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2022.05.18

先端技術でヤフーのサービスをより便利に Yahoo! JAPAN研究所

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2007年4月に設立されたYahoo! JAPAN研究所は、ヤフーのミッションである「UPDATE JAPAN」=「情報技術のチカラで、日本をもっと便利に。」を実現するための活動を先進技術で支える存在です。ヤフーの各サービス、数々の大学や研究機関と広く連携しながら研究開発を行っています。
今回は、Yahoo! JAPAN研究所のこれまでの活動、研究の成果や今後の展望などを、所長の田島に聞きました。

    目次:
  1. 「ヤフーだからこそ価値を出せる」ことをテーマに
  2. 「自由度」を維持することで、サービス側とも健全な関係を保つことができる
  3. 研究内容をもっと知ってもらうために「やわらかく、わかりやすく」伝える
  4. Yahoo! JAPAN研究所の内容がサービスに反映された例
  5. 研究を通じてヤフーのサービスをより良いものにし続ける
田島 玲(たじま あきら)
2000年3月 東京大学大学院理学系研究科情報科学専攻。博士(理学)。1992~2002年 日本アイ・ビー・エム東京基礎研究所 研究員、2002~2005年 A.T.カーニー(戦略系コンサルティングファーム) コンサルタント、2005~2010年 日本アイ・ビー・エム東京基礎研究所で数理科学チームをリード。
2011年にYahoo! JAPAN研究所の研究者として入社。ヤフーのサービス部門間の横断的なデータ利活用に取り組む。2012年7月から所長に就任。

Yahoo! JAPAN研究所の所長として考えていること
ヤフーのサービスなどで研究の価値が出るのがうれしい、というのが私のスタンスです。所長になる前は広告配信部分の機械学習化のプロジェクトを広告チームのエンジニアと一緒に考えていました。
Yahoo! JAPAN研究所が、サービスにしっかり貢献していくように組織を運営したいと思っています。研究員のやりたいことを後押しをしつつ、その先にしっかり、サービスへの貢献や成果につながるよう、これからも手伝っていきたいですね。

「ヤフーだからこそ価値を出せる」ことをテーマに

研究所設立のきっかけとなったのは、Yahoo! JAPANのサービス開始10周年です。当時社長だった井上(雅博)が、「将来に向けた布石として研究所をつくりたい」と考え、研究に取り組む人たちを外部から集めたと聞いています。現在も、外部企業や大学で研究していた方を中心に研究者として採用しています。今年は設立後初めて、大学(博士)を卒業したばかりの方を採用しました。

Yahoo! JAPAN研究所の論文のトップカンファレンス(世界最高峰の国際会議)採択数は、企業としてはかなり多い方です。企業内の研究所でありながらもアカデミック(学術的)に貢献し、一方でヤフーの事業にも貢献しているという意味ではバランスが取れていると思っています。

設立当初は、研究内容の発信をメインに取り組んでいましたが、今は両輪と捉えており、
・トップカンファレンスに採択されるレベルの論文をしっかり出していく
・ヤフーのサービスに貢献していく
この両方を軸として活動しています。

そして、どちらの活動においても「ヤフーだからこそできる研究をする」ということを大事にしています。 たとえば、「ヤフーの膨大なデータを使ってこんなことがしたい」「多くのユーザーが使っているサービスにこのような貢献がしたい」という思いで取り組んでいるので、自然とその技術はサービスへの貢献につながりやすくなります。そして、実際にその技術が使われている、ということも含めて論文を書くと、より現場の課題も踏まえた内容になるので、論文としても通りやすくなるはずです。
特に、最近主流となってきているAI領域では、研究の現場とサービスづくりの現場との距離がとても近くなっていると感じています。論文で発表された内容がその数カ月後にはサービスに実装され、その結果を踏まえて新たな論文が書かれることもあります。

Yahoo! JAPAN研究所の方針
・トップカンファレンスに採択されるレベルの論文を出す
・ヤフーのサービスに貢献する
この方針に加えて、「ヤフーだからこそできる研究」に取り組んでいる
サービスへの導入実績も含めて研究内容を発信できることが強み

「自由度」を維持することで、サービス側とも健全な関係を保つことができる

研究員は約20名で、あえてこれくらいの規模を維持しています。その理由は、優秀な技術者は取り合いになっているなか、前述の2つの方向性にも合った方を求めていること。もう1つは研究所としては自由度を高く維持したいこと、この2つです。

Yahoo! JAPAN研究所では、特に「自由度」を大切にしています。
企業の研究開発部門では、研究者が増えて規模が大きくなるにつれて、ビジネスへの直接的な貢献が重視されるようになり、本来取り組んでいくべき研究に割ける時間が減ってしまうこともあります。
そのため、「全員が研究を優先してしっかり取り組める」よう、少人数のコンパクトな「研究所」として独立することで、研究内容の自由度を維持したいと考えています。そして、ビジネスと密接になりすぎない立ち位置を保つことで、サービス側との関係も健全な状態を保っていられると感じています。

また、自由度が高い分、手前味噌とならないよう「(研究所の)外部からの評価」を重視しています。
まず、トップカンファレンスの採択率は約20%のため、そこで採択されたということは研究内容への客観的な評価です。そして、サービスに反映されるためには、研究内容の価値が認められることが必要です。サービス側はその研究を反映するためには開発もしなければいけないし、使い続けるなら運用のコストも必要です。そのため、サービス側に、「これはコストをかける価値がある」と思ってもらったものだけが反映されます。
そうなってはじめて、本当にその研究内容を認めてもらえた、評価されたことになると思っています。私たちの研究内容がすべてサービスに反映されてしまったら、逆に不健全だと思っています。

Yahoo! JAPAN研究所が重視している外部からの評価
・トップカンファレンスの採択率
・ヤフーのサービスに反映されること
このいずれかが、研究内容を認めてもらえた、評価されたことになる

アカデミック貢献と事業貢献のバランスは、研究員によって異なります。論文を通したり、大学と共同研究を進めたりすることがメインの人もいれば、サービス側の担当者と一緒に取り組んで、自分の研究がサービスに反映されることに喜びを覚える人もいます。
論文を書く活動がメインな人ほど、いろんな人と一緒に活動している印象です。インターンの学生、大学の研究室などとディスカッションしながら進めることが多いようです。
研究テーマの決め方は、個々の研究者が学会などで他の研究者と意気投合したことをきっかけで始まることもありますが、そのようなときが一番、結果につながります。
やはり、「本人がその研究に燃えている」ことがとても大事だと思います。

研究内容をもっと知ってもらうために「やわらかく、わかりやすく」伝える

約10年、ヤフーで研究してきて常に感じているのは、私たちの研究内容をサービス担当者にもっと知ってほしいということ。
サービス側が「こういうことがちょっとうまくいかないから解決したい」と課題を感じた時に、「そういえば研究所でこういう研究をしていたな」と思い出してもらいたいです。
そのためにも、サービスと一緒に研究に取り組んだときは、そのサービスの方と一緒に社内で開催するテックセミナーなどで発表しています。サービス担当者から話すことで、聞く側も、より自分事として聞いてくれやすくなるようです。

「そのサービスでそういうことができるんだったら、うちのサービスではこういうこともできないかな」と考えるきっかけになることで、次の協業につながることもあります。そのように、積極的に研究の成果を発信しながら一緒に取り組むサービスを増やすことを意識しています。
ポスターセッションも含め、最近は社内での発表・共有の場が整っていますし、リモート主体になったことで、以前より参加者が増えています。今後は特に、どのようにヤフーの研究や技術を価値につなげていくかという部分について、技術者だけでなく企画担当者にももっと知ってもらいたいですね。

そのためにも、「研究内容や技術をやわらかく、わかりやすく」伝えることを心がけています。特に企画系の方に伝えるときには、価値の訴求をするように意識しています。 研究は3つのステップに分けられると思います。

1)何をやるか決める
2)つくる(研究開発する)
3)作ったものを伝えて使ってもらう

研究員はこの2)だけをひたすらにやっているようなイメージかもしれませんが、私たちはこの3つにバランスよく取り組むようにしています。
何のテーマについて研究するか決める時にも、サービス側の課題をヒアリングした上でそれも含めて決めていく、研究内容を知ってもらい使ってもらう、その両方をバランス良くできるように意識しています。

ウェブ業界は比較的、技術がそのまま反映されやすい事業形態だと感じています。「モノ=製品」をつくっている業種だと、しっかりつくり込んで製品化し、ユーザーに届くまでには場合によっては何年もかかってしまうこともあると思います。さらにその仕込みも含めると、かなり長い時間ですよね。
それに比べると、ヤフーの場合は、何かおもしろいアルゴリズムがあったら数カ月後にはサービスで使ってもらう、という可能性もあり得えます。このスピード感が、研究ととても親和性が高い業界だと思います。

Yahoo! JAPAN研究所の研究がサービスに反映された例

1)位置情報系の機能

一番わかりやすいのは、位置情報系の機能だと思います。特にコロナ以降、混雑系の機能が多く出ていますが、この土台になっているのが「HAAS(ハース:Hardware as a Serviceの略)」という、同意いただいたユーザーの位置情報をIDと連携しながらためるシステムです。
コロナ禍以前から、研究所で「位置情報を使って何か価値を出せないだろうか」と、データを分析しながら論文を書いていました。その後「これは絶対にいいサービスになる」とサービス側で開発され、機能としてヤフーのいろいろなアプリで使われるようになりました。
これは研究内容がヤフーのサービスに載せられる機能として磨き込まれていった事例です。
たとえば、Yahoo!乗換案内の「混雑予報」やYahoo! MAPの「混雑レーダー」などは、多くの方に使っていただいています。

参考)コロナ禍で活用される混雑状況予測と知的財産の取り組み

2)パスワードレス認証

ログインに関連したヤフーの「FIDO(ファイド:Fast Identity Onlineの略)」への取り組みは研究員の活動から始まりました。標準化にも取り組んで、ヤフーが他社に先駆けてサービスでも展開することで、この領域をリードしています。FIDOの研究は、先日も情報処理学会で賞をいただいています。
参考)一般社団法人 情報処理学会 2021年度業績賞「パスワードレス個人認証技術の研究開発、標準化、および、商用導入」

これは、パスワードログインに課題があることに早めに着目し、しっかり取り組んできた成果です。こちらも、Yahoo! JAPAN IDをお持ちの多くのユーザーに使っていただくことができました。

また、FIDOの認証系とHCI系のメンバーで、「使いやすさ」の視点でこの認証に関する機能をさらに使いやすくするための研究にも取り組んでいます。
参考)ユーザビリティー実験からわかったパスワードレス認証の課題

※以下の記事では、パスワードレスログインの仕様検討と推進を担当しているYahoo! JAPAN研究所の五味、山口、大神、IDソリューション本部のエンジニア上野に、「パスワードレスログイン」の仕組みやその安全性、FIDOで実現できたことなどを聞いています。
「安全・安心・便利」FIDO(ファイド)を使ったパスワードレスログインとは

3)ユーザビリティの研究

インタラクション領域もここ数年強化しています。日本にも世界レベルで活躍している研究者が多い領域ですが、企業よりも大学が中心です。ヤフーにはサービスがあり、インタラクションについて検証し活かす場もあることがメリットなので、この分野でも今後、しっかり結果につなげていきたいと思っています。

※以下は、快適に操作できるUI(ユーザーインターフェース)を作るインタラクション分野の研究をしている山中の記事。Yahoo! JAPAN Tech BlogのAdvent Calendar 2021でベストオーサーに選ばれた。
スマホのタップ操作の成功率を算出するモデル ~ UIデザインにおけるユーザビリティの推定

この記事は、ボタンサイズとミスクリック率の関係を分析した内容でした。このような研究も、最終的にはヤフーのガイドラインに反映されるところまで進めたいと思っています。

Yahoo! JAPAN研究所の研究がサービスに反映された例
1)位置情報系の機能:
Yahoo!乗換案内の「混雑予報」やYahoo! MAPの「混雑レーダー」
2)パスワードレス認証:
FIDO(Fast Identity Online)
3)ユーザービリティの研究

研究を通じてヤフーのサービスをより良いものにし続ける

大学の講演や講義で、ヤフーの各サービスや機能の裏側はしっかりデータドリブン(データの分析結果をもとに、課題解決などを行うこと)になっていることなどをお伝えすることがあります。その際に、「データがどのように活用されているか知らなかった」「こんなにいろいろな技術を裏側では使っているのか」などの感想をいただくこともあります。
私たちが取り組んでいる研究内容の多くは、AIなどの新しいとがった機能を使って「キラキラ」したサービスを立ち上げたり、今あるサービスを大きく変えたりするためではなく、みなさんに普段使っていただいているサービスの裏側が、新しい技術やデータ分析によってどんどん磨き込まれていくために使われています。

Yahoo! JAPAN研究所は、「新しい技術のために出口を見つけ出す」よりも「使っていただくサービスをいかにもっと良くしていけるか」ということに取り組み続けている研究所です。
ヤフーのミッションである「UPDATE JAPAN」でも、さらに便利なサービスをつくることを宣言していますが、データやAI、技術、そして私たちの研究はそのための手段にすぎないということを、常に忘れずにいたいと思っています。

今後は、さきほどお話したようなインタラクション領域の研究をさらに盛り上げていき、サービスに貢献できた事例を増やしていきたいですね。機械学習、言語処理、位置情報などはもうある意味、当たり前というくらいさまざまなサービスで使われていますが、同じようにUX(ユーザーエクスペリエンス)への貢献にも取り組んでいきます。

Yahoo! JAPAN研究所は…
「新しい技術のために出口を見つけ出す」のではなく
「使っていただくサービスをいかにもっと良くしていく」
ことに取り組み続けている研究所

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