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CSR

ホタルと共存できる緑地化をここ東京・紀尾井町から。
地域との交流も生み出すヤフーのビオトープ活動が目指すものとは

ホタルの画像

ビオトープの前に立つ田中の画像
ビオトープに走って駆けつけた田中

こ……こんにちは、ハーレーに乗る、LIGブログ編集部の……田中宏亮、です。

東京のど真ん中でホタルが見られる……にわかに信じ難い情報を得てやってきましたここ、ヤフー本社がある「東京ガーデンテラス紀尾井町」敷地内の「光の森」。ここはこの東京ガーデンテラス紀尾井町を運営する西武プロパティーズさんとヤフーが行っているビオトープ活動の拠点になっている場所なんです。

ビオトープ

ビオトープ(Biotop)とはドイツ語で、生物群集の生息空間を示す言葉。英語だと「バイオトープ(biotope)」。日本語に訳す場合は生物空間、生物生息空間とされる。日本におけるビオトープ活動は「生物が住みやすいように環境を改変すること」を指している。

ホタルが見られると喜び勇んできたものの、水や空気が奇麗な場所にしか生息しないホタルの生息地に排出ガスまき散らしながらハーレーで乗りつけるわけにはいかないので、駐車場に停めてここまで走ってきた……というわけです。

ビオトープの案内板の画像
ビオトープ前にはこのような案内も
ビオトープの写真
ビオトープの画像
東京ガーデンテラス紀尾井町のビオトープ「光の森」。
ビオトープの小川の淵に座る田中の画像
ホタル、いるでしょうか
ビオトープの小川の淵に座る田中の画像
……まだいませんね。
(撮影したのは2018年4月でした)

意外に樹木の緑は目にすることが多い東京ですが、自然の生き物と触れ合う機会はめったにありません。それこそ光るホタルが飛ぶ姿なんて見たことのない人もいるはず。ここ「東京ガーデンテラス紀尾井町」でホタルが見られるということ自体が貴重なことと言えるでしょう。

都市開発が進む昨今の都心部において、活発になってきているビオトープ活動。そのほとんどが建設や不動産関連の企業なのですが、IT企業であるヤフーが「東京ガーデンテラス紀尾井町」とともにビオトープに取り組むのはなぜなのでしょうか。そんな素朴な疑問をキッカケとする「ヤフーがビオトープに取り組む意義」についてお聞きすべく、コーポレートグループSR推進統括本部の小南さんにお会いしてきました。

PROFILE

顔写真:小南 晃雅

小南 晃雅
1974年生まれ、千葉県出身。コーポレートグループSR推進統括本部 社会貢献事業本部 社会貢献推進室。前職ではシステムエンジニアとして銀行の基幹システム開発を手がけた。2004年ヤフーに入社し、コミュニケーション系サービスや社内ツールにかかわったのち、現職。ヤフー入社前の1年間は欧州を中心にバッグパッカーをしながら旅行したり、現在は各地のマラソンイベントに参加するなどアクティブな趣味をもつ。

所属や肩書は2018年2月現在のものです。

INDEX

  1. 環境への取り組みを通じて生まれた地域との交流
  2. ホタル博士の声が取り入れられた「ビオトープ」でヤフーが目指すべきもの

環境への取り組みを通じて生まれた地域との交流

LIG田中とヤフー小南の写真

田中

で、なんでヤフーがビオトープなんですか?

小南

のっけから直球の質問ですね(笑)。確かにビオトープに取り組んでいるのは建設関係や不動産関係の企業がほとんどかと思います。
じゃあIT関連企業は何も消費していないかと言われれば、そんなことはなく、何より一番消費しているのは「電力」です。工場などを持っているわけではないので「環境に対して負荷をかけている」という直接的な意識をあまり持てずにいる従業員もいるなか、実際は環境の恩恵を受けて仕事をし、その売り上げから生活ができているわけですから、何もせずともいいってわけではないな、と。

田中

確かに私たちの仕事は「電気」なしには成立しませんね。それもヤフーという規模になると、環境負荷は小さくないことは想像にかたくありません。

小南

このビオトープに関する活動については、ヤフーが企業として果たさなければいけない「環境への貢献」、「生物多様性への取り組み」、それが根づくことによる「地域への貢献」という3つの大きな柱を掲げています。
環境を持続させながら私たちの事業を継続していくという、その両軸で考えていかなければならない、というのがヤフーのビオトープ活動の根幹です。「環境への貢献」は、ヤフーとしてはまだまだこれからの分野ですが、この取り組みが足がかりになるのではないか、とも考えました。

田中

ビオトープ活動はどのように進んでいったのですか。

小南

ここ「東京ガーデンテラス紀尾井町」へ引っ越すことはグランドオープンする(2016年7月)前から決まっていまして、代表取締役社長の宮坂学が建設予定地の一帯を見たとき、外濠の見栄えや敷地内の庭園の広さに目をとめたんです。ちょうど西武プロパティーズさんと西武造園さんも敷地の緑地化や、どうランドスケープするか、というところを考え始めるところでタイミングよくご一緒させていただきました。
また私たち従業員のあいだでも、このときの引越を機にオフィス改革をしようという話が出ていまして、オフィス内だけでなく“外”も含めたときにどう考えるべきか、という課題が持ち上がっていました。「できるだけいい環境で働きたいから、外濠はきれいにしたい」「庭園には樹木がたくさんあったほうが気持ちがいい」などですね。

田中

皆さんの思惑が一致したんですね。

小南

はい。そこで「ビオトープ」と「ホタル」の話が出てきたんです。都心でありながら、きれいな水や環境の象徴とも言えるホタルがビオトープに生息していれば、働いている環境としてはすごいんじゃないか、と。

田中

実現のハードルって高かったんじゃないでしょうか。

LIG田中とヤフー小南が話している様子

小南

ええ、ホタルは心地よい環境じゃないと定着してくれないんです。そこでまず、“ホタル博士”として知られる大場信義先生に協力を仰ぎました。当初のビオトープの設計図を見てもらったところ、敷地の長さや広さがホタルの生息には不向きだとの指摘を受け、大場先生のアドバイスに基づいて倍の長さに変更したと聞いています。
樹木も武蔵野古来の配置とし、照明も明るすぎないようフットライト中心。またメンテナンスの重要性も説いていただき、夏には雑草を抜き、秋には落ち葉を拾うなど行っています。

田中

肝心のホタルですが、どこかから連れてきたのでしょうか。

小南

ここのホタルは「ヘイケボタル」で、2017年の冬に大場先生が皇居外苑の濠で環境省とともに生息確認したというヘイケボタルで、その後、ホタルの幼虫の一部を育てているものです。

田中

皇居にホタルがいたんですね!

小南

最初にホタルの幼虫のエサになるカワニナという巻き貝を放流し、そこにホタルの幼虫を放流しました。「古来生息し続けているヘイケボタルを死滅させるわけにはいかない」(大場先生)と、環境省と組んでプロジェクト化し、「東京ガーデンテラス紀尾井町」を運営する西武プロパティーズさんとの合同作業となりました。

田中

ホタルが成虫になるまでって早いのでしょうか。

小南

通常は幼虫期間が約1年あり、そのあとのシーズンで成虫になるそうです。環境が適していないところではさらに数年ふ化せず眠り続けることもあるとか。ところが私たちが放流した幼虫は、わずか半年ほどで成虫になっていったんです。

田中

環境づくりが実を結んだということですね。

LIG田中とヤフー小南が話している様子

小南

ほぼ毎日、どこで何匹出現しているかを記録していて、2017年5月11日から6月末までホタルがいたんです。

田中

そうだったんですね。去年このホタルの話を伺って7月頃に見に行ったんですが、一匹もいなかったんです……。

小南

7月ですか~、一般的には見頃の時期ではありますが、ここのホタルは眠りについていたのかもしれません(笑)。昨年の傾向からすると、今年も5〜6月あたりがピークなんじゃないかと思います。

田中

そういえばホタルというと、僕のまわりでも「見たことがない」って人が結構いるんですよ。

小南

ヤフーにも結構いましたよ。東京だからか、「このビオトープで初めてホタルを見た」という声が多かったです。またこの活動をキッカケに、ランチボックスをここまで持ってきて食べるようになったという社員も増えてきました。
また、ホタルのうわさを知った紀尾井町周辺の方々も足を運んでくださっていて、夜に一緒に観察することもありました。このビオトープ活動を一緒にやっていこうと、これを機に新設された近隣の中学校の理科クラブとの定期的な交流もできてきています。今後はこの地域の人を招いてのイベントも開催していきたいと考えています。
そのためには、安定してホタルが見られるようにせねばなりません。今のところ「2017年に放流したホタルが出現した」というだけなので、2年め、3年めとホタルが定着してくれることが重要なポイントです。

田中

ホタルをバロメーターのひとつとして見ながら、自然環境の維持に努められるわけですね。

LIG田中とヤフー小南が話している様子

小南

生物にとって居心地のいい場所というのは、人間の判断だけではできませんからね。ホタルの放流を通じて、これからも探っていくことになるかと思います。

田中

快適な仕事環境のための働きかけと、地域との交流。ビオトープでヤフーが果たす役割は相当大きいですね。

小南

以前東京・六本木にオフィスを構えていた頃まで、「地域との交流」はほぼ皆無でした。この交流を機に、改めて「地域の皆さんに愛される企業」であることの重要性を感じさせられています。

田中

ホタルの次の構想はありますか?

小南

案はいろいろ出ているのですが、まずは私たちが今いる場所で、関わっているところでできる活動を、と考えています。その点で言うと、全国各地にあるヤフーの拠点でできる環境への取り組み、というのも可能性のひとつだと思います。

PROFILE

顔写真:大場 信義先生

大場 信義
1945年生まれ、神奈川県出身。東京理科大学卒。理学博士。大場蛍研究所所長、産業技術総合研究所客員研究員、横須賀市長井海の手公園ソレイユの丘ホタル館顧問。横須賀市自然・人文博物館主任学芸員、中国科学院動物研究所客員教授、神奈川大学総合理学研究所客員教授を経て現在に至る。

ホタル博士の声が取り入れられた「ビオトープ」でヤフーが目指すべきもの

ビオトープの画像
東京にこだわった水辺を実現したビオトープ

「ビオトープをつくるのであれば、東京にこだわった水辺にした方がいい」

東京ガーデンテラス紀尾井町に水路をつくる計画があり、どういったものにすべきかと意見を求められて、こう申し上げました。とってつけたようなものではなく、草木を含めて「環境保全」を目指す東京にこだわったものに徹するべきだ、と。

そこで出たアイデアが「緑の回廊をつくろう」というものでした。都心の緑は皇居や新宿御苑と並んでおり、紀尾井町にもそういう場所が生まれたら、緑がつながる拠点となる、と。設計段階から関われたので、自然から教えられたもの、経験則を落とし込んでいきました。川にたまりをつくったり、川の幅や水量にあわせて曲線を描かせたり。それがこの「光の森」なんです。

自然再生を念頭に、自然に沿った形であることを第一とすること。人間の思惑を実現しようとすると自然としてのあるべき姿にはならないので、そこは徹底しました。

都心部における環境問題のひとつに「照明」があります。防犯という観点では必要かもしれませんが、必要以上の照明を抑えるようにすればエネルギーコストも下がりますし、他の生物への影響も少なくて済みます。明るすぎると、ホタルもいなくなってしまいますからね。生物がいなくなるというのは命の営みをとめることで、今はなくても必ず人間に影響を及ぼすようになります。「これって、あのときの影響によるものなんだ」と、何かが起こってから悔やんでも遅いんです。自然は先生、その自然からのメッセージを早めに受け止めて対応していかねばなりません。

ビオトープとは考え方であり価値観であり、対応の仕方、そして子どもたちから世代を超えて共有する場でもあります。これが東京の真ん中にあり、周囲の緑地空間とつなげていくことでさまざまな問題解決へ結びついていくのです。特に学校教育を通じて伝承、継承していくことが重要だと考えます。そうしないと、文化そのものが廃れていきますからね。

その点で、ヤフーの近くにある麹町中学校の生徒さんもこの活動に加わられたというのは大きいですね。私自身も中学校を対象に250回以上、小学校では18年継続しての環境活動を行ってきました。それが地域の特徴になっていったんです。「継続は力なり」という言葉のとおり、続けられる仕組みを考えながら、想いを持って長く取り組んでいく。たとえば、地域のシニア世代といったキーパーソンをつくって巻き込んでいき、さらに学校を共鳴させる……という働きかけですね。継続した取り組みに対して人は動きますし、そのなかから学びを得ていくんです。

そんなビオトープ活動を義務化してしまうと、周囲への負担や負荷は大きくなってしまいます。だから「楽しみながらやれる仕組みづくり、雰囲気づくり」は常に意識しています。ホタルを手のひらに乗せてみると、ボワっと美しく光って「きれい」「かわいい」と盛り上がります。そんな「楽しさ」は欠かせない要素だと考えています。そういう意味で、ホタルはヤフーのビオトープ活動におけるシンボルともなれると思っています。

ヤフーのビオトープ活動の目標は、立場に関係なくすべての人が穏やかに和やかに、幸せになれることだと思っています。文化を継承していくことへの働きかけが、その幸せにつながるのでしょう。そしてヤフーが「調和」を世の中に発信する。誰にでもできることではないので、だからこそそこを楽しみながらやって欲しいと期待しています。

LIG田中がビオトープをバックに写っている写真

昨年このビオトープ活動をお聞きしたとき、「確かにここ何十年もホタルを見る機会がなかったなぁ」と思わされました。都市開発が進むここ東京で、ふとホタルを見かける……そんなシーンが生まれようとしていること自体が驚きですが、こうした活動が広がっていけば、生物との共存そのものが当たり前となる街づくりが出来上がってくるのかもしれませんね。

ヤフーの取り組みは、そんな文化の継承を担う起点となるものと言えるかも。そんな大きな想いを感じ取りつつ、ここ東京ガーデンテラス紀尾井町まで今年のホタルを見に行こうと思います。

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