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2021.09.10

「リモートワークを快適にする家具は自分で作る」デジタルファブリケーションが実現する未来とは

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新型コロナウイルスの感染拡大防止策のひとつとして、リモートワークという働き方が定着しました。これまではプライベートな空間だった自宅が、仕事をする場所となった方も多いのではないでしょうか?
ですが、誰もが自宅で仕事専用の部屋や十分なデスクスペースなどを確保できるとは限らないため、オン・オフの上手な切り替えや、快適なワークスペースづくりに悩んでいる方もいらっしゃるかもしれません。

ヤフーのコラボレーションスペース「LODGE」では、自分に合った家具の材料一式(キット)を選んで組み立てられるサービス「LODGE Remote Work Kit」(※1)を始めました。
※1 LODGE Remote Work Kit:
ヤフー社員がリモートワークで感じた課題をもとに家具を設計し、VUILD(ヴィルド)株式会社(家具作りを短期間で自在に行えるサービスを運営)にご協力いただき製品化。他の社員からも注文があるなど好評だったため、社内公開を経て外部向けサービスとして提供します。

自宅でのリモートワークを快適にする家具とはどういうものなのでしょうか? リモートワーク中心の働き方で生まれた家具への新しいニーズ、ニューノーマルにおけるものづくりに求められるものなどについて、担当者に聞きました。

  1. リモートワーク中心の働き方で生まれた、家具への新しいニーズ
  2. ヤフー社員が設計した、リモートワークを快適にするための家具
  3. リモートワークを快適にするために「1台多用途」の家具が求められている
  4. ニューノーマルにおける空間、ものづくりはどう変わるのか
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右からデザイナーの市川、中島。

市川 大翔(いちかわ たいしょう)
2016年新卒入社。デザイナーとしてYahoo!プレミアムなどを担当後、LODGEにてデザイン、企画などを主に担当。

コロナ禍で取り組んだこと、今後やっていきたいこと
「LODGEが新型コロナウイルス感染症の拡大防止のため休館したときには、LODGEの空間をVR化してツアーを実施したり、コラボレーションを生むためのアイデアコンペのイベント企画を行ったりしました。また、今回のリモートワーク用の家具キットを注文できるサービスのような、オンラインベースでできる企画立案やデザインの実装、グラフィック制作などを担当しています。
コロナ禍の今は、Zoomなどを使ったオンラインの良さを生かした取り組みが中心ですが、出社や対面イベントが可能になったときには改めて、オンライン・オフライン両方の良さを生かしたコミュニケーションの仕組みづくりに取り組んでいきたいです」

中島 慎太郎(なかじま しんたろう)
2016年新卒入社。デザイナーとしてPayPayフリマを担当。2021年4月からはLODGEも兼務し、企画とデザインを担当している。

リモートワークキットの取り組みについて
「これまでは、自宅以外の『第2の机』として、LODGEのようなスペースや、カフェなどで1時間くらい仕事をして帰っていく、という場が求められていたように思います。 LODGEはもともと、木を切り出して使ったシンプルな素材の家具が多く設置されていました。社員の働く場所が自宅中心になった今、今回の木材を使った家具キットには、自宅にいてもLODGEの雰囲気を感じてほしい、という思いも込めています」

リモートワーク中心の働き方で生まれた、家具への新しいニーズ

中島:
ヤフーでは2020年10月より、時間と場所にとらわれない新しい働き方に移行し、現在は新型コロナウイルス感染症拡大防止の観点から、多くの社員が在宅によるリモートワークを実施しています。自宅で長時間働くことで、
「腰痛がつらい」
「仕事部屋がないので押し入れで仕事している」
「仕事スペースはあるけど、家族が近くにいて集中できない」
などの課題が見えてきました。

そこで、今年2月に「自宅でリモートワークをする際にどんな家具が欲しいか」という社内アンケートを実施したところ、「家の中で場所を変えて仕事をしたい」「自分の働く細かいニーズに合わせて家具をカスタマイズしたい」という要望が共通してあがりました。

ヤフー社員が設計した、リモートワークを快適にするための家具

これらの要望をもとに、VUILD株式会社の方にサポートいただき、ヤフー社員6名のオリジナルリモートワークキットを製作しました。その一部をご紹介します。

1)自らの腰を助け、同時におもちゃ箱にもなってくれるスタンディングデスク

仕事中はブロックを積み上げてスタンディングデスクとして使えるので腰痛対策もバッチリ。仕事以外の時間は、おもちゃ箱として活躍するボックスにもなります。分けて使えば親子で作業できる台にもなり、子どもの成長に合わせてさまざまな使い方ができます。

2)ベランダの手すりをスタンディングデスクに変える! バルコニーブロック

こちらは中島が設計。作業の気分転換や、息抜きの場として愛用しているそうです。ベランダの手すりのサイズに合わせられ、組み合わせて幅を変えることができます。使わないときは積み重ねてコンパクトに収納することも可能です。

中島:
この1年で、仕事机や椅子などの仕事をするための家具選びに妥協しなくなったと感じています。去年の春に子どもが生まれ今年4月から保育園に行かせているので、そこから本格的にコロナ禍のリモートワークが始まりました。1日8時間くらい、同じところにずっといるので家の中でちょっと気分を変えたいなと思いました。
自宅が1階で庭付きなので、庭もちょっと楽しめる場所が欲しいと思い、ベランダで作業できる机を設計しました。昼休みや、作業が終わってひと息つきたいときに、気分を変えられるのがよかったですね。真夏や真冬はあまりベランダに出ないので、その期間は植物の鉢を置いて年中使いたいと思っています。

3)ベッドから出ることなく出勤・退勤できる NOOM(ヌーム)

こちらは市川が設計。「NOOM」というタイトルは、Zoomの「Z」が寝ているところからきているそうです。

市川:
中島も言っていたように、1日のほとんどの時間を家で過ごすようになるので、家の中でうまく気分転換ができたら、と思いました。たとえばメール返信などの事務的なことは今回作った机を使ってベッドで行い、グラフィックなどを考えるときはしっかり机で作業するというように、作業によって使い分けできたのがよかったです。
また、同じパーツで組み替えるとベンチにもなり、机も椅子も使わないときは解体してしまっておけます。「机は机」という用途が決まっていると、なかなか他の使い方ができませんが、この家具は気分に合わせて変えられることを意識しました。

中島:
ある社員が、持病のため長期間は椅子で作業し続けるのがつらく、ベッドでも仕事ができる家具を探していたそうです。でも、病院にあるようなベッドくらいしか見つからず、さすがに自宅では使いたくないなと思っていたとか。今回、市川が作ったこの家具が、機能・デザインともに要望に合っていたとのことで、とても喜んでもらえました。
「ベッドで作業ができる」機能の家具はあっても、それを自分の居住環境に合う見た目にしてほしい、というカスタマイズはなかなかできないことも多いので、この家具がその要望とマッチしたことがうれしかったですね。

VUILD株式会社 ワークショップデザイナーの戸倉一さん:
今回は、ヤフーさんの社員6名のオリジナルリモートワークキットの製作をお手伝いさせていただきました。ヤフーのみなさんは、ご自身の在宅ワークのリアルなシーンを想像しながらも、同時にそれを他の人が使うシーンも想定していたことが印象的でしたね。誰にとっても使いやすいデザインではなく、でも自分のためだけにデザインした一点物でもない、その中間を作ろうとするユニークさに、これからの家具の新たな可能性を感じました。

リモートワークを快適にするために「1台多用途」の家具が求められている

市川:
今回の家具作りをサポートいただいたVUILDさんが登壇されていたイベントを拝見したのですが、「コロナ禍の状況自体が予想もできなかった変化で、これからは、常に変化していくことを前提にしたにものづくりをする必要がある」という趣旨の話がありました。
ブロック型のおもちゃのように組み合わせて自由に壁や机、椅子をつくることができる「doredo」というサービスを例にあげ、「間取りという概念も古くなるかもしれない」という言葉があったのが印象的でした。
今回の企画でも、「1台多用途」がほとんどの家具に共通していました。私たちも、理想の環境に近づけるために自分で調節できる余地がある家具が、今後はさらに求められていくのではないかと感じています。

中島:
「大量に作られた物の中から自分が選ぶ」「いいブランドのこの商品を持っていることに価値がある」ではなく、「自分が参画して買ったものに価値がある」という方向への価値観のシフトが起こりやすくなっているような気がします。自分で作ることを可能にするツールが家具以外の分野でも身近になっていくといいなと思います。

今回作った家具は、バリエーションがもっと出せれば、ネットを通じた買い物の形や物づくりの理想により近づけると思っています。
また、市川が設計したベッド用デスクのように、自分のニーズを満たすために作ったものが他の課題を抱える人にとって求めるものだったという発見があったのも、このような取り組みのおもしろさだと思います。

ニューノーマルにおける空間、ものづくりはどう変わるのか

市川:
私たちはこれまで、東京・紀尾井町オフィス17階のこの場所に集まる人同士のコミュニケーションや働き方の最適化に取り組んできました。ただ、これまでのように人が1つの場所に集まる機会は減少すると思っています。
これからは、各々が働く環境を自らデザインできる手段を提供することが、ニューノーマルにおける空間づくりの選択肢の1つになるのではないでしょうか。

また、LODGEはITやソフトウエアの文脈から少し離れた分野のフロントランナーたちと協業することでイノベーションの種を見つけていく役割も担っています。今回の取り組みが、ソフトウエアの会社が建築の分野と組んで何かものを起こす取り組みの1つのきっかけとなればと思います。

中島:
デジタルファブリケーション(※2)が私たちの暮らしや街を作るくらいまで成熟してきたと感じています。たとえば、今回ご協力いただいたVUILDさんの「まれびとの家」(※3)は、2020年のグッドデザイン金賞を受賞されましたが、デジタルファブリケーション技術をフル活用して家が建つ、というのはとても印象的でした。
※2 デジタルファブリケーション:
レーザーカッター、3Dプリンターなどの工作機器を用いて、デジタルデータを元に素材の加工をする技術のこと
※3 まれびとの家
3D木材加工機「ShopBot」と地元の木材を使い、製作を地域完結させることで、これまで避けられなかった長距離輸送や環境負荷、時間、コストを削減することが可能になった。まれびとの家は、半径5キロ以内で素材の調達から製造まで全部完結させた。

VUILD株式会社 戸倉 一さん:
コロナ禍で、生活環境と働く環境が家の中に共存するようになった方にとっては、リズムの切り替えがうまくいかず、心身ともに疲れを感じていらっしゃる方もいるようです。これまでは、自宅から職場など、場所を移動することでリズムの切り替えができていましたが、移動がなくなったため、同じ空間内でリズムを切り替えるスイッチが必要です。
私たちは、家具がその役割を果たす一つになりえるのではないかと考えています。ただ、既製の家具は「暮らし」をベースに考えられているものが多く、一方で多くのオフィス家具はオフィスのスケールに合わせてつくられているものが多いです。これらの中間にある、「暮らしに溶け込みながら仕事もできる」、まさに今回のヤフーさんと作ったリモートワークキットのような家具が、これからは求められていくのではないかと思います。

VUILD株式会社 デザイナーの黒部 駿人さん:
今回はヤフーの社員の方が自宅で使用するためのリモートワーク用キットの製作でしたが、今後はオンラインの良さもリアルの良さも兼ね備えた、人が集まることのできるコミュニティースペースなども同時に考えていきたいと思っています。
働き方や環境はそれぞれの企業によっても違いますし、所属する人たちの家庭環境によっても異なります。今回の取り組みをきっかけに、さまざまな企業の働き方にあった家具や空間の個別解を見つけることを、ワークショップなどを通じてサポートさせていただきたいですね。

市川:
今回の家具作りに使わせていただいたVUILDさんのサービスでも、先ほどお話した「まれびとの家」と同じ機械が使われています。使い方によっては家を建てられるような設計システムが誰でも気軽に扱えるようになったことにワクワクしますし、ここまできたのか! と感動さえ覚えています。

また、今後は多くの分野でプラットフォーム化が進んでいくのではないかと考えています。たとえば、金属加工だったらこういうプラットフォームがあるのでそれを使って加工ができる、ソフトウエアの分野では誰でもディープラーニングを使って解析できる、というようになっていくのではないでしょうか。そうなったときに初めて、本当に簡単に誰もが自由自在に設計ができる世界になるのではないかと思っています。

そのときには、サポートできる人が各拠点にいたり、オンラインでつながったり、ツールを使いこなせない人も、必要なサポートも受けながら「自分が作りたいもの」を作れるような補完的な仕組みを用意していくことも大切なのではないかと思っています。

中島:
私たちはこのようなデジタルファブリケーションを使った企画を立てたり、自治体のDXをサポートしたりすることで、新しいコラボレーションやサービスの種を探すことを目指しています。これまではコラボレーションのハブとしてLODGEという場を使って活動していましたが、活動の場をオフラインからオンラインに移行したこれからは、場を使わずにヤフー社員一人ひとりの創造性や個性が活性化される方法を模索していきます。

また、多様化する働き方のニーズに合ったオフィスの形についても考え、個別化したリモートワークの環境を自ら作れる手段を提供するなどの課題解決にも取り組んでいきます。

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