プレスリリース

ヤフー株式会社

Yahoo! JAPAN、ディープラーニングに特化したスパコンを開発 スパコンの省エネランキング「GREEN500」にて世界第2位を獲得

~従来の約225倍の処理性能により、パーソナライズ精度の飛躍的向上を目指す~

ヤフー株式会社(以下、Yahoo! JAPAN)は、株式会社ExaScaler(以下、エクサスケーラー)、HPCシステムズ株式会社協力のもと、ディープラーニング活用に特化した省エネ性能の高いスーパーコンピュータ(以下、スパコン)「kukai(クウカイ)」を開発し、本日発表されたスパコンの省エネ性能ランキング「GREEN500」において世界第2位を獲得しました。

Yahoo! JAPANのディープラーニングは、2015年5月、自社で開発した音声認識エンジン「YJVOICE(ワイジェイボイス)」へサービスとして初めて実装し、以降、ニュースなどコンテンツ配信の個別最適化(パーソナライズ)の精度向上のためにも導入しています。
これまでは、ディープラーニングの処理に膨大な電力消費が求められ、かつ諸外国に比べて国内は電気料金が高いこともあり、ランニングコストの負担が大きいなどの理由で、一部での利用に限られていました。しかし、ディープラーニングによるパーソナライズ精度向上の有効性が明らかになってきたことを受け、ディープラーニング活用に特化した省エネ性能の高いスパコン「kukai」を開発する運びとなりました。

「kukai」は、GPUを使用した従来の社内環境と比較して、演算処理性能が理論上約225倍になります。消費電力あたりの処理性能も世界トップクラスの値を記録しており、より大規模なディープラーニング処理を、短時間かつ低コストに行えます。また、同規模の最新GPUサーバを使用した場合と比較しても、15%程度の電力コスト削減につながる見込みです。

なお「kukai」は、Yahoo! JAPANグループである株式会社IDCフロンティアと共同で運営する「白河データセンター」にて運用してまいります。

Yahoo! JAPANでは、より多くのサービス・機能においてディープラーニング活用を進め、広告やニュース、インターネット通販などコンテンツ配信のパーソナライズ精度向上を通じて、「日本で暮らす人のことを一番知っていて、最上級のおもてなし・課題解決を提供できるサービス」を目指してまいります。

■「kukai」の技術的特徴
「kukai」は「GREEN500」において、消費電力あたりの処理性能として世界第2位(2017年6月現在)の14.04 GFLOPS/W(1ワット当たりで処理できる1秒間の演算回数)、処理性能として460.7 TFLOPS(1秒間の演算回数)を記録しました。2016年11月発表の「GREEN500」では、世界最高の省エネスパコンが9.5GFLOPS/Wを記録し、消費電力あたりの処理性能で10GFLOPS/Wを超えることが2017年上半期のスパコン業界における目標の一つとなっていました。その目標を大きく上回る値を記録できた背景には、以下3つの要因があります。

1.最先端の冷却技術「液浸(えきしん)」を採用
CPUやGPUといった演算処理装置は、処理を行うと熱が発生するため、通常はファンなど空調を活用した冷却によって処理能力を維持しています。「kukai」では空冷ではなく、電気を通さない特殊な液体に直接ハードウェアを漬け込む「液浸」を採用し、冷却効率を高めています。GPUを用いたディープラーニング処理は、大量の熱を発生させるため、空冷と比べて冷却効率の高い「液浸」がパフォーマンスを高める一因として有効に働いています。

2.NVIDIAの最新GPU「Tesla P100」を160基搭載
「kukai」では、NVIDIAの最新GPU「Tesla P100」を160基搭載しています。搭載にあたっては、「液浸」による効率的な冷却を可能にするエクサスケーラー独自の高密度ハードウェア実装技術を用いて、GPUの効率稼働を実現しています。

3.機械学習を組み合わせた独自のチューニング理論を構築
スパコンの開発は、ハードウェア装置の構築だけでなく、ソフトウェアによるチューニングを行うことによって、初めて効率的に稼働します。「kukai」の開発においては、機械学習の専門家として著名な東京大学 大学院新領域創成科学研究科の佐藤一誠講師協力のもと、機械学習によるチューニングを行うことで、処理効率のさらなる向上を成し遂げられました。なお、具体的な手法については今後発表予定です。

■Yahoo! JAPANがスパコンを開発する理由
ディープラーニングを筆頭としたAI技術は、「アルゴリズム」「ビッグデータ」「マシンパワー」の三要素が揃うことが重要といわれています。

「アルゴリズム」については、Yahoo! JAPAN研究所を中心に先端研究を進め、その結果データサイエンス領域のトップカンファレンスにおいて多数の論文採択実績があるなど、国内トップクラスの研究力を保持しています。
「ビッグデータ」についても、「Yahoo!検索」「Yahoo!ニュース」「Yahoo!ショッピング」「ヤフオク!」「Yahoo!ウォレット」など国内有数のメディア・コマース・金融サービスを運営する裏側で、幅広い種類の膨大なデータを蓄積しています。
一方で「マシンパワー」については、分散処理技術「Hadoop」など高度な演算処理技術を保有しているものの、ディープラーニング活用に適した処理技術は保有できていませんでした。
そのような環境を踏まえ、大量の電力消費が求められるディープラーニング活用を推進していくために、省エネ性を追求したスパコン「kukai」を開発する運びとなりました。

なお、Yahoo! JAPANは、2015年4月に全社のデータ資源を統合的に扱う横断組織として「データ&サイエンスソリューション統括本部」を新設、2017年4月にデータ利活用を推進するチーフデータオフィサー(CDO)を設置し、全社をあげてビッグデータの利活用を進めています。