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2020.12.09

PayPayを活用した地域活性とデータ分析事例

PayPayを活用した地域活性とデータ分析事例

2020年11月にオンラインで開催した「Yahoo! JAPAN DATA Conference 2020 -online-」では、データ活用の具体的な事例にもとづき、6つのセッションを行いました。今回はそのなかから、「PayPayを活用した地域活性とデータ分析事例」のレポートをお届けします。
全国で地域経済活性の施策として、自治体とPayPayが協力した地域経済活性のキャンペーンが行われています。PayPayによるキャンペーンの強みと、ヤフーが提供するデータ分析による効果についてご紹介します。

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(右から、PayPay株式会社営業統括本部 営業本部 中四国ブロック ブロック長の田淵 治徳さん、同社取締役・副社長執行役員COO馬場 一さん、ヤフーデータソリューション事業本部 パブリックエンゲージメント部 部長 大屋 誠)

PayPayを活用した地域活性

馬場さん:
PayPayの2020年10月19日現在でのユーザー数は3,300万人以上です。利用可能な店舗も、約260万カ所以上からお申し込みをいただいています。私たちはあらゆる場所でPayPayをご利用いただけるようにしたいと取り組んできました。
その結果、今では電力会社、水道局などの請求書をPayPayアプリでスキャンして支払うことも可能になっています。全国の自治体とも、例えば、市役所や市営プール、税金の支払いでもPayPayが使えるようにするなど、新たな場所で使えるような取り組みを積極的に進めています。

また、今年は新型コロナウイルスの影響で経済の動きが鈍ってしまった面があります。経済を少しでも元に戻すために、PayPayがこれまで行ってきたキャンペーンを、地元の中小企業の方、個人事業主の店舗などと一緒に実施する取り組みを始めています。

1)自治体と共同でキャンペーンを実施
PayPayのホームページ上でお客さま、自治体の方からのいろいろなご意見、ご要望をうかがえるフォームや、キャンペーン内容を紹介するようなページをつくっています。

現在、「あなたのまちを応援プロジェクト」というプロジェクトを全国で実施しています。 1つは、PayPayを地元のお店で使っていただくと、5%、10%、30%(自治体により異なる)のPayPayボーナスを付与する、地域経済の復興のためのキャンペーンです。 もう1つは、マイナンバーカードの促進をするためのキャンペーンを、国から付与されるマイナポイントに5,000円プラスして、自治体が1,000円~2,000円相当をPayPayボーナスとして上乗せするキャンペーンです。
これらのキャンペーン実施には、45都道府県の約260の自治体が興味をもってくださいました。

そのなかで、例えば岡山市では最大20%戻ってくるサマーキャンペーンを8月に実施しました。PayPayが使える対象店舗でお買い物したり、サービスを受けていただいたりすると20%のPayPayボーナスが付与されるキャンペーンです(例:5,000円の買い物をすると1,000円相当のPayPayボーナスが付与される)。

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例えばある自治体では、これまではプレミアム商品券を発行して経済の活性化を狙っていましたが、その商品券を利用できる店舗が少ないことが課題でした。一方でPayPayは加盟店数が多いので、住民の方がどのお店でもお買い物ができることがよい効果につながったのではと思っています。
また、プレミアム商品券は市側が紙に印刷をして郵送したり、お店の人は受け取った商品券を市役所で現金に換えたりという手間がかかります。大手の広告代理店や旅行会社の手数料も必要になることもあります。
これらの作業の手間や費用などを減らせることも、PayPayを利用する大きなメリットとして感じていただいているようです。

私たちは、これらのキャンペーンのプロモーションについても、お役に立ちたいと考えています。ある地域では、キャンペーン前とキャンペーン後では、決済の回数、取引額が約3倍になり、参加した半分以上の店舗で売り上げが伸びたという結果になっています。こちらについてはのちほど、ヤフーの多様なサービスから得られるビッグデータを活用し、企業や自治体の課題解決を支援するサービスである「データソリューション」を使った効果検証をご紹介させていただきます。

2)税金、公共料金の支払いをスムーズに
税金や公共料金を市役所の窓口で払えるようにするため、市役所、区役所、町役場、村役場でもPayPayを使えるようにしています。現在では、全国467自治体の住民税、固定資産税、自動車税などの支払いもPayPayでできるようになっております。

また、動物園や市民プールなどの小口決済にもご利用いただいています。

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PayPayアプリで請求書をスキャンするだけで支払いができますので、コロナの影響でできるだけ外出の回数を減らしたいと考えている方にも、安心してご利用いただけるのではないかと思います。職員のみなさまや、住民の方の新型コロナウイルス感染リスクの減少につなげられればと考えています。

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今後は、自治体の窓口で現金やクレジットカードを渡したり、暗証番号のボタンを押したりすることなく、スマホでのQRコード決済など、接触がない決済が主流になっていくのではないかと思います。
また、PayPayで一度支払うと次回からは継続的に支払えるようになり、毎回請求書をスキャンする必要もなくなるなどの仕組みを今後は実装していく予定です。それにより自治体の方が請求書を送る時間や請求書用紙の節約ができればと思っています。

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今回は、岡山県と取り組んだ事例をもとに、ヤフーのデータソリューションで検証した結果もあわせてご紹介したいと思います。

岡山市とPayPayの取り組み

田淵さん:
岡山市が課題として捉えていたのは、コロナ禍での市内の経済ダメージが非常に大きかったということです。今年4月の時点で全国と比較してもより大きなダメージが出ていたということを受け、迅速な形で市内の経済対策を行うために、スマートフォン決済で20%還元のキャンペーンを行うということを、市長が早急に決めてくださいました。
対象店舗数や利用者数が多い、加盟手続きのスピードが速い、事業者の負担が少ないなどの点から、今回の取り組みにおいて数ある決済事業者からPayPayを選んでいただきました。このキャンペーンでは結果的に、のべ26万人の方にPayPayで決済をしていただいて、対象の加盟店舗数としては岡山市内で5,900店舗にご参加いただきました。非常に多くのユーザー、店舗でキャンペーンを活用いただくことができました。
PayPayは岡山にも営業所を構えていますので、約1カ月間、何度も打ち合わせをしていただくなど、岡山市から多大なるご協力もいただき、6月の上旬から検討を開始し、8月1日にはキャンペーンを開始できました。

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大屋:
次に、取り組みキャンペーンのデータ分析の内容についてご紹介します。
PayPayから岡山市における決済データをプライバシーポリシー(個人情報に関するお客さまとのお約束)や契約に基づき、適切に処理した形式で、ヤフーにご提供いただきました。具体的には、決済のエリア、決済の時間、決済金額、店舗の業種情報などです。
PayPayはYahoo! JAPAN IDを活用して利用していただいているユーザーがほぼ大半ですので、私たちはこれらの利用データに対して、性別、年代、居住地などのデモグラフィックの情報を追加し、岡山市にはPayPayおよびヤフー、それぞれのプライバシーポリシーに従い、かつユーザーの許諾に基づいた範囲で十分に統計化した形で、レポートを提供させていただいています。

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今回のキャンペーンでのPayPay利用総額は、キャンペーン実施前の7月を100とした場合、8月で227%、9月で129%という非常に大きな伸びを確認できました。

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田淵さん:
9月の129%の伸びについては、8月のキャンペーン期間中にPayPayを利用していただいたことでPayPayボーナスが特典として9月に付与されますので、それを使っていただいたこと、そしてこのキャンペーンを通じてPayPayが使えるお店、PayPayの利用者が増えたことが寄与しているのではと考えています。

大屋:
次に、1回当たりの決済金額を見てみると、こちらも約12%伸びていることが確認できました。

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田淵さん:
キャンペーンを使って「キャンペーン中なので、普段よりランクが1つ上の商品をお買い上げいただくのはどうでしょう」というような接客を店頭でもしていただいた事例などもあり、全体的に購買意欲がキャンペーンによって高まったと言えると思います。

大屋:
次に、ヤフーの情報を付加した形での分析の結果です。
まず、岡山市民の方の利用総額の増減を見てみると、8月が211%、9月も124%ということで、同様に伸びています。今回については市外の方も8月が201%、9月は121%で、同様に伸びており、市民・市外の利用分析も対応できます。たとえば観光の施策などにおいても、また違う形での分析ができるのではないのかと考えています。

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次に年代です。高齢者層、60代、70代の利用総額の増減率を見てみると、8月における全年代での伸び率が208%に対して、60代が226、70代は285%となっていて、9月も同様に伸びているのがわかりました。

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田淵さん:
最初は高齢者の方にもお使いいただけるのか、岡山市からもご心配いただいていました。今回のキャンペーンを実施して年代別の利用状況が把握できたことは、効果、データ分析という部分で非常に大きかったと考えています。

大屋:
最後に、事業別の利用総額の増減率です。サービス、飲食、小売り、娯楽、交通のなかで小売りが非常に伸びています。

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田淵さん:
実際の決済の回数、総額では、スーパー、コンビニが多いのかなと思っております。また、キャンペーンをきっかけとした消費意欲が、小売店のところではダイレクトに出てきたのはないかと思っています。
交通の部分だけ伸びがあまりないのですが、タクシーの利用者の方に向けた分かりやすい訴求ができていなかった部分は反省点です。

中心部エリアの詳細分析

大屋:
次に、エリアの詳細分析として、岡山市の駅の東側だけに絞った形でのデータ分析もさせていただきました。

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田淵さん:
このエリアは岡山の中心部です。駅、この東側のほうに新幹線の駅からつながっていまして、地下街があり、大手のデパートや飲み屋街などがひしめき合っているというような感じです。

大屋:
ヤフーのサービス上で位置情報の利用を許可しているユーザーのデータを統計化した人流データを基に、この岡山駅東側にどのくらい人が来ていたかを7月、8月、9月とそれぞれ平均値を出したデータです。

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実は、8月は7月と比べると10%、9月と比べると15%ぐらい数値としては落ち込んでいるといった状況になっています。これはおそらく新型コロナウイルスの影響や、8月はとても暑い時期だったことが影響したのではないかと考えています。
キャンペーンで比較的売り上げが大きかった業種に絞り、飲食店、居酒屋、衣服、靴、食品スーパーに対して、それぞれ7月対比といった形で伸び率を見てみると、中心街ということで衣服、靴の伸びというのが非常に高い状態が見受けられます。

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田淵さん:
駅前ならびに東側の中に、大きなデパートが2つあるということと、あとはショッピングモールも1つあります。地下街なんかもありますので、アパレル関連の店舗が多いエリアです。

大屋:
衣服、靴のところをもう少し深掘りしてみます。どの年代においてもキャンペーンのときに、大きな伸びがあるといったことが見受けられます。そして堅調に9月も数値が伸びているという状況と、女性はキャンペーン期間中、前月比400%というかなり大きな伸びがあり、このキャンペーンを機にいろいろと買い物をしようというニーズが見受けられました。

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伸びていた20代女性と60代女性では、実は少しパターンが違いましたので、20代女性と60代女性で岡山市と岡山市外の在住者の効果を比較してみました。
1)20代の女性
7月を100%とした場合に対して、岡山市内の人は837%ということで、8倍強の伸びが出ている状態です。9月も266%で、20代女性の方がこのエリアでPayPayを使っていただいていることがわかりました。

2)60代女性
7月と比較して、8月は岡山市の方は337%、市外の方は5倍強伸びていました。20代女性では市内の方がたくさん消費されていただいたようなんですけど、60代女性は、市内だけでなく市外の方もこのキャンペーンを使っていただいたことがわかりました。

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今回分析してみて、キャンペーンを実施するにあたっても、データ分析で市内、市外や年代まで見ることで、より消費者が想像できるのではないかと思いました。

田淵さん:
今回、PayPayの利用頻度がとても高かったという結果も出まして、岡山市からも非常に好評をいただくことができました。
実施前は、高齢者の方々がどれほど使ってくださるのだろうかというご心配もあったんですけれども、そこの伸び率が明確になったこと、市外在住の方がどれぐらい買い物をされたかも明確になったということも評価をいただきました。この2点については、PayPayだけのデータではなくて、ヤフーとのデータが連係することによって明らかになったと思っています。また、1回当たりの決済金額、決済単価も確実に上がり消費自体が促進できたこともわかりました。12月から1月の年末年始にも、岡山市のキャンペーン第2弾の実施が決定しています。

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馬場さん:
今回の取り組みでヤフーのデータソリューションを利用したことで、人口や人の流動のデータと合わせて分析でき、人の流動が減っているのに決済回数が上がったのは、明らかにキャンペーンの効果だということが分かりました。汎用的なヤフーのデータは、取り組みの効果を比較するためのデータとしてとても有用だと思いました。
今回は、岡山市、PayPay、ヤフーのデータソリューションの情報をうまく組み合わせることによって、より正確な正しい効果測定が実現できたと思っています。

キャンペーンに参加いただいた店舗からは、以下のようなお声をいただきました。
「今回のキャンペーンはお客様にとっても事業者にとってもお得で、コロナ渦からの沈んだ気持ちから、購買意欲や消費の楽しさなどポジティブな気持ちを思い出させてもらえるものとなりました」
「20%という大きいポイントバックでお客様の購買意欲・外食のきっかけになったと思います。ポイントバックの金額を見てうれしそうなお客様のお顔を見てこちらも元気になれました」
「コロナ禍でのキャンペーンで店舗の認知も上がり新規のお客様を迎えられました。また、売上高も回復途上でしたが、おかげさまで前年度並を確保できました」

これからもWithコロナ時代は続くことが予想されます。地方自治体の方や、いろんな企業の方が、これからデジタル化を進めていくときに、すべて自分たちでやるのはかなり難しいと思っています。今後も、PayPayやヤフーのデータソリューションをご利用いただくことで、デジタル・ガバメント(IT・デジタル化を進める取り組み)、デジタルカンパニーを一緒につくっていきたいと思います。

大屋:
私たちもPayPayと一緒に、ユーザーのみなさまに安心してご利用いただき、社会にも貢献するというソリューションをしっかり磨いていきたいと思っています。

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