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2016.08.04

Yahoo! JAPAN戦後71年プロジェクト〈1〉「空襲の記憶と記録」

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今年で終戦から71年。Yahoo! JAPANでは、昨年2015年の終戦70年の節目に、戦争の記録や当時を知る方々の記憶を100年後の世代に伝えるプロジェクト「未来に残す 戦争の記憶」を開始しました。
今年の夏、そのプロジェクトの一環で、二つの企画「空襲の記憶と記録」「軍事郵便で見る、戦争の記憶」を公開しました。

今回、そのひとつ「空襲の記憶と記録」の企画経緯、制作者たちの思いを、本企画を担当したYahoo!ニュース宮本濱田に聞きました。

(左からYahoo!ニュース担当の宮本、濱田)

一般市民が犠牲になることの悲惨さを「記憶」し「記録」する

- 日本人の空襲体験を収集して「デジタルアーカイブ」として公開する今回の「空襲の記憶と記録」。具体的にどのような企画なのか教えてください。

濱田:
今回の特集は「空襲の記憶と記録」というタイトルのとおり、「空襲の記憶」と「空襲の記録」の二部構成で日本における空襲体験を伝えています。
まず「記憶」のパートは、日本各地の空襲について、実際に体験された方の証言による映像番組と記事でご紹介しています。
「記録」のパートは、時事通信社よりご提供いただいた、全国の市区町村レベルの空襲の被害データ(被災した各都市の死傷者数や、焼失家屋数と被災面積などのデータ)を公開しています。

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(「空襲の記憶と記録」のパソコン版トップページ)

- 今回、なぜ「空襲」をテーマに選んだのでしょうか?

宮本:
第二次世界大戦で日本人は約310万人亡くなりましたが、そのうち約40万人が空襲で亡くなったといわれています。そして、その犠牲者の多くが兵士ではなく一般の市民でした。
軍人ではない一般の市民が何十万人も犠牲になった、とはいったいどういうことなのか――そのことを実際に体験された方の証言を元にお伝えしたいと思いました。

私は2015年12月にYahoo! JAPANに転職する前は放送局に勤めており、戦争や震災関連の番組を制作していました。のべ1000人ぐらいの戦争体験者にインタビューしましたが、終戦から70年がたち、戦場体験を語れる人は少なくなってきているのが現状です。
しかし、空襲の場合は、当時小さな子どもだった方も体験しており、実際の戦地を体験した世代よりもすこし若い世代に話を聞くことができます。その方々がお元気なうちに証言を集めたかった、というのもありました。

また、空襲による被害は北海道から沖縄まで日本全国全域にわたりました。日本全体の戦争体験を集めるという点で、Yahoo! JAPANとしても意義のあることではないかと。

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(Yahoo!ニュースの宮本。Yahoo! JAPANのオリジナル映像コンテンツの制作にもあたっています。本特集ではオリジナル映像番組を中心にプロデュースしました)

濱田:
私は今年の春に産休から復帰したのですが、復帰初日にこのプロジェクトに参加することが決まりました。
今1歳半の子どもがいますが、空襲の最中に赤ちゃんを抱きながら焼き焦げて亡くなった母子のエピソードなどを知り、もし少し生きる時代が違っていたら自分にも十分起こり得たことだと、とてもリアルに感じられて……。

この先、このような体験を話してくれる方が少なくなっていきます。戦争の記憶を残していくためにも、今伝えることはとても大切なことだと思いました。

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(Yahoo!ニュースの濱田。本特集ではページ制作の企画を行いました)

独自の取材と、コンテンツパートナーからの情報提供

- 今回の特集では、実際に空襲を経験された方の証言を映像番組で紹介しています。この番組は社内で独自に制作したそうですね。

宮本:
はい、今回「ドゥーリトル空襲(東京)」「10・10空襲(沖縄)」「青森空襲・青函連絡船空襲」の3つの空襲について、それぞれ現地に赴いて取材しました。
「ドゥーリトル空襲」(昭和17年4月)はあまり知られていないのですが日本本土初の空襲です。また、那覇が壊滅し、生き残った人もその後地上戦に巻き込まれることになる「10・10空襲」(昭和19年10月)や、消火のために避難できず多くの犠牲者を生んだ「青森空襲・青函連絡船空襲」(昭和20年7月)など、これらの空襲におけるストーリーをそれぞれ5人の体験者の証言にそって伝える映像番組を制作しました。さらに、そのお一人ずつのインタビューを基に証言映像を15本作り、全部で18本の映像番組にしました。この18本の番組はYahoo! JAPANのオリジナルです。

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(「ドゥーリトル空襲」のスマートフォン版ページ。映像番組や記事で空襲を伝える)


宮本: 
また、映像だけではなく、テキストと写真による記事も合わせて紹介しています。映像と写真、文字コンテンツをどうやって組み合わせて見せるか、パソコンやスマートフォンなどのそれぞれのデバイスの特徴を生かしたページ構成を、みんなでアイデアを出し合いながら追求しました。

- 全国の市区町村レベルの空襲の被害データはとても膨大な量で、ページ上での見せ方には苦労したと聞きましたが……。

濱田:
どうやったらこの膨大なデータを分かりやすく視覚的に伝えられるかという点はとても悩みました。
たとえば、空襲の被害は日本全国ほぼすべての都道府県に及んだので、そのことを伝えるために、あえて地域別に見やすくまとめる表示ではなく、都道府県別の空襲回数を一覧で列挙することで、その数のインパクトを表現しました。

戦争にあまり興味のない人たちが興味をもってくれるような情報の見せ方については苦心しましたね。

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(各都道府県の空襲による被害データをまとめたスマートフォン版のページ)

- オリジナルコンテンツのほかに、コンテンツパートナーから情報提供を受けたコンテンツもありますね。

宮本:
今回Yahoo! JAPANとしては初めてケーブルテレビ各社とコンテンツパートナーの契約を結び、東北から九州の合計7社より、その地域の空襲の番組映像をご提供いただきました。

濱田:
時事通信社による日本全国の空襲データも同様ですが、今回の特集はYahoo! JAPANの今までのコンテンツパートナーと長年つちかった関係性、経験があったからこそ実現できたものでした。
また、地図を使った表現も取り入れるなど、Yahoo!地図をはじめとした社内の環境を最大限に活用しました。

宮本:
記事の執筆も、映像の制作も、また、映像のナレーションもYahoo! JAPANの社員が行っています。ぜひその点もご注目いただきたいですね(注:宮本は前職でアナウンサーの経験があります)。

戦争の証言を伝え続ける意義


- 最後に、この特集を通じてユーザーのみなさんに伝えたいことを聞かせてください。

宮本:
戦争体験の証言が大切なのは、戦争の悲惨さを実感する上で「ディテールを知る」ことがとても重要だからです。
たとえば、戦火の中を何日も逃げて、そのときに何を食べたのか? お風呂はどうしたのか? そういった当時の細部のことを具体的に知れば知るほど、みなさんの今の暮らしと比較できる。そして比較すると、今の平和で安らかな暮らしがいかに大切かを実感できるのではないでしょうか。

濱田:
一般の犠牲者の方の話は身近に感じられるものが多く、「私が経験したらどうなるだろうか」と自分の立場に置き換えて想像しやすいです。私自身、毎日を平和に暮らせることの幸せを本当に実感しました。そのことを、この特集を通じて一人でも多くのみなさんにも感じてもらえたらと思います。

宮本:
シリアなどの紛争地域では現在も空爆で亡くなっている方がいます。今回の特集でお伝えしている何十年も前の悲惨な話が、今も世界のどこかで起こっている。そのことを実感してもらうためにも、戦争の証言を伝えていく意義はあるのではないかと。

今後もさらに各地の空襲の証言を採集し、「戦争の記憶」を伝え続けていきたいと思います。

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