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企業情報

2023.07.19

話を聴いてもらうと、なぜ心が楽になるの? 上手な弱音の伝え方は? ソフトバンク&ヤフーのぴあさぽ対談

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産業カウンセラーや国家資格キャリアコンサルタントの有資格社員によるボランティアプロジェクト「YJぴあさぽ」は、社員と「対話」し寄り添うことを目的に、「2on1」「オープンダイアローグ」を約1年半続けてきました。
今回は、2008年から「ピアサポーター制度」を導入しているソフトバンク(※)でピアサポーターとして活動している寺岡さん、杉村さんとYJぴあさぽの2人が「話を聴いてもらうとなぜ心が楽になるの?」「対話するときに心がけていること」などを語り合いました。

※ソフトバンク株式会社のピアサポーター制度:
産業カウンセラーやキャリアコンサルタントなどの資格を持つ社員が、一定の選考とトレーニングを経て、ボランティアとして職場内の身近な相談役となる制度を2008年から導入している。

寺岡 久美子(てらおか くみこ)さん
ソフトバンク株式会社 法人事業統括 法人マーケティング本部で法人戦略企画を担当、シナジードライブセンターも兼務しグループシナジー推進も担当。
保有資格:産業カウンセラー、国家資格キャリアコンサルタント、BCMA認定キャリアメンター®、メンタルヘルスマネジメント検定Ⅱ・Ⅲ種、認定子育てハッピーアドバイザーなど
杉村 亜矢(すぎむら あや)さん
ソフトバンク株式会社 IT統括 IT&アーキテクト本部で主に国内通信事業を支えるシステムの開発・保守業務を担当。副業でヨガインストラクター、社内の健康促進施策として定期的にクラス開催中。
保有資格:産業カウンセラー
戸高 明生(とだか あきお)
ヤフー株式会社 コーポレートグループ PD統括本部でHRBP(HRビジネスパートナー ※)を担当。
保有資格:産業カウンセラー、米国CCE, Inc.認定GCDF-Japan キャリアカウンセラー、経営学修士、国家資格キャリアコンサルタント、女性の健康推進員。
※HRBP:
「Human Resource Business Partner」の略。人事の総合的なプロフェッショナルであり、人材開発と組織開発の両面から、ビジネス成長に寄与できるパートナーとして業務を行う。
青黄 由美子(あおき ゆみこ)
ヤフー株式会社 CISO室 セキュリティガバナンス室で教育啓発を担当。
Zホールディングス株式会社 GCTSO プライバシー&セキュリティ統括部でグループ会社のセキュリティ施策支援を担当。
保有資格:国家資格キャリアコンサルタント、女性の健康推進員

聴くときにはまず、受け止めることが大切

ぴあさぽとして活動されてきたみなさんは、子育てとの両立に悩まれている方、仕事のやりがいのところで悩まれている方からの相談を受けることが多いそうですね。そのような際にはどのような問いかけをされていますか?

青黄:
私も子育て中の立場なので、子育てとの両立に悩んでいる方には、「よくわかります」とつい言ってしまいます。
問いかけるときは、「どんなところが、今きついと感じていますか?」と、具体的な悩みについて話していただくことで、少しでも楽になりそうでしたら聞いています。

寺岡さん:
子育てと仕事の両立で悩んでいる方はすごく頑張り屋さんが多いので、まず「とても頑張っていますよね」とお声がけをします。
それから「どういう状態だと理想の両立の状態だと言えそうですか?」と聞くこともあります。

杉村さん:
私もお2人と同じで、仕事と子育ての両立をする上で時間管理をされていることなどに対して「すごい!」と感じたことをまずお伝えします。
そこから、「何が一番大変ですか?」と聞くことで、今一番悩んでいることやもやもやしていることをお聞きすることが多いですね。

戸高:
仕事のやりがいや、異動や中途入社された方の仕事に関する悩みを持っている方にも、頑張りたい気持ちや何とかしたい気持ちを受け止めつつ、労いの言葉を伝えます。
その上で、「今の状態についてどう感じていますか?」と聞くことで、その方が感じているしんどさをまず受け止めるようにしています。

相手が話しやすくなるために何か意識されていることはありますか?

寺岡さん:
いきなり本題に入らず、天気の話など雑談を少して場を温めます。
それから「今日のこの時間はあなたのための時間です。なんでも好きなことを話していいので遠慮なくお話しくださいね」とお伝えしています。

杉村さん:
なかには「すぐ(本題を)話したい!」という方もいますが、相談に来ることへの心理的ハードルがあった方には、少しでも話しやすくなるよう、自己紹介をし合います。
「この1時間ではもしかして悩みのすべてを話せないかもしれないけど、少しでも話せたらいいな」というような気持ちでいます。

戸高さん:
話すハードルを下げるという意味では、Zoomの画面上で話すことが多いので、できるだけ笑顔でいることを心がけています。
私たちYJぴあさぽは、今はたまたま「聴く」役割をしているだけで、あくまで同僚としてサポートしたいと思っています、と伝えるよう意識していますね。

青黄:
お話していて気づいたのですが、寺岡さんの背景画像のライトがとてもすてきだと思いました。お花や光を見ると癒やされますが、これはあえて設定されていますか?

寺岡さん:
はい、自分で撮影したライトとミモザの写真を使っています。
ピアサポーターの活動では女性とお話しすることが多いので、ミモザは国際女性デーのお花でもあり、話題のきっかけにも使える花ということも理由です。
オンラインで話すときは背景も大事だと聞いたことがあるので、自分の雰囲気も伝えられる背景を設定しています。

寺岡さんがZoom背景として設定されている写真

聴くときに心がけていること
・話しやすくなるよう、自己紹介や天気の話からスタートすることも
・今の状態についてどう感じているか聞き、受け止める
・あなたのための時間だと伝える
・オンラインで話すときは、Zoom背景の画像も工夫する

「雑談」とぴあさぽとの「対話」の違いは?

話を聞いてもらうだけで心が楽になったように感じるのはなぜでしょうか? 
また、ぴあさぽのみなさんとの対話と「雑談」との違いを教えてください。

寺岡さん:
雑談と違う点は、まず、何を話しても否定されないという点が大きいと思います。
たとえば、仲のいい友達と雑談するときは、冗談交じりにちょっと否定されたり「それ駄目じゃん」など言われたりすることがありませんか? そういう時、心の底では、「ちょっと駄目出しされてしまった」と思ってしまうのではないでしょうか。

やはり、否定されずに何でも話せることで気持ちがすっきりするし、受け入れてもらえているという感覚につながっていくのではないかと思います。

青黄:
「話す」だけですっきりするのは、心の中のあれこれが、言語化されて整理されるからだと思います。

また、雑談時には、「自分だけが話したら悪いから相手の話も聞かなくては」と相手への配慮をしながら話します。ぴあさぽとの対話時間は、自分だけが話してもいい時間です。そのため、自分の心に集中して向き合う時間にしやすいのではと思います。

杉村さん:
自分がカウンセリングを受けて思ったのは、誰かが自分の話を集中して聞いてくれると、話して言語化したことが次のステップにつながりやすいということです。話すこと、そして聴いてもらうことで、自己解決力も上がると感じています。

課題がすぐに解決しなくても、自分の心の持ち方を変えるだけでも課題への向き合い方が違うと実感していて、それが、聞いてもらうと一番楽になるポイントなのではないかと思っています。

戸高:
普段の会話では、お互いのキャッチボールになるので、親身になって自分の話にずっと耳を傾け続けてもらえることは、なかなかないと思います。また、自分が話したいことをずっと最後まで聞いてくれる相手が同僚だという点もポイントだと感じています。

私たちぴあさぽは、「あなたが今つらいと感じているのはこういうことについてですか?」「ここまではこういう認識で聞いています」というコメントを途中で挟むことで、理解した内容を相手に伝えることを意識しています。
そのように認識した内容をこまめに確認していくことで、話したことがどう伝わっているのか再確認でき、次の話にも進みやすくなるのではないかと思います。

ぴあさぽとの「対話」は「雑談」とどう違う?
・何を話しても否定されない
・キャッチボールではなく、自分だけが話してもいい
・話した内容を確認することで、次のステップにつながりやすい

1回の面談時間がソフトバンクのぴあさぽは約1時間、ヤフーは30分という違いがありますね。

寺岡さん:
私たちは、一応1時間の枠はセットしますが、あまりはっきり時間を決めてはいません。
逆にヤフーのぴあさぽは、30分で一回話を聴き終え、次のステップに向けられるように対応されているのですごいなと思っています。

戸高:
時には、30分だと短いと感じることもありますが、私たちは最後の5分をまとめの時間にしていて、その時間で「もう少し、こういうことを話したかった」「今後に向けてどうしていくか」などを確認しています。また、私たちぴあさぽが感じたことを伝える時間にもしています。

あえて最後の5分を区切って確認することで、30分でもある程度話し終えたと感じてもらい、次のステップに進めるようになっていることを目指しています。

それでも時間が足りないときは、また申し込んでくれる方も多いです。その際に別のぴあさぽメンバーに申し込むことで、いろいろな価値観にも触れられるのではないかと思います。

上手に弱音を吐くためにできること

みなさんのような聴くプロが周りにいないとき、「聴いてもらう」ためにはどうしたらいいですか?

杉村さん:
相談できる人をあちこちにつくっておくのもおすすめです。
私も、会社の中で愚痴も含めて相談できる先輩がいます。その先輩には話しづらいことは友達やプライベートの先輩、家族に話します。いつもどこかに話を聞いてくれる人がいる、そういう信頼関係をつくっておいてほしいと思います。

「これはこの人に話したいな」と思える人がいると、私はけっこう楽だと感じるのですが、みなさんはどうですか?

寺岡さん:
たしかに、分野別で話す人を決めるのもいいですね! 
私は自分と対話するのも有効だと感じているので、思ったことを手帳に書き出す「ジャーナリング」をよくしています。
「自分は今、こんなことを気にしている」「こんなことを考えている」と可視化された文字を見ることで、自己解決できることもあるので、自分との対話の時間も意識して確保しています。

戸高:
自分も昔はそうでしたが、弱音を吐いたり、弱いところを見せたりすることが、あまりよくないこと、と思ってしまいがちな方も多いのではないでしょうか。

でも、弱音はむしろ、吐かないより吐いたほうが楽になります。 「弱音を吐かない方がいい」という価値観がもしあるなら、それはリセットできるといいですね。

青黄:
たとえば、人ではなくときには「生成AI」に吐き出してみるのはどうでしょうか?
私の目下の悩みは、3人の子どもたちがお弁当についてそれぞれ注文をつけてくること。
「私はお弁当屋さんじゃないよ!」と腹が立って、どうしたらいいか聞いてみました。

そうしたら、「最も重要なことは、子供たちとのコミュニケーションを大切にすること。彼らの意見や要望を尊重し、一緒に解決策を見つけること」とアドバイスしてくれたので「いいこと言うな~」と思いました(笑)。

「弱音」を吐くためにはどうしたらいい?
・弱音は吐いたほうが気持ちは楽になる
・相談できる人をあちこちにつくっておく
・思ったことを書きだしてみるだけでもいい
・人が無理なら、ときには生成AIに吐き出しても

聴くときに心がけたいこと

最後に、私たちが同僚や友だち、家族などから「話を聴いてほしい」と言われたら、どんなことを心がけたらよいでしょうか?

戸高:
自分の価値観はいったん置いておくこと。そして、「聞くことでたぶん相手は少し楽になるから、しっかり聴こう」と思うことでしょうか。

家族や友人などの近い関係でも、相手の価値観をわかっているようでわかっていないと思います。「この人はこういう人だ」と決めてしまっているのではないでしょうか。

その人が困っていることに向き合うときは、これまでの価値観やその人に対するとらえ方はいったん置いて、まずわかってあげようとすることが大切かもしれません。

また、たとえば「月曜日よりは金曜日のほうが心に余裕がある」など、自分のコンディションと向き合うことも大切だと思います。自分がいらいらしていたり余裕がなかったりするときに聞いても、内容があまり入ってこないですし、寄り添うのが難しいと感じると思います。
あらかじめ聴く時間を決めて、そこに向けて自分のコンディションをできるだけ整えるように心がけています。

青黄:
「話を聴いてほしい」と言われて「聴いてあげたい」となったら、まずは「相手の話に全集中」ですね。
その内容に「共感できない」場合でも、「〇〇さんは、〇〇だと感じてらっしゃるのですね」と、相手の状態を受け止めてあげるだけでもいいと思います。

気の利いた言葉は何だろうと考えたり、解決策をついつい提案したくなったりしますが、そこはぐっとこらえることも時には必要です。とはいえ、そう頭ではわかっていてもなかなかできないこともあるので、まだまだ修行が必要だなと思っています。

杉村さん:
チームメンバーとの1on1ミーティングやぴあさぽの面談など、相手と1対1で向き合う時間は1日2人までにする、というマイルールがあります。やはり、自分がしんどくなってしまったら、しっかり相手と向き合えないと思っているからです。

また、相手が何を思ってその話をしているのか、相手の立場になったことを想像しながら、関心を持ちながら耳を傾けるという姿勢が大切だと思います。
たとえば、途中で話をさえぎったりして自分の意見を押し付けたりしていないか。いつの間にかどちらが相談者かわからない状態にならないように、相手の話を最後まで聴くこと。
みんなが「人の気持ちに寄り添う」「その人がどう感じているかを考える」ということを意識しながら、お互いに思いやりを持って接することができたら素敵ですよね。

寺岡さん:
私も、面談は1日に1件か2件にしています。また、相手にしっかり向き合える時間帯を選ぶことも意識しています。
対面の時は表情やアイコンタクト、聴く姿勢も意識すると相手もより話しやすくなると思います。オンラインの場合のアイコンタクトは難しいですが、PCカメラのすぐ下に小さく相手の顔を配置することで、目線が合いやすくなると思います。

また、「私が解決しなくてはいけない」とは思っていません。「聴く」ことでサポートをさせていただき、ご本人が自分自身でも気づいていただけるよう、第三者としてのフィードバックや視点の投げかけをしている、という気持ちです。

自分に近い立場の人ほど、「問題を解決してあげたい!」と思ってしまいますが、相手はただじっくり聴いてほしいだけの場合も多々あると思います。
相手の言葉を繰り返したり、気持ちを拾って伝えたり、「こういうことなんですね」と要約して伝えたりするなど「傾聴」にまずは徹することで相手の話をしっかりと聴くことができると思います。

「話を聴いてほしい」と言われたら?
・自分の価値観はいったん置いておく
・自分のコンディションを整えてから聴く
・対面の時は表情やアイコンタクト、聴く姿勢も意識する
・「問題を解決しなくてはいけない」とは思わない

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