話してもいいかどうか」という判断をしているのだと思います。
話すことが苦手な方は、これまでにこういう「場面」や「人」になら自分のことを話せていたということはあるでしょうか?
また、「苦手」と感じるときにイメージする特定の人はいますか?

もし、自分の話ができた経験があるなら、どういう相手であれば話せるのか具体的になります。「このときは自分のことを話せた」という経験を糸口に、苦手意識を分解できます。

そして、苦手と感じるときにイメージする人がいる場合は、もしかしたらその経験が苦手意識の原因になっているかもしれません。その相手とは違う新しい関係の人にも、過去の経験をあてはめてしまって、苦手だと感じている可能性があります。

「この人になら話せた」という経験も、「苦手」と感じる特定の経験が思い浮かばないというのであれば、それは経験がないので苦手意識を持つのも当然だと思います。
もし、自分のことを話せるようになりたいのであれば、「苦手で当然」というところから始めてみましょう。そんなときは、たとえばカウンセラーや接客業などのプロに話してみるのもよいと思います。

1on1やワークショップも、経験が少ないから苦手意識があると思うので、できるだけ経験を積むのもおすすめです。そこで良いフィードバックをもらえれば、話すことについて自分の苦手意識とは別の評価ができるようになります。

(写真はイメージです)

自分について話すネタがないだけかもしれない

また、「自分に目を向ける機会があまりない」などの理由で、話すネタがないということもあるかもしれません。
自分とはどういう人間で、将来はこうありたいなど、とても深く考える人もいれば、あまりその点については時間をかけて悩まずに過ごす人もいます。
それは、日々の勉強や仕事や生活が忙しいことも原因かもしれません。自分について考えて話す時間が「特別」なものになっている場合は、より苦手と感じやすいのではないでしょうか。

たとえば、自分について考える経験が、就職活動の自己分析や、履歴書を書き直す作業だった場合、職業上の自己の再評価という側面があるので、よりハードルが高いと感じている可能性があります。 でも、誰のためでもなく、「自分のために自分について考える」としたら、それでも苦手に感じるでしょうか?他人に話すかどうかは別として、まずは一人で自分について考えて、話すネタを探してみてはいかがでしょうか。

自分を深堀りしたくないのかもしれない

自分について話すことは、良い側面もありますが、リスクもあります。人に話すどころか、自分でも深堀りしたくないことが出て来てしまう可能性もあります。そのため、その部分に触れないように、自分について考えたり話したりすることに慎重になる場合があるかもしれません。
自分が望まないときには、それが何なのか突き止める必要はありません。踏み込みたくない部分には触れずにおいても、自分について考えたり話したりはできるからです。

「自分について話す」というと、すべてを正直にさらけ出さなければいけないような気持ちになる人もいるかもしれませんが、そんなことはありません。自分がいいと思う範囲で話していいのです。 私にも、深堀りしたくないことがあります。いつか自分が大丈夫と感じたり、必要だと思ったりしたときには向き合うかもしれませんが、今のところ深掘る予定はありません。

「これ以上このことを話すのは苦手だな」と感じること以外を話す、でいいと思います。

「自分の話をすることが苦手」なままでもいい

最後に、「自分の話をすることが苦手」なままでもいいと思います。
たとえば、スポーツなど共通のものを応援しているとき、自分の話をしなくても、一緒に応援して仲良くなることができますよね。
そんな風に、共通の趣味の話題について深く話をしているけど、お互いの深い情報まで知ることはない、そんなコミュニケーションがあってもいいと思います。

お互いに自分の話をしあって、深く対話して理解しあうことも良いものですが、すべての人間関係でそれを目指すべきかというと、そんなことはないと思います。
自分の話をしたくないなというときは、共通の話題の話をしたり、「最近どうですか?」と相手の近況を聴いてみたりしてももいいかもしれませんね。

今回は、A太郎さんのお悩みに4つのアプローチで考えてみました。話すこと、聴いてもらうことについて、何かヒントになることがあればうれしいです。

自分の話を聴いてもらえる経験は、とても貴重で特別なもの。安心して聴いてもらえる場があり信頼できる人がいたら、「話すのが苦手」という苦手意識にとらわれず、話してみてください。
そして、聴いてもらうことの価値を感じていただけたらと思います。

「対話」「コミュニケーション」のヒントになる本

相互理解や行動変容を促す「創造的コミュニケーション」としての対話の重要性を学ぶ

ダイアローグ 対話する組織
中原 淳 (著)、長岡 健 (著)

本書は企業や組織における組織開発を専門とされる中原淳先生と組織学習論を専門とされる長岡健先生の共著です。
組織学習の研究の中で、物事の理解を深めたり理念やビジョンを共有したりするための有効なアプローチとして対話が注目されており、対話の重要性や組織における対話の意義について書かれています。

本書では対話を「共有可能なゆるやかなテーマのもとで、聞き手と話し手で担われる創造的なコミュニケーション行為」と定義づけし、お互いの考えを共有して新たに意味を見いだしたり、解釈を生み出したりする中で物事の理解を深め、行動変容につながる効果があるとされています。

共通の目的を達成するために構成される組織には多様な価値観や考え方を持つ人々がいます。

私自身、社内異動や新たな組織で新しいメンバーと協業する際、最初は不安を感じることもあります。そのようなときも、意思決定のための議論だけではなく、対話を行うことでメンバーの意見やスタンスの共通点・差異ともに認識できたことで、建設的に物事を進行できた経験がありました。

改めて対話は組織の目的を達成するために重要な役割を果たすことを認識できました。
組織に所属する、すべての方々にヒントとなる本だと思います。(かわにし:LINE)

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