この連載では、産業カウンセラーやキャリアコンサルタントの有資格社員で活動している「YJぴあさぽ(※1)」が、よい「対話」のヒントをお伝えしています。
※1 YJぴあさぽ:
同僚を「ピア=仲間」ととらえ、キャリアや人間関係などに関する対話をすることで応援しています。具体的には、定期的に「オープンダイアローグ(※2)」と「2on1」を実施しています。

- みーさん
-
グッドコンディション推進室で従業員の健康増進企画を担当。夫と高校生の娘の三人暮らし。
保有資格:産業カウンセラー(JAICO)、交流分析士インストラクター、国家資格公認心理師
- 目次:
- 「雑談」とは目的やゴールなく「気楽に」話すこと
- 仕事中の休憩時間の雑談をオンラインでする
- 会議室の移動時間でしていたような雑談をオンラインでする
- 職場の飲み会のような雑談をオンラインでする
- パーティーの雑談をオンライン上でする
- YJぴあさぽおすすめ:「対話」「コミュニケーション」のヒントになる本
ヤフーでは2014年から「どこでもオフィス」という、場所に縛られないで働くことができる制度があります。そのため、会社だけでなくカフェやコワーキングスペースで仕事をする同僚も多いのですが、私はもっぱら自宅が仕事場。この原稿も自宅で書いています。
実家で暮らす母親からは「自宅にいても仕事ができるなんて不思議」とよく言われますが、会議もオンライン、仕事に必要なツールや資料も全てオンライン上にあるので、PCがあればどこでも仕事ができてしまいます。本当に、便利でありがたいことです。
その一方で、できなくなったとよく言われるのが「雑談」です。
リモート会議は話す内容や目的を明確にした上で設定されるので、目的が達成されれば解散してしまいます。そのため、雑談ができなくなったことについて、「仕事に余白がなくなってしまった」などの声を聞くことがあります。
そして、次にあがるのが「オンライン雑談会をしてみたけどあまり盛り上がらない」「オンライン雑談を定期的にしていたけど、だんだん参加者が集まらなくなった」という声です。
私は月1から2回、オンライン雑談会の運営をZアカデミア(※)のサポート体制を利用しながら担当しています。今日はオンラインでの「雑談」について改めて考えてみるとともに、「オンライン雑談」のコツも少しお伝えしたいと思います。
※Zアカデミア:
Zホールディングスグループの社員に学びの場を提供する企業内大学。グループ会社間の「横糸をつなぐ」というミッションを持ち、一般社員によるオンラインで交流発信の場を支援している。

「雑談」とは目的やゴールなく「気楽に」話すこと
まずは、「雑談」という言葉の定義を確認しましょう。辞書で調べてみると、
雑談:さまざまな内容のことを気楽に話すこと。また、その話。とりとめのない話。
このような意味になっているので、話すこと自体が雑談だとわかります。私たちが雑談したい! と思うのは、「気楽に話したい」ときなのかもしれません。
また、「気楽に」ともあるので、目的やゴールのある話ではなく、結論を出す会議とも違います。いわゆる「成果物」を求めずに、とりとめなくあちこちに行って良いという気楽さも大事なようです。
明確な目的やゴールに向かって話を進めているときは、雑談はできません。他にすることがないとき、ちょっとした「暇」な時間に、雑談は生まれます。
ちなみに、関係性が薄い人や知らない人とでも、雑談はできます。雑談は関係性作りのきっかけ、関係性の確認という側面もあります。雑談をしたときに「ちょっとあわないな」と感じた人とは、もっと親しくなろうとはしませんよね。
雑談には、
・飲み会やパーティーのように、雑談を目的として集まる
・休憩時間や移動中、仕事や勉強の合間など、その空間にいる同士で適宜発生する
このようなパターンがあります。
ここで、「雑談」の各バターンを整理してみましょう。
職場で休憩中の雑談 | 職場の飲み会の雑談 | パーティーの雑談 | 家庭での雑談 | |
---|---|---|---|---|
誰と | 知っている人 | 知っている人 よく知らない人 |
知らない人 よく知らない人 |
家族 |
いつ | 不特定 | 特定の時間 | 特定の時間 | 不特定 |
どこで | 不特定 (席の近い人、会議の移動など起きやすい場所はある) |
特定の場所 | 特定の場所 | 不特定 (リビングなど) |
目的 | 気分の切替え・気分転換、交流 | 懇親 (親しくなる、関係構築) |
歓談・交流 (楽しく過ごす) (今後知り合いになるかも) |
気晴らし |
こうやって見てみると、オンラインの働き方では「その場に一緒にいる」ことが少ないので、雑談は発生しにくいことがわかります。
「その場に一緒にいる」のがオンライン会議の場だと、会議の目的が達成されたら終わってしまうので、雑談は発生しにくいですよね。そのため、「職場での雑談が減った」じゃあ「(あえて)オンラインの雑談会をしよう!」となるのも納得です。
では、そこで設定された「オンラインの雑談会」は何が目的なのでしょうか?
たとえば、「仕事中の休憩時間にする雑談が減ったからもう少し話したい」という人たちに対して、オンラインで雑談会を開催したとします。ですが、それは先ほど整理した「職場の飲み会の雑談」のような、よく知らない人もいる中での会話になってしまい、あまり盛り上がらないかもしれません。
ここからは、「リアルな雑談」をオンラインでするときに気をつけたいことをお伝えします。
仕事中の休憩時間の雑談をオンラインでする
さらに言えば、職場での「休憩中の雑談」は、知っている人同士というだけでなく、さっきまで何をしていたか知っている、そして仕事で関係性のある人同士という前後の状況もあって発生するものです。
そのため、職場での「休憩中の雑談」をオンラインでもしたいときは、少人数のその仕事の関係者で行われる会議の冒頭や最後などで雑談をする方法があります。
その場合、その仕事に関連した雑談はしやすいのですが、(共通の関係者の話題や、仕事の大変さ加減など、共有できている情報が多いので)、会議自体が雑談化してしまって大事なことが決まらないということには注意しましょう。
たとえば、会議の冒頭や途中で、「雑談になりますけど」で始まるやりとりをしてみる。そして、雑談が長くなりそうだったら「この辺で本題に戻って」など雑談を区切る。これは、オフラインの会議でも同じだと思います。
会議室の移動時間でしていたような雑談をオンラインでする
また、会議室を移動するタイミングなどに生まれていた雑談タイムをあえて作るにはどうしたらいいのでしょうか?
その場合は、大人数の会議やイベント後にあえて、その会議やイベントの振り返りと簡単な雑談ができるように、関係者だけで15分ほどの振り返りの時間をセットで入れるというのもひとつの方法です。
仕事の合間の雑談は、仕事のリズムがわかっている関係者同士ですることが大事なので、振り返りの時間がセットできない場合は、Slackなどで「さっきの会議は発表おつかれさまでした」などの声かけでフォローしてもいいかもしれません。
職場での「休憩中の雑談」は雑談自体がしたいというよりも、気分を切り替えたい、気分転換したい、という気持ちのことも多いので、テキストのやりとりでも代替可能です。
職場の飲み会のような雑談をオンラインでする
オンライン上の「飲み会の雑談」は、職場の懇親が目的です。そのため、参加したい(かつ自宅などから参加できる状況にある)人が参加する、幹事(ファシリテーター)が参加者に順番に話をふる、気軽に席を外せる雰囲気が大事です。たとえば事前に終了時間を決めておくことで、次も参加しようという安心感につながります。終わるときには、参加者からは幹事へ、幹事からも参加者へ、それぞれ感謝を伝えあえるとよいですね。
そして、職場のオンライン飲み会では、リアルな飲み会を基準に再現しすぎない方がよさそうです。
リアル開催とオンラインを混ぜたり、パブリックビューイングのように会場を分けたり、良い方法はまだまだこれから考えられていくと思います。
(ヤフーでも、いろいろな知見や工夫が生まれているようです。それらについては別の機会でご紹介したいと思います)

パーティーの雑談をオンライン上でする
知らない人とのオンライン雑談会は、特定の時間と場所(オンライン)に集まってもらう形式なので、ある意味「パーティー」に似ています。
雑談自体を楽しく過ごしてもらうことが目的なので、そのための工夫をいくつかするとよいでしょう。
私がしている工夫をご紹介します。
事前の準備:
1.テーマを決める
2.募集する
3.開催する
・気持ちよく始まる
今日集まってくれたことに感謝する! 冒頭で伝える
・共通点を作る
たとえば、このテーマに関心がある人の集まり、みんな良い雑談の時間を持ちたいと思っている
普段は会えない同じグループで働く人たちが今日の参加者、など
・話しやすい環境を作る
3、4人のブレイクアウトルームに分ける
・話す時間を決める
30分続けて話すよりも、15分くらいで一度切ったほうが「雑談」が一回りしやすい
・フォローする
全体の雰囲気を共有することで、たくさんの人に出会えた満足感が得られます
・気持ちよく終わる
終わりも感謝の言葉で終わる。この時間を共有してくれたことに感謝して次の出会いを楽しみにできるような終わり方を。終了時間の5分前に終了
例
目的:楽しく雑談&交流
参加者:このテーマで雑談したいと集まってくれた人たち
タイムスケジュール:
・参加者入室(3分)
・オープニング(5分)
・ブレイクアウトルームで雑談1(15分)
・雑談内容のシェアタイム(10分)
・ブレイクアウトルームで雑談2(15分)
・クロージング(5分)
・写真撮影(Zoom画面をキャプチャ)
今日、この場所(オンライン)に参加しなければ、絶対に出会えなかった人と、知ることのなかったことに会えた! という価値は、オンラインの働き方ならではの感じ方だと思います。そして、その価値を共有できることが、雑談会成功のポイントだと思います。
実際のパーティーでは、会場で知り合いを探したり、一人で手持無沙汰になったりすることもあるので、その心配のない点はオンラインパーティーの良いところですね。

リアルな雑談をオンラインでする方法
・休憩時間の雑談
会議の冒頭や最後などで雑談してみる
→会議自体が雑談化しないよう気をつける
・移動時間の雑談
会議やイベント後に振り返りと簡単な雑談の時間を15分くらいセットで入れる
→難しいときはSlackなどでテキストのやりとりでもよい
・飲み会のような雑談
幹事が順番に話をふる、気軽に席を外せる雰囲気が大事
事前に終了時間を決めておくことで、安心感にもつながる
・パーティーのような雑談
参加者の共通点やテーマを作る
数人のブレイクアウトルームに分けて話しやすい環境にする
話す時間は15分くらいに
今回はオンラインの働き方の雑談について解説しました。
もし「雑談が減ってさみしい」と感じていたら、自分がどういう雑談を望んでいるかを考えてみてください。そして、自分にあったオンライン雑談のやり方を見つけていけば、オンラインの働き方がより充実すると思います。
また、雑談の場を作ることが多い方には、参考になることが少しでもあれば幸いです。
オンラインでもオフラインでも、みなさんにとって心地よい雑談ができることを願っています。
YJぴあさぽおすすめ:「対話」「コミュニケーション」のヒントになる本
「うまくリアクションしないと!」から私を解放してくれた一冊
LISTEN 知性豊かで創造力がある人になれる
ケイト・マーフィ/著
篠田真貴子/監訳
松丸さとみ/訳

著者のKate Murphy(ケイト・マーフィ)は、ニューヨークタイムズなどで活躍するジャーナリスト。さまざまな職業の方の「聴く」がていねいに書かれています。帯に書かれていた「聞くことは最高の知性」というフレーズにときめいたと同時に、とても新しい目線だと感じました。
この本の監訳を担当された篠田真貴子さんは、マッキンゼーをはじめ、さまざまな組織を経て、現在は株式会社エールで「聴くこと」を通じて、個人の成長や組織の活性化を支援されています。
篠田さんのターニングポイントとなった「ジョブレス」期間に、「じっくり聴かれた」経験があったことで、「聴く」ことに関心を持たれたそうです。
この本を読んで、今までは聴きながら「さすが! と言われるリアクションをしないと。なにか気の利いたコメントをしないと」とどこか力が入っていた自分の心がとても軽くなり、肩にやさしく手を置いてもらえたような気がしました。
相手の話に耳を傾けることにフォーカスすることの大切さを教えてくれ、新しい「対話」の世界を見せてくれた一冊です。
もうすぐ2022年も終わりますね。みなさんにとって、どのような一年だったでしょうか?
年末年始は、ご家族、パートナー、友人、仕事の仲間など大切な人とゆっくり「対話」できる時間を持てたらいいですね。(YJぴあさぽ:まさみん)