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2020.02.12

「IT技術で漁業と漁師を守る」漁業におけるセキュリティとは

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今回は、ヤフーが復興支援の一環として支援する団体、フィッシャーマン・ジャパン(※1)の事務局長でもあるCSR推進室の長谷川が、2020年1月に九州大学で行った講義「漁業とセキュリティ」をもとに、漁業の現状や課題、漁業においてこれから必要とされるセキュリティの考え方などをお伝えします。
※1 フィッシャーマン・ジャパン:
三陸の海から水産業における「新3K(=カッコいい、稼げる、革新的)」を実行するトップランナーになることを活動理念とする若手漁師の組織

オープンな働き方のきっかけにもなった、ヤフー石巻復興ベース

2012年に東日本大震災の復興支援事業に取り組む拠点として、宮城県石巻市に「ヤフー石巻復興ベース」を開所しました。これは、石巻の企業や団体、住民など、誰でも出入り自由な場を提供することで、人々との交流の中から復興事業のアイデアを生み出すことが目的です。ヤフーの情報発信力やノウハウを生かして、それらのアイデアをインターネットを利用した復興事業につなげたいというねらいがありました。
また、この考え方は東京都・紀尾井町の新オフィスにも生かされています。石巻復興ベースでオープンオフィスにおけるセキュリティの課題を解決できたことから、新オフィスでは社員が固定席を持たずフリーアドレスで勤務したり、社外の方が利用可能なオープンコラボレーションスペース「LODGE」ができたりという、自由な働き方につながりました。

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開所当時のヤフー石巻復興ベース

島国日本の、「日本らしさ」を残したい

国内の漁業従事者は年々減少傾向が続いており、2011年に発生した東日本大震災での被災をきっかけに、三陸地域を中心に減少がさらに加速しているといわれています。また、2001年を境に日本人が以前に比べ魚を食べなくなっているそうです。
一方、世界に目を向けると、魚の生産量も消費量も増えています。これは、たんぱく質をとることを重視する健康志向の消費者が増えたためだといわれています。その一方で、日本の漁村には後継者がいない上に、漁師は自分の子どもを漁師以外の職業に就かせるために外に出してしまうことを知りました。

そんななか、東北の若い漁師たちが「震災に負けるわけにはいかない」と立ち上がろうとしている姿を見て「日本ならではの漁業の魅力を残したい。何かできることはないだろうか」と思い2014年に立ち上げたのが、フィッシャーマン・ジャパンです。「10年後、2024年までに三陸に多様な能力をもつ新しい職種『フィッシャーマン』を1,000人増やす」ことを目標に活動しています。
まず、若い漁師たちの日々の仕事ぶりを動画や写真、キャッチコピーなどにして伝えることからはじめました。これは、彼らの姿を伝えることを目的につくった動画です。

ほかにも、東北の漁村の担い手になってくれる若者を呼び込むために漁師の学校をつくって本格的な教育を行ったり、スマホでも見られる漁師専用の求人サイトをつくったりしました。
漁業には、最大のライバルは隣の地域(浜)の漁師、孫の代まで3代にわたって漁師の家庭でなければ漁師になれない、などローカルルールも多いんです。ですが、このような活動を続けていくうちに、少しずつ「もし隣の浜でうまくいかなかったらうちの浜に来て漁をしてもいいよ」「うちの浜でうまくいかなかったら隣の浜に行ってもいいよ」という柔軟な考え方になってきました。それに伴い、外からきた若い漁師にも漁業権をもらえるようになりました。

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漁師を将来働くときの選択肢の一つに

未来の担い手をつくるため、ヤフー石巻復興ベースとフィッシャーマン・ジャパン、宮城県漁協共同組合、石巻市子どもセンター「らいつ」とも連携して地元の子どもたちを対象に漁業体験や水産高校と連携した漁業の授業も行っています。
外から人を呼び寄せるだけではなく、そこで生まれ育った子どもたちにも地元に素晴らしい産業があることを知ってもらい、将来働くときの選択肢の一つにしてほしいという思いがあります。
また、復興庁と組んで大学生を漁村に入れたり、水産特化型のインターンを行ったりすることで、漁師や水産事業の課題の解決に少しずつつなげています。

こども向け1日漁業体験の様子

若者がもつ漁業へのイメージを変えたいと思い、早朝から海で働く漁師たちが電話で起こしてくれるモーニングコールサービス「FISHERMAN CALL」(現在は終了しています)を立ち上げたこともあります。

これは、若者が苦手な「早起き」を早起きが得意な漁師が解消することで、漁師と若者との接点をつくることがねらいでした。起こしてほしい漁師を選ぶと、モーニングコールがかかってくるという仕組みです。期間限定の取り組みでしたが、これをきっかけに「漁師」という検索ワードや漁村への大学生のインターン生が増えました。
近年はフィッシャーマン・ジャパンが福岡の漁師のプロモーションや、北海道の漁師団体の立ち上げのプロデュースをするなど、日本の漁師の課題解決団体と接点を持って活動の幅を広げています。

モーニングコールサービス「FISHERMAN CALL」の紹介動画

日本の漁業が大きく変わる 70年ぶりの漁業法の改正

70年ぶりに漁業法(※2)が変わることもあり、今、日本の漁業は変わろうとしています。
※2 漁業法:
日本の漁業生産に関する基本的な法律で、海で漁場を誰にどう使わせるのかを定めた制度

漁業法改正案の主な内容
1)資源管理の見直し
・漁獲量の上限を決め、船ごとに漁獲枠を割り当てる管理を基本に
2)漁業権の見直し
・養殖や定置網漁で地元の漁業者らを優先するルールを撤廃
・「地域の水産業の発展に寄与すると認められる者」に新しい漁業権を付与する

このような背景のなか、フィッシャーマン・ジャパンの漁師たちが自らルールを定めて漁を行う姿勢が先行事例としても注目されています。

水産政策の改革のポイント(水産庁)

IT技術を使って、海難事故から漁師たちを守る

海でもっとも大切なのは、命を守ること。たとえば、サイバーセキュリティの危機を事前に知ることで大事なデータを守れるように、海にいる危険生物や波、潮の流れについて正しい知識を身につけることで、身を守ることができます。

漁業でもようやく、「水産業×IT」という話がされるようになってきた段階なので、サイバーセキュリティ以前の段階だと考えています。今回は、九州大学発のスタートアップが開発している、ITの技術を使って危険から身を守るためのサービスを紹介します。

nanoFreaks代表千葉さん:
「nanoFreaks(ナノフリークス)」は、海難事故から家族を守るサービス「 yobimori(よびもり)」を開発中の、九州大学発のスタートアップです。
海上での事故による死亡者は後を絶たず、特に漁船から海中転落した人の死亡率は約7割といわれています。漁師は一人で漁を行うことが多い上に、事故に遭ってもそれを知らせる手段が乏しいので、周囲が事故をすぐに認知することが困難です。 そのため、事故が起きてもすぐに救助が始まらないことが大きな課題となっています。
漁師が海上からすぐに助けを呼べるようにすることで、捜索開始までの時間短縮と迅速な救助につながるのではと考えました。

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yobimori 連絡経路の概要図

私たちが開発している「yobimori」は、瞬時に救助が呼べるおまもり型デバイスと、救助を効率化するアプリによって構成されるサービスです。漁師はyobimori デバイスを体に装着して海に出ます。
海への転落や事故発生時には簡単に起動でき、即座に一番近くの船や家族、救助機関へと位置情報が共有されます。また、救助従事者には漂流予測や救助状況などを可視化した情報をアプリで提供することで、救助効率の向上に貢献できると考えています。

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nanoFreaks代表の千葉さん

漁業における「セキュリティ」とは

これから大きな変化を遂げようとしている漁業において、守るべき情報や今後検討が必要なセキュリティ対策とは何なのでしょうか。長谷川に聞きました。

水産業はまだまだアナログな部分が多く、ほとんどの情報がデータ化されていません。漁業は「狩猟」の仕事なので、漁師たちはどこで魚が獲れるかは公開できない場合もあります。
また、漁師の世界は歴史が長く高齢化が進んでいることもあり、ITが苦手な方も多い。また、勘と経験に基づいた漁は、言い換えると非効率的なやり方でもあるため、今後IT化を進めることが、負荷を減らし、今後の担い手を増やすことにもつながるということで、国としても力を入れていく分野になってきました。
漁師もITのプレイヤーも、漁業・水産業を担う若い人たちが未来を切り開いていけるように、いろんな人をつないだり、様々な事例をGyoppy! (ギョッピー ※3)で紹介するなど、海に関わったヤフー社員としてできることを、これからも続けていきたいと思います。
※3 Gyoppy! (ヤフーが運営する、海から、魚から、ハッピーをつくるメディア)

たとえば、福岡の会社が開発した「ISANA(いさな)(※4)」は、一緒に漁をしている他の船の位置や航路、漁獲高などの情報をリアルタイムに共有できるサービスです。利用した漁師からは「情報を公開することでむしろ漁の効率性が上がった」などと評価が高いそうです。
※4 漁ろう管理機器「ISANA」

このように、今後はIT技術が水産業の成長に貢献し、それに伴いサイバーセキュリティについても検討が進んでいくと考えています。

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右が長谷川

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