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2020.12.04

「緊急事態下でも、命を守るためのサービスを絶対に止めない」ヤフーのBCP

「緊急事態下でも、命を守るためのサービスを絶対に止めない」ヤフーのBCP

今年は、新型コロナウイルス感染症により多くの企業の事業継続に影響が及びました。
これまで事業継続を脅かすリスク要因としては、主に地震や台風、豪雨といった自然災害が挙げられていましたが、今後は新型コロナのような感染症についても想定しておくことが必要です。

これらの危機に対して強い会社を作るために有効なのが「BCP(事業継続計画)」です。
企業にとって、緊急事態時にも事業継続や早期復旧を図ることは非常に重要であり、そのためには事前にBCPを策定しておく必要があります。

今回は、BCPを策定するときに大切なこと、取り組みを継続できる組織の作り方などについて、ヤフーの中でも最優先に事業継続させるサービス群を運営している、メディアサービスのBCP担当者に聞きました。

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渡邊 大輔(わたなべ だいすけ)
ニュースメディア企業の執行役員を経て2018年入社。メディア統括本部開発本部推進室長として、Yahoo! JAPANトップページ、Yahoo!ニュース、Yahoo!天気・災害、Yahoo!くらし、東京2020報道特集などの開発責任者を担う。現在、災害特設サイトや新型コロナウイルス感染症まとめ、緊急報道などを届けるトップページ編成プロダクト開発責任者、メディアサービスのBCPを推進するPMO(Project Management Office)を担当。

「1923年に関東大震災が発生したとき、東京以外にも印刷所があった新聞社は号外を刷ることができ、それを無料で配ったことで、大地震によって何が起きているのかということや、安全な場所へ避難してほしい、などの情報を多くの人に伝えることができたそうです。その新聞社の取り組みは『この惨状を少しでも多くの人に伝えなければ』という強い使命感に基づいていたのではないかと思います。
私たちも、当時の日本のメディアのみなさまと同じ志を持って『ヤフーのサービスを通じて必要な時に必要な情報を必要な方に届け続ける』ため、日々BCPの推進に取り組んでいます」

BCPとは?

BCPとは、事業継続計画(Business Continuity Plan)の頭文字を取った言葉で、テロや災害、システム障害などの危機的な状況下でも、重要な事業が継続できるように対応策などを取り決めておく計画のことです。
この場合の「緊急事態」にはさまざまな状況があり、地震や台風といった自然災害だけでなく新型コロナウイルス感染症などによるパンデミック、大規模停電やテロなども該当します。

大規模な災害などが発生してオフィスやデータセンター、従業員が被災した場合、すべての事業を平常時と同じ水準で継続させることは困難です。そのため、事前に「守るべき業務」と「守るべき水準」を決めておく必要があります。通常、BCPでは「守るべき水準」として、業務復旧までの時間を定めます。ヤフーでは「最優先サービス」については、サービスダウンから5分以内に復旧すると定めています。

BCPを始めるときに重要なのは「トップの強い意志」

企業においてBCPを始めるときに非常に重要なものは「トップの決断と強い意志」だと考えています。ヤフーでも、社長の川邊や歴代社長がBCPを非常に重要視しており、たとえどんな危機的な状況下でも世の中に必要な情報をしっかり届けていくと決めていますし、情報を届けていく上で重要なデータセンターなどのITシステムの責任者であるCTO(最高技術責任者)の藤門も「絶対に止めない」システム・サービスづくりを推進しています。
全社をあげてBCPを推進していく上では、このようなトップの強い意志が非常に重要なポイントだと思います。

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BCP策定では、組織内での共通認識が大切

ヤフーでは日々、100以上のサービスを運用しています。大規模災害によりデータセンターにシステム障害が起きてサービスが継続できないことが、ヤフーにとって最大級のリスクです。 そのようなリスクを避けるため、ユーザーのみなさまの命を守るための情報を発信し続けるための事業継続の計画を立てています。
まず、全サービスを災害発生時に運用する優先度別にレベル分けをしており、最優先レベルのサービス群について、BCPを重点的に進めています。また、ユーザーが災害発生時に情報を取得する際の起点となるYahoo! JAPANトップページだけは落とすことなく、そこから命を守るために必要な情報を掲載・更新し続けられる状態を何があっても保つ方針です。
どのサービスを優先して運用し続けるのかを事前に決めておくこと、そしてその方針を社員が理解しておくことがとても大切です。この優先度別のレベルについては、適宜見直しを行っており、ヤフーの全社員に周知しています。

また、どのような状態になったら、そのような非常事態対応に切り替えるのか、「何が非常時なのか」という基準の前提をそろえておくことも重要です。
ヤフーでは「非常時」の定義を明確に定めており、その状態下にあっても、最優先サービスはサービスを提供し続けられるようにすることをヤフーのBCPとしています。
「非常時」の原因となるものは、たとえば、津波があった、地震があった、台風が来た、火山が噴火する、などさまざまなものが考えられますが、原因が何であったとしても、「非常時」の定義を共通認識にしておけば、誰でも迷うことなく判断ができます。この状態が「非常時」である、そのときにはこう動こう、という前提を誰もが迷わないレベルで決めておくことで、どんな危機的な状態になったとしても、判断スピードを落とさずに済むというメリットがあります。

ヤフーは、以下のようなBCP対策を行っています。

1)編集者や技術者を複数拠点に配置
南海トラフ巨大地震などの有事の際もユーザーに必要な情報を届けることを目的に、2014年4月に福岡県北九州市に編集拠点を開設しました。もし東京が被災してしまった時でもYahoo!トップページからニュース等必要な情報提供を行えるよう、災害に備えた準備や訓練を行っています。

2)技術のモダナイズに適応したBCPシステム構成の刷新
データセンターを東日本エリアと西日本エリアなどに分散配置するなど、災害発生の影響でサーバーが停止しても、Yahoo! JAPANのサービスを提供し続けられる基盤づくりを進めています。クラウドなどの最新技術を踏まえ、BCPのシステム構成のあり方を常に見直しています。

3)緊急時を想定した訓練を実施
2014年からは毎年、大規模な訓練を行い緊急対応体制の検証を進めています。

どんな非常事態でも、Yahoo! JAPANトップページだけは落とさない

ヤフーがユーザーのみなさまにお届けしている情報やサービスのなかで、命を守る情報だけは死守する、私たちが編集・更新できる1ページだけは絶対に掲出しておく、という方針です。
ウェブサイトは高負荷だと落ちてしまうこともありますが、「ヤフーのこの1ぺージだけは絶対に落ちずに、命を守るために必要な情報が掲載されていることが必要」という考えでBCPを進めています。

緊急事態の際に短期間に高負荷になると、以下のような、ほとんどの要素をそぎ落とした、とてもシンプルな簡易版ページに自動的に切り替わるようになっています。

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リモート環境でのBCP対応

これまでは、緊急時にはメンバーが集まって対応していて、たとえば東京オフィスが動けなくなったら、地方拠点に集合してBCP対応を行うと決めて訓練を行ってきました。ですが、「リアルに集まって対応する」という前提が今では変わっています。
新型コロナウイルス以前から、ヤフーではリモートワークを実施していましたが、月の取得可能な日数に制限があるなど限定的なものでした。3月ごろからは新型コロナウイルス感染症対策として全社的にリモートワークへ移行し、2020年10月からは、「新しい働き方」として取得可能な日数に制限のないリモートワークに踏み切りました。今後は、リモートを前提としたBCPの検討も必要だと考えています。

Yahoo! JAPANトップページやYahoo!ニュースの担当者は、日中は集合訓練、そして夜中の緊急事はリモートで自宅から対応する訓練をこれまでも行っていました。そのため、働き方がリモート前提に変更されてから今年5月に実施したリモート訓練でも、そこまで大きな課題は挙がりませんでした。
ただ、災害時の意思決定、発信する内容や提供する機能などについて、その場でストレスなく情報を共有して、議論や判断、実行できる、というメリットを考えると、物理的にも一緒にいたほうがまだスムーズなのかもしれないと感じます。インターネット通信やシステムが安定しているところでの意思決定、コミュニケーションが担保できていればリモートでも問題ないと思いますが、各自のインターネット環境が異なる前提のなかでは、これから新たな課題が出てくるかもしれません。
今後は、リモートのみでの対応にはこだわりすぎず、どのような取り組み方がよりよいのかを改めて検討していきたいと思っています。

BCPに取り組み続けられる組織の作り方

毎年のように発生する地震や台風などの災害や、新型コロナウイルスの影響もあり、以前よりBCPの取り組みが注目されてきているように感じています。
BCPはどこまで対応しても終わりがないものということもあり、「いつまでに」「どこまで進める」というロードマップをつくって、関係者間で合意形成をしながら進めることが大切だと思います。どのような計画を立てて、何を積み上げていくのかを理解しながら進めていき、1回1回の訓練についても、「何が起きたときの訓練なのか」「訓練の結果どうなったら達成なのか」などの、毎回の達成基準を明確にしていく仕組みづくりは、非常に工夫している部分です。

そういう意味では、BCPとは形がないものを形にしていくような地道な作業といえるかもしれません。関係者のスピード感のある連携、合意形成が非常に重要なので、仕組みや体制をつくるところを工夫する必要があります。リモート環境になったことで、以前以上に意思疎通をスピーディに行うための信頼関係を普段から築いておくことがとても大切ですし、そういった人間関係の構築も含めてBCP対応だと思います。

これらの活動は、大規模な自然災害が起きなければほとんど発動されないのも事実です。しかし、有事の時にこそ多くのユーザーから頼りしていただけるサービスをこれからも提供していきます。もしもの時に備え、ヤフーのメンバーが愚直に取り組んでいることを知っていただけたら幸いです。

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