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2020.11.13

「これからのマスクを考える」ヤフーのビッグデータで読み解くニューノーマル

「これからのマスクを考える」ヤフーのビッグデータで読み解くニューノーマル

新型コロナウイルスの影響により、私たちの生活に欠かせないものとなったマスク。
ヤフーの検索データを元に分析、考察した「今あるマスクの課題や需要」「これから求められるマスク」について、ヤフー・データソリューションのデータアナリストであり、Yahoo! JAPANビッグデータレポートの編集長でもある池宮に聞きました。
※この記事は11月6日に開催したオンラインイベントの内容をまとめたものです

池宮 伸次(いけみや しんじ)
ヤフー株式会社 シニアデータアナリスト、ヤフービッグデータレポート編集長

2020年のマスクの検索傾向

今年は新型コロナウイルスの影響により、マスクのニーズがとても高まりました。2016年から2020年の5年間の「マスク」の検索数の推移を見てみると、これまでも、インフルエンザ予防や花粉対策が気になる時期にマスクの検索量は多くなっていました。ですが、それと比較しても、今年は9月までの集計で、すでに2019年の54倍以上の検索数となっていることがわかりました。

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以下のグラフは、青いラインがマスクの検索数の推移、オレンジのラインが、全国の新規陽性者数の推移です(期間:2020年1月から10月中旬)。
感染流行の第一波となった4月から5月よりかなり前の1月下旬くらいから、マスクの検索数が爆増していることがわかります。これは、市場からマスクがなくなってしまったことから、検索が増えたことが理由です。
一方で、7月から9月にかけて新規陽性者数が再び増えたときには、マスクの検索数はそれほど増えなかったという点が特徴的です。

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その理由を探るため、さらに詳細に見てみましょう。
次の表は、マスクの部分一致検索の月別特徴語ランキングです。1月から9月までの、「マスク」と一緒に検索されたキーワードをすべて抽出し、各月でどのようなキーワードが他の月に比べて多く登場しているかを分析しているものです。他の月に比べて特長的に出現回数が多かったキーワードランキングとして見ていただければと思います。

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1月は「売り切れ」などのワードが入っていますが、その後マスクの検索数が爆発的に増えた時期には「入荷」「作り方」「在庫」「いつ」「予約」など、入手するための情報を求める検索ニーズが非常に高かったことがわかります。
その後、5月くらいからはマスクが店頭に並び始め手に入るようになってきたこと、また、政府より布製マスクが各家庭に届いたことなどで、検索傾向が変わってきます。
そして、6月くらいからは「夏」「子ども」「型紙」などのキーワードが増えてきています。6、7、8月はマスクによる暑さ対策として「冷感」というキーワードも入ってきています。
最初はマスク自体が不足していたため入手するための情報を得る検索だったものが、次第に手に入るようになってきて、自分により合ったものや、夏の暑さ対策ができるマスクを手に入れたい、という需要に変わってきたことがわかると思います。
9月には「ケース」「サイズ」「洗える」「スポーツ」と言った、屋外でのマスクの取り扱いや、洗濯して再利用したいといったニーズも特徴的に表れてきていることもわかります。また、「飛行機」というキーワードは、飛行機でマスクを着用していなかった方が降ろされたというニュースがあったことから、飛行機の中では着けるべきかを調べたり、そのニュースそのものを調べたりした方が多かったために増えていたようです。

今回、マスクにおけるニーズや今後増えてきそうなニーズの分析をするにあたり、マスクが今現時点においてどういった課題を抱えているかを、ビッグデータから抽出する取り組みを行ってみました。
課題をビッグデータから抽出する手法の一例として、「共起ネットワーク」と呼ばれる手法があります。これは、ニーズが高いキーワードだけをうまく抽出してきて可視化する、ネットワーク上に落とし込むことでアウトプットを得るという手法です。

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この手法を用いることで、たとえばマスクについては「暑さ」「寒さ」についての悩みに関連したネットワークや、子ども向けにマスクを手作りした方がいいのかという悩みのネットワーク、マスクによる肌荒れなど美容系の悩みのネットワークなどが表れてきます。このようにマスクに関する課題のなかで、キーワードが近しいものを、ネットワークを結び付けるという手法で、ユーザーの課題を見つけ出る取り組みを行っています。

今回、マスクに対する悩みや課題を抽出し、データ分析を行いました。一例ですけれども、子供用のマスクと大人用のマスクの検索傾向の比較もできます。子供用であれば「手作り」や「簡単」「使い捨て」、こういったニーズが結構多いということが分かりますし、右側のほうの大人用マスクに関しては、「ぜいたく」「かわいい」「プレミアム」などのニーズが多いということがわかります。
このような対象ニーズにおける課題の比較にもビッグデータの分析が非常に向いていると思います。

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ビッグデータが語るマスクの課題

今回の分析の結果、マスクに関する課題は大きく6つに分けられることがわかりました。

1)構造・機能的な悩み
まずもっともメジャーな課題として、マスクをずっとし続けることによる耳の痛み、サイズの調整が難しいという構造・機能的な悩みが挙げられます。また、マスクの裏表や上下がわからないというニーズも見受けられました。
マスクがピアスや眼鏡にひっかかってしまって困る、息をするとマスクが貼りついて不快、というような検索キーワードも思ったより多かったですね。

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2)肌に与える影響
これは2月くらいからすでに多かったのですが、マスクにファンデーションなどがついてしまう、鼻が痛い、ニキビができてしまう、といった検索キーワードが挙がっていました。話すときにマスクが動くため肌がこすれてしまうという悩みは最初から多くあったようです。
また、マスク痕がつく、日焼けが気になる、かぶれや乾燥で肌が荒れてしまうなど、マスク装着時の肌の悩みは、かなり大きなボリュームとしてあります。

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3)呼吸に関する悩み
マスクをしていることで息苦しいとか、メガネが曇ってしまう、などの呼吸に関する悩みがかなりありました。
また、前髪やまつ毛が下がるというものもありました。女性の方が多い悩みかと思いますが、マスクをしているときに隙間から抜け出る空気の湿気によって、前髪やまつ毛が下がってきてしまうようですね。

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4)生活習慣への影響
スポーツジムやジョギングなど、運動するときに苦しいというものや、学校で合唱ができないのでマスクをしたまま歌えないか、というニーズが多くありました。また、食事をするときなどにマスクをどこに置いたらいいのかわからない、という悩みも多く見られました。

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5)顔が隠れることによる課題
まず、スマホで顔認証ができないという課題はかなり多くありました。また、マスクをしていることに慣れてしまって外せなくなってしまったという、マスク依存症の悩みもあるようです。
さらに、マスクで顔が隠れていて目しか見えていないので、相手に笑顔などが伝わらないという悩み、結婚式や面接などの際にマスクをした方がいいのかどうか、などのマナーについての悩みも大きなものとなっています。

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6)取り扱いについての悩み
使い捨てではないマスクについての悩みでは、黄ばみ対策や洗い方、ついてしまったファンデーションなどを落としたい、においが気になる、というものもありました。
また、コラージュしたりデコレーションなどで飾りつけたりしたいというニーズも多くありました。

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マスクの課題から生まれた新たな価値

次に、これらの課題を解決するにはどういったものがあるのだろうと、調べてみました。その結果、すでに解決できそうなアイテムや方法がありましたので、それらをご紹介します。

たとえば、マスクをし続けることによる肌荒れの悩みを解決するものとして「マスクブラケット」「マスクフレーム」「マスクガード」などのキーワードが非常に伸びています。これは、マスクの中に入れることでマスクが直接肌に触れないようにするためのものです。これらは以前からあったのかもしれませんが、今年のコロナ禍においてマスクを常時着用するようになってから需要がとても高まっている商品の1つだと思います。

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次に、マスクにファンデーションがついてしまうという課題を解決するものとしては、「マスク ピンクベージュ」「マスク ブラウン」「マスク ベージュ」の検索数がいまだに伸び続けており、ニーズの多さがわかります。また、ファンデーションがつきにくいマスクやスプレーなどもありますが、ファンデーションがついても目立たないことをうたった商品はあまりないため、ついても目立たないという隙間のニーズがあって必要としている方がかなり多いのではないかと思い、ピックアップしてみました。

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もう1つ、ウィズマスク時代に生まれた新たな需要ということで先ほどご紹介した、学校などで合唱ができない、という課題を抱えている方が実は結構いることもわかります。
「コーラス用マスク」「合唱用マスク」の検索数は今も伸びているのですが、これに対する商品はまだそこまで数があるとは言えません。ニーズはあるけれども最適な解決策がそれほどそろっていない一例として取り上げました。

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少し変わったものでは「結婚式 マスク」の検索数が伸びています。これは、徐々に結婚式が再開されていることによるものだと思われます。検索されている一つは花嫁が着けるマスクです。使い捨てではなく、下の写真のような、きちんとデザインされた美しいマスクを着けたい、というニーズがあるのではないでしょうか。これらは、「花嫁マスク」としてECサイトでも結構売られていたり、ドレスのデザインと合うように手作りしたり、というニーズが増えています。
もう1つは、結婚式の参列者側のニーズです。参加するときにはマスクをどうしたらよいのか、というマナーに悩んでいる方も多いようです。

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最後に、ウィズマスク時代に生まれた新たな需要として、マスクチャームやマスクピアス、マスクアクセサリー、マスクチェーン、これらの検索数が増えているのが分かります。
これは、使い捨ての白いマスクをワンポイントで飾って、少し着飾ってみたい、デザインを入れてみたいということで、普通のピアスとかイヤリングとか、そういった感覚でマスクに付けるということがニーズとして増えてきているようです。特にマスクチェーンに関しては徐々に、今も右肩上がりでどんどん増えているということが分かります。

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日常的にマスクを着ける時代になって、浮き彫りとなった課題が検索から見えたこと、そしてそれらを解決するアイテムや方法をご紹介しました。

ウィズマスクの時代の新たなニーズとは

今回、マスクにおける課題やニーズについて最新のデータを中心に分析しました。これを踏まえた上で、今後はこういうニーズが増えてきているのではないか、こういったふうに変化してくるのではないかということをデータ分析に基づいて考察してみました。

1)「常に着ける」から「必要なときに着ける」へ
これまでは常にマスクを着用するという状態が当たり前でしたが、基本的な社会活動、運動や外食、温泉、アミューズメント、その他外出など、これまでの日常の機会が徐々にまた増えてきています。それに伴って外出時にマスクを取り外したり着けなおしたりする機会も増えます。そうなると、マスクは常に着けているものから、取り外す機会も多くなってきます。そのため、外したマスクをどこにしまったらいいのかという課題も増えています。 たとえば、「マスクケース」などのアイテムの検索は4月、5月の時点ですでにかなりありました。さらに、先ほど紹介したマスクチェーンやマスクストラップなどの検索数がどんどん増えてきています。これは、マスクを外したときにどこにも置けないので、首に掛けておきたいというニーズが増えている証なのではないかなと思います。

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2)マスクに個性を追加する
先ほどの結婚式の例もありますが、マスクに個性を加えるためのカラーバリエーションやチャームのようなものは、すでに増えています。さらにそこから、衣服、ファッションアイテムといった扱いや、白いマスクをいかに美しく、輝かせるかというニーズも増えてくるのではないかなと思います。マスクをしている顔の部分が真っ白いキャンバスだとすると、その面を生かさないのはもったいないということで、マスク面の広告もすでに始まっています。
今後は、さらにマスクの個性を付ける、マスクに付与させるそれぞれの違いといったものに注目が集まってくるのではないかということが、データの傾向から見えています。

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3)慣習や行事やマナーとマスクの共存
先ほども例に挙げた結婚式や面接、運動会やスポーツ、成人式や初詣など、世の中の慣習や行事において、これからはマスクを着けた状態でそれを行うことを考えなければなりません。あらゆる慣習や行事、マナーにマスクが加わり、マスク装着が前提の社会というものに対応したニーズが生まれてくるのではないかと考えています。

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4)マスクに遮られない感情の交換
これもデータのボリュームが多くありましたが、マスクを着用すると目以外の部分が隠れてしまうという課題は大きなものといえます。接客業の方などは、透明なマスクガードなどをつけていますが、私たちがそういったものを着けるとなると難しいのではないでしょうか。
マスク着用で目以外が隠れてしまうなか、どうやってうまく相手に感情を伝えるかという点については、みなさんが次第に困りつつあるということがわかってきています。日常生活が戻り人と接触する機会が増え、外に行けば行くほどそういったコミュニケーションがリアルに生まれるということになると、今までの自粛期間のZoomなど画面越しでのやりとりでは分からなかった課題がさらに顕在化していく可能性もあるのではないかと思います。

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5)着けることで得られるプラスの価値
これはもしかしたら一番解決すべきことかもしれません。マスクを着け続けることで耳が痛くなる、肌が荒れる、などの課題が新型コロナウイルス感染拡大初期のころから変わらず非常に大きい検索数を占めています。
マスクの装着をするということは感染防止、もしくは感染を拡大させないという効果が得られる一方、痛みや肌荒れなども伴うという課題が継続してあります。
今後は、マスクを着ければ何かプラスアルファの価値を得られるような、着けたくなるマスクへと変化させていくことが必要になるかもしれません。

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今回は、マスクに関する検索データから見えた課題の分析、ウィズマスクの時代の新たな5つのニーズを考察してみました。
今後もマスクの課題を解決するさまざまな商品開発が進むほか、新しい慣習、新しいコミュニケーション方法が生まれていくかもしれません。

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