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2022.10.27

「デジタルの日」にDigital Hack Day 2022を開催 受賞チームと考える、日本のデジタル化とは

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社会全体でデジタルについて定期的に振り返り、体験し、見直すためのデジタルの日(10月2日~3日)。この日に合わせて、「日本のデジタル化」をテーマにハッカソンイベント「Digital Hack Day 2022」を開催しました。
受賞した3チームに「日本のデジタル化」について思うこと、デジタル庁への期待について聞いた対談イベントの内容を、一部抜粋してお届けします。

受賞チームのみなさん

Hack ID 56: TechSword
ミヤモト タイキ / イケサカ カズマ / ヒキダ トモヤ / ミヤモト リョウタ / カワダ ユウタ
Hack ID 3: ドクダミの風来坊
坂井駿介 / 福岡健太郎 / 福岡智子 / 小林たつお
Hack ID 43: たぴおか
坪田 実那美 / 増岡 宏哉 / 坂本 航太郎 / 井上 りょう / 引頭 里沙子
村上 敬亮さん
デジタル庁統括官
善積 正伍
Hack Day プロデューサー

「日本のデジタル化」について思うこと、デジタル庁に期待すること

Hack Dayでは24時間で開発しましたが、1週間くらいあれば、ある程度見せられるものができると実感できたことで、意外と身の回りの課題は短期間で解決できてしまうものも多いのではないかと感じました。
ただ、行政においてはそのような動きがまだ活発になっていないように感じて、もっと早く状況が変わればいいのにと思います。昔からのルールやカルチャーなども、なかなかデジタル化が進まない原因の1つなのではないかと思います。
なぜか腰が重くなってしまう要因が、きっとどこかにあると思っていて、そこにこれからも自分たちなりに向き合っていきたいですね。

デジタル庁には特にデザイナーさんがたくさん在籍していらっしゃると聞きました。デジタル庁のウェブサイトもしっかりアクセシビリティに配慮していますし、とても美しいデザインだと思います。
参考)デジタル庁のサイト

デジタル庁のように勢いのある組織が、いわゆる「動きにくい状況」を上から変えていってほしいと思っています。それによって、日本の大きい企業、影響力のある企業や行政に関わる人たちも少しずつ、これまで以上にフットワーク軽く挑戦し続けられるカルチャーが浸透していくのではないかと思います。

私も、ショートカットパスが大事かなと思っています。要は(Hack Dayで)これだけのアイデアがぱっと出るわけです。でも、事業化するとなるとどうしてもスピードが落ちてしまいますよね。

大きく始める必要はなくて、会社の中でも役員と社員の間のショートカットパスをどんどんつくっていくことで、組織自体もエンパワーメントを図っていけると思います。そのようにスピーディーにつながっていくためのコミュニケーションスタイルや、誰でもわかる発信の仕方をもっと意識していけば、日本人一人ひとりの力はすごくあるはずです。

これまで日本が誇りにしていた品質の高さや職人魂みたいなところの裏返しとして、リスクをできるだけ減らしたいというマインドやおそれが、その腰の重さというか、大企業や大きい組織が動きにくいところの原因なのかなというふうに思います。
失敗をおそれるのは当たり前だし、失敗を避けようとすることが悪いわけではないんですが、いきなり急に事業化しようとすると、説明相手も増えますしハードルがかなり高くなるんですよね。

そのハードルの高さがもう少しなだらかになるように、説明をしなければならない人も巻き込みながら進んでいける社会にしていけるかということが、私から見た課題です。そしてみなさんの立場からは、いろいろな人を巻き込みつつ、実現したいことができる環境に自分を置いていくかを考え続けてほしいと思います。
その結果、社会とモノづくりをする人の動きがうまく組み合わされたと感じたときは、成長戦略がうまく回っているときだと思います。

私たちは、踏むだけでたとえば保育園児や幼稚園児の入退室を管理できるマットを開発しました。
保育園や幼稚園では、どうしてもその人が持っているスキルに依存してしまったり、システム導入をしてもなかなか汎用的に進まなかったりしているケースも多いように感じています。私たちは、そのような部分をもっと使いやすくしたり、付加価値があったりするものを今回のプロダクトで提案したいと考えました。

ただ、そういった形がいったんできても、そこから広めていくことは、なかなか自分たちの力だけでは描きにくいという課題があります。
プロトタイプからアルファ版、ベータ版、そして事業化していくためには、誰と合意をして、どのような情報を整理しなければならないかがある程度わかったり、選択肢がいくつかあったりすると、さらにスピード感を落とさずエネルギッシュに動きやすいなと感じています。そういった、プロセス部分を支援いただけるとありがたいなと、そういうところを特に期待しています。

今回の「Hack Day」のような機会で、それこそ村上さんや(審査員の)池澤さんのような人たちにプロダクトを知ってもらうきっかけになり、その後につながる一歩としての場所として、これからも「Hack Day」を発展させていきたいなと思います。
やはり、「デジタルの日」があるからこそ、「Digital Hack Day」として開催できているというところはあるので、これからもデジタル庁と一緒に頑張っていきたいですね。

「Hack Day」を通じて、起業につながるような作品が出てくることもあれば、たとえばヤフオク!(※1)やYahoo! JAPAN IDのログイン機能に組み込まれたようなものもあります。
ハッカソン、特にヤフーの「Hack Day」に出る人たちのモチベーションは、最初から「起業したい」とか「お金を得たい」とかではない。どちらかというと、「物づくりが大好きで、その物づくりでどういうことができるかっていうところをこの短い時間の中で試したい、ほかの人たちと一緒に切磋琢磨(せっさたくま)したい」というところがやっぱりモチベーションの源泉なのかなと思ってやっています。
※1 「マルチビュー機能」ヤフオク!で多視点画像が撮影出来るようになるまで(Tech Blog)

今回受賞されたチームには活動費として賞金をお渡ししてはいますが、その代わり何かやってほしい、というようなことは求めていません。ただ、みなさんがより活動しやすくなったり、作品がもっといろんな人に知ってもらえたりすることで、もしかしたら何かさらなる発展や、ものづくりのモチベーション向上につながったりするかもしれないと思っています。

今後、この「Hack Day」に出てみたいという人がさらに増えることで、すごいものをつくれる人たちがこんなにいるということを多くの人たちに知ってもらいたいです。そして、子どもたちが目指すような、(技術の)甲子園のような場所にしたいと思っています。

私が、「未踏ソフトウェア創造事業(※2)」を立ち上げたときに特に意識したのは、まさに「コミュニティー」です。もちろん、ここに来た方全員が創業するわけでも、しなければならないわけでもありません。でも、この3チームのみなさんがすごく仲良くなって帰ったり、この3チームに限らず、決勝に進んだ10チームの間でつながりが残ったり、審査した私たちとの関係が生まれたり、縦に横にコミュニティーを残していくことが次を生むのだと思います。
※2 未踏ソフトウェア創造事業:
2000年度から「未踏ソフトウェア創造事業」として開始。「未踏事業」とは、ITを駆使してイノベーションを創出することのできる独創的なアイデアと技術。
未踏事業ポータルページ

未踏ソフトもいろいろな形で、プロジェクトマネージャーと受賞者の関係、受賞者同士のコミュニティー、申請書の記入を手伝ってくれる事務の人など、いろいろな人とのつながりを増やしてコミュニティーにしていこうとしています。コミュニティーの階層が上がっていくと、実は事業の投資評価は上がっていきます。

ぜひみなさん、今日をきっかけに仲良くなっていただいて、何かのときに思い出してちょっと「何かやりません?」と声をかけられる関係になってください。それがこの「Hack Day」の次につながっていくような気がしました。

そうですね、まさにそのコミュニティーをうまくつくっていこうというところは、これからやろうとしているところです。

私たちは、赤ちゃんの「感情が読めない」という点にデジタル化する意義を見いだしました。私は、エンジニアでもデザイナーでもなく、経済・経営の文脈でこのチームに参加しています。
公認会計士の勉強もしていて、(公認会計士は)つくり手を支援する側なので、デジタル化するところとデジタル化しなくてもよいところ、たとえばデジタル化するとかえって非効率になってしまうところをしっかり見極めていく必要があると思っています。

デジタルの入り口はアナログです。それこそ「(GOLD受賞作品の)利用規約が読めない、わからない」のような、アナログの課題がデジタルの入り口になります。入り口にあたるタッチポイントは、アナログであることがほとんどです。ぜひ、身近なアナログについての課題感を大事にしてほしいと思います。

中小企業の年配層は「デジタルにすると裸にされそうな気がして怖い」という人もいます。そういう人たちには「技能は隠せ、技術は見せろ」と伝えています。これは、再現性のあるものは必ず誰かがやるので、早くデジタルにしてしまえということ。ただ、再現性のないもの、たとえばそのときその環境でしか生まれない人の気持ちや状況は、そのままアナログのままにしておけばいいと伝えました。

人の技能で、決してここだけはデジタルにならないというものは、要するに再現可能性があるかどうかなんですよ。再現可能性が信じられるものは迷わずデジタルにしたらいいと思います。ですが、そのとき限定のアナログなものは、とても尊いものなので、逆にアナログのまま取っておく。

「再現性の有無」という言葉をキーワードに、技能として隠すものと、技術を使ってデジタル化するものを分けると、より明確に、デジタル化するべきものが見えてくるのではないかなと、みなさんの話をうかがっていて思いました。

村上さんからエンジニア、デザイナーへのメッセージ

今、日本の人口は1億2,000万人ですが、2100年にはおそらく7,000万になるといわれています。今後はさらにデジタルが必要になってくると考えています。
今までは「人口が増える」という前提で、自動車も家電も売り上げが増えていました。つまり、お客さんが増える前提でビジネスモデルを組んでいましたが、これからは絶対に国内の売り上げは増えない。
供給も減らせば、利益は同じなのではと思いたくなりますが、実はここが悩ましいところです。人口が減少するときは、かなり上手に産業構造を組み替えないと、この数十年間、みんなが苦しいままの撤退戦になるのはほぼ見えています。

それを回避するためにこれから必要な考え方は「シェア」です。事業者間で協力しあって、「みんなで一緒に(顧客を)集めよう」というレイヤーを入れないと、おそらく多くの事業者がどんどん追い込まれていきます。みんなで一緒にシェアをするその「何か」の正体はデータ、つまりデジタルです。

事業者間を超えたデジタルの活用は、第三者のサービスを活用する形になるのか直接シェアするのかはわかりません。私は「公助」「自助」に対して「共助」と呼んでいますが、事業間の共助に成功した国は、人口が減っても生産性が下がらない。

ちょっと抽象度が上がってしまいましたが、人口減少時代においては、共助とデジタル化を突き進めていくことが、目指すべき日本の新しい資本主義なのではないかと思っています。

ありがとうございます。そのあたりのテーマが、もしかすると次の「Digital Hack Day」の狙い目になるかもしれないですね。

Digital Hack Day 2022受賞作品

受賞GOLD:規約の意訳

Hack ID 56: TechSword
ついつい読み飛ばしがちな利用規約。「この規約はヤバい!」とのツイートを見て驚くこともしばしば。本ツールは規約のURLを送信するだけでその内容を解析。その"ヤバさ"をわかりやすく表示し、安心してサービスを利用できます。

受賞SILVER:みまもるぞう

Hack ID 3: ドクダミの風来坊
踏むだけで入退室を管理できるマットです。マットを踏むと個人を認証し入退室時間を記録します。一定時間経過しても退出していない場合は、LINEで直ちに関係者にお知らせします。バス通学の園児も、離れて暮らすご家族やおじいちゃんやおばあちゃんなども、もう誰も取り残しません。

受賞BRONZE:mamadeus

Hack ID 43: たぴおか
脳波計測とAI(人工知能)の技術を用いて赤ちゃんの育児を効率化する作品です。独自に開発した脳波計測デバイスを用いて赤ちゃんの脳波を計測。それをもとにAIが赤ちゃんに心地よい音楽を作曲して、赤ちゃんの寝かしつけをサポートします。

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