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企業情報

2023.03.15

等身大のマネジメント層と「対話」するオンラインイベント「TAKIBI(焚火)」

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今回は、ヤフーのメディアサービス(ニュース、天気・災害、スポーツナビなど)を運営する、メディア統括本部で実施している対話型オンラインイベント「TAKIBI(焚火)」(以下「TAKIBI」)をご紹介します。

良いサービスづくりのためには、マネジメント層や同僚の考えを知り「対話」することでお互いの理解を深めることも大切です。ただ、ヤフーは2020年からフルリモート前提の勤務に移行しオンライン中心の働き方になったことで、次第に「組織の戦略や方針などが浸透しづらい」「対面での対話や雑談が減っている」などコミュニケーション面の課題も生まれてきました。
そのような課題を解決するため、どのように「対話が生まれる」オンラインイベントを実施しているのでしょうか? そのために工夫していること、オンラインだからこそできた取り組みなどを聞きました。

Yahoo! JAPANトップページ、Yahoo!ニュース、Yahoo!天気・災害などを運営しているメディア統括本部の経営企画部経営支援チーム。経営支援や事業推進、社内向けの施策を担当している。左から、三浦、加藤、小山、安田。
三浦 将彦(みうら まさひこ)
2008年入社。営業、営業企画、営業推進、企画、マーケティング、インナーマーケティング、ビジネス開発、事業推進などに関わったのち、現在の業務を担当。

加藤 史恵(かとう ふみえ)
2016年入社。前職ではウェブサイトやアプリの企画、ディレクター業務を担当。ヤフーでは女性向けメディアのサービス企画、分析、事業戦略などを担当。メディア系サービス横断でのKPI分析などを担当後、現在の業務を担当。

小山 壮士(こやま そうし)
2014年入社。ミュージシャンになるために大阪から上京。20代は芸能活動、30歳で引退し、一般企業数社を経験した後ヤフーへ。ヤフーでは主に営業や事業開発、ビジネス開発などの社外向けの業務に関わったのち、経営支援チームリーダーに。

安田 美紀(やすだ みき)
2007年入社。広告本部で営業サポート業務を担当後、インナーコミュニケーションに関わる。その後Yahoo!クリエイターズプログラムのSNS運用や広告管理・運用などのマーケティングを担当。産休・育休を経て2022年5月に復帰し、経営支援チームに所属。

オンライン中心の働き方で変化した、コミュニケーションの形と課題

小山:
私たちのチームが所属している経営企画部は事業戦略と組織戦略、大きく2つの役割を担っており、私たちは組織戦略を担っています。具体的には、組織活性や、戦略ビジョンの浸透など、組織のコンディションを可視化して、課題を解決するためにさまざまな施策を行います。また、経営会議やキックオフ、社内の表彰制度などのイベントも運営しています。

コロナ禍前は、主な仕事としては経営会議やキックオフの運営などの役割がメインでしたが、オンライン中心の働き方になり、新たな課題も生まれてきたことで役割が増え、組織戦略により力を入れて活動するようになりました。

三浦:
オンライン中心の働き方になり、同僚や上司と会う機会が少なくなったことで、まず、業務に関する気軽な会話が減りました。コミュニケーション量が以前より減ったことで、関係性が少し離れてしまったり、コミュニケーションの取り方が変わってきたりといった変化を感じています。

安田:
気軽なコミュニケーションの機会が減ったことで、業務を進める上で感じたちょっとした疑問が以前に比べるとたまりがちになってしまうことも。その結果、次第に効率的ではない場面も生まれてきたように思います。

加藤:
リモートワークでは、隣の部署や同じチームの人がどんなことをしているかを知ることが難しくなったり、入ってくる情報がどうしても少なくなったりしがちです。意識して情報を自分から取りにいかないと、どんどん知らないことばかりになってしまうように感じます。

小山:
人間関係は、ロジカルなものではないと思っています。たとえば「この人はこんなバックグラウンドがある」という情報だけでは少し足りないのではないでしょうか?
会って話したときは、「この人はこんな風にあいづちを打つ人なんだ」「(話すときに)こういう癖があるんだ」などと感じますよね。これらの、文字では書けない「相手から感じる情報」は、信頼関係や人間関係を構築する上でとても大切です。

コロナ禍前は、チームメンバーの特性や性格などを理解する機会も自然と持つことができ、その上で業務を進めていくことも多かったと思います。ただ、オンライン中心の働き方では、「理解をベースとしたコミュニケーション」が少なくなるため、お互いの理解を深めるなど、人間関係を構築するには少し難しい環境なのかもしれません。

気軽なディスカッションがしにくい、相手のコンディションが見えにくいため少し無理なスケジュールで仕事をお願いしてしまった、などの小さな問題が積み重なることによって、長期的にはパフォーマンスが落ちてしまう可能性もあるのではないかと推測しています。

「等身大のマネジメント層」との対話型イベント「TAKIBI(焚火)」とは

対話型イベント「TAKIBI(焚火)」
目的:
・対話を通して個々の価値観に触れ、多様な考えがあることを知る
・マネジメント層と現場メンバーの距離を縮める

実施方法:
・Zoomのウェビナーにて実施
・業務に支障の少ない1時間程度の時間かつ任意参加での開催
・答えが1つとは限らない、できるだけ全員に関係するテーマ(「キャリア」「チャレンジ」など)を扱う
・統括本部長とテーマに関連するゲストをスピーカーに設定
・台本はなくフリートークで進行
・アーカイブ動画は残さず、生配信のみ
・視聴者には自由にチャット投稿をしてもらい、Zoomの投票機能なども利用(視聴者参加型)
・スピーカーへの質問攻めや、テーマに対する答えを導きだすのではなく、みんなの価値観や考えを共有する

安田:
オンライン中心の働き方になったことで、横の部署や隣のサービスが何をしているのかが見えづらくなりました。さらに、マネジメント層と直接会ったり話を聞いたりする機会が減り距離を感じるなど、コミュニケーションに関する課題を解決するために実施した施策の1つが「TAKIBI(焚火)」(※以下「TAKIBI」)です。

TAKIBIはみんなに関係するテーマで実施します。そのテーマについて議論をして答えを導くというものではなく、その人の価値観をみんなで受け取り、お互いの価値観をシェアし合うイベントです。
また、アーカイブ動画は残さず、生配信のみで実施していることも特徴です。その時間に参加したメンバーに生の声を届け、参加したメンバーは、チャットでコメントすることで生まれる「対話」を目的に始めました。

加藤:
メディア統括本部の本部長・ユニットマネージャーたちは、できるだけ情報をオープンにしたい、みんなの意見も取り入れたいと考えている人が多かったので、この取り組みがスムーズに実施できたのかもしれません。
まるでキャンプに行き本物の焚火を囲んでいるときのように、少しクローズドなイベントで直接メンバーの意見を聞けることもメリットだったようです。

一方的に発信するイベントとは違い、Zoomのチャット機能を使って参加者の意見を気軽に投稿してもらったり、投票機能を使ってその場でアンケートを実施したりして、現場のメンバーが「今どう思っているのか」声を集めています。

小山:
コロナ禍による状況の変化や、目まぐるしく変わる市況下では、マネジメント層も常に難しい判断を強いられますし、時には苦悩し迷うこともあると思います。そのような「等身大の姿」を見せることで、現場のメンバーと同じ思いを抱いていることを知ってもらったほうが、一緒にサービスを作っていくための関係値がぐっと近くなるのではないでしょうか。

「マネジメント層の等身大の姿を見せる」ために私がやっていることのひとつは、「いじる」ことです。具体的には、トーク番組などで、司会がゲストの人柄を知ってもらうための「いいツッコミ」をするようなイメージですね。

加藤:
たとえば、マネジメント層だけが出て話した場合、どうしても、上の立場の人が現場メンバーに一方的に伝えるような形になってしまうのではないでしょうか。
小山のような、その場でフラットな立場で話せる役割の人をセットにすることで、2人の素に近いやりとりや、リラックスした雰囲気の会話を横から見ているようなイベントにできているのかもしれません。

小山:
何回かやってみて確信したのは、会社で上の立場に行けば行くほど、孤独でもあるんですよね。上の立場だということで距離を置かれてしまい、現場のメンバーと気軽に話せないことを寂しく感じていると思います。だからこそ、「この人はこういうキャラで、もっとみんなからもいじられたい(気軽に声をかけてもらいたい)と思っている」と感じてもらえるイベントにすることを意識しています。

TAKIBIの前に実施していた、ビジョンや戦略を発信するチャンネルでは、前半に現場メンバーから寄せられたマネジメント層に関するプライベートなエピソードを紹介する時間を設けました。
マネジメント層を知るきっかけが少しでも増えればと思い、現場メンバーにヒアリングをしてネタを集めることもしましたね。
いじられている側も「まいったな(笑)」と笑ってしまうような楽しいエピソードを集めることを心がけました。このコーナーでマネジメント層に親近感が湧いた、距離が縮まった、という声もありました。

安田:
この声を受けて、TAKIBIの冒頭ではちょっとしたクイズコーナーを設けることもあります。「(統括本部長の小林は)学生時代に何のバイトをしていた?」など、業務とは全く関係ない内容でクイズを出して、参加者はチャットに答えを投稿するというものです。これをきっかけに参加者の気持もほぐれて、会話も生まれやすくなったと感じます。

小山:
私たちがもし同じ船の乗組員だとしたら、これまで「右にかじを取れ」と言われていたのが、いきなり「左に向かえ」と指示されたときに、操縦室の船長がどういう人なのか全く知らなかったら不安ですよね。

「操縦室にいる船長はこういう人」「こういう価値観のもとで判断している」などがわかっていたら、「あの人はこういう時にはこういう判断をする人だから確かにそうだ」また時には、「これは少しあの人らしくない判断だな、自分だったらこう思う」などの自分事になりやすいのではないでしょうか。

組織において方向性や方針を示す人が、ある程度自分の価値観や考え方、人柄などを知ってもらうことは、そういう意味でもとても大切なことだと思います。
とはいえ、自分だけで「等身大の自分」を伝えることは難しいですよね。そんなときは、自分のことをいじってくれる、気軽にツッコミを入れてくれる関係性の人をチームの中にあえてつくるのも、1つの方法かもしれません。

オンラインイベントならではのメリット、一体感を出すために工夫していること

安田:
まず、各部署の本部長やサービス責任者に出てもらうことで、自分が関わっている人の考えを知りたい、と思って参加してもらいやすくなると思っています。
イベントの中に仕事とは関係のない、「ちょっと面白い入り口」も用意することで、より気軽に参加してもらいやすくなっているのかもしれません。

加藤:
オンラインだからこそ聞いてくれる人も多いような気がします。たとえば、エンジニアは急な対応が発生することも多いので、リアル開催だったときはその会場まで移動して、完全に業務から離れてパソコンを閉じることが難しいこともあったようです。

でも、オンラインであれば、聞きながら急な作業が発生しても対応しやすいので、参加のハードルが以前より下がっているかもしれません。実際に、参加者は開発担当(エンジニア)の割合も高いです。これはオンラインで実施しているメリットのひとつかもしれません。

小山:
これまでお話したイベントは、どれも任意視聴にしています。「見たい人が見ればいい」という位置づけにしているため、これを見ないと仕事ができないような情報は出していません。
でも、見ておくことで、マネジメント層の考えがより理解できる内容にしたいと思っています。「その時に同じ時間をともに過ごしてもらう」ことに価値をおいているので、今後もアーカイブは残さないつもりです。

ただ、人の興味やモチベーションなどをスコア化するのはとても難しいので、この取り組みの成果や効果の可視化はしにくいと思っています。「ここを直したらこの数値が上がる」という単純なものではなく、人がやりがいを感じるにはいろいろな要素があります。
可視化は今後の課題ですが、定性的な評価として、以前よりメンバー同士やマネジメント層とメンバーの会話が増えている、などの変化は確実に出てきています。

三浦:
メディア統括本部キックオフ(業務に関する方針などを共有)の視聴数などが伸びてきていることも、この取り組みの副次的な効果かもしれないと思っています。
TAKIBIのような対話型のイベントを通じて、マネジメント層の考えや人柄を知ったことで、興味を持ち始めたという人もいるのかもしれません。これは仮説ですが、実際に視聴数が上がっているのを見ると、そのような効果も現れてきているように思います。

安田:
これまで実施してきた取り組みによって、さまざまな発信の場、コミュニケーションが生まれる場ができました。今後はより掘り下げた数値分析を実施することで、さらに力を入れるべきところを明確にし、より理想に近い施策を作っていきたいと思います。

加藤:
TAKIBIでは、スピーカーが全員、焚火の背景にしています。さらにキャンプのような格好もして、自宅から参加しているのに、まるで同じ場所で焚火を囲んでいるような、リラックスした雰囲気にすることにもこだわっています。

三浦:
このイベントでは台本も作っていないので、トーク中にあるサービスの話題がでたら、そのサービス責任者を突然指名して、飛び入りゲストとして巻き込んでしまうことも。これも台本がないからこそできる良さかもしれません。

そして、アーカイブが残ると思うと、それを意識してあまり本音が言えない、という人もいるかもしれません。すべてフリートークで実施しアーカイブも残さない、その場限りのイベントだということも、安心して参加してもらえる理由の1つだと思います。
「この1時間を共有した人だけが同じ話を聞いた」という感覚も、関係性を深める効果があるのかもしれないですね。

オンライン中心の働き方だからこそできた「経営会議」のオープン化

小山:
コロナ禍前までは本部長とユニットマネージャーのみが参加していた「経営会議」をオープン化し現場メンバーも参加できるようにしたのも、オンラインだからこそできたことの一つです。「経営会議の内容を聞きたいと思ったらいつでも参加できる」というのも現場へのメッセージだと思います。

もちろん、オープン化することのリスクや懸念もありました。ただ、高速道路にたとえて考えてみると、高速道路で猛スピードを出す車がいても「こんなにスピードを出されるから高速道路を閉鎖しよう」ということにはならないですよね。そのように、信頼をベースにしていますし、オープン化するメリットのほうが多いと考えました。

経営会議の内容を直接聞くことで、決定事項だけでなく背景や経緯もわかるので「自分だったらこうする」などと自分事化して考えやすいことがメリットの1つです。
もしかしたら、「左にかじを取れ」とだけ言われたら腹落ちしないこともあるかもしれません。でも、「こういうことが背景としてあるから左に進んでほしい」と、決定までの経緯も聞いたら、腹落ちできることも多いのではないでしょうか。

この「情報を得ると、自分事にしやすくなる」ということを説明する時に、私はよくスイカ割りにたとえています。スイカ割りは、目隠しされて、「右」「左」「まっすぐ」などと周りの人に言われますよね。でも、自分が持っている棒がどれくらいの長さか、スイカとの距離がどれくらいあるか、スイカはどれくらいの大きさなのか、それらの情報が一切わからないので、ただ、「右って言われたから右に行けばいいのか」と思ってそこへ進むしかありません。

ですが、目隠しを外して、棒の長さやスイカとの距離などの情報が入ってきたら、自分で考えて「スイカまであと3歩だな」などと考えられます。これがまさに「自分事化」しているということではないでしょうか。
このように、経営会議をオープンにして戦略への納得感を高める、オープンな対話を通じて本部長やユニットマネージャーの人柄や価値観を伝える。そして、その情報を得てどう行動するかを自分事として考えるきっかけになればと思います。

先日、上長から「TAKIBIにはセラピー効果がある」と言われました。マネジメント層の等身大の姿、人柄、価値観などを親しみやすいテーマを通じて知ることによって、単なる情報摂取の機会ではない、どこか癒やしに近いような効果があるのかもしれません。
今後は、オンライン、オフラインのそれぞれの良さを生かした取り組みも検討していきたいと思っています。これからも、みんなが安心して参加できる「ちょっとホッとできる時間」をつくっていけたらうれしいですね。

※写真はイメージです

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