「1on1ミーティング」(以下1on1)とは、上司が部下の主体的な内省を促す目的で行う、人材育成の手法のこと。今回は、1on1が注目されている背景や目的、ヤフーでの取り組みなどをご紹介します。
1on1が注目される社会的背景
いわゆる目標管理制度でいうところの評価面談は、部下の目標設定に対し、上司が評価を伝える場です。一方、1on1ミーティングとは、組織運営の向上を目指し、最大限の潜在力を引き出す目的で部下のために行う面談のこと。ヤフーは2012年からこの方法を取り入れています。
1on1に注目が集まっている社会的な背景として、
- 上司が部下の考えていることが分からない
- 時短勤務など多様な背景を持った部下を持つなど、ダイバーシティの考え方が必要になってきた
- 年上の部下を持つようになり、処し方が分からない
- プログラミングなど、上司が部下よりもスキルがないことが増えた
これらの課題を抱えたマネジメント層が増えたことが、理由の一つです。
また、高度経済成長期が終わり、年功序列制度や終身雇用制度が崩壊。企業の求心力が以前よりも失われ、キャリアを会社が与えるのではなく、社員による主体的なキャリア形成が必要になりました。
このような背景から、上司が部下に対して目標管理を行うのではなく、部下の成長を支援することが必要になったのです。
「1on1」は部下のためのミーティング
1on1で行うことは、
「週に1度30分間、場所を確保し、部下の話を聞く」
これだけです。
ヤフーの「1on1」のベースとなっているのは、以下の2つ。
1.「経験学習」というスキームの導入
経験学習とは文字通り、仕事での経験や失敗だけでなく、成功からも学びを得ること。それを次の仕事に生かしていくサイクルを繰り返すスキームを完成させることに、1on1を導入する大きな意味があります。ただ部下の話を聞くのではなく、その真意をくみ取り、普段の業務にどう落とし込むかまで導くことが大切です。
2.社員の才能と情熱を解き放つこと
- 本人により適していると思える仕事
- 周囲や会社が本人に対して期待している内容を理解してもらうこと
- 本人が本当にやりたいことに出合ってもらうこと
1on1を受ける部下自身がまだ気づいていない潜在力を引き出すためにも、1on1は重要な役割を果たします。
ヤフーで起きた、組織の変化
1on1を導入する際に「そんな時間は捻出できない」「部下の愚痴を聞くはけ口で終わりそう」などの声があがることもあるといいます。
こうした声は、導入時にヤフー社内でもあがりました。
もともとは人事部の主導で始まったプロジェクトでしたが、必要とした要素は、以下のものでした。
- 1on1を実行する目的を明確化すること
- 社員に組織全体のマネジメント強化を効率化できると伝えること
- 経営層にもコミットしてもらうこと
- 個々に実施している1on1について、客観的にフィードバックし続けること
また、外部の専門家も入れ、カリキュラムをヤフーに合うものにブラッシュアップさせていくことで浸透を図りました。さらに、管理職が行う1on1のスキルやフォーマットに磨きをかけていくことで、徐々に文化として浸透していきました。現在では約6,000人の社員が「1on1」を実施しています。
部下がなぜ、突然会社を辞めてしまうのか、反抗的なのか、思うように動いてくれないのか、指示待ちなのか?
そんな悩みを抱えたことがある方は、1on1を行って部下の考えを自ら話してもらい、そこから原因を引き出すことで、その理由がわかるかもしれません。