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企業情報

2022.10.18

開かれた対話を通じて、同僚を応援 オープンダイアローグの進め方

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YJぴあさぽは、同僚を「ピア=仲間」ととらえ、支え合う仕組みです。産業カウンセラーやキャリアコンサルタントの有資格社員が、希望する社員とキャリアや人間関係などに関する対話をすることで応援・支援します。定期的に「オープンダイアローグ」と「2on1」を実施しています。

オープンダイアローグは、フィンランドで開発された精神科医療の包括的なアプローチで「開かれた対話」と訳されます。YJぴあさぽでは、話すことと聴くこと、「対話」を大事にしたいという思いから、対話の場を「オープンダイアローグ」と呼んでいます。
忙しい社員が利用しやすい時間は最大どのくらいか、1人に対してどのぐらいの時間だとしっかり聴いてもらったと感じるのか、他の人の対話も聴けるか検討した結果、オープンダイアローグは1時間でぴあさぽ2人につき3人まで、という形で実施しています。

※今回はオープンダイアローグについて、その流れを理解いただくために作成した、架空の内容をもとにご紹介します。

参加者

Aさん
Bさん
Cさん

※Aさん、Bさん、Cさんともオープンダイアローグ初参加。自己紹介は名前を伝えあうくらいで、プロフィールを詳しく聞くことはありません。この場で話されることだけに集中します。

YJぴあさぽ

みーさん
グッドコンディション推進室で従業員の健康増進企画を担当。夫と高校生の娘の三人暮らし。 保有資格:産業カウンセラー(JAICO)、交流分析士インストラクター、国家資格公認心理師
まさみん
ZアカデミアでZホールディングス全体の組織活性、人材育成、コミュニケーション円滑化の取り組みなどを担当。
保有資格:国家資格キャリアコンサルタント、トラストコーチングスクール 認定コーチング スキルアドバイザー

オープンダイアローグ Aさん

今日はお集まりいただきありがとうございます。本日担当します、「ぴあさぽ」のまさみんとみーさんです。名前を呼んでくださるときは、まさみん、みーさんと呼んでください。

みなさんのことも、今(Zoomで)表示いただいている呼び名で呼ばせていただきますね。対話を練習するようなつもりで、どうかリラックスしてご参加ください。
では、本日の「YJぴあさぽ」オープンダイアローグのルールを説明します。

この時間では、対話を通じて、同僚として応援・支援することが目的です。参加者のみなさんもお互いにそのつもりで参加していただければと思います。

オープンダイアローグの流れ

1)話すこと、聴くこと

みなさんそれぞれのお時間を設けますので、今日お話ししたいことを自由にお話しいただきます。ですが、このメンバー全員でわいわいと話すのではなく、「ぴあさぽ」が聞き手、お話しする方が話し手となります。

その間、他の方たちは聴くことに集中していただければと思います。なぜかというと、聴きながら話すというのは意外とエネルギーを使っているからです。「次、何か言わなくちゃ」という気持ちはいったんオフにして、聴くことだけに集中することで、とても特別な時間になると思います。ぜひ、それを味わってみてください。

私が「感想などをお話ししてください」と言ったときは、自由にお話しください。ただ、ご自身が感じた感想、コメント、共感、質問などにして、批判やアドバイス、結論付けなどは、控えるようにしてください。

なお、私たち「ぴあさぽ」は職業上、資格上の守秘義務がありますが、参加者の皆さんも、ここでのお話はこの場限りで、よそで話すことはないようお約束ください。安全・安心な場を共有できればと思います。

2)リフレクティング

次に、「リフレクティング」という特別な時間があります。「ぴあさぽ」のまさみんと私が、お話ししてくれた人とは別に、2人だけでお話する時間です。みなさんはその内容を聴いていてください。

3)しめくくり

最後に、話し手の方に聞き手・ぴあさぽ同士の会話を聴いて感じたことをお話いただきクロージングとなります。

この時間の明確なゴールはありません。対話をしているその時間を一番味わっていただきたいです。その結果として、少しでも気持ちが軽くなったり、自分1人で考えただけでは思い浮かばないヒントを得たり、気持ちが変化したりするかもしれません。そこを味わっていただくのがぼんやりとしたゴールになります。
繰り返しになりますが、「話す」ことと「聴く」ことを分けることを意識してくださいね。

では、まずはAさん、お話しください。

オープンダイアローグのルール
・対話を通じて、同僚として応援・支援することが目的
・聴くことだけに集中する
・聴いた人は感じたことを話す
・明確なゴールはなく 対話の時間をしっかり味わうことが目的
・「話す」ことと「聴く」ことを分けることを意識する

誰に伝えればそれが解消するのかも悩ましく、そして誰かに話した結果それが解決するのかという、もどかしい課題を今、抱えています。

もどかしい課題。

そうですね。個人の価値観にもつながってきてしまうことなので、正解がなさ過ぎてちょっと迷っている部分があり、今日は聴いていただきたいと思っています。
悩んでいるのは、「兼務」という働き方についてです。私自身、今のようなリモートの働き方になる前からずっと何かしらの兼務を持って働いてきました。それは会社の評価制度とは一致しない場合もあります。でも、自分自身がやりたいことであること、それから何かを生み出すことで、誰かの役に立つことに私は重きを置いて、兼務で仕事をやり続けてきました。

ただ、リモートになって、やはり兼務の働き方の難しさにすごく直面しています。自分が兼務していることが、主務・兼務どちらかの役に立たない状態に陥っているのではないかというような課題も新たに生まれました。
そこをどのように消化していくべきなのか、上長などに相談しながら、解決しようと個人的にもトライしています。ただ、その一方で、私が他のメンバーから1on1をしてほしいと言われてお話を聴く機会が結構ありまして、雑談ベースではあるのですが、そこで受ける相談も兼務についての内容が増えてきています。

Aさん自体も悩んでいて、しかもご自身もそういう相談を受けることが増えているんですね。

はい。受けている相談内容は私の悩みとはちょっと違います。たとえば「兼務業務の考え方が皆さん同じではないので、兼務者としての関わり方が難しい」「兼務の方にどの程度のお仕事を依頼してよいか迷いを持つことがある」などの、兼務という役割に対してさまざまな考えを持つ方が多いようです。
そのため、「兼務」しているときの役割の果たし方に難しさを感じています。

難しさを感じているんですね。

はい。この半年、特に感じることが多くなりました。

そうなんですね。難しさを感じているということですが、Aさんはこれまで、評価よりも自分が役に立っているという思いで兼務をしていた部分があったのですね。
でも、そこがリモートワークで組織に役に立てているのかがちょっと分からなくなった、というようなことをおっしゃっていたかと思います。そこはどうしてそう思われたのでしょうか?

みなさんも同じだと思うのですが、やっぱりミーティングが多くなり過ぎているっていうところもあって、情報を取りこぼす機会も増えています。そして、私から情報提供する機会も減ったという感覚があります。

提供する機会も減っているんですか?

はい。兼務先などのミーティングがどうしてもかぶってしまうので、なかなか双方にメリットをもたらすことができなくなっていると強く感じはじめたのが1年半ぐらい前です。

そのような自分の課題感で、もどかしいけれど「1ミリでも役に立つならまだ頑張ろう」と私は思っています。ですが、他の人から兼務について受ける相談は、モチベーションについてというより、兼務に対するどちらかというとマイナスの相談が多いので、「あれ? 自分の兼務の価値観とあまりにも違うな」と感じました。どちらが正しいわけでもないんですけどね。

ここまでAさんの中で顕在化しないでできていたことが、リモートワーク化で相談を受けたことによって、自分が思っていた兼務についての考えも違うのかもしれないみたいな、正解が分からない、というような気持ちになったのですね。

兼務をしていることで、自分の気持ちの落としどころがどんどんなくなっていくというか…。

気持ちの落としどころ?

納得して仕事をしたいです。仕事について評価を受けたいということでなくて、「この人と一緒に仕事して良かった」と思ってもらいたいというか。

良かったと思ってもらいたいんですね。

1%でも相手にメリットがもたらされれば、相手に良かったと思ってもらえるほうに入ると私は思っているので、それだけでもいいと思いながら兼務しています。
ただ、兼務の考え方が全然違う人も多いということがわかったことで、「自分が兼務していることはあまりよくないのかもしれない」という気持ちにもなってきてしまいました。
もっと健全な兼務業務についてみんなで議論できたり、本当に腹を割って話す機会が持てたりしたらいいな、と思うことが多くなってきています。

ありがとうございます。Aさんがこういう思いで兼務をやってきた、こういうことを大事にしてきたという思いがありつつも、最近感じているもやもやと、「もっと話せる場があったらいいのに」という未来志向が感じられました。ありがとうございます。

短い時間ではありましたが、いろいろな価値観があると思って聴いていただけでしょうか。
それでは、参加してくださっているお2人にも、今、聴いていてどんなふうに思われたか、感じたことがもしあればお願いします。ではBさん、個人的に思われたことでも大丈夫です。

はい。私も兼務で働いたことがあるので、お話を聴きながら、関わってちょっとでも良かったと思ってもらえたらとおっしゃっている気持ちが本当にひしひしと伝わりましたし、わかると思いました。
それに対して、周りからの声が、兼務の人ってなんで、みたいな感じのお話を聴いたら、それはうーん…なかなかもやもやするなと思いながら聴いていました。

ありがとうございます。
Cさん、どうですか?

はい。自分も兼務がいくつかついています。
兼務といっても、本当いろいろなやり方があるなと、Aさんのお話を聴きながら思っていました。

同じ兼務が就いていても、関わり方がやっぱり違うのだなと。
でも、明確に(兼務のあり方は)これっていうものもないから、確かにもやもやもします。そこでAさんの価値観が何か揺さぶられるというのは、いったいどういうことなのだろう、と聴いていて気になりました。

そうですね。もっとお話聴きたいっていう感じになりましたよね。
ありがとうございます。では、このあとリフレクティングということで、まさみんと私がここまで聴いたことについて、どうだったかお話しします。

対面で行うオープンダイアローグの場では、いったん対話の輪から離れて違う場で2人が話すのですが、Zoomだとそれができないので、まさみんと私が2人で話しているのを眺めているような、そんなイメージで聴いていただければと思います。

まさみん、Aさんのお話、Bさん、Cさんの感じたことを聴いてどうでしたか?

今日の参加者の方は、みなさん兼務のご経験があり、共感できる部分が多いようですね。
Aさんのお話の中では「役に立つ」という単語が何度も出てきました。「役に立つ」「役に立っている」「役に立っていないんじゃないか」など。さらに「双方にメリットがあるなら」という言葉も出てきていました。

ご自身の中で、会社や仲間に貢献したい、「人のために」という気持ちがすごく熱いのだなと感じました。でも、なかなかご自身が思っているようには組織も周りも動かないし、全員同じ価値観ではないから、納得感みたいなところが薄くて、そこをどう自分の中で腹落ちさせればいいのか「もやもや」しているのではないかと感じました。

そうですよね。すごく役に立ちたい、周りにも配慮しているし、他の方からの相談も受けたりしていて、すごく気を配る方だと思いました。
「制度だから仕方ない」という言葉も何度か出ていたので、私は仕方なくないんじゃないかっていうか、その仕方ないで片づけられない気持ちについて、もう少し聴きたいと思いました。
最後に、「もっと腹を割って話せたら、もしかしていい方向に進むかも」というコメントもありましたよね。
とにかく、仕方ないで抑えずにもっとお話が聴けたらいいのかな、と思っていました。

そうですね。全員が納得ってなかなか難しいけど、一歩を進むことっていうのは、できるのかもしれないですね。

仕方なくないかもしれないですね。ありがとうございます。
今、まるでAさんやみなさんの前で、Aさんについてうわさ話をするような、この会話がリフレクティングの時間です。
黙って聴くことに集中して、どういうふうに思われたか、何か感じられたことがあったらお願いします。

まずは、本当にありがとうございました、と心の底から今思っています。BさんとCさんが、私の環境や背景を知らないのに、私の言葉から読み解いて共感してくださったこと、その先の気持ちに興味を持ってくださったのが、とてもうれしいと思いました。
一歩踏み出せるかもしれないなと、まずお2人のコメントで感じました。

そして、まさみんとみーさんが私の言葉から、何度も言っていた言葉に気づいてくださったことで、自分自身が無意識に思いを持っている言葉があるのだなと思いました。
あきらめているわけではないのですが、前にも進めないもどかしい気持ちに背中を押してもらえたような、お2人から元気をもらったような気持ちになっています。やはり対話って大事だなと改めて感じました。ありがとうございました。

ありがとうございました。これがオープンダイアローグで使うお1人分の時間になります。 続いて、Bさん、Cさんのお話もうかがっていきます。Aさん、おつかれさまでした。

~(中略)3人全員の対話が終わって~

今日は、お話を聴かせていただいてありがとうございました。この時間が終わり自問自答するときに、あの人はこんなことを言っていたな、対話をしていると感じるのはこんなことなのかなということが、みなさんの中で育っていくイメージが持てたら、ぜひそれを大事にしていただきたいです。
オープンダイアローグでは「ぴあさぽ」ではない人の、多様な視点の言葉がもらえる利点がありますので、またお時間があるときに参加していただければと思います。

今日、みなさんはお話しできてすっきりした部分もあるかもしれませんが、(対話をして)感情が動くのは疲れることでもあります。このあとの時間は、良かったらできるだけゆっくり過ごしてください。今日はありがとうございました。

最後に

YJぴあさぽのオープンダイアローグのイメージが湧いたでしょうか? ただ、これはお手本や正解ではありません。このように進むことがあるよ、という一つの例です。
やり方はいろいろありますが、ちゃんと聴いてもらうと心が元気になるということは、オープンダイアローグを通じて実感しているところです。

この記事を読んでくださった方が、「対話」について自分なりの感想を抱いていただけたら、それもまた対話的経験の広がりとしてうれしく思います。

YJぴあさぽのオープンダイアローグを検討した際に参考にした書籍

・「オープンダイアローグとは何か」斎藤環
・「まんが やってみたくなるオープンダイアローグ」斎藤環 (著)、水谷緑 (著)
・「感じるオープンダイアローグ」森川 すいめい
・「オープンダイアローグ 私たちはこうしている」森川 すいめい
・「仕事に効くオープンダイアローグ」鈴木隆

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