新型コロナの影響で、電車の混雑が気になるという方も多いのではないでしょうか? そんな不安を少しでも解消しようと生まれたのが「Yahoo!乗換案内」アプリの「混雑トレンド」機能です。
突然のコロナ禍において、ヤフーの路線サービスは何を考えてどう動いたのか? サービスマネージャーの山本に聞きました。
- 山本 拓巳(やまもと たくみ)
- 2010年入社。2011年から地図、路線サービスなどの開発や運用に携わり、2018年10月より、「Yahoo!乗換案内」アプリ、「Yahoo!路線情報」などを含む路線サービスのサービスマネージャー。
路線の混雑傾向がわかる混雑トレンド機能
2020年6月9日にリリースしたYahoo!乗換案内アプリの混雑トレンド機能は、路線検索をした際にその路線がどれくらい混んでいるかを4段階のアイコンで表示する機能です。緊急事態宣言が解除され、新しい生活様式のなかで、混んでいる時間帯は避けて公共交通機関を利用することが推奨されていたこともあり、多くの反響がありました。
わずか2日で公開した混雑時間帯情報
混雑トレンド機能が生まれる直接のきっかけとなったのは、2月27日にYahoo!路線情報公式ブログで公開した記事「時差出勤の参考に 一目でわかる主要路線での平日朝の混雑時間帯」にあるそうです。
山本:
「2月中旬から時差通勤がニュースでも注目され、社内でも推奨されるようになりました。そこで、何か役立つ情報を届けたいとサービス内で話しました。2月25日に私と企画、デザイナー、エンジニアの代表1名ずつ、4人で集まって、その日中にやることを決め、2日後の27日に記事を公開しました。」
この記事は、Yahoo!路線情報で検索されたデータを独自に集計し、関東・関西の8つの主要路線における平日朝の混雑状況を、駅ごとにグラフ化して紹介したものです。25日は政府が時差通勤の推進を表明したタイミングでもあり、みなさまに参考にしてほしいと思い、すぐに公開したそうです。
山本:
「このブログはSNSでも400以上のシェアをいただくなど、大きな反響がありました。このときは8路線を対象としていたので、ほかの路線も知りたいという声もありました」
2月下旬には全国の小中高校に臨時休校の要請が発表され、コロナの影響が社会的に色濃くなっていくなか、3月6日、Yahoo!乗換案内アプリの駅混雑予測機能をリリースしています。
これは、運転見合わせや荒天、イベント開催などで駅が混雑や入場規制になった場合、混雑状況を予測したものを3段階でリアルタイムに表示する機能です。
山本:
「駅混雑予測機能は、新型コロナがある以前から企画していたものです。路線サービスは、移動における不安や手間をなくすというミッションを持っていて、混雑も不安のひとつだという認識です。たとえば、人身事故や台風、大きなイベントなどの際には、駅に人が殺到して混雑したり入場規制になったりする場合があります。そんなときに、今までは駅に行ってみないとどのくらい混雑しているのかわからなかったものを、行く前に知ってもらうために作りました」
全員在宅で開発した混雑トレンド機能
4月7日に7都府県に緊急事態宣言が発表されてからは、ヤフーでも全社員への在宅勤務が指示されるようになりました。
山本:
「外出する機会が減っているなか、当然ですが路線サービスの利用者も減ります。サービスとしては厳しい状況ですが、3~5月は、突発的な交通機関の運休や減便がありましたので、そんな情報を正しく届けることや、コロナ状況下において役に立つ情報をどう届ければいいのかを考えていました」
コロナの影響がまだ続きそうだということ、また収束したとしても、電車の混雑に対する不安はしばらく続くのではないかということから、先述した2月27日にブログで公開し反響も高かった電車の混雑時間帯情報を、機能として提供しようという話になったそうです。そこから生まれたのが、Yahoo!乗換案内アプリの混雑トレンド機能です。
膨大な経路探索ログから混雑の度合いをAIで算出する仕組み自体は、2018年2月にリリースした異常混雑予測機能や、前述した駅混雑予測機能ですでに使われているものですが、それをどういった見せ方にするのかに苦労したといいます。
※混雑度合いを予測する仕組みについては、Yahoo! JAPAN Tech Blogの記事をご覧ください。
山本:
「全員が在宅勤務の中、オンラインで何度もブレストを行い、デザインを作ってみてレビューするということを繰り返しました。完成してからもリリースまで検証を繰り返すなど、何よりも優先して進めていきました。
3月の全社朝礼では、社長の川邊からも『役立つ情報やサービスを提供し、ユーザーの安全安心に貢献してほしい』とはっきり言われていました。そんな全社的な号令も後押しとなり、サービスとしても全力で取り組めました」
移動時の不安をなくすために 今後の展望
最後に、コロナとともに暮らす状況が続くなか、路線サービスとしてどういったことを考えているか聞いてみました。
山本:
「混雑トレンド機能リリース後は、役に立つというユーザーの声を多くいただき、喜んでいただいてよかったなと、まずはほっとしています。また対象路線を増やしてほしいという声もあったのでリリース時は64路線だったのを、7月13日にはさらに50路線を追加しました。
一方で、混雑の傾向が本当に正しいのか? とか、実際に乗ってみたら違ったという声も少なからずあります。精度については今後も課題として、継続して改善していきます。
コロナの影響で移動する人が少なくなっていますが、移動すること自体がなくなるわけではありません。
『目的地での体験を最大化するために、移動における不安や手間を取り除く情報を届ける』という路線サービスのミッションは変わらないので、混雑情報に限らず、正確な情報をよりリアルタイムに届けていき、結果として人々の生活を豊かにし、ユーザーに貢献していけるサービスを提供していきます」
※混雑トレンド機能、異常混雑予測機能は、東京工業大学 下坂研究室とYahoo! JAPAN研究所との共同研究の成果を用いて実現した機能です。詳細は以下のサイトをご覧ください。
・Forecasting Urban dynamics with Mobility Logs by Bilinear Poisson Regression