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2021.10.07

防災行動を自分ごと化して逃げ遅れを防ぐ「防災タイムライン」

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みなさんは、災害発生時にご自身がとるべき行動について、具体的にイメージできていますか? 備蓄品や防災リュックなどの準備がしっかりできていても、実際に大雨などの災害が発生し、避難情報が発表されたときにすぐに行動することは、誰にとっても難しいのではないでしょうか。

Yahoo!防災速報では、大雨などの水害警戒時に防災行動を促すプッシュ通知が届く機能「防災タイムライン」の提供を8月に開始しました。
これは、一人ひとりの防災行動計画(タイムライン)を事前に確認しながら簡単に作成しておける機能です。たとえば台風による大雨で河川の水位が上昇するなど、危険が迫っている時に防災行動を開始するタイミングを事前に決めておくことで、命を守る避難行動をすばやくとれるようにすることが目的です。
今回は、防災タイムラインの提供に至った背景や工夫した点、今後の展望などについて担当者に聞きました。

  1. 災害時の逃げ遅れが現在も課題に
  2. 「タイムライン」は災害時にとるべき行動をあらかじめ決めておくもの
  3. 防災タイムラインは平時から発災、復旧・復興時までの行動もカバー
  4. 防災タイムラインの工夫した点
  5. 国立研究開発法人防災科学技術研究所の監修、自治体との意見交換も経て開発
  6. 防災タイムラインで「逃げ遅れがない世界」を実現
  7. 防災タイムラインの使い方
竹内 美尋(たけうち みひろ)
2004年入社。Yahoo!商品検索、Yahoo!モバイル(検索)の企画・運営、Yahoo!知恵袋のサービスマネージャー、Yahoo! MAPの企画、Yahoo!防災速報の責任者などを経て、現在はYahoo!天気・災害の企画デザイン部長を務めている。「防災タイムライン」の企画を担当。
小野 高志(おの たかし)
2009年入社。eコマース、会員サービス、マッチングサービス、ジオシティーズなどを経て、現在は「Yahoo!天気・災害」の防災速報アプリを担当し、主に防災コンテンツのデザイナーを務める。今回の「防災タイムライン」のデザインも担当。
梶木 裕介(かじき ゆうすけ)
2012年入社。複数サービスのアプリ開発を経て、2014年より天気災害サービスを担当。 Yahoo!天気アプリ、Yahoo!防災速報アプリのアプリ開発を経て、現在は開発チームのマネージャーを務めている。「防災タイムライン」のシステム開発を担当。

災害時の逃げ遅れが現在も課題に

竹内:
ヤフーではこれまで、Yahoo!防災速報をはじめ、Yahoo! JAPANアプリやYahoo!ニュースアプリなどでユーザーのみなさまに災害情報をお届けしてきました。ただ、ユーザーがそれらの情報を受け取ってから、「防災行動を取ろう」「身の安全を確保できるところに避難しよう」などの命を守るための行動につなげられているかというと、まだそこまではできてないという点が課題となっていました。また、防災・災害業界においても、「逃げ遅れを防ぐ」ことはいまだに解決できていない大きな課題として捉えています。
そのため、災害情報の通知を少しでも速くお送りすることに加えて、それらの情報を受け取ったユーザーの行動につなげる取り組みに今後より力を入れていきたいと考えています。

「タイムライン」は災害時にとるべき行動をあらかじめ決めておくもの

竹内:
防災における「タイムライン」とは、災害時に発生する状況を想定し「いつ」「誰が」「何をするか」という防災行動を時系列で整理した計画のことで、「防災行動計画」とも言われています。災害から身を守るためには、すばやく適切に判断し行動することが重要です。事前に「いつ」「どのような」行動を災害時に取るかを時系列で整理しておくことで、いざというときに慌てることなく行動できます。
国土交通省が普及推進、啓発している取り組みに「マイ・タイムライン」があります。これは、あらかじめ「水害が発生しそうな時にはこう行動する」ということを自分で決めておき、実際にそのような状況が迫ってきたときに行動計画に基づいて身の安全を図るというものです。

手書きで作るマイ・タイムラインの例(出典:東京防災

タイムラインを作るメリット

・自分に合った避難計画を作れる
家族構成や住んでいる場所によって避難する場所やタイミングは変わります。事前に自分の状況に合わせて準備しておくことができます。
・いざという時に慌てずに避難できる
災害発生時には、事前に作ったマイ・タイムラインを参考に行動すればいいので、慌てずに行動できます。

タイムラインを作る時に確認しておくこと(水害を想定) 

・住んでいる地区の災害リスクを知っておく
住んでいる地域が「洪水」や「土砂災害」などの危険があるか調べておく
・家庭の状況を確認する
高齢者や乳幼児など逃げる時に時間がかかる人がいる場合は早めに避難する。また、ペットを飼っている場合は避難場所に連れていけないことも多いため、どのように行動するか検討しておく
・備蓄品、連絡先を確認しておく
ライフラインが止まったときに自宅で過ごすために必要な備蓄品や、避難が必要になったときの持ち出し品を用意しておく
・避難場所・経路を調べておく
避難場所や避難経路を確認し、避難場所までどのような手段で避難するのか考えておく
・避難情報の発令時にどんな行動をとるか確認する
令和3年5月から「避難勧告」が廃止され、「避難指示」に一本化

防災タイムラインは平時から発災、復旧・復興時までの行動もカバー

Yahoo!防災速報の防災タイムライン

・自宅や周辺環境、世帯構成など、自分の状況を事前に入力
・大雨などの災害時の防災行動を確認できる
・災害警戒時には設定した防災行動開始のタイミングでプッシュ通知が届く

竹内:
防災タイムラインでは、平時の備えから、災害警戒レベルが上がった発災時、そして復旧・復興時までの一気通貫したすべての災害フェーズをカバーするための行動を事前に備えておくことを目指しています。現在は、台風接近時や大雨、洪水などの水害時の防災行動を事前に確認して設定できます。

自宅の建物種別や階数、立地の危険性、自力避難が難しい同居者の有無などによって、行動開始のタイミングが異なるなど、防災行動計画は人それぞれです。
防災タイムラインではまず、自宅周辺のハザードマップや災害時のリスク情報を確認し、その周辺環境やご自身の世帯構成を設定します。たとえば何人で住んでいるか、自宅は何階かなどの環境によっても身を守るための行動は異なるため、そのようなご自身の状況を事前に確認していただくことも目的です。
また、「警戒レベルが3になったら備蓄品を確認する」「避難レベル4になったら避難する」 ということを事前にご自身で決めておいていただくことがとても大切です。そして、いざ災害が迫って「レベル4」になったときには、Yahoo!防災速報からプッシュ通知で「危険な場所にいる人は全員避難。災害時の行動を確認してください。」などとお知らせします。
災害警戒時にはご自身で設定した防災行動開始のタイミングでプッシュ通知が届き、事前に作ったタイムラインの内容を参考に行動すればいいので、迷わず防災行動をとっていただくことができます。

防災タイムラインの工夫した点

・必須項目を分けたことで、簡単に設定できる
・警戒レベルの状況に応じて、その人に問いかけるような文言で通知

小野:
当初はタイムラインの全ステップを一気に設定してもらう設計でしたが、項目数がかなり多くなるため、広島県や京都府との意見交換を行った際に「必須入力の項目だけを1つのステップに分けたらどうか」とアドバイスいただきました。 そのため、プッシュ通知を届けられる最低限の設定である「自宅の危険度を確認して行動開始のタイミングを決める」のみを「必須項目」にしました。その他の項目については「任意項目」にしたり、ステップを分けたりすることで、少しでも簡単に設定していただけることを意識しました。社内の品質チェック担当者にレビューしてもらったところ、任意項目も含めたすべての項目を設定しようとすると20分くらいかかってしまいました。本当は任意項目も含めてすべて設定していただきたいのですが、まずは少しでも多くのユーザーに設定していただくことを優先して、ある程度割り切った構成にしてよかったと思っています。

(「普段から確認」のステップのみ入力すれば、防災タイムライン通知を受け取るための設定は完了。その他の項目は追って設定できる)

梶木:
防災タイムラインでは、ユーザーの設定によって通知の内容が変わるという点が大きな特徴です。今発生している災害情報と、どの人はどのタイミングで逃げるべきか、そしてその人がどういう環境にいるかでプッシュ通知の文言が変わるため、今までとは違う仕組みで実装しています。 具体的には、大雨危険度と避難情報の通知が届いたときに、防災タイムラインで設定済みのユーザーには、さらに「タイムラインを確認しましょう」などの、設定内容にあわせたオリジナルの文言を通知しています。

竹内:
災害発生時には多くの通知が届くので、防災タイムラインの通知文言はより、受け取った方の気を引けるような文言にするための検討を重ねました。
災害の状況をお知らせする通知は、「〇〇県××市に警戒レベル3相当」など、市区町村の方に情報を伝えるものが多いですが、防災タイムラインで送る通知は、
「安全確保はできていますか? 災害時の行動を確認してください。」
「危険な場所にいませんか? 災害時の行動を確認してください。」
など、警戒レベルの状況に応じてその人に問いかけるような文言にしています。

国立研究開発法人防災科学技術研究所の監修、自治体との意見交換も経て開発

竹内:
広島県は昔から土砂災害が多い地域なので、チェック項目の「近くに河川がある」の下に、「近くに谷や崖がある」この「谷」を強調されていたのが印象的でした。水災害が多い=谷が近くにある地形に広島県があるので、ぜひ言葉として入れていただきたいということでした。今年7月に土石流災害が発生した静岡県熱海市の大雨時、上空から見ると谷がはっきりと見えたことでこの重要さを痛感し、これはやっぱり入れるべきだろうと、「近くに谷や崖がある」と、谷を明記しました。

小野:
また、防災速報では「レベル3から行動を開始してください」というのが全体的な指標ですが、避難行動や備えるための行動を開始するのであれば、レベル2からが適切だろう、レベル3からでは少し遅いのではないか、というご指摘も防災科学技術研究所の方からいただきました。そのあたりの意識を合わせながらチューニングしていくところは難しかったですね。

竹内:
「避難」という言葉を使ってしまうと、どうしても避難所などの安全な場所へ移動する「水平避難」のみが連想されてしまうため、「身を守る行動を開始する」という表現を使っています。避難行動だけでなく、備蓄品や持ち出し品の確認をする、いざとなったときの連絡先に連絡する、などの行動も含めて防災行動開始のタイミングとしています。

防災タイムラインで「逃げ遅れがない世界」を実現

小野:
防災はまず自分の身を守ることが大切です。自分が助かってこそ、その後周りをサポートできるので、まずは自分の身の回りの危険度や必要なものをしっかり確認することで、命を守っていただきたいです。
今後は、助かった後に誰かをサポートできるよう、たとえば実家の防災タイムラインを作れるような機能や、支援が必要な人同士が防災タイムラインを共有できる機能などを追加していきたいですね。

梶木:
今回はYahoo!防災速報を軸に展開していますが、災害に関する情報はどこがきっかけで知ってもいいと思うので、Yahoo! JAPANアプリなのかLINEアプリなのかなどを意識せずに、いろいろな層の方に届けられるように連携していければと考えています。そして、より多くの人に防災タイムラインで、もしもの時に備えていただくことに取り組んでいきたいです。

竹内:
まずは、防災タイムラインをできるだけ多くのみなさんに使っていただくことが一番大切だと思っています。
防災を「自分ごと化」することは難しいと以前から思っており、その課題を解決したいとリリースしたのが今回の防災タイムラインです。今後は、この「自分ごと化」に関係者一同でより力を入れて取り組んでいきます。今回は土砂災害と洪水に対応しましたが、今後は地震や津波などの災害についても設定ができるように機能を追加していく予定です。
防災タイムラインで「逃げ遅れがない世界」の実現を目指していきますので、今後に期待いただければと思います。

(右上から梶木、小野、竹内)

防災タイムラインの使い方

1)自宅周辺の水害による想定危険度をチェック
2)家族構成に合わせた備蓄品、連絡先、避難先の確認
3)災害の危険が迫っている時に 防災行動開始のタイミングを通知

Yahoo!防災速報アプリのガイドに従って、自宅や周辺環境、世帯構成などを登録することで「防災タイムライン」を作成できます。

1)自宅の設定・想定危険度チェック(必須登録項目)

自宅や周辺の環境や同居者の状況の該当項目をチェックすることで、大雨などの水害発生時における自宅の想定危険度を確認できます。

2)行動開始のタイミング(必須登録項目)

想定危険度チェックで確認した内容をもとに、災害警戒時の行動開始のタイミングを選択します。この選択をもとに災害警戒時のプッシュ通知のタイミングが設定されます。

3)備蓄品の確認(任意登録項目)

同居している人の情報(人数・性別・年代)やペットを飼っているかどうかを入力すると、必要な備蓄品のリストを確認できます。備蓄品リストは、東京都が運営する東京備蓄ナビ(※2)の算出ロジックを使用しています。
※2:東京都「東京備蓄ナビ」

4)連絡先入力(任意登録項目)

緊急時に必要な連絡先や、避難の声かけをしたい近所の方の連絡先を確認し、入力します。

5)避難先入力(任意登録項目)

災害警戒時の避難先を登録します。最寄りの避難所だけでなく、実家や親戚、友人の家も避難先として登録できます。

防災は日頃の備えが大切です。事前に、自宅周辺の環境や世帯構成をもとに「防災タイムライン」を作成、大雨などの警戒時に適切な防災行動を確認しておきましょう。

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