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2020.07.09

「自分の命は自分で守る」Yahoo!防災速報の災害マップ

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2020年3月に正式版の提供を開始した、Yahoo!防災速報アプリの「災害マップ」。これは、豪雨や台風などの災害時に逃げ遅れてしまう人を少しでも減らしたい、という強い思いから生まれました。
今回は、災害マップが生まれた背景、開発する上で苦労した点、このサービスをどのように利用してほしいかなどを、サービスマネージャーの田中、企画を担当した竹内に聞きました。

災害マップが生まれた背景

災害マップは、ユーザー同士が現在地の災害状況を共有できる機能として、2019年10月11日から約1カ月間の期間限定で試験的に導入。その後、2020年3月10日に正式版の提供を開始しました。

竹内:
ユーザーに投稿いただくサービスが以前から好きで、Yahoo!知恵袋などユーザー参加型のサービスに長く関わっていました。Yahoo!天気・災害の担当になってからもその思いは変わらず、ユーザーの力をお借りする、ということが天気や防災のサービスでもできるのではないかと考えていました。

災害マップが生まれたきっかけは、2018年に発生した西日本豪雨(平成30年7月豪雨)です。
発災後に現地へ視察に行き、自治体やメディアがいくら避難情報を正しく速く伝えていても、住民の方はなかなか避難をしない・できないということを改めて実感しました。以前からあったこの課題がさらに浮き彫りとなったのが、この豪雨だったと思います。

自治体が送る情報は、どうしてもその自治体内の情報に限られます。さらに、自治体はさまざまな防災対策や災害対応も同時に行っているため、できることにも限りがあります。また、自治体がお住まいの方たちおひとりずつの状況まで把握することは難しいのが実情です。
「自分で自分の身を守る」ために、インターネットの力を使って何ができるのだろうか、災害が発生した地域の方たちが周囲の情報を共有しあうことで身を守ることにつなげられないだろうか、と思ったことが、ユーザーに情報を投稿いただく災害マップの仕組みを考えた背景です。

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(岡山県倉敷市真備町の様子:2018年7月25日、竹内が撮影)

誤った情報や憶測などの投稿を抑止するために

竹内:
大きな災害の発生時には、SNS上で投稿された情報の信ぴょう性の判断が難しかったり、デマ情報の投稿が課題になったりすることがあります。
ヤフーが提供するサービスでそのような誤った情報を発信するわけにはいきません。2019年の試験導入の際にも、しっかりその点を対策しておく必要がありました。

災害マップへ投稿する仕組みを思いつくきっかけとなったのは、2016年に発生した熊本地震です。
熊本地震の直後に「熊本の動物園からライオンが逃げた」というデマ情報がTwitterに投稿されました。実は、あの投稿は熊本にお住まいの方でも九州の方でもなく、地震の被害とはまったく関係ない地域に住む人がしたものでした。
これは、災害による被害とは無縁だった第三者だったためにやってしまったという面もあるのではないだろうかと思いました。災害マップでは、(その災害の)当事者だけが投稿できるようにすることで、デマや誤った内容の投稿を防げるのではないかと考えました。

もともと、防災速報アプリは防災意識が高い方にご利用いただくことが多く、多くの利用者が位置情報を「オン」にしてくださっています。
そのため、現在地に災害の危険が迫っていることを知らせるプッシュ通知を受け取った方だけに、災害マップへの投稿をオープンするという仕組みにしました。結果、試験導入期間に投稿された約6万件のうち、不適切な内容の情報は数件でした。

※以下のプッシュ通知が届いた場合にのみ、災害マップに投稿できます。
<災害状況の投稿>
・異常感知通知 
・避難情報 (避難準備、避難勧告、避難指示)
・大雨危険度通知 (警戒レベル3相当以上)

災害発生時にご利用いただく機能ということもあり、利用動線、投稿手順をシンプルにすることがとても大事だと考えました。そのため、通知を見ていただいた流れで「今、安全な場所にいらっしゃるのであれば、よろしければ状況を教えてください」と、簡単に状況を選択していただくだけで完了できるような仕組みとなっています。さらに、もし可能であれば詳細をコメントで教えてください、という2段階で投稿いただくようにしています。

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試験導入後、ライフラインの状況の共有機能を追加

竹内:
試験導入の際には、水害、台風、豪雨などによる被害状況の投稿、閲覧を主な機能としていました。ですが、たとえば地震が発生した場合に投稿いただく内容としては、項目が少し不足していたため、今年3月の正式版では、年中ご利用いただくことを目的に、生活に欠かせない電気やガス、水道など、ライフラインに異常が見込まれる地域にいる方から現在の状況を共有いただく機能を新たに追加しました。

また、2019年の台風19号発生時は、地図のズームレベルを最大値に設定していたところ「投稿すると地図上にピンが立つので自宅の場所がわかってしまう」というフィードバックがありました。住宅密集エリアではその危険性が少ないのですが、郊外だとその可能性があるという配慮が足りていなかったと思います。
ズームレベルを2段階下げたところ、その後に発生した台風21号の際には、「自宅がわかってしまう」というご意見はありませんでした。

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田中:
試験導入は、昨年の台風19号が接近するタイミングで開始しました。SNS上では、
「外に見に行かなくてすんだ」
「自宅の中にいながら、周囲の状況がわかってよかった」
などのコメントをいただきました。
災害発生時には、自分の身を守るために必要な対応を短時間で判断する必要があるため、「自宅から出ない」ことも含めて、実際の行動につながりよかったと思いました。
私は竹内とちがい、これまでユーザー参加型のサービスに関わった経験はあまりないので、投稿される内容への不安が少しありましたが、運用してみた結果、デマ投稿などはびっくりするくらい少なかったですね。
これは、被害を受けて困っている方、状況を知らせたいと思っている方が投稿できる仕組みがうまく働いた結果だと思っています。

災害マップを作った思い

田中:
今回の災害マップ機能の導入の背景には、3つの強い課題意識がありました。

少しでも身を守る行動につなげてほしい

西日本豪雨、2019年の台風19号について、気象庁の「最大限の注意をしてください」「この期間はこのような被害が発生するかもしれません」という事前の予想は、ある程度合っていたと思います。また、被害が想定以上ではあったかもしれませんが、警戒が必要な時間帯や地域についても注意喚起を行っていたかと思います。
ただ、それだけではなかなか自分ごとにはならず、予想を知っただけでは避難行動につながりにくいのです。さらに、自治体が避難情報を出しても避難しない方も多いことは、大きな課題だと思っています。
そのため、被害が発生しそうな地域にいる方にとって、より身近な情報である「近所ではこういう状況になっている」ということや「すでに避難が必要な状況かも」ということを知らせることで、避難の後押しをしたり、不要不急の外出を控えていただいたり、少しでも身を守る行動につなげてほしい、という思いがあります。

発災後に必要な情報としても災害マップを使ってほしい

発災後に、被災者が必要とする情報が集まっている場がまだ十分ではないと思っています。
たとえば東日本大震災や熊本地震ほどの災害時には、特設ページも多くできましたが、局地的な災害についてはまだ情報が集まりにくいため、今後は災害マップがカバーできればと思っています。

情報の空白期間を作らせない

また、地震などの発生については、防災速報アプリなどでお伝えしていますが、その後実際に現地の状況がどうなっているかは、記者などが入るまではわからないため、情報が空白になる時間ができてしまうことが課題だと考えています。
2018年に発生した北海道胆振東部地震では、発生時間が午前3時7分だったため、朝になって外が明るくなるまで被害状況がわかりませんでした。被災地で何が起きているのかをすぐ知らせるためにも、災害マップを使っていただくことで情報の空白期間を作らずにすみ、避難が必要な人がすぐに動けるようになるのではないかと考えました。

災害マップの今後の展望

竹内:
今年の3月に正式リリース後、現在は出水期に向け、システムの負荷対策もしっかりしていますので、多くの方にご利用いただける準備が整っています。
災害マップでは「異常感知通知」というオリジナルの通知を利用していますが、たとえば移動していく台風による雨と、同じ場所に留まる「線状降水帯(せんじょうこうすいたい)」による雨の被害は違うため、通知の仕組みを何パターンか用意することも検討しています

また、これまでは防災速報アプリのユーザーに投稿いただいていましたが、今後は外部のパートナーとも連携し、地域の防災関係者とともに、平時から有事に渡って役立つ災害マップ作りに取り組んでいく予定です。

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田中:
災害が発生したとき、災害マップを使うことで自分の周囲で何が起こっているかが詳細にわかること、自宅にいるべきなのか避難するべきなのか、正しい判断をご自身でしていただくこと。これが、災害マップの目指している姿です。

避難は自治体に言われてするのではなく「危険を感じたら避難する」が大原則です。また、周囲がすでに危険な状況になっているときは、不要不急の外出を控え自宅に留まることも含めて「自分の命は自分で守る」という意識を強く持っていただきたいと思っています。
ただ、必要な情報がない状況で判断するのは難しいと思います。みなさんが正しい判断をできるようにするため、できるだけ多くの正しい情報を集め、わかりやすく届けるという点にこれからも取り組んでいきます。

また、これまで以上に、発災時にとるべき行動について事前に考えておくことが大切です。まず、ご自宅や職場、学校周辺のハザードマップをきちんと確認してください。もし浸水してしまったら、どこまで水が出るのかを知っておくことで、自宅の2階で過ごせばよいのか、避難するべきなのかも考えておけると思います。
今年は新型コロナウイルスの影響により、避難所に行くことにためらいを感じる方もいらっしゃるかもしれません。ですが、これまでと同様、避難が必要な状況にいると判断したときは迷わず避難していただきたいと思います。

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2019年の台風19号による発災時の災害マップ画面

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