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2021.07.22

「天気予報が外れることがあるのはなぜ?」上手な予報の見方

「天気予報が外れることがあるのはなぜ?」上手な予報の見方

みなさんがテレビやアプリなどで、ほぼ毎日目にする天気予報。「天気予報では雨マークが表示されていなかったのに急な雨が降ったのはなぜ?」など、「天気が外れた」と感じたことがある方もいらっしゃるかもしれませんね。

今回は、Yahoo!天気・災害に予報データを提供している、気象会社「ウェザーマップ」で予報業務を担当している原田さん、予報開発を担当している渡邊さんに、
「天気予報はどのようにつくられているの?」
「天気が外れてしまうことがあるのはなぜ?」
「天気予報を上手に見るコツは?」
などの質問に答えていただきました。

  1. 疑問その1:天気予報はどのようにつくられているの?
  2. 疑問その2:天気予報が外れてしまうことがあるのはなぜ?
  3. 疑問その3:天気予報を上手に見るコツは?
  4. 今以上に「当たる」天気予報のために、そしてわかりやすくお伝えするために
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(右から、原田さん、渡邊さん)

原田 雅成(はらだ まさなり)さん

2009年に気象予報士の資格を取得後、気象観測所や民間気象会社で航空気象観測、航空気象予報、気象観測器の点検・整備などに携わる。2018年からウェザーマップに所属し、予報センターで予報業務を担当している。

好きな二十四節気(にじゅうしせっき)
夏至(げし):日の出から日の入りまでの時間がもっとも長い日。
「暑いのが大好きなので、毎日30度超えていてもいいくらいです! 太陽が早く昇って、遅くまで昇っていてくれるのも、とてもうれしいですね。寒いのはとても苦手です」

渡邊 正太郎(わたなべ しょうたろう)さん

2003年、涼しい夏のおかげで(暑いのがとても苦手だそうです)、無事に気象予報士試験に合格。2004年からウェザーマップでTBSウェザーセンターのサポート業務を始める。大学院卒業後の2009年に入社し、学生時代に学んだ統計学を活かして「さくら開花予想」や独自予報の開発を担当している。

好きな二十四節気
大寒(だいかん):寒さがさらに厳しくなり、1年中で最も寒い時季。
「寒いのが純粋に好きなのと、ちょうどそのころに生まれたからというのも理由です。20度以上になると暑く感じるほどなので、原田とは逆に暑さに弱いです」

※二十四節気(にじゅうしせっき) 日本では平安時代から使われている、太陽の位置を元に1年を24等分した暦のこと。季節の変化をさらにきめ細かくとらえることで、農業の目安などとして使われていました。

疑問その1:天気予報はどのようにつくられているの?

原田さん:
まず、気象庁から送られてくる予報データを渡邊が所属している技術開発部で天気予報の形に変換してもらいます。その予報データに、私たち予報センターの担当者が気象予報士としての最終的な判断を入れたものがユーザーのみなさんのもとに「天気予報」として届く、という流れです。

渡邊さん:
気象庁のスーパーコンピューターで計算される予報データは、まだ「晴れ」「曇り」などの天気予報の形にはなっていません。
日本付近を5kmや20km間隔の格子点(以下「グリッド」)で表現して、それぞれのグリッドについて「湿度が何%で気温が何度、気圧がどれくらい、風が何メートル」なのか計算したデータが、以下のような数字やアルファベットの羅列の状態で送られてきます。

私はこのデータを処理して天気予報に変換する仕組みを開発しています。たとえば、グリッドに東京都・港区がきれいにおさまりきらなかった場合は、周辺の何点かのグリッドデータをもとに、「晴れ」や「曇り」などと推定して港区の天気予報データに変換する、というようなイメージです。

グリッドとは、下の画像のような等間隔のものです(画像は17日予報用の約60km間隔のもの)。このグリッドが東京にちょうど重なるものがないので、周囲の4つのグリッドのデータを使って予報を決めるイメージです。

原田に渡す予報データも天気予報の形にはなっているのですが、「今は雨が降っているけど、もうすぐ晴れる」などの細かなデータは、スーパーコンピューターで計算すると時間がかかり、どうしてもタイムラグが発生してしまいます。そのため、そのような細かな予報の調整を人手でやってもらっています。
日本全国を5キロのメッシュで分割すると約2万地点くらいになるのですが、それをもし1キロメッシュで分割すると約40~50万地点くらいになってしまいます。そうなると、すべての地点について人の手だけで予報するのは難しいです。そのため、できるところまではプログラムや統計モデルを使ってコンピューターで処理し、できるだけ人の負荷を減らして、さらにきめ細かに予報できるようにしたいと思っています。

また、コンピューターには、どういう予報が当たっているのか、外れているのかを教えてあげる必要があります。たとえば、雨については、「1ミリ以上降ったら雨」「1ミリに満たなかったら雨は降らない」という「しきい値」を決めています。でも、私たちの感覚では、0.8ミリの雨でも「けっこう降った」という感覚になってしまうんですね。
ただ、「0.1ミリ以上降ったら雨」というしきい値にすると、雨が降っている地域がかなり多くなってしまいます。このように細かな単位で、人間の感覚にできるだけ近い形で予報を出すための調整を行っています。

原田さん:
本来、全国分の予報を確定するのはとても大変ですが、渡邊たち技術開発担当がいい予報データを渡してくれるので、全国分の予報を直すことはありません。もらったデータの中から、「ここが外れている」とか「ここがもうすぐ雨が降りそうだけれど曇りの予報になっている」などということを察知して、そこに修正を加えるのが私たち予報センターの担当者の仕事です。

変換してもらった天気予報を修正して、ユーザーさんが見られるようにデータを送信する作業は、常に10分くらいで終えることを目指しています。
「全国分の予報を10分でお届けしている」と聞くと、かなり短時間に感じる方もいらっしゃるかもしれません。でも、その10分の間に天気予報を開いた方は、修正前の予報をそのまま見てしまう可能性があります。
たとえば、今は雨が降っているけど、コンピューターで処理した結果では「晴れ」という予報が出ていたとします。それを私たちが「これは間違えているから雨予報に変えよう」と修正し、10分以内に最新の予報を送ったとしても、その10分の間にアプリを見た方にとっては「天気予報が外れた」という体験になってしまいます。そのような「がっかり」体験を少しでも減らすためにも、常に「できるだけ早く最新の予報をお届けしなければ!」と思っています。

天気予報はどのようにつくられているの?
・気象庁のスーパーコンピューターで予報データを計算
・気象庁から送られてきた予報データを天気予報の形に変換
・予報データに気象予報士としての最終的な判断を入れる
・ユーザーのもとに「天気予報」として届く
 →変換後の天気予報を修正し、送信するまでは約10分

疑問その2:天気予報が外れてしまうことがあるのはなぜ? 

1)グリッドがちょっとずれただけでも予報が大きく変わってしまうから

原田さん:
地図を平面上に四角の枠で表現している「グリッド」が予報データのもととなると先ほどお話しましたが、この四角は「雨」、その隣の四角は「曇り」というように、1つずつに予報のデータが反映されています。このグリッドがたとえば2つずれるだけで、天気予報が大きく変わってしまうことがあるんです。
たとえば、東京23区で「西の方は雨」という予報だったときに、23区の真ん中くらいの位置にお住まいの方には「曇り」予報を出していても、グリッドが少しずれたことで雨雲が少しかかってしまうと、そこにお住まいの方には「曇りだったのに雨が降って、天気予報が外れた」ことになってしまいます。

天気予報を予報センターで作成している様子

2)予報期間によっても的中率が変わるから

原田さん:
また、天気予報が「当たる」「外れる」については、期間の問題もあると思います。
たとえば、月曜日に次の日曜日の予報を「晴れ」と出したとします。でも、実際は雨が降りました。これは月曜日の段階に出した予報では外れていますが、前日の土曜日には「あす日曜日は雨だよ」という予報に変わっていることもよくあります。実は、前日に出される翌日の天気予報は85%前後当たっているんですね。一方で、1週間前の予報の的中率は70%前後です。そのような予報の期間も確認していただけたらと思います。

3)雨の考え方、感じ方の違いで「外れた」と感じてしまうから

原田さん:
もう1つは、たとえば雨の考え方です。たとえば、気象庁が「曇り」マークを明日につけていても雨が降ったということがけっこうあります。でも、気象庁は1ミリ以上の雨が降らないと予報に傘マークをつけないので、その基準では当日0.5ミリの雨が降っても「曇り」の予報が正解です。ただ、1ミリ以下の雨が降っても、実際にはかなりしっかり雨を感じるため、「雨が降った」「予報が外れた」という感覚になりやすいかもしれません。

4)予報するのが難しい時季や地域があるから

原田さん:
実は、予報を担当している私からすると「これは当てられないな」ということもよくあります。 地域によっても、たとえば沖縄の天気を予報するのは難しいです。熱帯では積乱雲が1つできただけで、急な雨がザッと降ってしまうことがその理由の1つです。さらに、その雨が海の上に降らずに島に降るとみんながぬれてしまうので「天気が外れた」となります。そのような意味でも予報が難しいですし、外れやすい地域だといえると思います。

渡邊さん:
ユーザーさんが、当たった、外れたと感じるのは仕方ないですし、当然のことだと思っています! 実際、私も「外れた」と思うことはあります…。
ただ、「雨が降るか、降らないか」の2択だったり、「晴れ、くもり、雨」の3つだけだったりなど、予報結果のパターンを単純化して考えてしまうと、より大きく外れたと感じる方も多いかもしれません。「絶対に雨が降る」のか、それとも「もしかしたら少し降るかもしれない」のかなど、細かなニュアンスをできるだけ詳しくお伝えすることで、外れた感覚を少なくできるのではないかと思っています。

また、予報が難しいこともたびたびあります。たとえば梅雨時期は、冬場や本格的な夏場に比べて予報が当たりにくいですね。雨が降るかどうかは低気圧が来るかどうかで判断します。低気圧は西から東に動いてくるので、外れるとしても降り始めの時間が遅くなったり早くなったりする程度です。でも、梅雨前線は南北に動くので、それが来ないということは、そのあと雨が降らないので、結果、「雨が降る・降らない」という外し方になってしまいます。 さらに、梅雨前線の上の北側は意外と晴れることもあるので、「雨予報だったのに晴れた」とさらに大きく外れた感覚になってしまう方も多いと思います。特に夏至近くなどは太陽が強いので、少しでも晴れるととても暑く空も明るいので「晴れた」と感じやすくなるのではないでしょうか。

このように、予報の範囲がずれてしまうこともありますが、そのようなときは、「少しずれてしまうかも」ということはわかるので、その情報も含めてどのようにお伝えしていくかはまだ難しい部分だと思います。

天気予報が外れてしまうことがあるのはなぜ?
・グリッドがちょっとずれただけでも予報が大きく変わってしまうから
・予報期間によっても的中率が変わるから
・雨の考え方、感じ方の違いで「外れた」と感じてしまうから
・予報するのが難しい時季や地域があるから
 ※たとえば梅雨時期は、冬場や本格的な夏場に比べて予報が当たりにくい

疑問その3:天気予報を上手に見るコツは?

1)灰色の雲「くもり」は雨が降る可能性のある「くもり」

渡邊さん:
ヤフーさんに提供している予報では「くもり」アイコンを白い雲と灰色の雲に分けて、雨が降る可能性を表現しています。

白い雲は、「雨は降らないくもり」、灰色の雲は「雨の可能性があるくもり」と使い分けています。灰色の雲のときの「曇り」では雨が降ったら、予報が当たったと思っていただきたいです!
もし降水確率が表示されていなくても、この灰色アイコンを見たら気づいていただきたい、という思いを込めています。「晴れ」「曇り」「雨」だけでなく、このような灰色の雲を入れることで、より細かな予報をお伝えできればと思っています。そうすることで、同じ曇りでも、灰色の雲が表示されている日だったら、「もともと雨が降りやすい曇りの予報だったんだな」などと受け取っていただけたらと思います。

原田さん:
実は、この「灰色の雲」を使って、私たちは翌日の天気予報にメッセージを込めています。たとえば、夏は東京でも夕立があることが多いですが、夕立は半径や直径でいうととても小さい雲が原因で起こります。そのため、コンピューターでは「何区で夕立がある」とまでは当てるのが難しいです。ただ、可能性として朝の段階で夕方の東京や関東に「晴れ・灰色の雲」マークをつけることがあります。おそらくそのときの降水確率は30%くらいで表示されているはずです。 つまり「晴れ・灰色の雲」は「雨の可能性がある晴れ」ということです。それを当日の朝早い段階、または前日の夜から予報をあえて変えていることがあります。これは「明日、夕立の可能性がありますよ」というメッセージをお伝えしているのですが、まだなかなかこの灰色の雲が認知されていないので、少しでも多くの方に、このメッセージに気づいていただけるとうれしいです。

(ちなみに、原田さんと渡邊さんは、降水確率が30%以上だったら傘を持って行くそうです)

2)週間天気、17日予報の「信頼度」にも注目

渡邊さん:
17日間予報もヤフーさん独自の予報です。2週間以上先ということで、予報の当たる確率は直近よりは下がってしまうのですが、だいたいの傾向をつかんでいただくには使い勝手がよいと思います。梅雨時期は、梅雨がいつ明けそうか予想するのにも使われているんですよ。

原田さん:
また、Yahoo!天気アプリの週間天気と17日間予報には「信頼度(※)」を表示していますので、その見方をぜひ知っておいていただきたいですね。

※信頼度:雨が降る/降らないについて、今後予報が変わる可能性を表します。
A:予報が変わる可能性は低い
B:予報が変わる可能性はやや低い
C:まだ予報が変わる可能性があるため、引き続き確認してください
気温の揺れ幅:最低気温・最高気温の予想幅で、この範囲に入る確率は70%です。

3)雷の可能性が少しでもある、雷マークにも注目

ヤフーさん用の情報では、雷情報も重要視しています。週間予報の先の日や、17日間予報も含めて、少しでも雷の可能性があればマークをつけています。
理由は、雷のときは外にいる方はびっくりしてしまいますし、どこか安全な場所で雨宿りをする必要があるからです。また、雷に打たれて亡くなってしまう方もいらっしゃいます。晴れている日の雷雨は急に降りだすため、ピンポイントな場所を予報することは難しいのですが、できるだけ、雷の可能性がある地域にはマークを表示していますので、確認してみてください。

天気予報を上手に見るコツは? 天気マークは気象予報士からのメッセージ
・白い雲は、「雨は降らないくもり」、灰色の雲は「雨の可能性があるくもり」
・雷の可能性が少しでもある、雷マークにも注目
・週間天気、17日予報の「信頼度」も確認する

今以上に「当たる」天気予報のために、そしてわかりやすくお伝えするために

渡邊さん:
たとえば、東京が晴れの予報でも、横浜が雨の予報だったら、「もしかしたら東京でも雨が降るかもしれない」と思ってほしいです。視野を空間軸や時間軸にも少しだけ広げて見ていただければと思います。
週間予報や17日間予報など、先の予報になればなるほど、コンピューターでも、経験を積んだ予報士でも、予報することが正直難しくなってきている、全部把握するのはなかなか難しい時代に突入している、と感じています。
天気予報には防災の観点があるので、めったにない「1時間に100ミリの雨が降る」というような珍しい現象は、特にしっかりと予報する必要があります。ですが、統計モデルはよくあることを過去の事例をもとに分析するのが得意な方法なので、めったに起きない状況の予報はあまり得意ではありません。でも、たとえば台風が来たら、ここ十何年で起きなかった事象が起きる可能性もあります。そのようなときでも正確な予報データを出せるよう、制御や調整を続けていきます。

原田さん:
気象庁から送られてくるデータ自体は同じなので、そこをどう調理するかが私たち気象会社の腕の見せ所です。予報するだけでなく、その内容をいかにわかりやすくお届けするかも含めてが「予報」だと思っています。
また、ヤフーさんの天気予報に「灰色の雲」「晴れ・灰色の雲」マークがあるのは、予報する上でとても大きいですし、先ほどお話した私たち予報士からの「メッセージ」も込めやすいです。天気が変わりやすい時期の「晴れ・灰色の雲」の予報があったときは、ぜひ「今日は晴れているけど雨が降る可能性がある」と思っていただけたらうれしいです。

また、Yahoo!天気アプリでは、ユーザーさんに今の天気を投稿いただけるようになっていますが、実はこのデータも予報の参考にさせていただいています。たとえば、「急な雨(1ミリ以下)が降ってきた」「雨がみぞれに変わった」などのタイミングは、この投稿結果で気づけることも多いです。 もしかしたら、お住まいの地域ではあまり投稿数がなく、投稿されるのをためらわれている方もいらっしゃるかもしれません。でも、たとえ1票でもとても参考になる情報ですので、ぜひ、どんどん投稿していただきたいです。私たちもいただいたデータはご批判も含めてしっかり受け取って、さらに予報が当たるよう改善につなげていきたいと思います。

(ユーザーのみなさんの投稿結果は予報センターでも確認し、予報にも反映されています)

天気実況について

Yahoo!天気アプリでは、今いる場所の「いまの天気」を実況することができます。
また、他の人に伝えたいコメント(「雲が多くなってきました」「薄日が差しています」「風が強いです」「昨日より暑いです」など)も投稿できます。

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